80 / 155
第二章 魯坊丸と楽しい仲間達
閑話(十二夜) 怒濤の熱田訪問
しおりを挟む
〔天文十七年 (一五四八年)春三月四日夜~五日〕
千秋家の客間で魯坊丸様が可愛い寝息をたてて眠られている。
眠っていれば、普通の稚児だ。
障子ごしに灯りが近付いてくるのがみえた。
入ってきたのは部下の紅葉であった。
「千代女様。お茶は如何ですか?」
「もらおう」
「魯坊丸様は寝付きがよろしいですね」
「それだけ気をつかわれて緊張されていたのだろう」
「まだ、お仕えして四日しか経っていないのが不思議な気が致します」
「そうだな」
私らは魯坊丸様に仕えはじめて四日しか経っていない。
だが、この忙しさは何なのだろうか?
中根南城でもう驚くことはないと思っていたのに、熱田神宮にくると驚きの連続が続いた。
中根で河原者を雇っていたのも驚いたが、神宮では流民を雇っていた。
魯坊丸様は彼らを労働力といって重宝されていた。
蔑むことはされない。
千秋様も蔑まれないが、人を見ている目ではなく、道具を見ている目であり、おいしい労働力ということを強調されていたような気がする。
昨日、加藤・荒尾・佐治の三家の会談をのりきったと思われると、今日は魯坊丸様の酒造所の視察に向かわれた。
森の中に村ができており、人の数も中根と変わらない。
魯坊丸様は実質的に、中根、八事、酒造所と三つの領地を治めていることになる。
杜氏長と呼ばれる者が魯坊丸様を出迎えて、酒造りの進捗を報告する。
「酒造所の話は凄かったな」
「はい。酒を造りながら、それを入れる蔵を追い掛けて建てるとか」
「あの村が一月でできたと聞いて信じられたか?」
「いいえ、今でも信じられません、神技です」
熱田中の大工を総動員してつくったとか。
料理場や風呂などがあるが、働く者はテントという布の家に住み、大工達が彼らの家を建てている最中だった。
杜氏と呼ばれる酒職人、中根の村人、河原者が中心となって動き、労働者として神人が使われていた。
酒は順調らしく、来月の終わり頃から順にできると言っていた。
しかし、春になり、田植えの為に村人を帰したので、貯蔵室や衛生の為に床に焼レンガを敷く作業や外敵から守る壁の建設が遅れているとも。
紅葉が思い出し笑いでクスクスと笑った。
「なにか?」
「いいえ、ここにくる前に良勝殿らにお茶を運んだのですが、青い顔をして計算を続けておりました」
「最初は魯坊丸様の言葉を書き綴るのに六人も連れてくるのは大袈裟と思っていたが、酒造所の作業計画の修正と、酒の売り先の調整を今晩中にやれとは無茶を言いなさる」
「ああだこうだと言いながら作業を続けていますが、六人では足りないくらいです」
紅葉がもう一度笑った。
酒造所の帰りは、金山に寄って直接に鍛冶師から話を聞かれた。
色々な道具を依頼されており、金山衆の親方が頭を悩ますことをたくさん依頼されていた。
さらに、我々用の新しい鎖帷子を注文もして頂いた。
魯坊丸様の養父が、先の戦いで十数本の矢を背中に浴びても生き残れた特製の鎖帷子だそうだ。
重くなる分、さくららを先読みで早く動けるように鍛え直す必要がある。
神宮に戻ると、熱田衆の会合が待っていた。
「私は魯坊丸様が言われる儲けがよくわからん。紅葉はわかったか」
「良勝殿に教えていただきました。儲けには粗利益と純利益という二つの儲けがあるそうです。粗利益は儲けから買った材料の費用を引いたものであり、純利益は材料費の他に人件費や輸送費など様々な支払いを引いた儲けだそうです」
「どちらも儲けであろう」
「いいえ、違います。粗利益は儲けの総額であり、手元に残る銭ではありません。純利益は手元に残るお金となります」
「つまり、使えるお金が純利益か」
「それと中根家の総資産と熱田連合の総資産の違いが重要なのです。熱田連合と熱田衆は別です。熱田連合は千秋様、加藤様、荒尾様、佐治様、岡本様と五郎丸殿を含む魯坊丸様を支える方々の総称です。熱田衆からこの連合にどれだけ加えるかが重要だと良勝殿が申しておりました」
紅葉はずいぶんと勉強したようだ。
紅葉は体が小さく武芸などでさくらや楓より落ちるが、知識と判断力でそれを補っている。
学ぶことに貪欲なので私も重宝している。
「でも、魯坊丸様は面白い方です。新酒の酒を『上等酒』、特別な酒を『特等酒』、今までの酒を『可等酒』と命名し、上等酒を一升七十文で卸すと言いながら、熱田衆には五十文、米を納品した商人の支払いを四十文で売ってもよいと、敢えて混乱することを言われました」
「連合とならば、三十文になる。連合に入りたい者も多かろう」
「はい。それが魯坊丸様の罠なのです。連合に入るには、店の貸借対照表と損益計算書を魯坊丸様に提出する義務が生じ、商人らの資産がすべて丸裸にされます。連合は魯坊丸様が希望する投資に応じる約定があり、連合の資産をすべて魯坊丸様が自由に使えることになるそうです。商人の銭を喜ばれて奪いとる方法を考えられたのです。面白いです」
紅葉は面白いというが、私は恐ろしいと思った。
損益計算書というのがどういうものかわからぬが、商人の財産をすべて知る方法らしい。
商人は儲かるという一点では魯坊丸様と組む。
しかし、魯坊丸様はその商人が持つ富のすべてを使うつもりなのだ。
紅葉がいう通り、酒という甘い蜜の罠なのだ。
仮眠をとっていたさくらが隣の部屋で起き上がり、魯坊丸様の横まできて指先で頬を突いた。
柔らかい頬をぷにぷにするのが、さくらの新しい趣味だ。
「千代女様。何の話をされていたのですか?」
「今日の魯坊丸様は凄かったという話だ」
「あぁ、なるほど。ですが、私は昨日と今日の魯坊丸様が気持ち悪かったです」
「気持ち悪かった?」
「城では、俺と言って乱暴な言葉で私を責めるのに、ここでは『さくら、何をしているのですか』と優しい声で問い掛けるように責めてきやがりました」
さくらに言われて気がついた。
確かに城でも大人びていたが言葉が荒かった。
神宮にきてからは口調が落ち着いた。
「私もさくらと一緒です。こっちの魯坊丸様に声を掛ける気がしません。三歳の稚児が落ち着いた言葉使いをしているだけで気持ち悪いですよ」
楓も起きてきた。
そう言えば、楓は神宮にきてから魯坊丸様に一度も話し掛けていなかった。
「楓は気づいて話し掛けていないと思っていました」
「紅葉は気持ち悪いと感じなかったのか?」
「私が気持ち悪いと感じたのは二日目です。城の皆さんが私らを簡単に信用なさっているのが不思議でした」
「あっ~~~、確かに変だな」
「侍女長に聞くと当たり前だそうです。生まれて間もない頃に河原者を迎え、気が付くと城の中に村人と河原者が徘徊し、今では監督となって中根家のみなさんと一緒に食事をされている。魯坊丸様はどこかに出掛けると、味噌職人や大工や鍛冶師などを連れてくる。最近は神宮から絵師を連れ帰ったそうです」
「…………滅茶苦茶、変人だな」
「しかし、魯坊丸様は水を吸い上げ、雷を起こすなどをやってしまう本物の熱田明神様。熱田明神様が連れてきた者を疑うなど馬鹿らしいと言っていたのです」
「マジか⁉」
「楓もポンプで水汲みをしているでしょう」
「あぁ、あれ便利だ」
そういう事か。
神宮では、魯坊丸様は熱田明神らしく振る舞っていた。
落ち着いた口調で話せば、それだけで魯坊丸様に熱田明神様が憑依しているように見える。
神人も信仰深い者が多いと聞いた。
神罰を恐れて悪さもできないと、そんな効果を狙っていたのだ。
翌朝、朝食をとる魯坊丸様の前に良勝殿が頭を下げて謝った。
計算が終わらなかったようだ。
「そうか。ならば、私が帰るまで時間を延長しましょう。昼から神事の用事が入っています。それが終わるまでに終わらせなさい。次の延長はありません」
「承知しました」
「さて、昼まで暇なので神宮の宝物殿に納められている書物を読ませていただく予定ですが、神宮内なら護衛は二人で十分でしょう。千代女らには買い物をお願いします」
「買い物ですか?」
「先日、土佐から船が戻ってきました。南蛮や唐の商品が卸されたと言っていたでしょう。母上とその侍女ら、そして、私の侍女らのお土産を選んできて下さい」
おぉ、南蛮や唐の小物。
いかん、いかん、私は護衛だ。
「城の外で魯坊丸様の側を離れる訳にゆきません」
「千代女の見立てを信じて頼んでいる。だが、護衛がいるなら誰かを残してくれ。千代女が選ぶのは決定だ。母上もその方が喜ぶ」
「それで私が残ります。小物より宝物庫の書物の方が興味深いです」
「じゃあ、紅葉に頼む」
「はい、はい、私も残ります。一人では何かと不便でしょう。さくらに任せると居眠りしそうですから適任でしょう」
「楓、何をいうのですか。護衛の仕事ならキチンとできます」
「さくらは千代女様の荷物持ちの方が似合うでしょう。私は荷物持ちなんて嫌だから」
「仕方ありません。不肖、このさくらが千代女様の荷物持ちとなりましょう」
「わかりました。奥方様の品を探しに行ってきます」
熱田衆の会合で小物屋が魯坊丸様に珍しい品が入ったので見にきてほしいと言ったが、魯坊丸様は断わられた。
内心、残念と思ったが、行く機会が回ってきた。
やった。珍しい小物が見られる。
もの凄く嬉しくて堪らないがこういう気づかいは止めてほしい。
魯坊丸様の手の平で転がされている気分になる。
千秋家の客間で魯坊丸様が可愛い寝息をたてて眠られている。
眠っていれば、普通の稚児だ。
障子ごしに灯りが近付いてくるのがみえた。
入ってきたのは部下の紅葉であった。
「千代女様。お茶は如何ですか?」
「もらおう」
「魯坊丸様は寝付きがよろしいですね」
「それだけ気をつかわれて緊張されていたのだろう」
「まだ、お仕えして四日しか経っていないのが不思議な気が致します」
「そうだな」
私らは魯坊丸様に仕えはじめて四日しか経っていない。
だが、この忙しさは何なのだろうか?
中根南城でもう驚くことはないと思っていたのに、熱田神宮にくると驚きの連続が続いた。
中根で河原者を雇っていたのも驚いたが、神宮では流民を雇っていた。
魯坊丸様は彼らを労働力といって重宝されていた。
蔑むことはされない。
千秋様も蔑まれないが、人を見ている目ではなく、道具を見ている目であり、おいしい労働力ということを強調されていたような気がする。
昨日、加藤・荒尾・佐治の三家の会談をのりきったと思われると、今日は魯坊丸様の酒造所の視察に向かわれた。
森の中に村ができており、人の数も中根と変わらない。
魯坊丸様は実質的に、中根、八事、酒造所と三つの領地を治めていることになる。
杜氏長と呼ばれる者が魯坊丸様を出迎えて、酒造りの進捗を報告する。
「酒造所の話は凄かったな」
「はい。酒を造りながら、それを入れる蔵を追い掛けて建てるとか」
「あの村が一月でできたと聞いて信じられたか?」
「いいえ、今でも信じられません、神技です」
熱田中の大工を総動員してつくったとか。
料理場や風呂などがあるが、働く者はテントという布の家に住み、大工達が彼らの家を建てている最中だった。
杜氏と呼ばれる酒職人、中根の村人、河原者が中心となって動き、労働者として神人が使われていた。
酒は順調らしく、来月の終わり頃から順にできると言っていた。
しかし、春になり、田植えの為に村人を帰したので、貯蔵室や衛生の為に床に焼レンガを敷く作業や外敵から守る壁の建設が遅れているとも。
紅葉が思い出し笑いでクスクスと笑った。
「なにか?」
「いいえ、ここにくる前に良勝殿らにお茶を運んだのですが、青い顔をして計算を続けておりました」
「最初は魯坊丸様の言葉を書き綴るのに六人も連れてくるのは大袈裟と思っていたが、酒造所の作業計画の修正と、酒の売り先の調整を今晩中にやれとは無茶を言いなさる」
「ああだこうだと言いながら作業を続けていますが、六人では足りないくらいです」
紅葉がもう一度笑った。
酒造所の帰りは、金山に寄って直接に鍛冶師から話を聞かれた。
色々な道具を依頼されており、金山衆の親方が頭を悩ますことをたくさん依頼されていた。
さらに、我々用の新しい鎖帷子を注文もして頂いた。
魯坊丸様の養父が、先の戦いで十数本の矢を背中に浴びても生き残れた特製の鎖帷子だそうだ。
重くなる分、さくららを先読みで早く動けるように鍛え直す必要がある。
神宮に戻ると、熱田衆の会合が待っていた。
「私は魯坊丸様が言われる儲けがよくわからん。紅葉はわかったか」
「良勝殿に教えていただきました。儲けには粗利益と純利益という二つの儲けがあるそうです。粗利益は儲けから買った材料の費用を引いたものであり、純利益は材料費の他に人件費や輸送費など様々な支払いを引いた儲けだそうです」
「どちらも儲けであろう」
「いいえ、違います。粗利益は儲けの総額であり、手元に残る銭ではありません。純利益は手元に残るお金となります」
「つまり、使えるお金が純利益か」
「それと中根家の総資産と熱田連合の総資産の違いが重要なのです。熱田連合と熱田衆は別です。熱田連合は千秋様、加藤様、荒尾様、佐治様、岡本様と五郎丸殿を含む魯坊丸様を支える方々の総称です。熱田衆からこの連合にどれだけ加えるかが重要だと良勝殿が申しておりました」
紅葉はずいぶんと勉強したようだ。
紅葉は体が小さく武芸などでさくらや楓より落ちるが、知識と判断力でそれを補っている。
学ぶことに貪欲なので私も重宝している。
「でも、魯坊丸様は面白い方です。新酒の酒を『上等酒』、特別な酒を『特等酒』、今までの酒を『可等酒』と命名し、上等酒を一升七十文で卸すと言いながら、熱田衆には五十文、米を納品した商人の支払いを四十文で売ってもよいと、敢えて混乱することを言われました」
「連合とならば、三十文になる。連合に入りたい者も多かろう」
「はい。それが魯坊丸様の罠なのです。連合に入るには、店の貸借対照表と損益計算書を魯坊丸様に提出する義務が生じ、商人らの資産がすべて丸裸にされます。連合は魯坊丸様が希望する投資に応じる約定があり、連合の資産をすべて魯坊丸様が自由に使えることになるそうです。商人の銭を喜ばれて奪いとる方法を考えられたのです。面白いです」
紅葉は面白いというが、私は恐ろしいと思った。
損益計算書というのがどういうものかわからぬが、商人の財産をすべて知る方法らしい。
商人は儲かるという一点では魯坊丸様と組む。
しかし、魯坊丸様はその商人が持つ富のすべてを使うつもりなのだ。
紅葉がいう通り、酒という甘い蜜の罠なのだ。
仮眠をとっていたさくらが隣の部屋で起き上がり、魯坊丸様の横まできて指先で頬を突いた。
柔らかい頬をぷにぷにするのが、さくらの新しい趣味だ。
「千代女様。何の話をされていたのですか?」
「今日の魯坊丸様は凄かったという話だ」
「あぁ、なるほど。ですが、私は昨日と今日の魯坊丸様が気持ち悪かったです」
「気持ち悪かった?」
「城では、俺と言って乱暴な言葉で私を責めるのに、ここでは『さくら、何をしているのですか』と優しい声で問い掛けるように責めてきやがりました」
さくらに言われて気がついた。
確かに城でも大人びていたが言葉が荒かった。
神宮にきてからは口調が落ち着いた。
「私もさくらと一緒です。こっちの魯坊丸様に声を掛ける気がしません。三歳の稚児が落ち着いた言葉使いをしているだけで気持ち悪いですよ」
楓も起きてきた。
そう言えば、楓は神宮にきてから魯坊丸様に一度も話し掛けていなかった。
「楓は気づいて話し掛けていないと思っていました」
「紅葉は気持ち悪いと感じなかったのか?」
「私が気持ち悪いと感じたのは二日目です。城の皆さんが私らを簡単に信用なさっているのが不思議でした」
「あっ~~~、確かに変だな」
「侍女長に聞くと当たり前だそうです。生まれて間もない頃に河原者を迎え、気が付くと城の中に村人と河原者が徘徊し、今では監督となって中根家のみなさんと一緒に食事をされている。魯坊丸様はどこかに出掛けると、味噌職人や大工や鍛冶師などを連れてくる。最近は神宮から絵師を連れ帰ったそうです」
「…………滅茶苦茶、変人だな」
「しかし、魯坊丸様は水を吸い上げ、雷を起こすなどをやってしまう本物の熱田明神様。熱田明神様が連れてきた者を疑うなど馬鹿らしいと言っていたのです」
「マジか⁉」
「楓もポンプで水汲みをしているでしょう」
「あぁ、あれ便利だ」
そういう事か。
神宮では、魯坊丸様は熱田明神らしく振る舞っていた。
落ち着いた口調で話せば、それだけで魯坊丸様に熱田明神様が憑依しているように見える。
神人も信仰深い者が多いと聞いた。
神罰を恐れて悪さもできないと、そんな効果を狙っていたのだ。
翌朝、朝食をとる魯坊丸様の前に良勝殿が頭を下げて謝った。
計算が終わらなかったようだ。
「そうか。ならば、私が帰るまで時間を延長しましょう。昼から神事の用事が入っています。それが終わるまでに終わらせなさい。次の延長はありません」
「承知しました」
「さて、昼まで暇なので神宮の宝物殿に納められている書物を読ませていただく予定ですが、神宮内なら護衛は二人で十分でしょう。千代女らには買い物をお願いします」
「買い物ですか?」
「先日、土佐から船が戻ってきました。南蛮や唐の商品が卸されたと言っていたでしょう。母上とその侍女ら、そして、私の侍女らのお土産を選んできて下さい」
おぉ、南蛮や唐の小物。
いかん、いかん、私は護衛だ。
「城の外で魯坊丸様の側を離れる訳にゆきません」
「千代女の見立てを信じて頼んでいる。だが、護衛がいるなら誰かを残してくれ。千代女が選ぶのは決定だ。母上もその方が喜ぶ」
「それで私が残ります。小物より宝物庫の書物の方が興味深いです」
「じゃあ、紅葉に頼む」
「はい、はい、私も残ります。一人では何かと不便でしょう。さくらに任せると居眠りしそうですから適任でしょう」
「楓、何をいうのですか。護衛の仕事ならキチンとできます」
「さくらは千代女様の荷物持ちの方が似合うでしょう。私は荷物持ちなんて嫌だから」
「仕方ありません。不肖、このさくらが千代女様の荷物持ちとなりましょう」
「わかりました。奥方様の品を探しに行ってきます」
熱田衆の会合で小物屋が魯坊丸様に珍しい品が入ったので見にきてほしいと言ったが、魯坊丸様は断わられた。
内心、残念と思ったが、行く機会が回ってきた。
やった。珍しい小物が見られる。
もの凄く嬉しくて堪らないがこういう気づかいは止めてほしい。
魯坊丸様の手の平で転がされている気分になる。
1
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
戦国を駆ける軍師・山本勘助の嫡男、山本雪之丞
沙羅双樹
歴史・時代
川中島の合戦で亡くなった軍師、山本勘助に嫡男がいた。その男は、山本雪之丞と言い、頭が良く、姿かたちも美しい若者であった。その日、信玄の館を訪れた雪之丞は、上洛の手段を考えている信玄に、「第二啄木鳥の戦法」を提案したのだった……。
この小説はカクヨムに連載中の「武田信玄上洛記」を大幅に加筆訂正したものです。より読みやすく面白く書き直しました。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
魯坊人外伝~のじゃ姫のあばれ旅珍道中~
牛一/冬星明
歴史・時代
魯鈍人 (ロドンヒト)と呼ばれた織田信照は転生者であった。
幼名を魯坊丸と言う。
魯坊丸はただ生きのびる為に生活チートで生活向上を図っていたら、京に上る事になり、公方様である足利義輝を助けて天下に号令を掛ける羽目となった。
なし崩し的に三好長慶を下らせ、今川義元を討ってしまった。
武田晴信や毛利元就などが公方義輝に平伏し、関東征伐を終えた事で天下静謐を為した。
だが、天下太平への道は険しい。
魯坊丸にはお市、お栄、里の姉妹がおり、魯鈍人に懐いていた。
身近な者に甘い魯坊丸は、妹らに英才教育を施した。
お市は、武術に優れ、天運の申し子であった。
お栄は、人材構築に優れ、謀略家の片鱗を見せる。
里は、二人に巻き込まれて右往左往させられる運命だった。
そんな三人の姉妹達が、手が足りない魯坊丸の天下を助ける為に動き出す。
お市ちゃんの関東・奥州征伐物語の開幕です。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
故郷、甲賀で騒動を起こし、国を追われるようにして出奔した
若き日の滝川一益と滝川義太夫、
尾張に流れ着いた二人は織田信長に会い、織田家の一員として
天下布武の一役を担う。二人をとりまく織田家の人々のそれぞれの思惑が
からみ、紆余曲折しながらも一益がたどり着く先はどこなのか。
旧式戦艦はつせ
古井論理
歴史・時代
真珠湾攻撃を行う前に機動艦隊が発見されてしまい、結果的に太平洋戦争を回避した日本であったが軍備は軍縮条約によって制限され、日本国に国名を変更し民主政治を取り入れたあとも締め付けが厳しい日々が続いている世界。東南アジアの元列強植民地が独立した大国・マカスネシア連邦と同盟を結んだ日本だが、果たして復権の日は来るのであろうか。ロマンと知略のIF戦記。
Live or Die?
阿弥陀乃トンマージ
SF
人類が本格的に地球から宇宙に進出するようになってから、すっかり星間飛行も宇宙旅行も当たり前になった時代……。地球に住む1人の青年、タスマ=ドラキンが大きな夢を抱いて、宇宙に飛び出そうとしていた!……密航で。
タスマが潜り込んだ船には何故か三人組の女の子たちの姿が……可愛らしい女の子たちかと思えば、この女の子たち、どうやら一癖も二癖もあるようで……?
銀河をまたにかけた新感覚一大スペクタクル、ここに開演!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる