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72. カロリナ、ミノタウロスも首チョンパです。
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下町の常識。
女性も男性もなく、身持ちばかりの衝立をして井戸や河で体を洗った。
じろじろと見るのはマナー違反だ。
でも、こっそり見るのは許されていた。
町の公衆浴場は男女共用浴であり、わざわざ男女を分けて入るのは貴族くらい…………、そして、カロリナは忘れていた。
影もそちら側の人間であったことを!
「ニナ、どうかしました?」
「いいえ、ちょっと虫が動いたようです」
「そうね、虫が出たみたいね!」
ニナは小袋の入った小石を爪で弾いて指弾を撃った。
カロリナの命を忠実な従者の頭を撫でた。
もう、そんな年じゃありません。
ニナがぎこちない笑みを零して喜んでいる。
反対側にいた影もおじゃま虫を見つけたようだった。
「上がりましょうか!」
「そうだね。招かざるお客様は誰やろうか?」
「カロリナ様を怒らせた方はお気の毒ね!」
「悪戯をする馬鹿に鉄槌だ!」
「ニナ、誰だと思う」
「判りません」
「少し寒かったので丁度よかったです」
カロリナ達は暢気に海から上がってきた。
がさがさがさ、兵士が草むらから飛び出して取り囲んだ。
え、え、え?
影、どういうこと?
カロリナの失念だった。
ゴブリン並に弱々しい気配。
影は虫けらの為にカロリナの大切な時間が浪費されることを優先した。
影のサインは敵が侵入しました? ではなく、始末しますか?
(侵入=始末)
そういう合図だった。
カロリナは待てと送り返した。
あの虫けらを尋問するつもりなのか?
影はそう受け取って待機した。
ハンドサイン、意志の疎通は難しい。
見知らむ男に恥ずかしい姿を見られた!
咄嗟にカロリナは胸を隠し、ゾフィアもその場で座り込んだ。
げへへへぇ、男達が厭らしい笑みを浮かべる。
「上玉だ。俺達はついている」
「100人隊長、俺達にも残して下さいよ」
「他にもいるだろう」
「ズルな!」
「俺は後ろの女の方が趣味だぜ!」
「えへへへ、そうだな!」
指揮官と思われる奴はカロリナを一人占めする気らしい。
幼さを除けば、カロリナは気品と美しさが溢れている。
下品な顔に鳥肌が立つ。
指揮官が迷わずカロリナに近づいて、胸を隠す細腕を握った。
女性9人は丸腰だ。
男達は用心もせずに近づいてくる。
30人の兵士が取り囲み、後方で下級兵士60人くらいが待機して弓などを構えている。
「わてはこの数を相手するのは嫌やな!」
「そういう問題じゃないでしょう」
「お金が貰えそうもないね」
「あんた達、ここでそう言う話はしない」
「は~い」
「アザさん、左をお願いします。私は右を相手します」
「えっ、私が?」
「他のお姉さんは武器を持っていなから辛いでしょう」
「はい、はい、判りました」
アザとニナがお姉さんの前に進んでゆく。
むかしの事を思うと、アザも度胸が付いて来た。
もう立派な冒険者だ。
「アザちゃん、大丈夫?」
「怖いなら代わって上げるよ」
「ミノタウロスにプロポーズされる思えば、可愛らしい者です」
「たしかに、ミノちゃんの方が逞しいわね!」
お姉さん達は丸腰ではない。
針とか、糸のような暗器をパンティーの間に挟んで潜ませていた。
本当に丸腰なのはカロリナとゾフィアくらいだ。
アザは小さな杖を取り出し、ニナも小袋から小石をいくつか握り出した。
「ガキは下がっていろ!」
「そうだ、俺は隊長と違って幼女は趣味じゃないんだ」
「私、この中では一番のお姉さんですけど!?」
「がははは、悪い冗談だ!」
ニナを言葉に笑いが出た。
兵士達の運命が決まった。
自業自得だ。
アザと対峙した兵士はマジマジと体を眺める。
貞操の危機感を感じる。
舌を出すな、視線を向けるな、穢される。
娘ほどの女に欲情する男というのは寒気がする。
アザの目が冷たくなり、町娘から戦闘モードに変わったことに気づいていない。
隊長がカロリナの腕を取った手に力を入れて引き剥がす。
濡れた下着からうっすらと肌が見える。
げへへへ、涎を垂らして厭らしい目を見つめてくる。
「貴方は誰ですか?」
「この胸の十字の紋章が見えないか!」
「隣の兵士でしたか?」
「そうよ、俺は第18師団96部隊の100人隊長様だ。俺に抱かれることを光栄と思え!」
男の鎧に十字の紋章が描かれていた。
プー王国騎士団の紋章だ。
体は一回り大きいが装備している鎧が粗末だった。
100人隊長様と言うのは兵のトップだ。
かなり優秀な方だと思っていた?
貴族学園を卒業する優秀な生徒はレベル30に達する。
100人隊長はそれに匹敵すると聞いていたが、こんなもの?
いくつかの疑問が浮かんだ。
それはどうでもいい。
大切なことはどうしてここにいるのか?
それが重要だった。
「どうやって、ここまで来たのですか?」
「げへへへ、教える訳ないだろう。黙って抱かれな!」
「何を馬鹿な事を言っているのですか?」
「捕虜は大人しく抱かれればいいのさ!」
「いつ、捕虜になりました?」
「この状況が判らないのか!」
「雑魚が取り囲んでいるだけでしょう」
下品に笑っていた隊長の顔が真っ赤になって怒っていた。
優しくしてやろうと思っていたが取り止めだ。
徹底的に虐めて尽くしてやる。
もう一方の手で拳を作り、カロリナの頬に殴り込んだ。
この拳で気の強い女達を従属させてきた。
手慣れたモノだ。
が………、完全な悪手だった!
すぽっ、勢いよく振り降ろした拳をカロリナが軽く受け止めた。
カロリナは思った。
こいつ馬鹿じゃない?
接近すると腰に下げている剣を抜く動作は無駄な動きが多い。
剣を抜いて、それから振り上げなければならない。
その間に反撃ができる。
しかし、左腰にあるプギオ(小剣)は厄介だ。
抜く動作と攻撃する動作が一連で行える。
カロリナはその動きを気に掛けていた。
プギオ(小剣)が名刀だったら怪我くらいはしそうだ。
と、思っていたのに?
レベルが上位者に素手で殴るなんて!
「こんなものですか?」
「ばっ、馬鹿な!」
指揮官は何か慌てている。
体格差で倍はある大男の拳を軽く止めてしまったからだろうか?
冒険者のお姉さんらはにやにやと笑っている。
今の一撃でレベルが知れてしまった。
高く見積もってもレベル28くらいか!
カロリナの護衛をしている四貴族子息と同じくらいだ。
お姉さんらは男性陣よりレベルが少し低いが、それでもみなさんはレベル33を超えている。
レベル差が5も違えば、素手で殺せる。
「もういいですわ」
カロリナは拳を掴んだ手をぎゅっと力を入れて隊長を持ち上げた。
馬鹿な、馬鹿な、馬鹿な!
信じられないとオウムのように同じ言葉を吐いている。
レベル世界だ。
体の大きさは関係ない。
カロリナは隊長をぶんぶんと振り回して、後ろの兵にお返しする。
ぐわぁぁぁぁ、ボウリングのように敵の兵が一緒になぎ倒された。
同時に囲んでいた兵も終わっていた。
『次元刃』
アザは小さくつぶやくと小さな刃で首元に走り、すぱすぱすぱと切れて転がり、首元から真っ赤な血が立ち上がった。
綺麗な噴水だ!
高く舞い上がり、雨のように落ちてくる。
右側のいた兵士も終わっていた。
ニナの指先から指弾が連続で発射され胸を貫いた。
息をする暇も与えない。
もう少し上等な鎧を身に付けてくれないと、光の魔法スキル『流星雨』を使う価値もなかった。
「あの子ら、相変わらず凄いわ」
「首チョンパね!」
「私もあそこまでできないわ」
「二人ともゴブリン以来、人が変わっちゃったのよ」
「昔は魔物を見ただけで怯えて可愛かったのに!」
「おじさん達、可哀そう」
数万のゴブリンが襲ってくるというのは、ちょっとしたトラウマだ。
敵に容赦すれば、命が危ない。
省エネには心掛けるが、容赦という言葉が二人から消えた。
でも、首からすぱっとはやり過ぎだったかもしれない。
下着が血の雨が赤く染まってしまった。
「では、着替えにゆきましょう」
お姉さんも血の下着の上にバトルドレスを着るのは気持ちが悪い。
ここは1つと『カロリナ様』と声を上げた。
仕方ありませんねと快く引き受けた。
『水よ』
ザッバンと頭上から水が降ってくる。
お姉さんは喜んで体を洗っている。
ゾフィアの目は点になった。
生活魔法の『ウォーター/アクア』は手の平を絞るように水を呼び出し、桶に水を貯めて使う生活魔法だ。
決して、頭の上から滝のように水を流す魔法ではない。
『乾燥』
下着を剥ぎ取りそうな暴風が吹いて下着を一気に乾かせてゆく。
生活魔法の『乾燥』はそよ風の魔法だ。
決して、一時で下着を乾かせる魔法ではない。
何度も重ね掛けをして服を乾かせる。
下着が乾くと、急いでバトルドレスを着て、鎧などの装備を装着する。
ゾフィアも侍女に手伝って貰って装備した。
終わると、お姉さんがカロリナに合図を送った。
『清浄』
清浄の魔法は教会の牧師や巫女が使う魔法だ。
不浄なモノを取り除く、神聖な魔法だったハズなのだ。
が、わずかに残った血の跡や鎧に付いた汚れなども落としてくれる。
汚れが白い粉となって足元に落ちた。
えっ、ゾフィアが驚く。
夜中にこっそり井戸を借りて洗濯の魔法で洗濯していたゾフィアもびっくりだ。
いつもお姉さんらが小奇麗と思っていた。
でも、川や井戸で洗っているのを見たことがない。
どこで身だしなみを整えているのか疑問だった。
そりゃ、見ない訳だ。
洗濯の魔法では、汗の匂いが落ちるだけで黄ばみとは取れない。
完全に冒険者に負けていると焦った。
でも、でも!
清浄は一瞬で黄ばみすら落ちてゆく。
清潔さを心掛けていた私の努力は何だったの?
あれっ?
カロリナは炎の魔法使いと聞いていたハズだよね。
桁違いの生活魔法は何?
ゾフィアの中で、謎のカロリナというカテゴリーが生まれた。
さて、こんなにのんびりしていいのか?
問題なかった。
指揮官が飛ばされた直後、残る敵は影達が綺麗に処分を終えてくれた。
カロリナの尋問が終われば用なしだ。
周囲の敵はルドヴィク達ががんばってくれた。
「カロリナ様の神聖なお姿を見た馬鹿者に鉄槌を!」
うぉぉぉぉぉ、ルドヴィクの掛け声に皆が同調した。
欲求不満のはけ口として襲い掛かり、残りの二隊200人を撃退した。
「羨ましいぞ!」
「生かして返すな!」
「浄化だ!」
「敵の死を!」
「皆殺しだ!」
カロリナ教の狂信者達はバーサーカー化して手が付けられない。
レベル差もあった。
血の蹂躙を遂行し、敵の兵にその恐怖を魂魄に刷り込んで蹴散らしたのだ。
やり過ぎだと、ラファウが頭を掻くほどに!
女性も男性もなく、身持ちばかりの衝立をして井戸や河で体を洗った。
じろじろと見るのはマナー違反だ。
でも、こっそり見るのは許されていた。
町の公衆浴場は男女共用浴であり、わざわざ男女を分けて入るのは貴族くらい…………、そして、カロリナは忘れていた。
影もそちら側の人間であったことを!
「ニナ、どうかしました?」
「いいえ、ちょっと虫が動いたようです」
「そうね、虫が出たみたいね!」
ニナは小袋の入った小石を爪で弾いて指弾を撃った。
カロリナの命を忠実な従者の頭を撫でた。
もう、そんな年じゃありません。
ニナがぎこちない笑みを零して喜んでいる。
反対側にいた影もおじゃま虫を見つけたようだった。
「上がりましょうか!」
「そうだね。招かざるお客様は誰やろうか?」
「カロリナ様を怒らせた方はお気の毒ね!」
「悪戯をする馬鹿に鉄槌だ!」
「ニナ、誰だと思う」
「判りません」
「少し寒かったので丁度よかったです」
カロリナ達は暢気に海から上がってきた。
がさがさがさ、兵士が草むらから飛び出して取り囲んだ。
え、え、え?
影、どういうこと?
カロリナの失念だった。
ゴブリン並に弱々しい気配。
影は虫けらの為にカロリナの大切な時間が浪費されることを優先した。
影のサインは敵が侵入しました? ではなく、始末しますか?
(侵入=始末)
そういう合図だった。
カロリナは待てと送り返した。
あの虫けらを尋問するつもりなのか?
影はそう受け取って待機した。
ハンドサイン、意志の疎通は難しい。
見知らむ男に恥ずかしい姿を見られた!
咄嗟にカロリナは胸を隠し、ゾフィアもその場で座り込んだ。
げへへへぇ、男達が厭らしい笑みを浮かべる。
「上玉だ。俺達はついている」
「100人隊長、俺達にも残して下さいよ」
「他にもいるだろう」
「ズルな!」
「俺は後ろの女の方が趣味だぜ!」
「えへへへ、そうだな!」
指揮官と思われる奴はカロリナを一人占めする気らしい。
幼さを除けば、カロリナは気品と美しさが溢れている。
下品な顔に鳥肌が立つ。
指揮官が迷わずカロリナに近づいて、胸を隠す細腕を握った。
女性9人は丸腰だ。
男達は用心もせずに近づいてくる。
30人の兵士が取り囲み、後方で下級兵士60人くらいが待機して弓などを構えている。
「わてはこの数を相手するのは嫌やな!」
「そういう問題じゃないでしょう」
「お金が貰えそうもないね」
「あんた達、ここでそう言う話はしない」
「は~い」
「アザさん、左をお願いします。私は右を相手します」
「えっ、私が?」
「他のお姉さんは武器を持っていなから辛いでしょう」
「はい、はい、判りました」
アザとニナがお姉さんの前に進んでゆく。
むかしの事を思うと、アザも度胸が付いて来た。
もう立派な冒険者だ。
「アザちゃん、大丈夫?」
「怖いなら代わって上げるよ」
「ミノタウロスにプロポーズされる思えば、可愛らしい者です」
「たしかに、ミノちゃんの方が逞しいわね!」
お姉さん達は丸腰ではない。
針とか、糸のような暗器をパンティーの間に挟んで潜ませていた。
本当に丸腰なのはカロリナとゾフィアくらいだ。
アザは小さな杖を取り出し、ニナも小袋から小石をいくつか握り出した。
「ガキは下がっていろ!」
「そうだ、俺は隊長と違って幼女は趣味じゃないんだ」
「私、この中では一番のお姉さんですけど!?」
「がははは、悪い冗談だ!」
ニナを言葉に笑いが出た。
兵士達の運命が決まった。
自業自得だ。
アザと対峙した兵士はマジマジと体を眺める。
貞操の危機感を感じる。
舌を出すな、視線を向けるな、穢される。
娘ほどの女に欲情する男というのは寒気がする。
アザの目が冷たくなり、町娘から戦闘モードに変わったことに気づいていない。
隊長がカロリナの腕を取った手に力を入れて引き剥がす。
濡れた下着からうっすらと肌が見える。
げへへへ、涎を垂らして厭らしい目を見つめてくる。
「貴方は誰ですか?」
「この胸の十字の紋章が見えないか!」
「隣の兵士でしたか?」
「そうよ、俺は第18師団96部隊の100人隊長様だ。俺に抱かれることを光栄と思え!」
男の鎧に十字の紋章が描かれていた。
プー王国騎士団の紋章だ。
体は一回り大きいが装備している鎧が粗末だった。
100人隊長様と言うのは兵のトップだ。
かなり優秀な方だと思っていた?
貴族学園を卒業する優秀な生徒はレベル30に達する。
100人隊長はそれに匹敵すると聞いていたが、こんなもの?
いくつかの疑問が浮かんだ。
それはどうでもいい。
大切なことはどうしてここにいるのか?
それが重要だった。
「どうやって、ここまで来たのですか?」
「げへへへ、教える訳ないだろう。黙って抱かれな!」
「何を馬鹿な事を言っているのですか?」
「捕虜は大人しく抱かれればいいのさ!」
「いつ、捕虜になりました?」
「この状況が判らないのか!」
「雑魚が取り囲んでいるだけでしょう」
下品に笑っていた隊長の顔が真っ赤になって怒っていた。
優しくしてやろうと思っていたが取り止めだ。
徹底的に虐めて尽くしてやる。
もう一方の手で拳を作り、カロリナの頬に殴り込んだ。
この拳で気の強い女達を従属させてきた。
手慣れたモノだ。
が………、完全な悪手だった!
すぽっ、勢いよく振り降ろした拳をカロリナが軽く受け止めた。
カロリナは思った。
こいつ馬鹿じゃない?
接近すると腰に下げている剣を抜く動作は無駄な動きが多い。
剣を抜いて、それから振り上げなければならない。
その間に反撃ができる。
しかし、左腰にあるプギオ(小剣)は厄介だ。
抜く動作と攻撃する動作が一連で行える。
カロリナはその動きを気に掛けていた。
プギオ(小剣)が名刀だったら怪我くらいはしそうだ。
と、思っていたのに?
レベルが上位者に素手で殴るなんて!
「こんなものですか?」
「ばっ、馬鹿な!」
指揮官は何か慌てている。
体格差で倍はある大男の拳を軽く止めてしまったからだろうか?
冒険者のお姉さんらはにやにやと笑っている。
今の一撃でレベルが知れてしまった。
高く見積もってもレベル28くらいか!
カロリナの護衛をしている四貴族子息と同じくらいだ。
お姉さんらは男性陣よりレベルが少し低いが、それでもみなさんはレベル33を超えている。
レベル差が5も違えば、素手で殺せる。
「もういいですわ」
カロリナは拳を掴んだ手をぎゅっと力を入れて隊長を持ち上げた。
馬鹿な、馬鹿な、馬鹿な!
信じられないとオウムのように同じ言葉を吐いている。
レベル世界だ。
体の大きさは関係ない。
カロリナは隊長をぶんぶんと振り回して、後ろの兵にお返しする。
ぐわぁぁぁぁ、ボウリングのように敵の兵が一緒になぎ倒された。
同時に囲んでいた兵も終わっていた。
『次元刃』
アザは小さくつぶやくと小さな刃で首元に走り、すぱすぱすぱと切れて転がり、首元から真っ赤な血が立ち上がった。
綺麗な噴水だ!
高く舞い上がり、雨のように落ちてくる。
右側のいた兵士も終わっていた。
ニナの指先から指弾が連続で発射され胸を貫いた。
息をする暇も与えない。
もう少し上等な鎧を身に付けてくれないと、光の魔法スキル『流星雨』を使う価値もなかった。
「あの子ら、相変わらず凄いわ」
「首チョンパね!」
「私もあそこまでできないわ」
「二人ともゴブリン以来、人が変わっちゃったのよ」
「昔は魔物を見ただけで怯えて可愛かったのに!」
「おじさん達、可哀そう」
数万のゴブリンが襲ってくるというのは、ちょっとしたトラウマだ。
敵に容赦すれば、命が危ない。
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でも、首からすぱっとはやり過ぎだったかもしれない。
下着が血の雨が赤く染まってしまった。
「では、着替えにゆきましょう」
お姉さんも血の下着の上にバトルドレスを着るのは気持ちが悪い。
ここは1つと『カロリナ様』と声を上げた。
仕方ありませんねと快く引き受けた。
『水よ』
ザッバンと頭上から水が降ってくる。
お姉さんは喜んで体を洗っている。
ゾフィアの目は点になった。
生活魔法の『ウォーター/アクア』は手の平を絞るように水を呼び出し、桶に水を貯めて使う生活魔法だ。
決して、頭の上から滝のように水を流す魔法ではない。
『乾燥』
下着を剥ぎ取りそうな暴風が吹いて下着を一気に乾かせてゆく。
生活魔法の『乾燥』はそよ風の魔法だ。
決して、一時で下着を乾かせる魔法ではない。
何度も重ね掛けをして服を乾かせる。
下着が乾くと、急いでバトルドレスを着て、鎧などの装備を装着する。
ゾフィアも侍女に手伝って貰って装備した。
終わると、お姉さんがカロリナに合図を送った。
『清浄』
清浄の魔法は教会の牧師や巫女が使う魔法だ。
不浄なモノを取り除く、神聖な魔法だったハズなのだ。
が、わずかに残った血の跡や鎧に付いた汚れなども落としてくれる。
汚れが白い粉となって足元に落ちた。
えっ、ゾフィアが驚く。
夜中にこっそり井戸を借りて洗濯の魔法で洗濯していたゾフィアもびっくりだ。
いつもお姉さんらが小奇麗と思っていた。
でも、川や井戸で洗っているのを見たことがない。
どこで身だしなみを整えているのか疑問だった。
そりゃ、見ない訳だ。
洗濯の魔法では、汗の匂いが落ちるだけで黄ばみとは取れない。
完全に冒険者に負けていると焦った。
でも、でも!
清浄は一瞬で黄ばみすら落ちてゆく。
清潔さを心掛けていた私の努力は何だったの?
あれっ?
カロリナは炎の魔法使いと聞いていたハズだよね。
桁違いの生活魔法は何?
ゾフィアの中で、謎のカロリナというカテゴリーが生まれた。
さて、こんなにのんびりしていいのか?
問題なかった。
指揮官が飛ばされた直後、残る敵は影達が綺麗に処分を終えてくれた。
カロリナの尋問が終われば用なしだ。
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うぉぉぉぉぉ、ルドヴィクの掛け声に皆が同調した。
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「生かして返すな!」
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「敵の死を!」
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