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閑話.ペニンスラ半島。
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(地形の説明です。読まなくても、支障はございません)
王都の東にはイアスト川が流れ、中央領の西からラーコーツィ領にウェストゥ川が流れていた。
どちらもアール王国の東西に流れる大河であり、水運の要であった。
大河は北に流れてゆき、セーチェー湾に流れ出す。
その河口には平野と湿原地帯が広がっていた。
広大な平野。
いつか大穀倉地帯になりそうな景色が広がっていた。
しかし、農民の目にはただの原っぱにしか見えない。
春に大氾濫を起こし、河の流れが変わるような場所に誰も住まなかった。
壁もない平原で農作業など、魔物に襲ってくれと言っているようなものだ。
しかし、壁を造って河の氾濫で流されかねない。
広い手付かずの平野は兎やきつねなどの獣、ゴブリンなどの狩り場として使われた。
農民らは少し小高い丘の上に住居を構えた。
河口をでると良質な漁場となるセーチェー湾が広がる。
イアスト川とウェストゥ川から流れ出る土砂でゆっくりとセーチェー湾は埋められている。
いつか消えてしまうのだろう。
しかし、それが100年先ではない。
もっと遠い未来のことである。
イアスト川より東側がセーチェー領、
イアスト川とウェストゥ川の挟まれた所が王都領、
ウェストゥ川の河口付近がラーコーツィ領、
それぞれが港町を持っていた。
その他にも小さな漁村がいくつかあった。
王都の港町に近く、コハーリ伯爵領には大型帆船の造船所が出て賑わっており、二本マストの帆船はセーチェー侯爵が寄り親の北方商会に貸し出されていた。
一本マストの帆船でがんばっているのは、ラーコーツィ侯爵が寄り親をしている西方商会だ。
西方商会は大国プロイス王国との交易で巨大な富を稼いでいる。
でも、最近の北方商会の勢いが止まらない。
いずれ追い越すのではと囁かれている。
さて、20年前まではラーコーツィ家の港町は飛び地領として所有していたのだが、コハーリ伯爵家のお家騒動で領地を割譲されて、河口まですべてラーコーツィ領に編入された。
そのとき、王都の直轄だった半島も譲歩された。
譲歩と言えば聞こえがいいが、王国で国境警備軍をラーコーツィ領兵に委託したのだ。
広大な領地と引き換えに国防を押し付けられた。
ラーコーツィ領都はウェストゥ川が平野部に出た台地の縁に造られた都市であり、領都の脇に河が走っている。
その対岸に西領都砦を建設し、防衛の要になっている。
河を下ると、海に出た西側に港町だ。
どの町も巨大な壁に覆われておる城壁町で河を引き込んで船の往来が便利になるようにしていた。
湾を出て半島の間を抜けると外海にでる。
連山が割けて二つに分かれ、そこの外海の水が流れ込んだようなセーチェー湾は、天然の要害であった。
上下に相対する2つ伊豆半島がはさみ込みで門になっていた。
南の半島をペニンスラ(ラーコーツィ領)、北の半島をモーア(セーチェー領)と言う。
中央に伸びる山々は根元まで続いている。
根元からTの字に広がる山地がプー王国との国境になっていた。
ペニンスラ(伊豆)半島を下っていくとハコネ(箱根)の関所にぶつかるようなイメージだ。
残念ながら富士山はない。
ハコネ(箱根)の山々の東から北アルプスが直接接続しているような光景である。
つまり、プー王国がアール王国に大きな壁があった。
プー王国が攻める場合、北アルプス越えはキツい。
兵站を考えるとハコネ(箱根)越えを選択しなければならない。
ハンニバルでもなければ、アルプス越えなどという無茶はしないだろう。
ハコネ(箱根)には東峠、中央峠、西峠の三つの山道があり、すべての山をプー王国に占領していた。
山には12箇所の砦があり、これを突破しないとアール王国から逆侵攻できない。
この500年で砦は強固に作り変えられた。
対するアール王国は山の麓に6箇所の砦を作って防いでいる。
ペニンスラ半島の東側はのどかな漁村があるのに対して、西側は外海を渡ってくる防衛拠点の意味合いが濃い。
いずれにしろ、ラーコーツィ侯爵家の負担は大きかった。
また、兵力差も段違いであった。
アール王国の人口が30万人であるのに対して、プー王国は50万人もあり、家畜奴隷まで含めると、その人口差はさらに広がる。
最大兵数は10万人に対して、30万人。
常備兵は3万人に対して、10万人があった。
貴族国家、騎士国家と違いだろうか?
騎士国家では農業奴隷まで兵士なのだ。
そういう意味で同盟主国のプロイス王国が重要であった。
領地の反対側から威嚇してくれなければ、兵力差であっという間に飲み込まれかねない。
アール王国は身内で政争などやっている場合ではなかった。
しかし、30年間も大規模な戦闘がないと人々は緩んでしまい、平和ボケを満喫していた。
少し追記しよう。
半島の形は伊豆半島に似ているが、幅が100kmくらいもあり、房総半島(20km)より遥かに大きい。
夏は西風の海が雨を運び、冬は雪が降る。
半島の中央の山々は1,000mから2,000mが連なっており、3月くらいまで雪が残っている。
夏は伊豆半島で、冬は青森のような天候だ。
一年中、雨や雪があまり振らない王都とはまったく異なっていた。
半島の街道はラーコーツィ領都から山間を抜けて西の伸びる丘街道と海側を一周する海街道の2つしかない。
街道を外れると、起伏激しい山と森が立ちはだかる。
獣道は無数に存在するが、大軍が侵攻するには向いていなかった。
カロリナは領都を出ると河を下って港町で水上泊し、最初の一番近い漁村に向かった。
その漁村は港町から北に50kmも離れており、安全と思われていた。
王都の東にはイアスト川が流れ、中央領の西からラーコーツィ領にウェストゥ川が流れていた。
どちらもアール王国の東西に流れる大河であり、水運の要であった。
大河は北に流れてゆき、セーチェー湾に流れ出す。
その河口には平野と湿原地帯が広がっていた。
広大な平野。
いつか大穀倉地帯になりそうな景色が広がっていた。
しかし、農民の目にはただの原っぱにしか見えない。
春に大氾濫を起こし、河の流れが変わるような場所に誰も住まなかった。
壁もない平原で農作業など、魔物に襲ってくれと言っているようなものだ。
しかし、壁を造って河の氾濫で流されかねない。
広い手付かずの平野は兎やきつねなどの獣、ゴブリンなどの狩り場として使われた。
農民らは少し小高い丘の上に住居を構えた。
河口をでると良質な漁場となるセーチェー湾が広がる。
イアスト川とウェストゥ川から流れ出る土砂でゆっくりとセーチェー湾は埋められている。
いつか消えてしまうのだろう。
しかし、それが100年先ではない。
もっと遠い未来のことである。
イアスト川より東側がセーチェー領、
イアスト川とウェストゥ川の挟まれた所が王都領、
ウェストゥ川の河口付近がラーコーツィ領、
それぞれが港町を持っていた。
その他にも小さな漁村がいくつかあった。
王都の港町に近く、コハーリ伯爵領には大型帆船の造船所が出て賑わっており、二本マストの帆船はセーチェー侯爵が寄り親の北方商会に貸し出されていた。
一本マストの帆船でがんばっているのは、ラーコーツィ侯爵が寄り親をしている西方商会だ。
西方商会は大国プロイス王国との交易で巨大な富を稼いでいる。
でも、最近の北方商会の勢いが止まらない。
いずれ追い越すのではと囁かれている。
さて、20年前まではラーコーツィ家の港町は飛び地領として所有していたのだが、コハーリ伯爵家のお家騒動で領地を割譲されて、河口まですべてラーコーツィ領に編入された。
そのとき、王都の直轄だった半島も譲歩された。
譲歩と言えば聞こえがいいが、王国で国境警備軍をラーコーツィ領兵に委託したのだ。
広大な領地と引き換えに国防を押し付けられた。
ラーコーツィ領都はウェストゥ川が平野部に出た台地の縁に造られた都市であり、領都の脇に河が走っている。
その対岸に西領都砦を建設し、防衛の要になっている。
河を下ると、海に出た西側に港町だ。
どの町も巨大な壁に覆われておる城壁町で河を引き込んで船の往来が便利になるようにしていた。
湾を出て半島の間を抜けると外海にでる。
連山が割けて二つに分かれ、そこの外海の水が流れ込んだようなセーチェー湾は、天然の要害であった。
上下に相対する2つ伊豆半島がはさみ込みで門になっていた。
南の半島をペニンスラ(ラーコーツィ領)、北の半島をモーア(セーチェー領)と言う。
中央に伸びる山々は根元まで続いている。
根元からTの字に広がる山地がプー王国との国境になっていた。
ペニンスラ(伊豆)半島を下っていくとハコネ(箱根)の関所にぶつかるようなイメージだ。
残念ながら富士山はない。
ハコネ(箱根)の山々の東から北アルプスが直接接続しているような光景である。
つまり、プー王国がアール王国に大きな壁があった。
プー王国が攻める場合、北アルプス越えはキツい。
兵站を考えるとハコネ(箱根)越えを選択しなければならない。
ハンニバルでもなければ、アルプス越えなどという無茶はしないだろう。
ハコネ(箱根)には東峠、中央峠、西峠の三つの山道があり、すべての山をプー王国に占領していた。
山には12箇所の砦があり、これを突破しないとアール王国から逆侵攻できない。
この500年で砦は強固に作り変えられた。
対するアール王国は山の麓に6箇所の砦を作って防いでいる。
ペニンスラ半島の東側はのどかな漁村があるのに対して、西側は外海を渡ってくる防衛拠点の意味合いが濃い。
いずれにしろ、ラーコーツィ侯爵家の負担は大きかった。
また、兵力差も段違いであった。
アール王国の人口が30万人であるのに対して、プー王国は50万人もあり、家畜奴隷まで含めると、その人口差はさらに広がる。
最大兵数は10万人に対して、30万人。
常備兵は3万人に対して、10万人があった。
貴族国家、騎士国家と違いだろうか?
騎士国家では農業奴隷まで兵士なのだ。
そういう意味で同盟主国のプロイス王国が重要であった。
領地の反対側から威嚇してくれなければ、兵力差であっという間に飲み込まれかねない。
アール王国は身内で政争などやっている場合ではなかった。
しかし、30年間も大規模な戦闘がないと人々は緩んでしまい、平和ボケを満喫していた。
少し追記しよう。
半島の形は伊豆半島に似ているが、幅が100kmくらいもあり、房総半島(20km)より遥かに大きい。
夏は西風の海が雨を運び、冬は雪が降る。
半島の中央の山々は1,000mから2,000mが連なっており、3月くらいまで雪が残っている。
夏は伊豆半島で、冬は青森のような天候だ。
一年中、雨や雪があまり振らない王都とはまったく異なっていた。
半島の街道はラーコーツィ領都から山間を抜けて西の伸びる丘街道と海側を一周する海街道の2つしかない。
街道を外れると、起伏激しい山と森が立ちはだかる。
獣道は無数に存在するが、大軍が侵攻するには向いていなかった。
カロリナは領都を出ると河を下って港町で水上泊し、最初の一番近い漁村に向かった。
その漁村は港町から北に50kmも離れており、安全と思われていた。
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