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69.カロリナ、歓迎を受ける!
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カロリナが責任を感じで引き篭もった。
心の傷を受けて、誰にも会わないようになった。
その療養の為に自領に戻って治療に専念する。
一方、エリザベートも宝物庫に入ると突然に倒れた。
呪いとしか思えない原因不明の奇病で療養することになった。
こうして二人の少女が王都から消えた。
そう王宮は公式に発表された。
「領城の探検も飽きました。もういいでしょう!」
「お嬢様、ラーコーツィ領都は王都からの商人や中央領の貴族もやってきます。元気に食べ歩きなどされて困ります」
「変装すれば、大丈夫よ」
「絶対にばれますから駄目です」
「エルのいじわる」
「御自覚下さい」
あの日を境に王都ではカロリナの黒い噂が蔓延している。
奇怪な殺人事件はすべてカロリナがやった。
南の冒険者の町でもオークを呼んだのは力を見せつける為にカロリナ達の自作自演と噂されている。
そんなことになっていると王都から帰ってきたラファウが報告する。
カロリナは淡々と食事を進める。
冒険者のニナが怒っている。
「カロリナ様がそんなことをする訳がありません」
「誰だよ、北の子爵様の毒殺事件までカロリナ様がやったと言う奴は!」
「ホントです」
「怪しい事件や不可解な死因はすべてカロリナ様がやったとかおかしいぜ」
「悪意を感じる」
「誰かが意図的に流しているのでしょうね!」
「誰ですか?」
「知らない」
「ラファウ様は御存じなのでしょうか?」
「いいえ、知りません」
「でも、レフさんよりラファウ様は随分と詳しいのです?」
ニアの友人ジクが最初に同意し、冒険者仲間も一緒に批判する。
裁縫師アザが詳し過ぎるラファウを勘ぐった。
アザは商人の子だからか、情報のまとめ役になっていた。
最初は嫌々だったが、今は異国から輸入される絹などを見て回って楽しんでいる。
アザに指摘されたラファウが口の前で一指し指を立てた。
「秘密です」
「その犯人をご存知とかじゃないのでしょうね?」
「ですから、秘密ですと言っています」
当たりだった。
ラファウもアルコ商会やシャイロックに会って確認して来たとは言えない。
その噂の事件にシャイロックが関わっているのはわずかだった。
そもそも誰かを殺せとか言う指示はほとんどない。
貴族の密偵らしい調査が多い。
秘密警察のようなことをさせられていた。
拷問もほどほどにと言っておいた。
中にはラファウにとってもありがたい情報がいくつかあった。
今回の噂を出している1つは宰相のアポニー家だ。
知っているぞと脅しているのだろうか?
ところで、今年に入って指示らしいものが入らなくなったそうだ。
ある意味、自然に思えた。
今年のカロリナは正月からほとんど王都にいない。
みんながカロリナの事を心配して議論を交わしている。
ダ~ン!
カロリナがテーブルを叩いた。
「みなさん、情報収拾ご苦労さまです。明日から私も参加します」
「お嬢様、無理を言わないで下さい」
「もう20日も軟禁状態ですよ。我慢の限界です」
「出るのは拙いです」
「私も情報収拾します。食べ歩きもしたいのです。自慢話は聞き飽きました」
何も自慢話をしているのではない。
6月の社交会シーズンにこっそり王都を出ると、河を下ってラーコーツィ領都の城に入った。
城の者は歓迎してくれた。
身内が入れ替わりやって来て、カロリナを労ってくれた。
でも、10日もすれば飽きた。
悪い噂が引けば、カロリナも領都を出歩けるようになると約束してくれたが、噂は酷くなる一方であった。
もう待っていられません。
エルが必至に止めているがもう限界だった。
「仕方ない。領内の視察でもいきますか?」
「ルドヴィク、無茶を言うな!」
「大丈夫さ! 他領の貴族が徘徊せず、商人の数も限定できる場所があるだろう」
「西の開拓地か。珍しい物は何もないぞ!」
「この際、珍しい物は必要ない」
「その開拓地とはどこですか?」
「20年前に王の直轄地だった土地を下賜されました。覚えておりませんか?」
「思い出しました。未開で漁村しかなかった土地ですね」
「その通りです。5年前の開拓事業で6つ村ができました。港1つと4つ漁村と8つ村があるだけの領地です。代官を置いて管理しております」
「判りました。すぐに行きましょう!」
「お待ち下さい。準備と連絡に三日だけ頂きたい」
「三日だけですよ」
「南には国境が在って睨みあっています。本来、カロリナ様を連れてゆくような場所ではありません」
「開拓民がどういう暮らしをしているのか、興味があります」
「カロリナ様なら、そう言うと思いました」
「ルドヴィク」
「カロリナ様が町を出歩くよりマシだろう」
ラファウは今回の事件の責任を取らされて、無期限の登城禁止を言い渡された。
裏で色々と画策し過ぎた。
ゴビリン・スレイヤーの件で二階級特進が取り消され、来年の昇格も見込めないので降格と同じだ。
誰かが責任を取らないといけないと納得している。
ルドヴィクはもっと悲惨だ。
肝心な時にいなかった責任で同罪にされた。
カロリナの護衛4人のレベル上げにダンジョンに籠っていた訳であり、レヴィンの許可も貰っていた。
一人では足りないのでスケープゴートにされた。
領地からあいさつ来た祖母が永遠にカロリナに苦情を申し立てた方が、ルドヴィクにはキツかったようだ。
屋敷での護衛はイグナーツ、イェネー、クリシュトーフ、カールの四人が行っている。
レベルが28まで上がった。
ルドヴィクは30まで上げると言っている。
レベル30と言えば、貴族学校で優秀な卒業生が達するレベルだ。
本当の護衛は影達だ。
しかし、所詮は城の中なので侍女に扮して暇も持て余していた。
情報収拾はレフをリーダとする冒険パーティ『森人』の30人が行っている。
今回の同行者だ。
南の旅行では仲間外れにされたニナとジクが怒っていた。
三日後、ラファウは約束通りに船をチャーターして河を下った。
そして、そのまま海を渡って漁村に到着した。
漁港には村人が総出でカロリナを出迎えてくれた。
『カロリナ様、万歳!』
漁民達は大歓迎だった。
心の傷を受けて、誰にも会わないようになった。
その療養の為に自領に戻って治療に専念する。
一方、エリザベートも宝物庫に入ると突然に倒れた。
呪いとしか思えない原因不明の奇病で療養することになった。
こうして二人の少女が王都から消えた。
そう王宮は公式に発表された。
「領城の探検も飽きました。もういいでしょう!」
「お嬢様、ラーコーツィ領都は王都からの商人や中央領の貴族もやってきます。元気に食べ歩きなどされて困ります」
「変装すれば、大丈夫よ」
「絶対にばれますから駄目です」
「エルのいじわる」
「御自覚下さい」
あの日を境に王都ではカロリナの黒い噂が蔓延している。
奇怪な殺人事件はすべてカロリナがやった。
南の冒険者の町でもオークを呼んだのは力を見せつける為にカロリナ達の自作自演と噂されている。
そんなことになっていると王都から帰ってきたラファウが報告する。
カロリナは淡々と食事を進める。
冒険者のニナが怒っている。
「カロリナ様がそんなことをする訳がありません」
「誰だよ、北の子爵様の毒殺事件までカロリナ様がやったと言う奴は!」
「ホントです」
「怪しい事件や不可解な死因はすべてカロリナ様がやったとかおかしいぜ」
「悪意を感じる」
「誰かが意図的に流しているのでしょうね!」
「誰ですか?」
「知らない」
「ラファウ様は御存じなのでしょうか?」
「いいえ、知りません」
「でも、レフさんよりラファウ様は随分と詳しいのです?」
ニアの友人ジクが最初に同意し、冒険者仲間も一緒に批判する。
裁縫師アザが詳し過ぎるラファウを勘ぐった。
アザは商人の子だからか、情報のまとめ役になっていた。
最初は嫌々だったが、今は異国から輸入される絹などを見て回って楽しんでいる。
アザに指摘されたラファウが口の前で一指し指を立てた。
「秘密です」
「その犯人をご存知とかじゃないのでしょうね?」
「ですから、秘密ですと言っています」
当たりだった。
ラファウもアルコ商会やシャイロックに会って確認して来たとは言えない。
その噂の事件にシャイロックが関わっているのはわずかだった。
そもそも誰かを殺せとか言う指示はほとんどない。
貴族の密偵らしい調査が多い。
秘密警察のようなことをさせられていた。
拷問もほどほどにと言っておいた。
中にはラファウにとってもありがたい情報がいくつかあった。
今回の噂を出している1つは宰相のアポニー家だ。
知っているぞと脅しているのだろうか?
ところで、今年に入って指示らしいものが入らなくなったそうだ。
ある意味、自然に思えた。
今年のカロリナは正月からほとんど王都にいない。
みんながカロリナの事を心配して議論を交わしている。
ダ~ン!
カロリナがテーブルを叩いた。
「みなさん、情報収拾ご苦労さまです。明日から私も参加します」
「お嬢様、無理を言わないで下さい」
「もう20日も軟禁状態ですよ。我慢の限界です」
「出るのは拙いです」
「私も情報収拾します。食べ歩きもしたいのです。自慢話は聞き飽きました」
何も自慢話をしているのではない。
6月の社交会シーズンにこっそり王都を出ると、河を下ってラーコーツィ領都の城に入った。
城の者は歓迎してくれた。
身内が入れ替わりやって来て、カロリナを労ってくれた。
でも、10日もすれば飽きた。
悪い噂が引けば、カロリナも領都を出歩けるようになると約束してくれたが、噂は酷くなる一方であった。
もう待っていられません。
エルが必至に止めているがもう限界だった。
「仕方ない。領内の視察でもいきますか?」
「ルドヴィク、無茶を言うな!」
「大丈夫さ! 他領の貴族が徘徊せず、商人の数も限定できる場所があるだろう」
「西の開拓地か。珍しい物は何もないぞ!」
「この際、珍しい物は必要ない」
「その開拓地とはどこですか?」
「20年前に王の直轄地だった土地を下賜されました。覚えておりませんか?」
「思い出しました。未開で漁村しかなかった土地ですね」
「その通りです。5年前の開拓事業で6つ村ができました。港1つと4つ漁村と8つ村があるだけの領地です。代官を置いて管理しております」
「判りました。すぐに行きましょう!」
「お待ち下さい。準備と連絡に三日だけ頂きたい」
「三日だけですよ」
「南には国境が在って睨みあっています。本来、カロリナ様を連れてゆくような場所ではありません」
「開拓民がどういう暮らしをしているのか、興味があります」
「カロリナ様なら、そう言うと思いました」
「ルドヴィク」
「カロリナ様が町を出歩くよりマシだろう」
ラファウは今回の事件の責任を取らされて、無期限の登城禁止を言い渡された。
裏で色々と画策し過ぎた。
ゴビリン・スレイヤーの件で二階級特進が取り消され、来年の昇格も見込めないので降格と同じだ。
誰かが責任を取らないといけないと納得している。
ルドヴィクはもっと悲惨だ。
肝心な時にいなかった責任で同罪にされた。
カロリナの護衛4人のレベル上げにダンジョンに籠っていた訳であり、レヴィンの許可も貰っていた。
一人では足りないのでスケープゴートにされた。
領地からあいさつ来た祖母が永遠にカロリナに苦情を申し立てた方が、ルドヴィクにはキツかったようだ。
屋敷での護衛はイグナーツ、イェネー、クリシュトーフ、カールの四人が行っている。
レベルが28まで上がった。
ルドヴィクは30まで上げると言っている。
レベル30と言えば、貴族学校で優秀な卒業生が達するレベルだ。
本当の護衛は影達だ。
しかし、所詮は城の中なので侍女に扮して暇も持て余していた。
情報収拾はレフをリーダとする冒険パーティ『森人』の30人が行っている。
今回の同行者だ。
南の旅行では仲間外れにされたニナとジクが怒っていた。
三日後、ラファウは約束通りに船をチャーターして河を下った。
そして、そのまま海を渡って漁村に到着した。
漁港には村人が総出でカロリナを出迎えてくれた。
『カロリナ様、万歳!』
漁民達は大歓迎だった。
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