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閑話.エリザベートの当惑。
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エリザベートは報告書を見てにぎり潰した。
南方大臣の治安局に入れているエリザベートのスパイから送られてきたものであった。
大蔵省主計局から通達。
主計局は王国予算の配分を計画・立案・運営・管理を一手に行う内局の最高位だ。
従わない訳にいかない。
「姉上、どうされました?」
「麻薬の管理が強化されます」
「ミクル商会に査察が入ると言うことですか?」
「それもあるでしょうね。今回は登録制に変えるそうよ。領主、領軍から反発も予想されるので対応するように命令が来たそうよ。南方省治安局には兵もいないのにどうせよと言うのかしら?」
南方省治安局は領軍に頼んで兵を動かしている。
薬草で怪我人の痛みは減らない。
その為に麻薬を用いる。
この麻薬の量を減らすなら、治療師を寄越せと怒りそうだ。
この苦情をどうやって押さえろと?
もちろん、怒っているのはそこじゃない。
ミクル商会は前回と違って小麦の失敗から交易をはじめたのでない。
ラーコーツィ家の支援でリル王国との交易をはじめた。
密輸とは規模が違う。
当然、ポーション用の薬草と一緒に麻薬も輸入された。
麻薬はすでに広がっている。
だが、社会問題になっていない。
リル王国で麻薬の価格破壊の一大革命が起こるのは3年後、まったく違った速度で国内に麻薬が蔓延するハズだった。
町でイザコザを多発し、軍にも中毒者が広がるかもしれない。
治安が乱れる。
そこでミクル商会を告発して、連座でラーコーツィ家を陥れる。
王国最大の侯爵家を追い落とす。
カロリナの最大の後ろ盾であるご生母様は2年後に亡くなり、王妃の決定を覆せる者が無くなれば、大蔵大臣は更迭されてカロリナの婚約候補が破棄される。
今回は学園入学前に終わるように動いてみた。
そう、ゲームが始める前にライバルを蹴落とす。
その計画が見事に崩された。
一周目の記憶が残っているなら当然だろう。
エリザベートは納得もしていた。
大砲の件といい、忌々しい。
次はどんな手を打ってくるのか?
アンドラがお茶を交換するように指示を出した。
知らずに、エリザベートは顔を厳しくしていたと気づかされた。
そのお茶を飲み直してエリザベートは落ち着きを取り戻すと、見えないことを悩むのは無駄だと心を入れ替えた。
「ありがとう。落ち着いたわ!」
「ラーコーツィ家を貶めるのは失敗しましたが、姉上に地位が揺らいだ訳ではございません。可能な限り、支持者を増やしましょう」
「そうね、東領領主達はアンドラのお蔭で完全に取り込めそうね」
「いいえ、姉上の申された通りにしただけです。あれほど容易く争いを始めると思いませんでした」
東領のエスト侯爵も6年前の新規開拓事業を積極的に行った。
特にエリザベートの希望でイアスト川周辺の農地改革を南方交易所に委託された。
一部だけ新農法を取り入れたのだ。
肥溜めを作り、川から水を引き入れるなんて無駄なことをする。
『井戸の水がタダなのに、川の水を引いて代金を払う。馬鹿だろう?』
(水代ではなく、水路の管理維持費)
旧村の者たちは手間と維持費が掛かる新農法を馬鹿にした。
「身内同士、あれほど簡単に暴発すると思いませんでした」
「兄弟の方が憎しみは深いからよ」
「旧村の連中が新村を襲って小麦を盗む。そんな噂を簡単に信じると思いませんでした。兄弟なら話合えば、終わることです」
「そうね、話合えれば、終わる問題ですね。でも、口も聞きたくなかった。長男は後継ぎ、次男以下は食いっぱぐれでただ飯喰らい。兄が弟の物を取るのは当然と思っているから、弟は警戒するのでしょう。それを肌身に感じているから噂を信じた」
「次男、3男は奴隷なのですか?」
「奴隷より酷いかもしれないわね。でも、それが6年前に崩れた。次男、3男は開拓民として農民になった。兄の土地が豊作なら問題はなかったでしょう。でも、今年は違った」
「兄の畑は枯れ、弟たちの畑は豊作だった」
「マッチ一本、火事の元かしら!」
「兄に奪われるかもしれないと思った弟達が争う姿勢を見せ、馬鹿な兄達もその挑発の乗った」
「アンドラが巧く噂を流させたので、簡単に暴発してくれました」
「いいえ、僕は姉上の言われた通りにしただけです」
兄弟喧嘩の紛争が始まるとすぐに村ぐるみの紛争に拡大し、村の代表である代官同士の争いに変わった。
領内で起こった問題は領主の判断に委ねられる。
その対応がバラバラだった。
領主に対応に不平・不満も持った代官らが嫁や親戚の領主を頼る。
大領主のエスト侯爵は余り有能でない。
領主達の揉め事を放置したので、一族などを撒き込んで大混乱に陥った。
それから重い腰を上げても収拾がつかない。
エスト侯爵はエリザベートを頼った。
と言うか、そうなるように側近を誑し込んだ。
シナリオ通りだった。
主だった一族を集めさせ、エリザベートが提案を出す。
簡単に陥落した。
東領は陥落すれば、中央領も容易い。
これ以上は差を付けられたくない中央領の領主も反対できない。
そのハズだった。
交渉の席でラーコーツィ家の者がいた。
想定外である。
6月の貴族会議を待たずに折衷案を用意してきた。
「あのラファウとか言う財務官。ただ者ではないわ!」
「王妃とラーコーツィ侯爵様からの折衷案を父上に提示し、父上がお決めになられたのではどうすることもできません」
「それより、大蔵省の幹部を説得したと感心します。我が家が多数派工作したいことを見透かした一手よ」
「王都領での農地開拓独占交渉権ですね。父上も飛び付きます」
「そうね! 契約を交わした貴族は10年間、ヴォワザン家と二人三脚を強いられ、味方を増やす絶好のチャンスになります。それを承知で譲るのです。何を考えているのでしょうか?」
「しかも見返りがラーコーツィ家、セーチェー家へ新農法の技術指導では割が合わないと思います」
「指導料に金貨1万枚も付いていますしね」
「それはヴォワザン家への補填だと心得ています」
「確かに、その意味もあるのでしょう」
アンドラの言う通りだ。
国王陛下がこの度の凶作を鑑みて、その負債をすべて王宮が持つが宣言する。
領主は国王陛下に感謝するだろう。
そこで日照りに強い農法に変えると宣言する。
農地改革の強制が発生する。
いい話だ。
でも、中身は酷い。
南方交易所から王宮が借り入れ、その金で負債に当てられる。
王宮は一銅貨も出す気はない。
その金利の支払いもヴォワザン家に押し付けた。
ヴォワザン家は大損だった。
借りた負債は胡椒畑を王宮に返還させて、その儲けで返済すると言う。
エリザベートが書いたシナリオを王宮に書き換えた酷いシナリオであった。
しかも買い入れる小麦の一部として、南領・南方諸領の豊作分は相場でなく、定価で供出させる。
王宮の無茶ぶりにエリザベートも頭を抱えた。
その称賛を奪った対価がヴォワザン伯爵とエリザベートを表彰と教会へ礼状だった。
ラファウは教会にも手を回し、大司教様から許可を貰っていたので否と言うこともできない。
これが王妃から約定だった。
また、ラーコーツィ侯爵の約定には王都領における農地開拓独占交渉権を約束すると書かれていた。
しかもラーコーツィ家、セーチェー家は新農法を金貨1万枚で買い上げさせると付けて加えていた。
エリザベートの父はこれを飲んだ。
その理由は簡単だ。
中央領の貴族達はラーコーツィ家と経済的に強く睦ばれていた。
しかし、この農地開拓事業を通じで経済的にヴォワザン家が台頭すれば、エリザベート派にくら替えする。
ラーコーツィ家が過半数を維持するには、王都領の王族の支持が欠かせない。
その王都領の農地開拓独占交渉権を譲ると言う。
罠、毒まんじゅうとエリザベートの父も思い描いたが断る理由がない。
いずれにしろ、過半数工作は必要であった。
「わたくしは水道の技術や水上エレベーターなどの技術提供くらいでは割が合わないと考えます」
「僕もそう思います、ラーコーツィ家にとって最後の牙城です。負けないと思っているのでしょうか?」
「それ以外の別の理由があるのかもしれません」
「別の理由とは?」
「わたくしが知る訳もありません。でも、することは1つです」
「はい、王都領の農地改革を希望する領主を一家でも増やします」
アンドラはやる気だ。
明日の表彰の後に、国王陛下主催の晩餐会にも呼ばれた。
皆、喜んでいる。
でも、エリザベートは余り嬉しそうでなかった。
なぜなら、一周目もやはり晩餐会に呼ばれたのが12歳の秋だったのからだ。
ヴォワザン家の経済力は一周目と比べものにならない。
もっと早く晩餐会に呼ばれてもおかしくない。
でも、同じなの?
結局、同じタイムスケジュールだった。
「違う道のように思えて、同じ道を歩いているのかもしれません」
「姉上、どうされました」
「アンドラ、わたくしに何があっても驚いてはいけません」
「何か、あるのですか?」
「いいえ、嫌な予感がするだけです。何かあった場合はわたくしの机に引き出しの一番上を開けなさい」
「畏まりました。ですが、必ず、お守りします」
「期待しております」
一周目はこの辺りで有頂天になった。
調子に乗ったエリザベートは魔の森のダンジョンの罠に嵌って地下に閉じ込められた。
戻ってくると、それまでの努力が無に帰した。
「ねぇ、アンドラ。世界には1つの流れがあり、それを乱すと元に戻ろうと強制力が働くのかしら?」
「何かの文学でしょうか? そのような難しいことは判り兼ねます。トーマでもお聞き下さい」
「いいえ、別に答えが欲して聞いた訳ではないのよ」
エリザベートは窓の方を見るとまだ見ぬ遠くの空を探した。
南方大臣の治安局に入れているエリザベートのスパイから送られてきたものであった。
大蔵省主計局から通達。
主計局は王国予算の配分を計画・立案・運営・管理を一手に行う内局の最高位だ。
従わない訳にいかない。
「姉上、どうされました?」
「麻薬の管理が強化されます」
「ミクル商会に査察が入ると言うことですか?」
「それもあるでしょうね。今回は登録制に変えるそうよ。領主、領軍から反発も予想されるので対応するように命令が来たそうよ。南方省治安局には兵もいないのにどうせよと言うのかしら?」
南方省治安局は領軍に頼んで兵を動かしている。
薬草で怪我人の痛みは減らない。
その為に麻薬を用いる。
この麻薬の量を減らすなら、治療師を寄越せと怒りそうだ。
この苦情をどうやって押さえろと?
もちろん、怒っているのはそこじゃない。
ミクル商会は前回と違って小麦の失敗から交易をはじめたのでない。
ラーコーツィ家の支援でリル王国との交易をはじめた。
密輸とは規模が違う。
当然、ポーション用の薬草と一緒に麻薬も輸入された。
麻薬はすでに広がっている。
だが、社会問題になっていない。
リル王国で麻薬の価格破壊の一大革命が起こるのは3年後、まったく違った速度で国内に麻薬が蔓延するハズだった。
町でイザコザを多発し、軍にも中毒者が広がるかもしれない。
治安が乱れる。
そこでミクル商会を告発して、連座でラーコーツィ家を陥れる。
王国最大の侯爵家を追い落とす。
カロリナの最大の後ろ盾であるご生母様は2年後に亡くなり、王妃の決定を覆せる者が無くなれば、大蔵大臣は更迭されてカロリナの婚約候補が破棄される。
今回は学園入学前に終わるように動いてみた。
そう、ゲームが始める前にライバルを蹴落とす。
その計画が見事に崩された。
一周目の記憶が残っているなら当然だろう。
エリザベートは納得もしていた。
大砲の件といい、忌々しい。
次はどんな手を打ってくるのか?
アンドラがお茶を交換するように指示を出した。
知らずに、エリザベートは顔を厳しくしていたと気づかされた。
そのお茶を飲み直してエリザベートは落ち着きを取り戻すと、見えないことを悩むのは無駄だと心を入れ替えた。
「ありがとう。落ち着いたわ!」
「ラーコーツィ家を貶めるのは失敗しましたが、姉上に地位が揺らいだ訳ではございません。可能な限り、支持者を増やしましょう」
「そうね、東領領主達はアンドラのお蔭で完全に取り込めそうね」
「いいえ、姉上の申された通りにしただけです。あれほど容易く争いを始めると思いませんでした」
東領のエスト侯爵も6年前の新規開拓事業を積極的に行った。
特にエリザベートの希望でイアスト川周辺の農地改革を南方交易所に委託された。
一部だけ新農法を取り入れたのだ。
肥溜めを作り、川から水を引き入れるなんて無駄なことをする。
『井戸の水がタダなのに、川の水を引いて代金を払う。馬鹿だろう?』
(水代ではなく、水路の管理維持費)
旧村の者たちは手間と維持費が掛かる新農法を馬鹿にした。
「身内同士、あれほど簡単に暴発すると思いませんでした」
「兄弟の方が憎しみは深いからよ」
「旧村の連中が新村を襲って小麦を盗む。そんな噂を簡単に信じると思いませんでした。兄弟なら話合えば、終わることです」
「そうね、話合えれば、終わる問題ですね。でも、口も聞きたくなかった。長男は後継ぎ、次男以下は食いっぱぐれでただ飯喰らい。兄が弟の物を取るのは当然と思っているから、弟は警戒するのでしょう。それを肌身に感じているから噂を信じた」
「次男、3男は奴隷なのですか?」
「奴隷より酷いかもしれないわね。でも、それが6年前に崩れた。次男、3男は開拓民として農民になった。兄の土地が豊作なら問題はなかったでしょう。でも、今年は違った」
「兄の畑は枯れ、弟たちの畑は豊作だった」
「マッチ一本、火事の元かしら!」
「兄に奪われるかもしれないと思った弟達が争う姿勢を見せ、馬鹿な兄達もその挑発の乗った」
「アンドラが巧く噂を流させたので、簡単に暴発してくれました」
「いいえ、僕は姉上の言われた通りにしただけです」
兄弟喧嘩の紛争が始まるとすぐに村ぐるみの紛争に拡大し、村の代表である代官同士の争いに変わった。
領内で起こった問題は領主の判断に委ねられる。
その対応がバラバラだった。
領主に対応に不平・不満も持った代官らが嫁や親戚の領主を頼る。
大領主のエスト侯爵は余り有能でない。
領主達の揉め事を放置したので、一族などを撒き込んで大混乱に陥った。
それから重い腰を上げても収拾がつかない。
エスト侯爵はエリザベートを頼った。
と言うか、そうなるように側近を誑し込んだ。
シナリオ通りだった。
主だった一族を集めさせ、エリザベートが提案を出す。
簡単に陥落した。
東領は陥落すれば、中央領も容易い。
これ以上は差を付けられたくない中央領の領主も反対できない。
そのハズだった。
交渉の席でラーコーツィ家の者がいた。
想定外である。
6月の貴族会議を待たずに折衷案を用意してきた。
「あのラファウとか言う財務官。ただ者ではないわ!」
「王妃とラーコーツィ侯爵様からの折衷案を父上に提示し、父上がお決めになられたのではどうすることもできません」
「それより、大蔵省の幹部を説得したと感心します。我が家が多数派工作したいことを見透かした一手よ」
「王都領での農地開拓独占交渉権ですね。父上も飛び付きます」
「そうね! 契約を交わした貴族は10年間、ヴォワザン家と二人三脚を強いられ、味方を増やす絶好のチャンスになります。それを承知で譲るのです。何を考えているのでしょうか?」
「しかも見返りがラーコーツィ家、セーチェー家へ新農法の技術指導では割が合わないと思います」
「指導料に金貨1万枚も付いていますしね」
「それはヴォワザン家への補填だと心得ています」
「確かに、その意味もあるのでしょう」
アンドラの言う通りだ。
国王陛下がこの度の凶作を鑑みて、その負債をすべて王宮が持つが宣言する。
領主は国王陛下に感謝するだろう。
そこで日照りに強い農法に変えると宣言する。
農地改革の強制が発生する。
いい話だ。
でも、中身は酷い。
南方交易所から王宮が借り入れ、その金で負債に当てられる。
王宮は一銅貨も出す気はない。
その金利の支払いもヴォワザン家に押し付けた。
ヴォワザン家は大損だった。
借りた負債は胡椒畑を王宮に返還させて、その儲けで返済すると言う。
エリザベートが書いたシナリオを王宮に書き換えた酷いシナリオであった。
しかも買い入れる小麦の一部として、南領・南方諸領の豊作分は相場でなく、定価で供出させる。
王宮の無茶ぶりにエリザベートも頭を抱えた。
その称賛を奪った対価がヴォワザン伯爵とエリザベートを表彰と教会へ礼状だった。
ラファウは教会にも手を回し、大司教様から許可を貰っていたので否と言うこともできない。
これが王妃から約定だった。
また、ラーコーツィ侯爵の約定には王都領における農地開拓独占交渉権を約束すると書かれていた。
しかもラーコーツィ家、セーチェー家は新農法を金貨1万枚で買い上げさせると付けて加えていた。
エリザベートの父はこれを飲んだ。
その理由は簡単だ。
中央領の貴族達はラーコーツィ家と経済的に強く睦ばれていた。
しかし、この農地開拓事業を通じで経済的にヴォワザン家が台頭すれば、エリザベート派にくら替えする。
ラーコーツィ家が過半数を維持するには、王都領の王族の支持が欠かせない。
その王都領の農地開拓独占交渉権を譲ると言う。
罠、毒まんじゅうとエリザベートの父も思い描いたが断る理由がない。
いずれにしろ、過半数工作は必要であった。
「わたくしは水道の技術や水上エレベーターなどの技術提供くらいでは割が合わないと考えます」
「僕もそう思います、ラーコーツィ家にとって最後の牙城です。負けないと思っているのでしょうか?」
「それ以外の別の理由があるのかもしれません」
「別の理由とは?」
「わたくしが知る訳もありません。でも、することは1つです」
「はい、王都領の農地改革を希望する領主を一家でも増やします」
アンドラはやる気だ。
明日の表彰の後に、国王陛下主催の晩餐会にも呼ばれた。
皆、喜んでいる。
でも、エリザベートは余り嬉しそうでなかった。
なぜなら、一周目もやはり晩餐会に呼ばれたのが12歳の秋だったのからだ。
ヴォワザン家の経済力は一周目と比べものにならない。
もっと早く晩餐会に呼ばれてもおかしくない。
でも、同じなの?
結局、同じタイムスケジュールだった。
「違う道のように思えて、同じ道を歩いているのかもしれません」
「姉上、どうされました」
「アンドラ、わたくしに何があっても驚いてはいけません」
「何か、あるのですか?」
「いいえ、嫌な予感がするだけです。何かあった場合はわたくしの机に引き出しの一番上を開けなさい」
「畏まりました。ですが、必ず、お守りします」
「期待しております」
一周目はこの辺りで有頂天になった。
調子に乗ったエリザベートは魔の森のダンジョンの罠に嵌って地下に閉じ込められた。
戻ってくると、それまでの努力が無に帰した。
「ねぇ、アンドラ。世界には1つの流れがあり、それを乱すと元に戻ろうと強制力が働くのかしら?」
「何かの文学でしょうか? そのような難しいことは判り兼ねます。トーマでもお聞き下さい」
「いいえ、別に答えが欲して聞いた訳ではないのよ」
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