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閑話.タイグは浮気者。
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カロリナ達が宝具庫に案内され、服を選んでいると王の愚息ドムノが遅れて現れた。
その装備に唖然とする。
みすぼらしい皮の鎧にみすぼらしい剣だ。
だが、驚くことなかれ!
皮は皮でもヘビモスという魔獣の皮であり、防御力は一級品。
飾りもない黒々しい剣はアマダンタイトで作られた魔法剣であった。
すべて一級品。
初代王タイグの装備らしい。
「コニ。もう少しマシな格好にさせろ!」
「お嬢様の命令です。他の物をご所望なら自分で用意して下さい」
「無茶を言うな!」
「無茶なんて言っておりません。それが普通です」
初代王タイグは浮気者だったらしく。
みすぼらしい格好をさせられていた。
貴族と呼ばれる人は煌びやか衣服を身に付ける。
みすぼらしい格好をしている農夫のようなタイグを誰も王様と思わなかった。
権威に擦り寄る蠅虫を寄せ付けない苦心だった。
「王妃様も大変ね!」
「それはもうお嬢様は苦労なさいました。酒場で酒を飲めば、必ず一人の娘は家に持ち帰る人でしたから」
「お持ち帰りですか?」
「お持ち帰りです」
初代王タイグに子供が100人いたという伝説は初代王が魅力的な方であったという誇張でも何でもなく、本当に手癖の悪い男だった。
意図してやった訳ではないが、タイグの子供と結婚した夫や妻も田畑を耕せるので子沢山は重宝されることになった。
王国中に王族が広がったのも初代王の功績だ。
「子沢山はいい事ですが、その子供のその面倒を見る為にあっしらの仲間が呼ばれた訳です」
「コニさんも大変だったのね!」
「そりゃ、大変でした。100人というのも正式に妾になった25人が産んだ子供でして、名知らずの子供を含めると300人、もっとはいたかもしれません」
「どうしてそんなことに?」
「簡単です。王の女になると畑仕事ができるようになりますのさ。それに目を付けた貴族が娘や召使の女を差し出した。そして、貴族はその召使や生まれた子供を奴隷のように扱った。それに怒った妖精王が、通貨を使って人を雇う者、商売をした者に10日で死ぬ呪いを掛けた訳です。これで召使を雇うことができなくなった貴族らは、逆に召使に養って貰う弱い立場に変わり、タイグに取り巻いていた蛆虫がいなくなった訳です」
こうして最後に残った25人が王宮に入った。
この国で王族とは率先して田畑を耕す者と思われている。
現国王も田を耕している。
国務はその合間で行っている。
だが、タイグに似た王子が生まれるらしい。
特にドムノはタイグに似ているらしい。
で、仕事もせずに女を口説くドムノは王宮から追い出され、彼女達の家を転々としながら、幼馴染のアンナまで手を出してしまった。
「俺は仕事をしていないなど大きな間違いだ。俺は愛をささやくという仕事をしていた」
ドムノは自慢そうに胸を張る。
本気で女性を褒めることが仕事と思っているようだ。
それに胸を打たれる女性がいる。
幼馴染のアンナもその一人らしい。
「アンナを捨てた訳ではない。それより素晴らしい女性がいれば、その女性の為に愛をささやくのは義務だと思わないかね!」
「最低の男ね!」
「アザさんの言う通りです。最悪です」
「女性の心を満たすことが何故いけない。美しさを褒めるは男の義務だよ」
「仕事をして下さい」
「責めて、頼れる感じがないと駄目ですよね。カロリナ様」
「そうね! 頼れる感じは必要ね」
「我が君がそれを望むなら叶えよう」
「どうでもいいけど、アンブラに近づかないで!」
「何故だ?」
本気で聞いてくる。
答えようもなかった。
ともかく、愚息ドムノの評価はどこまでも低かった。
こんなのが初代王のような奴が何代かに1度現れてよくもっているものだ?
その装備に唖然とする。
みすぼらしい皮の鎧にみすぼらしい剣だ。
だが、驚くことなかれ!
皮は皮でもヘビモスという魔獣の皮であり、防御力は一級品。
飾りもない黒々しい剣はアマダンタイトで作られた魔法剣であった。
すべて一級品。
初代王タイグの装備らしい。
「コニ。もう少しマシな格好にさせろ!」
「お嬢様の命令です。他の物をご所望なら自分で用意して下さい」
「無茶を言うな!」
「無茶なんて言っておりません。それが普通です」
初代王タイグは浮気者だったらしく。
みすぼらしい格好をさせられていた。
貴族と呼ばれる人は煌びやか衣服を身に付ける。
みすぼらしい格好をしている農夫のようなタイグを誰も王様と思わなかった。
権威に擦り寄る蠅虫を寄せ付けない苦心だった。
「王妃様も大変ね!」
「それはもうお嬢様は苦労なさいました。酒場で酒を飲めば、必ず一人の娘は家に持ち帰る人でしたから」
「お持ち帰りですか?」
「お持ち帰りです」
初代王タイグに子供が100人いたという伝説は初代王が魅力的な方であったという誇張でも何でもなく、本当に手癖の悪い男だった。
意図してやった訳ではないが、タイグの子供と結婚した夫や妻も田畑を耕せるので子沢山は重宝されることになった。
王国中に王族が広がったのも初代王の功績だ。
「子沢山はいい事ですが、その子供のその面倒を見る為にあっしらの仲間が呼ばれた訳です」
「コニさんも大変だったのね!」
「そりゃ、大変でした。100人というのも正式に妾になった25人が産んだ子供でして、名知らずの子供を含めると300人、もっとはいたかもしれません」
「どうしてそんなことに?」
「簡単です。王の女になると畑仕事ができるようになりますのさ。それに目を付けた貴族が娘や召使の女を差し出した。そして、貴族はその召使や生まれた子供を奴隷のように扱った。それに怒った妖精王が、通貨を使って人を雇う者、商売をした者に10日で死ぬ呪いを掛けた訳です。これで召使を雇うことができなくなった貴族らは、逆に召使に養って貰う弱い立場に変わり、タイグに取り巻いていた蛆虫がいなくなった訳です」
こうして最後に残った25人が王宮に入った。
この国で王族とは率先して田畑を耕す者と思われている。
現国王も田を耕している。
国務はその合間で行っている。
だが、タイグに似た王子が生まれるらしい。
特にドムノはタイグに似ているらしい。
で、仕事もせずに女を口説くドムノは王宮から追い出され、彼女達の家を転々としながら、幼馴染のアンナまで手を出してしまった。
「俺は仕事をしていないなど大きな間違いだ。俺は愛をささやくという仕事をしていた」
ドムノは自慢そうに胸を張る。
本気で女性を褒めることが仕事と思っているようだ。
それに胸を打たれる女性がいる。
幼馴染のアンナもその一人らしい。
「アンナを捨てた訳ではない。それより素晴らしい女性がいれば、その女性の為に愛をささやくのは義務だと思わないかね!」
「最低の男ね!」
「アザさんの言う通りです。最悪です」
「女性の心を満たすことが何故いけない。美しさを褒めるは男の義務だよ」
「仕事をして下さい」
「責めて、頼れる感じがないと駄目ですよね。カロリナ様」
「そうね! 頼れる感じは必要ね」
「我が君がそれを望むなら叶えよう」
「どうでもいいけど、アンブラに近づかないで!」
「何故だ?」
本気で聞いてくる。
答えようもなかった。
ともかく、愚息ドムノの評価はどこまでも低かった。
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