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18.俺が駆除対象って何んですか?
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4月、魔術士がやって来ると先触れが来た?
いつもは突然にやって来る癖に今回は違った。
魔術士はリーライハン・ビルムと言う名で、魔法省外局人材発掘課セプテム地区課長という肩書きを持っていた。
セプテム地方は王国の北側にあり、フランク領のバイエルン侯爵が管理しているらしい。
母さんが知っているのはその程度だった。
翌朝、役人を連られて魔術士と担当官さんがやっていた。
その他にも魔法使いのようなローブを羽織った者と戦士が2人だ。
何だ?
役人に呼ばれ、魔法使いの前に立たされると、何かを鑑定された。
鑑定を終えると魔法使いと戦士が帰って行く。
「アルフィン・パウパー。本日はビルム様が視察を行なう。何も包み隠さず、普段の生活を行なうように命ずる。なお、こちらの質問には嘘偽りなく、正直に答えるように」
「はい」
いつもは気さくな担当官さんも黙った儘で背筋を伸ばしてキリリとしていた。
俺が質問をすると役人が反復するように魔術士に述べ、役人を介して返事が来る。
これが貴族か。
貴族は直接に平民に話さないという現実を見せられた。
俺は姉さんと一緒に畑に向かった。
菜の花畑も収穫を終えて、新しい苗が育っている途中だ。
間引いた苗は美味しく食卓に並んだ。
菜の花は2~3ヶ月で次の収穫を迎える。
油の回収はホンの僅かだった。
ほとんどが拡大した畑に捲いた。
その少しの油でも母さんは喜んだ。
賢者の知識に油を絞る魔法とかあるから便利だ。
こちらの世界では生活魔法が発達しておらず、生活魔法『清浄』ですら神官の分野であり、下手に発表すると異端の摘発を受けるかもしれないと担当官さんから言われて見送った。
油を絞る魔法も見送る予定だ。
畑に到着すると、まず水やりだ。
いつもは高速詠唱の所を短文詠唱で声を上げて発動する。
春雨のようなしとしとと降る細い雨が畑に散らばって降った。
魔術士の眉がぎゅっと寄った。
えっ、何か拙かったのか?
次に風の刃で草刈りだ。
空き地は広いので終わりそうもない。
刈った先から新しい雑草が生えてくるので終わらない気がする。
集めた草は燃やして灰にする。
灰は肥料になるので材料調達と思う事にした。
この草刈りが畑を使える条件だ。
これ以上の草刈りは必要ないが止める訳にもいかない。
日課と思って諦めている。
草刈りが終わると開墾だ。
石がゴロゴロと埋まっている土地を畑に一気に変えて行く。
1日1列。
これが俺の魔力量の限界だ。
畑にはバーベと呼ばれる薬草になる草を株分けして植えた。
バーベは元の世界のアロエだ。
アクを抜くと食べる事ができるし、お手軽な薬草としても使える。
手軽過ぎて余り金にならない。
金にならないが貧しい家では必需品らしい。
工房区で自家菜園を営む農夫がおり、その人の希望で増産する事になった。
他の野菜の育て方を教えて貰う代価だ。
空き地で子供らがやっている事は、タンポポ、ノビル、ヨモギ、ツクシなどの食べられる雑草の採取だ、
遊ぶ時間より食料集めの方が多いらしい。
林組は木の実を採るが、やっている事は同じような事だった。
ちなみに草の名前が違った。
畑では、他に小麦や豆の種、春野菜の種も植えた。
芽が出て、にゅきにょきと育っている。
農夫のお陰で失敗は防げそうだ。
農夫は開発を進めて、お茶の木を植えようと相談を受けた。
こちらは担当官さんに振った。
許可が出れば、俺は協力するというスタンスを取る。
「それで間違いございませんか?」
「俺からヤリたいと言った覚えはありません」
「開発は可能なのですか?」
「今は無理です。魔力量が増える事を祈って下さい」
「判りました。私からの質問は以上です」
魔術士や担当官さんからの質問はなかった。
何でも農業課と開発課に関係するので、それぞれに質問書の形で提出し、返事を待っているそうだ。
草刈りは開発区の課長が喜んでいたので許可が下りる公算は大きく、公園の一部に菜園場を造る方向で調整している。
だが、本格的にお茶を栽培するとなると農業課が眉を顰めた。
「どうせ、子供の遊びだ。目くじらを立てるな」
「それがどうか怪しいな」
「成功するかも判らん話だ」
「俺を騙すつもりか?」
会議の場でそんな感じの会話が飛び交ったそうだ。
農業課と開発課は犬猿の仲らしく、許可が下りるかは微妙だ。
お茶の木を植えても収穫できるのは4~5年後という。
長い。長過ぎる。
俺にヤル気はない。
農夫さんが俺の土魔法を見て、勝手にヤル気になっているだけだ。
タダで開発が進むならと開発課も乗り気だ。
だが、話は進まない。
俺もできるともできないとも言わない。
野菜の指導も熱心になっているので水は差さない。
作業が終わると子供らも帰って行く。
俺らも家に帰って昼食だ。
芋スープに具が入っていた。
主食はオートミールのような野菜煮だ。
珍しく、夕食にしか出ない黒パンが食卓にならぶ。
固い黒パンはスープに浸さないと固くて食べられない。
今日は視察と聞いて、ちゃんとした食事を与えていますと母さんも気を使ったようだ。
昼以降はノルマの写本が始まる。
まだ、汚い字だ。
清書がないと金にならない。
わら半紙に姉さんらが落書きを始めると役人がびっくりする。
俺が書いた写本紙の裏面だ。
インクが染み出て裏面は使えない。
戻って来たわら半紙に煤と粘土で作ったクレヨンで描いている。
担当官さんが説明で困っていた。
クレヨンは煙突の煤を集め、空き地で採って来た粘土と混ぜて完成だ。
紙も使えなくなったわら半紙の再利用だ。
役人が立場を忘れて担当官さんに詰め寄る。
紙とインクは非常に高いので、平民がおいそれと使える物ではない。
無償で上げるのは可怪しいと叫ぶ。
わら半紙の質が悪く、表に書くと裏にもインクが漏れてしまう。
普通の裏面は使えない。
返って来たわら半紙に俺が生活魔法『清浄』を掛けて、インクの汚れを落とす事で再利用できるようになる。
写本に再利用するには汚れていて使えないので姉さんの落書き紙とした。
最初は石板を使っていたが、石筆を買うのも馬鹿にならない。
煤はタダなのでこっちの方が安く付くのだ。
役人は試験を受けて上級職に上がってゆく。
高等科を卒業した担当官さんとスタートから違う。
仕事が終われば、資料室で試験問題を写本して家で勉強する。
わら半紙も買えないので木板を使っていると言う。
使用済みのわら半紙でいいので譲って欲しいと願っていた。
かなり切実だ。
あの使えないわら半紙で良ければ、譲るのは構わない。
だがしかし、使ったわら半紙はメモ帳に使えない。
ここにある紙を洗ったわら半紙だ。
生活魔法『清浄』の事は教会の禁忌に触れるかもしれないので喋れない。
担当官さんは困っていた。
魔術士が咳を三度ほどして、役人の頭を覚ました。
ノルマが終わると夕食であり、日が欠けるまで初級魔術書などを読んで過ごす。
日が暮れると就寝だ。
油で火を灯すような贅沢はできない。
後は俺が揺り箱に入るだけだ。
そう告げると役人は視察の終わりを告げた。
見送って就寝だ。
翌日の午後。
魔術士と担当官さんがやって来た。
頭を抱えたと口を揃えて言う。
「お前は非常識過ぎる。何度、声を出しそうになったと思う」
「どこが悪かったのですか?」
「全部だ。まず、お前はこの世界の常識を学べ。それが次の課題だ」
魔術士は俺の担当であるが、こうして足繁く家まで来る事はないらしい。
普通は町の担当官から話を聞いて終わりだ。
魔術士は生まれてくる子供が転生者であるかを確認にしている。
アルゴ王国の人口は3000万人、その内、セプテム地方の人口が400万人で、4万人の赤子が転生者かを確認する。
4万人を20人の部下と手分けして調べ、転生者を見つけると魔道具の手配をする。
この町でも1年で300人ほど生まれ、魔術士は一季節に50~100人ほどの赤子の家を回っていた。
転生者は100人に一人程度であり、魔術具を使うのは10人に一人だ。
だが、俺の生まれた時は豊富な年であり、この町で3人も輩出した。
「俺の担当地区であるセプテムは人口が400万人だ。たった20人で毎年4万人の赤子の調査をするのだ。その後の事などに構っていられると思うか?」
生まれてくる赤子を確認するだけで手一杯だそうだ。
だから、正式に訪れるのは生まれた直後と初等科に入学前のみだ。
入学前に親の代わりとして魔道具を支給してくれる。
今回のように3歳で支給するのは例外中の例外だそうだ。
「次いで言うと、忠告するのは同郷のよしみだ。他の奴らは知らん」
「ありがとうございます」
「魔術具を与えて季節一つも立たない間に魔法が使えるようになったと報告を聞いた。これがどんな意味を持つか判らんのか?」
「判りません」
「魔人ではないかと疑われた」
魔人は魔法に特化した人種に近い魔物だ。
正確に言えば、魔石を持つモノを魔物と呼び、無いモノを獣と呼ぶ。
人なのに魔石を持つ者を魔人と呼ぶ。
人だが魔物として駆除される?
「えっ、俺を駆除するのですか?」
「安心しろ。神眼を持つ者に鑑定させた。人種であり、特別なスキルもなかった。容疑は晴れた。良かったな」
「当たり前です。俺は人種です」
だから、戦士が2人も付いて来ていたのか。
ヤバかった。
担当官さんが後ろで小さくなって聞いている。
まだ、終わっていないのか?
「では聞くぞ。その魔力量は何だ? 返答次第では厄介な事になるぞ」
魔術士のおっさんが面倒臭そうに声を上げる。
ヤル気のない顔だ。
こうして魔術士の尋問が始まった。
いつもは突然にやって来る癖に今回は違った。
魔術士はリーライハン・ビルムと言う名で、魔法省外局人材発掘課セプテム地区課長という肩書きを持っていた。
セプテム地方は王国の北側にあり、フランク領のバイエルン侯爵が管理しているらしい。
母さんが知っているのはその程度だった。
翌朝、役人を連られて魔術士と担当官さんがやっていた。
その他にも魔法使いのようなローブを羽織った者と戦士が2人だ。
何だ?
役人に呼ばれ、魔法使いの前に立たされると、何かを鑑定された。
鑑定を終えると魔法使いと戦士が帰って行く。
「アルフィン・パウパー。本日はビルム様が視察を行なう。何も包み隠さず、普段の生活を行なうように命ずる。なお、こちらの質問には嘘偽りなく、正直に答えるように」
「はい」
いつもは気さくな担当官さんも黙った儘で背筋を伸ばしてキリリとしていた。
俺が質問をすると役人が反復するように魔術士に述べ、役人を介して返事が来る。
これが貴族か。
貴族は直接に平民に話さないという現実を見せられた。
俺は姉さんと一緒に畑に向かった。
菜の花畑も収穫を終えて、新しい苗が育っている途中だ。
間引いた苗は美味しく食卓に並んだ。
菜の花は2~3ヶ月で次の収穫を迎える。
油の回収はホンの僅かだった。
ほとんどが拡大した畑に捲いた。
その少しの油でも母さんは喜んだ。
賢者の知識に油を絞る魔法とかあるから便利だ。
こちらの世界では生活魔法が発達しておらず、生活魔法『清浄』ですら神官の分野であり、下手に発表すると異端の摘発を受けるかもしれないと担当官さんから言われて見送った。
油を絞る魔法も見送る予定だ。
畑に到着すると、まず水やりだ。
いつもは高速詠唱の所を短文詠唱で声を上げて発動する。
春雨のようなしとしとと降る細い雨が畑に散らばって降った。
魔術士の眉がぎゅっと寄った。
えっ、何か拙かったのか?
次に風の刃で草刈りだ。
空き地は広いので終わりそうもない。
刈った先から新しい雑草が生えてくるので終わらない気がする。
集めた草は燃やして灰にする。
灰は肥料になるので材料調達と思う事にした。
この草刈りが畑を使える条件だ。
これ以上の草刈りは必要ないが止める訳にもいかない。
日課と思って諦めている。
草刈りが終わると開墾だ。
石がゴロゴロと埋まっている土地を畑に一気に変えて行く。
1日1列。
これが俺の魔力量の限界だ。
畑にはバーベと呼ばれる薬草になる草を株分けして植えた。
バーベは元の世界のアロエだ。
アクを抜くと食べる事ができるし、お手軽な薬草としても使える。
手軽過ぎて余り金にならない。
金にならないが貧しい家では必需品らしい。
工房区で自家菜園を営む農夫がおり、その人の希望で増産する事になった。
他の野菜の育て方を教えて貰う代価だ。
空き地で子供らがやっている事は、タンポポ、ノビル、ヨモギ、ツクシなどの食べられる雑草の採取だ、
遊ぶ時間より食料集めの方が多いらしい。
林組は木の実を採るが、やっている事は同じような事だった。
ちなみに草の名前が違った。
畑では、他に小麦や豆の種、春野菜の種も植えた。
芽が出て、にゅきにょきと育っている。
農夫のお陰で失敗は防げそうだ。
農夫は開発を進めて、お茶の木を植えようと相談を受けた。
こちらは担当官さんに振った。
許可が出れば、俺は協力するというスタンスを取る。
「それで間違いございませんか?」
「俺からヤリたいと言った覚えはありません」
「開発は可能なのですか?」
「今は無理です。魔力量が増える事を祈って下さい」
「判りました。私からの質問は以上です」
魔術士や担当官さんからの質問はなかった。
何でも農業課と開発課に関係するので、それぞれに質問書の形で提出し、返事を待っているそうだ。
草刈りは開発区の課長が喜んでいたので許可が下りる公算は大きく、公園の一部に菜園場を造る方向で調整している。
だが、本格的にお茶を栽培するとなると農業課が眉を顰めた。
「どうせ、子供の遊びだ。目くじらを立てるな」
「それがどうか怪しいな」
「成功するかも判らん話だ」
「俺を騙すつもりか?」
会議の場でそんな感じの会話が飛び交ったそうだ。
農業課と開発課は犬猿の仲らしく、許可が下りるかは微妙だ。
お茶の木を植えても収穫できるのは4~5年後という。
長い。長過ぎる。
俺にヤル気はない。
農夫さんが俺の土魔法を見て、勝手にヤル気になっているだけだ。
タダで開発が進むならと開発課も乗り気だ。
だが、話は進まない。
俺もできるともできないとも言わない。
野菜の指導も熱心になっているので水は差さない。
作業が終わると子供らも帰って行く。
俺らも家に帰って昼食だ。
芋スープに具が入っていた。
主食はオートミールのような野菜煮だ。
珍しく、夕食にしか出ない黒パンが食卓にならぶ。
固い黒パンはスープに浸さないと固くて食べられない。
今日は視察と聞いて、ちゃんとした食事を与えていますと母さんも気を使ったようだ。
昼以降はノルマの写本が始まる。
まだ、汚い字だ。
清書がないと金にならない。
わら半紙に姉さんらが落書きを始めると役人がびっくりする。
俺が書いた写本紙の裏面だ。
インクが染み出て裏面は使えない。
戻って来たわら半紙に煤と粘土で作ったクレヨンで描いている。
担当官さんが説明で困っていた。
クレヨンは煙突の煤を集め、空き地で採って来た粘土と混ぜて完成だ。
紙も使えなくなったわら半紙の再利用だ。
役人が立場を忘れて担当官さんに詰め寄る。
紙とインクは非常に高いので、平民がおいそれと使える物ではない。
無償で上げるのは可怪しいと叫ぶ。
わら半紙の質が悪く、表に書くと裏にもインクが漏れてしまう。
普通の裏面は使えない。
返って来たわら半紙に俺が生活魔法『清浄』を掛けて、インクの汚れを落とす事で再利用できるようになる。
写本に再利用するには汚れていて使えないので姉さんの落書き紙とした。
最初は石板を使っていたが、石筆を買うのも馬鹿にならない。
煤はタダなのでこっちの方が安く付くのだ。
役人は試験を受けて上級職に上がってゆく。
高等科を卒業した担当官さんとスタートから違う。
仕事が終われば、資料室で試験問題を写本して家で勉強する。
わら半紙も買えないので木板を使っていると言う。
使用済みのわら半紙でいいので譲って欲しいと願っていた。
かなり切実だ。
あの使えないわら半紙で良ければ、譲るのは構わない。
だがしかし、使ったわら半紙はメモ帳に使えない。
ここにある紙を洗ったわら半紙だ。
生活魔法『清浄』の事は教会の禁忌に触れるかもしれないので喋れない。
担当官さんは困っていた。
魔術士が咳を三度ほどして、役人の頭を覚ました。
ノルマが終わると夕食であり、日が欠けるまで初級魔術書などを読んで過ごす。
日が暮れると就寝だ。
油で火を灯すような贅沢はできない。
後は俺が揺り箱に入るだけだ。
そう告げると役人は視察の終わりを告げた。
見送って就寝だ。
翌日の午後。
魔術士と担当官さんがやって来た。
頭を抱えたと口を揃えて言う。
「お前は非常識過ぎる。何度、声を出しそうになったと思う」
「どこが悪かったのですか?」
「全部だ。まず、お前はこの世界の常識を学べ。それが次の課題だ」
魔術士は俺の担当であるが、こうして足繁く家まで来る事はないらしい。
普通は町の担当官から話を聞いて終わりだ。
魔術士は生まれてくる子供が転生者であるかを確認にしている。
アルゴ王国の人口は3000万人、その内、セプテム地方の人口が400万人で、4万人の赤子が転生者かを確認する。
4万人を20人の部下と手分けして調べ、転生者を見つけると魔道具の手配をする。
この町でも1年で300人ほど生まれ、魔術士は一季節に50~100人ほどの赤子の家を回っていた。
転生者は100人に一人程度であり、魔術具を使うのは10人に一人だ。
だが、俺の生まれた時は豊富な年であり、この町で3人も輩出した。
「俺の担当地区であるセプテムは人口が400万人だ。たった20人で毎年4万人の赤子の調査をするのだ。その後の事などに構っていられると思うか?」
生まれてくる赤子を確認するだけで手一杯だそうだ。
だから、正式に訪れるのは生まれた直後と初等科に入学前のみだ。
入学前に親の代わりとして魔道具を支給してくれる。
今回のように3歳で支給するのは例外中の例外だそうだ。
「次いで言うと、忠告するのは同郷のよしみだ。他の奴らは知らん」
「ありがとうございます」
「魔術具を与えて季節一つも立たない間に魔法が使えるようになったと報告を聞いた。これがどんな意味を持つか判らんのか?」
「判りません」
「魔人ではないかと疑われた」
魔人は魔法に特化した人種に近い魔物だ。
正確に言えば、魔石を持つモノを魔物と呼び、無いモノを獣と呼ぶ。
人なのに魔石を持つ者を魔人と呼ぶ。
人だが魔物として駆除される?
「えっ、俺を駆除するのですか?」
「安心しろ。神眼を持つ者に鑑定させた。人種であり、特別なスキルもなかった。容疑は晴れた。良かったな」
「当たり前です。俺は人種です」
だから、戦士が2人も付いて来ていたのか。
ヤバかった。
担当官さんが後ろで小さくなって聞いている。
まだ、終わっていないのか?
「では聞くぞ。その魔力量は何だ? 返答次第では厄介な事になるぞ」
魔術士のおっさんが面倒臭そうに声を上げる。
ヤル気のない顔だ。
こうして魔術士の尋問が始まった。
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