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31.アーイシャの失態。
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〔シッパル男爵領都 城壁町ウェアン アーイシャ視点〕
シークとアーヘラが失踪した翌日にアラルンガル公爵令嬢が露天や店で大量の食材や資材や貴金属を買い漁っていると報告を受けて時間がないと察した。
翌日に私はわずかな手勢でウェアンに行く事にしたが、護衛騎士のイフラースが手の空いている騎士に声を掛けると15人も付いて来た。
護衛5人を含めると合計23人と大所帯になってしまった。
領都から城壁町ウェアンは30kmほどある。
少数ならば馬を走らせても良かったが、大所帯になると何事があったのかと不安がらせる。
領主に確認に走り迷惑が掛かる。
抜き打ちの視察という体裁をとって馬を少し早足で進めた。
それでも町に近づくと使者が来る。
早朝に出発したのに城壁町に近づく頃はかなり時間が掛かった。
山の麓に沿った曲がりくねった道を抜けて谷間を出ると森が見えてくる。
これが魔の森でなければ美しい光景だ。
早馬がこちらに駆けて来た。
領都へ向かう伝令であった。
緊急事態を示す、背中に黄色と赤の帯を着けていた。
ウェアンで何があった?
私の問いに使者は「魔物が、魔物が、魔物が」と繰り返すばかりで動揺していた。
騎士が何度も落ち着けと叫ぶ。
そして、使者から溢れた魔物が迫っていると聞かされた。
こんな日に限って、魔物の大量発生、スタンピードが起っているなど思いもしなかった。
最悪だ。
領内に緊急事態を敢行し、領内の騎士をすべて集める事案であった。
一分隊のみで先行する事になった。
戦う気などなかったので、私は浄化の杖も持って来ていない。
悩んでいても仕方ない。
急ごう。
私は馬を走らせた。
ウェアンの城門に見えてくると、大量の魔物が迫っているのが確認できた。
だが、その魔物が城門に届く事はない。
少数で襲ってくる魔物を一方的に殲滅していた。
高位の魔法使いが魔法で勢いを削ぎ、冒険者が残りの魔物を狩っていた。
問題があった。
その高位の魔法使いの姿が子供だった事だ。
さらに驚愕する事があった。
ウェアンの東にワイバーンの群れがいた。
「馬鹿な、複数のワイバーンだと?」
「アーイシャ様。一先ずお下がり下さい」
「サマル。ここで逃げたとあって聖女の名が泣きます」
「死んでは意味がありません」
「でも、逃げる意味があるのでしょうかしら?」
「ワイバーンですよ」
「そのワイバーンらが一人の少女が足止めしている」
「あり得ません」
ワイバーンは魔の森の魔物より恐ろしい。
一匹のワイバーンに騎士一分隊30名で戦うのが常道だ。
騎士が20人近くいるので一匹のワイバーンならば戦えない事もない。
が・・・・・・・・・・・・複数のワイバーンの群れと対峙するなど出来ない。
逃げても責める者はいないだろう。
あり得ない光景が広がっていた。
ワイバーンの群れを相手に一人で立ち向かっていた。
少女は槍のようなモノを投げており、ワイバーンが回避する。
他のワイバーンが接近してブレスを吐くと、少女がそれを躱した。
互いに決め手を欠く。
私は視力を最大に強化して眺めていた。
「魔法の使い方が巧いというのか、無茶な使い方というのか?」
「あの槍を嫌がっているようね。ワイバーンも近づこうとしません」
「ワイバーンが槍如きを恐れますか?」
「現に躱していますよ」
「そうですが・・・・・・・・・・・・?」
護衛騎士のイフラースが納得できないという声を漏らすが、その意見に私も同意だ。
決着は付かないが最悪ではない。
魔物は殲滅中であり、ワイバーンは足止め出来ている。
ここから打開する策が思いつかないだけだ。
それはワイバーンも同じだったようであり、一度、少女から距離をとって上昇した。
ぐきゃ、ぐぎゃ、ぐぎゃという声が聞こえた。
すると、くるくると回っていたワイバーンが進路を変えて、突然にこちらに向かって降下して来た。
狙いは魔物を殲滅している冒険者と子供らだった。
危ない。
私は手綱を叩いて馬を走らせた。
どうかしている。
私が行ってどうなるの?
殺されに行くようなモノじゃない。
「アーイシャ様」
「アーイシャ様」
サマルとイフラースの悲痛な叫び声が後ろから聞こえた。
手綱を引け、馬を止めろ。
本能がそう叫ぶ。
でも、手は上下に動き、手綱が馬を叩いて急げと命令している。
馬が一歩、一歩、また一歩と駆ける。
もうワイバーンと子供らの間に距離がない。
刹那!?
瞬きをした瞬間にワイバーンの首が幾つも飛び、ワイバーンの体が地面に落ちる。
うおぉぉぉと上空で叫ぶ声が聞こえ、目線を上げた。
少女の剣が天空のワイバーンの首を刎ねた。
えっ、何が起ったのぉ?
ずごごごごごぉぉぉぉぉぉ、ずどん、ずどん、ずどん!
首が飛んで巨大な死体となった体が大地に滑り込む音と天空から落ちてくる音が入り混じ、まき散らす砂埃で大変な事になっている。
衝撃波も私を通り過ぎて行った。
天空から落ちてきた少女が減速して地上に降りた。
少女が何をしたのかは判らないが、何が起ったのかは理解できた。
一瞬で九匹のワイバーンを圧勝した。
圧倒的な暴力、圧倒的な実力の差。
少女の姿をした天使か、悪魔だ。
一瞬だけ目が合って、ぶるると体が自然と震えた。
恐怖だ。
少しチビッた。
あれが聖樹の薬師、ジュリアーナ・アラルンガルなのか。
これまで数々の奇跡を起こした張本人だ。
私に匹敵する魔力の持ち主という評価は彼女に無礼だ。
これだけの圧倒的な力を保有していれば、奇跡を起こした事も不思議ではない。
大司教を束ねる総主様を越える力だった。
恐れるな。
勇気を振り絞って私は少女に近づいた。
「ジュリアーナ・アラルンガル公爵令嬢。其方に聞きたい事がある」
「別に答えても宜しいですが、その前にあれを何とかしましょう。何か良い知恵はありませんか?」
「あれ?」
東の空が黒っぽく見えた。
視力を上げると、それがワイバーンの大群だと判る。
えっ、えっ、えっっっっ~~~!?
嘘、嘘、嘘よ。
私は何度も見直した。
「(嘘よ。そんなのあり得ないわ)」
もう駄目だ。
私はワイバーンに引き裂かれて殺される。
この領地も終わりだわ。
そんな未来しか見えない。
走馬灯のように昔の景色が脳裏に映った。
多くの家臣が殺されるのを見て震える私を母が抱きしめてくれた。
母は何度も「大丈夫」と言った。
父と母が抵抗する隙に私は隠し通路を通って逃がされた。
母は我が一族の最大の魔法使いだった。
一度は逃げ切ったが追っ手に追い付かれ、剣を向けられた時に怯えてお漏らしをした。
それを嬉しそうの見ていた兵士の目が忘れられない。
イフラースが間に合って助かったが、私にあの時に誓ったのだ。
もう逃げない。
目を離さないと。
でも、生理現象は抑えられない。
恐怖に震えると下が緩む。
びびって漏らしちゃった。
はぁとすっきりさっぱりの解放感から冷静に戻れた。
オムツを付けて着てよかった。
私は臆病な儘だ。
昔と変わっていない。
「アーイシャ様は何か上級魔法が使えますか?」
「もちろんです。私が使える上級魔法は『大浄化』です」
上級魔法を使えて当然だ。
聖女と呼ばれる者が上級魔法を使えなくてどうするの?
神官が使える魔法は聖なる奇跡だ。
そう言うと、彼女は残念そうな顔をする。
ちょっと。
まさかと思うけれど、神官の私に攻撃魔法を期待したとかじゃないでしょうね。
ワイバーンが悪霊ならば消し去る事ができるけれど・・・・・・・・・・・・?
私に出来る事は祈るだけだ。
私の祈りは人を癒やし、兵の力を増し、敵の力を削ぐ。
それが私の仕事だ。
父と同じ神官だ。
母のような敵を倒す力は持っていない。
駐留軍の隊長がやって来た。
逃げろと言われて逃げられる訳がない。
もう少し言葉を選らんで欲しい。
領軍を連れて来て欲しいとか。
私らが逃げれば、ワイバーンが追って来る可能性を上がる。
シッパル男爵領は壊滅だ。
私らが逃げないからといっても他の町を見逃してくれるとは限らない。
分の悪い賭けだ。
短かったな、私の人生。
責めて、逃げなかった私を褒めて上げよう。
「アーイシャ様が考えている事は判ります」
「サマル」
「敢えて言わせて頂きます。アーイシャ様だけでも逃げて下さい」
「私に恥を掻けと言うのですか?」
「サマルの言う通りです。アーイシャ様さえおられれば、お家の再興はできます」
「イフラース。私はもう逃げないと決めた」
「アーイシャ様」
「やはり、アラルンガル公爵令嬢はアーイシャ様に災いを持って来たのですね」
「サマル。口を慎みなさい。一緒に死んでくれる仲間ではありませんか」
「アーイシャ様」
そう言いながら、首を少し傾げた。
一緒に死んでくれるのだろうか?
彼女は一緒に戦ってくれそうだが、最後まで戦ってくれるかは判らない。
ギリギリまで戦ってから逃げる気かもしれない。
彼女はそれだけの実力を持っている。
私は昔も今も無力だ。
「アーイシャ。バリスタを借りる」
「好きに使いなさい」
突然に彼女の声が軽くなった。
バリスタ程度でワイバーンが倒せるならば、もっと大量に配置していた。
何をするのかじっと見ていると、城壁の上から声を掛けて来た。
「アーイシャ。下馬して大盾の後ろで隠れていて。皆も城門の中に入って、壁に体を付けていなさい。外を見ては駄目よ」
「大盾に!? 何をするつもりですか?」
「超特大の爆裂業火を刳れてやるのよ。町の人にも大きな建物か、壁の裏に隠れるように伝達しておいて。時間がない。ワイバーンが来たら待たないわよ」
彼女はトンでもない魔法を使うようだ。
確か、母もスルパ辺境伯も使えた。
あの魔法ならば、十何体かのワイバーンを倒せる。
だがしかし、こんな大群に止められる魔法ではない。
威嚇にはなるか?
逆に怒らせるのではないだろうか?
ワイバーンの大軍が近づき、発射の合図が掛かる。
私は下馬して、光の壁を自分の前に造っておいた。
ズシャ~ン!
槍がワイバーンの大群の上に飛んで行った。
ボン!?
小さな爆発が起きると、ズゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォォォっと真っ白な信じられない閃光が光った。
次に炎の塊が広がって行く。
熱が通り過ぎ、遅れて爆音と爆風が襲って来た。
私の前も真っ白になった。
次に目が視力を取り戻すと、黒い煙が舞い上がっていた。
ワイバーンの大群が消えた。
どこにもない。
周辺の山々が燃えていた。
城門の門から見える光景は燃えている町が広がっていた。
悪夢だ。
世界のすべてが燃えている。
信じられない光景だった。
顔が爛れて燃え転がっている兵士もいる。
こっそり壁から顔を出していたのだろう。
世界を焼き尽くす恐ろしい熱風だった。
これは爆裂業火というレベルの魔法ではない。
神技だ。
「アーイシャ。飛べないワイバーンはただの豚よ」
彼女が城壁の上で叫んだ。
彼女は何を言っている?
ワイバーン・・・・・・・・・・・・そうだ、ワイバーンはどこに行った?
私は視力を上げる。
彼女が指差した方に目を凝らした。
地面でのたうち回っているワイバーンがいた。
あの高熱にヤラれ、爆風で大地に叩き付けられていた。
勝機だ。
殺すまでは至っていないが、瀕死のワイバーンなら倒せる。
私も彼女の言葉を復唱した。
『飛べないワイバーンはただの豚。騎士は私に続け!』
馬に飛び乗り、一気に駆け出した。
彼女も追い越した。
ワイバーンに近づくと下馬して杖の先に魔力を込める。
血がたぎる。
自分で攻撃するなんて初めてかもしれない。
私はワイバーンの首元を狙って打ち付けた。
撃つべし、撃つべし、撃つべし。
死に損ないが抵抗する。
大人しく、殺されろ。私に殺されろ。
撃つべし、撃つべし。
ぐちょという手応えと同時にワイバーンが抵抗を止めた。
私でも倒せた。
我に返ると、目の前に彼女がいた。
「アーイシャ。これを使いなさい」
放り投げられた剣を受け取った。
鞘を抜くと細身の銀の刃で姿を現す。
美しい剣と思うが、銀の剣ではワイバーンの鱗は裂けない。
「常に魔力を流しなさい。そうしないと簡単に折れるわよ」
魔力を流れ?
言われた通りに魔力を流すと、剣が青く光った。
この光は聖剣?
「これは!?」
「青い光・・・・・・・・・・・・」
「聖剣ですか?」
同じように聖剣を受け取っていたサマルとイフラースも声を上げた。
聖剣なんて国宝級の武器よ。
「聖剣じゃないわよ。私が作ったエセ聖剣よ。魔剣にも劣る劣化モノだけど、魔物が相手なら十分に使えるわ。こんな感じで」
さっと隣のワイバーンに近づくと彼女が剣を振るう。
力もなく、剣を下から上に上げてだけに見えた。
でも、ぽとりとワイバーンの首が落ちた。
これでエセ?
自分で造った?
彼女は恐ろしい事をさらりと言った。
彼女に言われて、すぐ横にまだ生きているワイバーンの懐に飛び込むと青い刃で首を刎ねた。
出来た。
何の抵抗もなく、ワイバーンの首が斬れた。
本物の聖剣だ。
彼女はエセ聖剣というが、この聖なる青い光は本物だった。
サマルとイフラースも聖剣でワイバーンの首を刎ね始めた。
加えて彼女は騎士に非常に高価な剣や槍を配ってくれた。
聖剣ほどの切れ味はないが、魔力を流しながら勢いを付けると一撃で斬れる。
これでワイバーンの討伐が楽になる。
さっき、ワイバーン達が彼女の槍を警戒した理由が判った。
投げていた槍は聖槍だったのだ。
彼女は「こっちをお願い」と言って山の方へ駆けていった。
任せて、これなら100匹だった倒せます。
ワイバーンの首を狩るのに夢中になっているとイフラースが声を上げた。
「アーイシャ様。何か来ます」
大きなモノが峠の向こうに降りた。
嫌な予感がした。
だが、ここのワイバーンの始末が先だ。
少し回復して逃げようとするワイバーンも現れ始めた。
だが、子供らは容赦ない魔法で狩ってゆく。
ねぇ、騎士より強くないか?
起き上がって動き出したワイバーンは騎士が3人掛かりで倒している。
子供らは近づく事もなく、火の槍、氷のギロチン、風の刃、土のスピアーを放って魔法でドンドンと倒してしまう。
騎士が一匹を始末している間に四、五匹を倒している。
しかも遊んでいるようだ。
ワイバーンを狩って戦意が高揚していた騎士達が落ち込む。
うん、判る。
私も落ち込む。
そして、終わった。
ざっと400匹のワイバーンの死体が転がる。
私は峠道に出来た小高い丘に登った。
峠の向こうには何もなかった。
何もない訳ではない。
木々の焼け跡にワイバーンが落ちて出来たと思える穴が幾つもあった。
はっきりと判る。
でも、何もない。
上空にいたワイバーンの大群は目視だが500匹はいた。
だが、私達が倒した死体は400匹未満であり、残りの100匹以上の死体が姿を消した。
そして、彼女もどこにもなかった。
町に戻ると、彼女が一度教会に足を運んだ事だけを知った。
「何故、町を救った英雄が姿を眩ますのだ」
「アーイシャ様。逃げるのは当然で御座います」
「何故だ?」
「アーイシャ様は聖樹の薬師をアラルンガル公爵令嬢と呼んでおりました」
「すでに、アーヘラから正体がバレている。向こうも承知しているだろう」
「バレた事がはっきりしたので逃げたと思われます」
「力は彼女が圧倒的だ。逃げる必要などない」
「それならば、力でこの領地ごと制圧していたでしょう」
「では、何故だ」
「存知上げません」
「うぅぅぅ・・・・・・・・・・・・私はどうすれば、良かったのだ?」
孤児の子供らが泣き叫んだり、狼狽したり、落ち込んでいた。
落ち込むのは私の方よ。
PS.彼女に失踪の原因が一ヶ月ほど後に判明した。
後始末で大わらわだった。
前代未聞のワイバーンの来襲にシッパル男爵領のみだけでなく、北の辺境地区が揺れた。
対ワイバーンへの備えが議論され、東のワイバーンが住む山への討伐が議論されていたらしい。
シッパル男爵領はそれ処ではない。
ウェアンの復興が最優先だ。
援助物資と町を復興する職人の手配など様々だ。
その合間に対策会議が練られ、貴族達に説明を要求された。
復興費は問題なかった。
400匹のワイバーンの死体があり、素材と魔石でお釣りが来る。
加えて、魔物の死体もあった。
不味い肉が大量に消費されたが、すべてを食べきれずにほとんどを燃やした。
勿体ない事だった。
そんなある日、アラルンガル公爵家の暗殺者を子供らが捕えて自白させた。
何と彼女はアラルンガル公爵家から暗殺命令を受けていたのだ。
神々の守護を受けられず、魔の森に愛された彼女を教会は邪神の使徒と認定して、排除するように命令を下したらしい。
この『らしい』と言うのは正式な命令ではないからだ。
中央の教会に問い合わせても、そんな事実はないと言っている。
彼女は実の父親から暗殺を送られ、森の奥の東の海岸でひっそりと暮らしていた。
彼女はウェアンに買い出しに来ただけだったのだ。
自分の指名手配がなかった事でウェアンに腰を落ち着けた。
だが、私らは密かに調べた事でアラルンガル公爵家に漏れてしまった。
彼女は迷惑が掛かると思って去って行ったと推測される。
私のミスだ。
彼女の安住の地を奪ってしまった。
密かに子供らと条約を結び、私は彼女いる東の海岸へ行く事を決めた。
ありがとうと御免なさいを言う為だ。
シークとアーヘラが失踪した翌日にアラルンガル公爵令嬢が露天や店で大量の食材や資材や貴金属を買い漁っていると報告を受けて時間がないと察した。
翌日に私はわずかな手勢でウェアンに行く事にしたが、護衛騎士のイフラースが手の空いている騎士に声を掛けると15人も付いて来た。
護衛5人を含めると合計23人と大所帯になってしまった。
領都から城壁町ウェアンは30kmほどある。
少数ならば馬を走らせても良かったが、大所帯になると何事があったのかと不安がらせる。
領主に確認に走り迷惑が掛かる。
抜き打ちの視察という体裁をとって馬を少し早足で進めた。
それでも町に近づくと使者が来る。
早朝に出発したのに城壁町に近づく頃はかなり時間が掛かった。
山の麓に沿った曲がりくねった道を抜けて谷間を出ると森が見えてくる。
これが魔の森でなければ美しい光景だ。
早馬がこちらに駆けて来た。
領都へ向かう伝令であった。
緊急事態を示す、背中に黄色と赤の帯を着けていた。
ウェアンで何があった?
私の問いに使者は「魔物が、魔物が、魔物が」と繰り返すばかりで動揺していた。
騎士が何度も落ち着けと叫ぶ。
そして、使者から溢れた魔物が迫っていると聞かされた。
こんな日に限って、魔物の大量発生、スタンピードが起っているなど思いもしなかった。
最悪だ。
領内に緊急事態を敢行し、領内の騎士をすべて集める事案であった。
一分隊のみで先行する事になった。
戦う気などなかったので、私は浄化の杖も持って来ていない。
悩んでいても仕方ない。
急ごう。
私は馬を走らせた。
ウェアンの城門に見えてくると、大量の魔物が迫っているのが確認できた。
だが、その魔物が城門に届く事はない。
少数で襲ってくる魔物を一方的に殲滅していた。
高位の魔法使いが魔法で勢いを削ぎ、冒険者が残りの魔物を狩っていた。
問題があった。
その高位の魔法使いの姿が子供だった事だ。
さらに驚愕する事があった。
ウェアンの東にワイバーンの群れがいた。
「馬鹿な、複数のワイバーンだと?」
「アーイシャ様。一先ずお下がり下さい」
「サマル。ここで逃げたとあって聖女の名が泣きます」
「死んでは意味がありません」
「でも、逃げる意味があるのでしょうかしら?」
「ワイバーンですよ」
「そのワイバーンらが一人の少女が足止めしている」
「あり得ません」
ワイバーンは魔の森の魔物より恐ろしい。
一匹のワイバーンに騎士一分隊30名で戦うのが常道だ。
騎士が20人近くいるので一匹のワイバーンならば戦えない事もない。
が・・・・・・・・・・・・複数のワイバーンの群れと対峙するなど出来ない。
逃げても責める者はいないだろう。
あり得ない光景が広がっていた。
ワイバーンの群れを相手に一人で立ち向かっていた。
少女は槍のようなモノを投げており、ワイバーンが回避する。
他のワイバーンが接近してブレスを吐くと、少女がそれを躱した。
互いに決め手を欠く。
私は視力を最大に強化して眺めていた。
「魔法の使い方が巧いというのか、無茶な使い方というのか?」
「あの槍を嫌がっているようね。ワイバーンも近づこうとしません」
「ワイバーンが槍如きを恐れますか?」
「現に躱していますよ」
「そうですが・・・・・・・・・・・・?」
護衛騎士のイフラースが納得できないという声を漏らすが、その意見に私も同意だ。
決着は付かないが最悪ではない。
魔物は殲滅中であり、ワイバーンは足止め出来ている。
ここから打開する策が思いつかないだけだ。
それはワイバーンも同じだったようであり、一度、少女から距離をとって上昇した。
ぐきゃ、ぐぎゃ、ぐぎゃという声が聞こえた。
すると、くるくると回っていたワイバーンが進路を変えて、突然にこちらに向かって降下して来た。
狙いは魔物を殲滅している冒険者と子供らだった。
危ない。
私は手綱を叩いて馬を走らせた。
どうかしている。
私が行ってどうなるの?
殺されに行くようなモノじゃない。
「アーイシャ様」
「アーイシャ様」
サマルとイフラースの悲痛な叫び声が後ろから聞こえた。
手綱を引け、馬を止めろ。
本能がそう叫ぶ。
でも、手は上下に動き、手綱が馬を叩いて急げと命令している。
馬が一歩、一歩、また一歩と駆ける。
もうワイバーンと子供らの間に距離がない。
刹那!?
瞬きをした瞬間にワイバーンの首が幾つも飛び、ワイバーンの体が地面に落ちる。
うおぉぉぉと上空で叫ぶ声が聞こえ、目線を上げた。
少女の剣が天空のワイバーンの首を刎ねた。
えっ、何が起ったのぉ?
ずごごごごごぉぉぉぉぉぉ、ずどん、ずどん、ずどん!
首が飛んで巨大な死体となった体が大地に滑り込む音と天空から落ちてくる音が入り混じ、まき散らす砂埃で大変な事になっている。
衝撃波も私を通り過ぎて行った。
天空から落ちてきた少女が減速して地上に降りた。
少女が何をしたのかは判らないが、何が起ったのかは理解できた。
一瞬で九匹のワイバーンを圧勝した。
圧倒的な暴力、圧倒的な実力の差。
少女の姿をした天使か、悪魔だ。
一瞬だけ目が合って、ぶるると体が自然と震えた。
恐怖だ。
少しチビッた。
あれが聖樹の薬師、ジュリアーナ・アラルンガルなのか。
これまで数々の奇跡を起こした張本人だ。
私に匹敵する魔力の持ち主という評価は彼女に無礼だ。
これだけの圧倒的な力を保有していれば、奇跡を起こした事も不思議ではない。
大司教を束ねる総主様を越える力だった。
恐れるな。
勇気を振り絞って私は少女に近づいた。
「ジュリアーナ・アラルンガル公爵令嬢。其方に聞きたい事がある」
「別に答えても宜しいですが、その前にあれを何とかしましょう。何か良い知恵はありませんか?」
「あれ?」
東の空が黒っぽく見えた。
視力を上げると、それがワイバーンの大群だと判る。
えっ、えっ、えっっっっ~~~!?
嘘、嘘、嘘よ。
私は何度も見直した。
「(嘘よ。そんなのあり得ないわ)」
もう駄目だ。
私はワイバーンに引き裂かれて殺される。
この領地も終わりだわ。
そんな未来しか見えない。
走馬灯のように昔の景色が脳裏に映った。
多くの家臣が殺されるのを見て震える私を母が抱きしめてくれた。
母は何度も「大丈夫」と言った。
父と母が抵抗する隙に私は隠し通路を通って逃がされた。
母は我が一族の最大の魔法使いだった。
一度は逃げ切ったが追っ手に追い付かれ、剣を向けられた時に怯えてお漏らしをした。
それを嬉しそうの見ていた兵士の目が忘れられない。
イフラースが間に合って助かったが、私にあの時に誓ったのだ。
もう逃げない。
目を離さないと。
でも、生理現象は抑えられない。
恐怖に震えると下が緩む。
びびって漏らしちゃった。
はぁとすっきりさっぱりの解放感から冷静に戻れた。
オムツを付けて着てよかった。
私は臆病な儘だ。
昔と変わっていない。
「アーイシャ様は何か上級魔法が使えますか?」
「もちろんです。私が使える上級魔法は『大浄化』です」
上級魔法を使えて当然だ。
聖女と呼ばれる者が上級魔法を使えなくてどうするの?
神官が使える魔法は聖なる奇跡だ。
そう言うと、彼女は残念そうな顔をする。
ちょっと。
まさかと思うけれど、神官の私に攻撃魔法を期待したとかじゃないでしょうね。
ワイバーンが悪霊ならば消し去る事ができるけれど・・・・・・・・・・・・?
私に出来る事は祈るだけだ。
私の祈りは人を癒やし、兵の力を増し、敵の力を削ぐ。
それが私の仕事だ。
父と同じ神官だ。
母のような敵を倒す力は持っていない。
駐留軍の隊長がやって来た。
逃げろと言われて逃げられる訳がない。
もう少し言葉を選らんで欲しい。
領軍を連れて来て欲しいとか。
私らが逃げれば、ワイバーンが追って来る可能性を上がる。
シッパル男爵領は壊滅だ。
私らが逃げないからといっても他の町を見逃してくれるとは限らない。
分の悪い賭けだ。
短かったな、私の人生。
責めて、逃げなかった私を褒めて上げよう。
「アーイシャ様が考えている事は判ります」
「サマル」
「敢えて言わせて頂きます。アーイシャ様だけでも逃げて下さい」
「私に恥を掻けと言うのですか?」
「サマルの言う通りです。アーイシャ様さえおられれば、お家の再興はできます」
「イフラース。私はもう逃げないと決めた」
「アーイシャ様」
「やはり、アラルンガル公爵令嬢はアーイシャ様に災いを持って来たのですね」
「サマル。口を慎みなさい。一緒に死んでくれる仲間ではありませんか」
「アーイシャ様」
そう言いながら、首を少し傾げた。
一緒に死んでくれるのだろうか?
彼女は一緒に戦ってくれそうだが、最後まで戦ってくれるかは判らない。
ギリギリまで戦ってから逃げる気かもしれない。
彼女はそれだけの実力を持っている。
私は昔も今も無力だ。
「アーイシャ。バリスタを借りる」
「好きに使いなさい」
突然に彼女の声が軽くなった。
バリスタ程度でワイバーンが倒せるならば、もっと大量に配置していた。
何をするのかじっと見ていると、城壁の上から声を掛けて来た。
「アーイシャ。下馬して大盾の後ろで隠れていて。皆も城門の中に入って、壁に体を付けていなさい。外を見ては駄目よ」
「大盾に!? 何をするつもりですか?」
「超特大の爆裂業火を刳れてやるのよ。町の人にも大きな建物か、壁の裏に隠れるように伝達しておいて。時間がない。ワイバーンが来たら待たないわよ」
彼女はトンでもない魔法を使うようだ。
確か、母もスルパ辺境伯も使えた。
あの魔法ならば、十何体かのワイバーンを倒せる。
だがしかし、こんな大群に止められる魔法ではない。
威嚇にはなるか?
逆に怒らせるのではないだろうか?
ワイバーンの大軍が近づき、発射の合図が掛かる。
私は下馬して、光の壁を自分の前に造っておいた。
ズシャ~ン!
槍がワイバーンの大群の上に飛んで行った。
ボン!?
小さな爆発が起きると、ズゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォォォっと真っ白な信じられない閃光が光った。
次に炎の塊が広がって行く。
熱が通り過ぎ、遅れて爆音と爆風が襲って来た。
私の前も真っ白になった。
次に目が視力を取り戻すと、黒い煙が舞い上がっていた。
ワイバーンの大群が消えた。
どこにもない。
周辺の山々が燃えていた。
城門の門から見える光景は燃えている町が広がっていた。
悪夢だ。
世界のすべてが燃えている。
信じられない光景だった。
顔が爛れて燃え転がっている兵士もいる。
こっそり壁から顔を出していたのだろう。
世界を焼き尽くす恐ろしい熱風だった。
これは爆裂業火というレベルの魔法ではない。
神技だ。
「アーイシャ。飛べないワイバーンはただの豚よ」
彼女が城壁の上で叫んだ。
彼女は何を言っている?
ワイバーン・・・・・・・・・・・・そうだ、ワイバーンはどこに行った?
私は視力を上げる。
彼女が指差した方に目を凝らした。
地面でのたうち回っているワイバーンがいた。
あの高熱にヤラれ、爆風で大地に叩き付けられていた。
勝機だ。
殺すまでは至っていないが、瀕死のワイバーンなら倒せる。
私も彼女の言葉を復唱した。
『飛べないワイバーンはただの豚。騎士は私に続け!』
馬に飛び乗り、一気に駆け出した。
彼女も追い越した。
ワイバーンに近づくと下馬して杖の先に魔力を込める。
血がたぎる。
自分で攻撃するなんて初めてかもしれない。
私はワイバーンの首元を狙って打ち付けた。
撃つべし、撃つべし、撃つべし。
死に損ないが抵抗する。
大人しく、殺されろ。私に殺されろ。
撃つべし、撃つべし。
ぐちょという手応えと同時にワイバーンが抵抗を止めた。
私でも倒せた。
我に返ると、目の前に彼女がいた。
「アーイシャ。これを使いなさい」
放り投げられた剣を受け取った。
鞘を抜くと細身の銀の刃で姿を現す。
美しい剣と思うが、銀の剣ではワイバーンの鱗は裂けない。
「常に魔力を流しなさい。そうしないと簡単に折れるわよ」
魔力を流れ?
言われた通りに魔力を流すと、剣が青く光った。
この光は聖剣?
「これは!?」
「青い光・・・・・・・・・・・・」
「聖剣ですか?」
同じように聖剣を受け取っていたサマルとイフラースも声を上げた。
聖剣なんて国宝級の武器よ。
「聖剣じゃないわよ。私が作ったエセ聖剣よ。魔剣にも劣る劣化モノだけど、魔物が相手なら十分に使えるわ。こんな感じで」
さっと隣のワイバーンに近づくと彼女が剣を振るう。
力もなく、剣を下から上に上げてだけに見えた。
でも、ぽとりとワイバーンの首が落ちた。
これでエセ?
自分で造った?
彼女は恐ろしい事をさらりと言った。
彼女に言われて、すぐ横にまだ生きているワイバーンの懐に飛び込むと青い刃で首を刎ねた。
出来た。
何の抵抗もなく、ワイバーンの首が斬れた。
本物の聖剣だ。
彼女はエセ聖剣というが、この聖なる青い光は本物だった。
サマルとイフラースも聖剣でワイバーンの首を刎ね始めた。
加えて彼女は騎士に非常に高価な剣や槍を配ってくれた。
聖剣ほどの切れ味はないが、魔力を流しながら勢いを付けると一撃で斬れる。
これでワイバーンの討伐が楽になる。
さっき、ワイバーン達が彼女の槍を警戒した理由が判った。
投げていた槍は聖槍だったのだ。
彼女は「こっちをお願い」と言って山の方へ駆けていった。
任せて、これなら100匹だった倒せます。
ワイバーンの首を狩るのに夢中になっているとイフラースが声を上げた。
「アーイシャ様。何か来ます」
大きなモノが峠の向こうに降りた。
嫌な予感がした。
だが、ここのワイバーンの始末が先だ。
少し回復して逃げようとするワイバーンも現れ始めた。
だが、子供らは容赦ない魔法で狩ってゆく。
ねぇ、騎士より強くないか?
起き上がって動き出したワイバーンは騎士が3人掛かりで倒している。
子供らは近づく事もなく、火の槍、氷のギロチン、風の刃、土のスピアーを放って魔法でドンドンと倒してしまう。
騎士が一匹を始末している間に四、五匹を倒している。
しかも遊んでいるようだ。
ワイバーンを狩って戦意が高揚していた騎士達が落ち込む。
うん、判る。
私も落ち込む。
そして、終わった。
ざっと400匹のワイバーンの死体が転がる。
私は峠道に出来た小高い丘に登った。
峠の向こうには何もなかった。
何もない訳ではない。
木々の焼け跡にワイバーンが落ちて出来たと思える穴が幾つもあった。
はっきりと判る。
でも、何もない。
上空にいたワイバーンの大群は目視だが500匹はいた。
だが、私達が倒した死体は400匹未満であり、残りの100匹以上の死体が姿を消した。
そして、彼女もどこにもなかった。
町に戻ると、彼女が一度教会に足を運んだ事だけを知った。
「何故、町を救った英雄が姿を眩ますのだ」
「アーイシャ様。逃げるのは当然で御座います」
「何故だ?」
「アーイシャ様は聖樹の薬師をアラルンガル公爵令嬢と呼んでおりました」
「すでに、アーヘラから正体がバレている。向こうも承知しているだろう」
「バレた事がはっきりしたので逃げたと思われます」
「力は彼女が圧倒的だ。逃げる必要などない」
「それならば、力でこの領地ごと制圧していたでしょう」
「では、何故だ」
「存知上げません」
「うぅぅぅ・・・・・・・・・・・・私はどうすれば、良かったのだ?」
孤児の子供らが泣き叫んだり、狼狽したり、落ち込んでいた。
落ち込むのは私の方よ。
PS.彼女に失踪の原因が一ヶ月ほど後に判明した。
後始末で大わらわだった。
前代未聞のワイバーンの来襲にシッパル男爵領のみだけでなく、北の辺境地区が揺れた。
対ワイバーンへの備えが議論され、東のワイバーンが住む山への討伐が議論されていたらしい。
シッパル男爵領はそれ処ではない。
ウェアンの復興が最優先だ。
援助物資と町を復興する職人の手配など様々だ。
その合間に対策会議が練られ、貴族達に説明を要求された。
復興費は問題なかった。
400匹のワイバーンの死体があり、素材と魔石でお釣りが来る。
加えて、魔物の死体もあった。
不味い肉が大量に消費されたが、すべてを食べきれずにほとんどを燃やした。
勿体ない事だった。
そんなある日、アラルンガル公爵家の暗殺者を子供らが捕えて自白させた。
何と彼女はアラルンガル公爵家から暗殺命令を受けていたのだ。
神々の守護を受けられず、魔の森に愛された彼女を教会は邪神の使徒と認定して、排除するように命令を下したらしい。
この『らしい』と言うのは正式な命令ではないからだ。
中央の教会に問い合わせても、そんな事実はないと言っている。
彼女は実の父親から暗殺を送られ、森の奥の東の海岸でひっそりと暮らしていた。
彼女はウェアンに買い出しに来ただけだったのだ。
自分の指名手配がなかった事でウェアンに腰を落ち着けた。
だが、私らは密かに調べた事でアラルンガル公爵家に漏れてしまった。
彼女は迷惑が掛かると思って去って行ったと推測される。
私のミスだ。
彼女の安住の地を奪ってしまった。
密かに子供らと条約を結び、私は彼女いる東の海岸へ行く事を決めた。
ありがとうと御免なさいを言う為だ。
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