かみたま降臨 -神様の卵が降臨、生後30分で侯爵家を追放で生命の危機とか、酷いじゃないですか?-

牛一/冬星明

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24.今日は楽しいピクニック。

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空は青空だ。
口笛を吹きつつ山を越えて行こう。
お弁当のサンドイッチを一緒に作って、子供達と一緒にピクニックだ。
東の建設現場を越えると道が無くなった。
蛇行しながら山道を上がって行く。

「ジュリ。この花は何て名前ですか?」
「さぁ、リリーは知っている?」
「花は花よ」
「はなははなですって」
「違うわよ」
「冗談よ」

白い花を咲かせたサクラソウに似た花だった。
鑑定をしても花としか表示されない。
レベル精霊がいると情報を共有するので誰かが命名すると鑑定で表示される。
レベル神のありがたみが判る。
私の解析で食草、毒草、薬草の区別は出来るが名前まで調べられない。
頂上に着くと辺り一望できた。

南に山に挟まれて魔の森が広がっている。
新しい町は二つ山の谷間に作られており、南に湖が広がって守り易い地形をしていた。

「あの山の麓でジュリと出会ったのよ」

ソリンが子供らに山の名前や出会った場所を子供らに教えていた。
子供らには私がずっと東からやって来た事を伝えている。
ワイバーンが飛ぶ。
あの恐ろしい山々の向こうからだ。

「魔物だ」

イリエが声を上げた。
私が気配で感じたのと同時だ。
かなり優秀な気配察知を覚えたようだ。
魔物は一角持ちのラビットだ。

「クロクノンだ。素早いぞ。突かれた一撃は盾も貫く」

イリエの声でヨヌツが前に出て盾を構え、ソリンとリリーが攻撃態勢を取った。
中々な連携だ。
魔の森に入った時もこの連携を欠かさない。
でも、魔物は出て来ない。
私が索敵した場所には魔物が出て来ないのは実証済みだ。
今日のピクニックより安全な薬草刈りをしていた。
魔物を狩りたくて仕方ないイリエの不満が貯まっていたのでピクニックを開催した。
今日は索敵を使っていない。
多分、索敵を使っても大丈夫と思うけど念の為だ。

うおぉぉぉぉ、イリエが走り出し、一角兎と交差する。
自然と魔力を出す事ができるようになったらしく剣先に魔力が乗っている。
新調した鉄の剣が首を一刀両断にした。

「へへへん。こんなモノだ」
「イリエ、すげぇ~~~」
「イリエ兄ちゃん。凄い、凄い、凄い」
「強かった。本当に強かったんだ」
「おまえな!?」

はしゃいでいる子供らにリリーで手を叩いて血抜きの指示を出す。
お目付役のシスターシミナはほっと胸を撫で下ろした。
ピクニックに反対したのはシミナのみだ。
門で止められたら中止と妥協してくれたのだが、その門番があのダライアス兵長だった。
兵長は私の顔を見るなり、「好きにしろ」と言って通してくれた。
シミナは「えっ、えっ、えっ」を信じられないモノを見た思いで門を出たのだ。

建設現場を警護する冒険者や傭兵は森に入らない。
激安ポーションと無縁の方々だった。
子供一団を見ても私達には興味がないようだ。
だが、作業員は教会に訪れる人が多かった。
教会のお世話になった方々や病気の治療を受けた人は寄って来た。

「聖樹様。どうされました」
「今日は皆でピクニックに行きます」
「ピクニックとは?」
「山にお散歩です」
「えっ・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・ほんき?」

皆、キョロキョロと信じられないという感じだ。
何とも言えない目で私達を見る。
でも、貧困層の彼らは天から降りてきた天使のように私を崇めている。
とても口答えなどできない。
シミナは皆の温かい目で見送られて小さくなっていた。
だがしかし、イリエが強くなったのを見て、少し安心したようだ。
私の目的はそれではない。
この周りには獲物の気配が沢山あった。
まずはあそこだ。

「ピノ、ウーママ、ガーダ。あそこに鹿が三頭します。やって仕舞いなさい」
「はい。ジュリ様」
「ジュリちゃん。任せて」
「我が深淵を見開いて見よ」

ピノが『火の矢ファイラーアロー』、ウーママが『氷の針アイスピラス』、ガーダが『風の刃ウインドカッター』を唱えた。
放たれた魔法が必中する。

「マジか?」
「凄い」
「嘘ぉ」
「ジュリ。どういう事よ」

リリーのへなちょこファイラーでは、まだ倒せない。
三人の魔法は一撃で鹿を倒した。
実験は成功だ。

「次はサラとズカーよ。それが終わったら、アリ、ミール、メドだからね」

私に懐いていた女の子が最初に魔力循環を体得して魔法を発現した。
一人が成功すると、残る女の子4人と男の子3人も成功する。
リリーが凄く悔しがった。
だが、すぐにリリーも火の魔法が発現し、続いてソリンが水を体得し、何とシスターシミナが光の魔法を手に入れた。
ここで私は成功率の高さに首を傾げた。

くぅ、くぅ、くぅとクゥちゃんにステータスを見せられてびっくりした。
子供達のステータスが門番のダライアス兵長より高くなっていた。
そして、不幸な・・・・・・・・・・・・ではなく、幸いな事に私も体力や魔力量も増大していたが、子供達が私を追い越していたのだ。
純粋なステータスだけではなく、圧倒的に高い体力と魔力量も抜かれていた。
イリエ達にもだ。
ステータスもあの騎士様らに追い付こうとしている。

イリエ達は『ジュリの従者』の称号を得ているが、これは契約なので問題ない。
契約を打ち切れば消える。
問題はこの私に懐いた五人の女の子だ。
何と『ジュリアーナの眷属』になっていた。
ジュリではなく、ジュリアーナだ。
ヤバいのですぐに隠蔽した。

この五人のステータスの伸びは非常であり、イリエ達とほとんど変わらない。
わずか5歳から8歳の子らが騎士様らに近いステータスってヤバくない。
クゥちゃんの指摘で原因はすぐにわかった。
魔力循環だ。
補助的にお風呂と家庭菜園の野菜と果実だ。
相互作用で大変な事になった。

眷属化とは神力を与える事で出来る。
それを踏まえて推測すれば、予想は簡単だ。
限界まで神力で膨らませている私の体は神力が満ちている。
今までに経験のした事だ。
この神力の体に流れる魔力も神力に汚染される。
私が魔法を使うだけで魔力にへばり付いた神力が漏れていた。
索敵で魔物が浄化された事に納得できた。
下手な浄化魔法より強力だ。
大地から瘴気を消したに違いない。
神気が消える数ヶ月は魔物が寄り付かない。
そして、瘴気が満ちるのには数年が掛かるだろう。
そんな神気を毎日浴びた子供達はご覧の通りだ。
チートだ。
レベル30からスタートする村人になってしまった。

解決策は簡単だ。
私が魔力循環の輪に入らない事で解決する。
お風呂の残り湯も危険だが、神力を吸収できる人間はいないので問題ない。
それで育った野菜や果実の影響も微々たるモノなので問題ない。
私の魔力が混ざった子らだけが問題なのだ。

すでに眷属化した5人はこの世界の神の加護を受けられないだろう。
これは責任を取るしかない。
魔力の発現した男の子3人に5人を守らせる事にした。
隠れ称号『騎士』を与え、ジュリアーナの眷属を守れと暗示を掛けておく。
という訳で、
私のしもべ四人と騎士三人には、10個のスキルをプレゼントしておいた。
有効化していないが、条件が揃うと発動する。
少しヤバいスキルも1つずつ与えた。
どうかこのスキルを使う事なく、一生を終えますように。

「どうして・・・・・・・・・・・・」
「受け入れろ」
「リリー、もっと魔法の勉強しようね」
「あの子ら、可怪しいわ」

獲物の討伐数で子供に負けたイリエ達が納得いかないという顔で町に戻った。
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