籍を入れて親子になったはずだった。え、結婚って、どういうこと?

棚から現ナマ

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27 第3部隊 ジャーク①

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ルロイが第5部隊から第3部隊に転属になった。
第3部隊は国境で紛争が起こった時に駆け付けたり、魔獣討伐に参加したりと、危険な場所での助っ人的な部署だ。

給料は段違いに高額になる。
基本給は一緒なのだが、危険手当の額が違うし、手柄を立てれば法外な報奨金が出る。
それに辺境や国境に行くために王都から離れるため、派遣手当が付く。
ルロイは未成年だが、特例として正団員扱いとなり、派遣先へと行くことが出来るようになった。

俺もルロイの転属には賛成する。
ルロイは有能だ。数カ月第5部隊にいただけで、王都の治安は爆上がりした。
隠れた場所で悪事を働こうとしても、警邏がいないかと辺りを伺ってから悪さをしても、ルロイは駆け付けてしまうのだから。

ルロイの能力を、もっと生かすべきだ。
俺も賛成する……。賛成するが、俺とフリックの二人共に第3部隊に転属させるのは違うと思う。
ルロイが『ルロイ制止担当』の言うことしか聞かないからと言って俺達を巻き込むな!
俺達は魔獣討伐なんてやったことは無いし、出来るとも思わない。
俺とフリックは、まだ新婚だというのに、これでは生きては帰れないかもしれない。
ルロイに懐かれてしまったばっかりに……。

ルロイは男同士の結婚に興味があるらしい。それはもう、もの凄く。
俺達に色々と聞きたいようだが、恥ずかしがって中々口にできないらしい。あの無表情のルロイの恥じらう姿は、元が美形なだけに、こっちがダメージを喰らってしまう。
そこまで知りたいのだから、ルロイは同性愛者なのかとも思ったが、そうじゃない。
同性愛者同士は、なんとなく分かるものだが、ルロイには、そんな気配はチラリとも無い。

ルロイは美形な上に小柄なこともあって、団員達から性的対象として見られることが多い。団長以下管理職が、総出で気を使ってはいるが、どうしても抜け穴があって、ルロイを言いくるめて手籠めにしようとする奴や、安易に襲ってしまう奴が出てくる。そりゃあもう、掃いて捨てるほど出てくる。

ルロイに敵うわけなんかないのに。
街のゴロツキどもには殴る程度で押さえているルロイだが、ルロイ曰くの『きしょい』奴らのことは、再起不能にまで叩きのめしている。
ルロイには先輩や上司に対する遠慮なんて無いし、この後の騎士団生活なんて、どうなってもいいと思っているから、手加減する気は無い。
やりすぎだが、未成年を襲った団員の方が悪いので、団員の解雇で処理は終わる。
このまま第5部隊にルロイが居続けると、団員の数が大幅に減ってしまうとの危機感からの、早々の転属なのかもしれない。


「あの、それで……。男同士って、どうやればいいのかな……」
第3部隊に配属されて、初めての鍛錬の日、休憩時間だからとフリックと練習場の外のペンチでくつろいでいると、ルロイがやって来た。

ルロイは男同士のエッチについて聞きたいらしい。
意を決したのか赤い顔をして質問をしてきたのだが、もじもじクネクネしている所を見ると、年相応に見える。
決意してまで質問なんかしくほしくはないのだが。

「男同士よりも、女の子とするのを知った方がいいんじゃないか?」
フリックが答える。
興味本位ならば、女の子相手のことを聞いた方がいいだろうに。

「父親と母親がやっているのは、何度か見たことがあるから知ってる。よくは見てないけど、男女と男同士は同じやり方でいいの? 女にはチンチン付いて無いけど?」
「あー、ちょっとというか、随分違うと言うか……」
フリックは答えづらそうだ。俺は答えない。答えたくないからソッポを向く。フリックに丸投げだ。
このままいけば、ルロイの質問は確信に迫ってくるだろうから、そうなったら恥ずか死ぬのが目に見えている。

ルロイは14歳。もうすぐ成人なのに性に関しては、すごく幼いように感じられる。同じ年頃の子ども達と猥談とかしなかったのか?

「えーっと、男同士の場合はなぁ、やる奴とやられる奴になるな」
「やる奴、やられる奴?」
「突っ込む方と、突っ込まれる方だ」
「!?」
フリックは左手の親指と人差し指で丸を作り、右手の人差し指を、その丸に出し入れしてみせる。嫌な説明方法だな。そんな仕草を見て、ルロイは衝撃を受けている。

「どっちになるのか、どうやって決めるの?」
「そりゃあ、双方の合意の元だけど、俺達の場合は、やる奴が誘って、やられる奴が待っているみたいな?」
フリックがいきなり俺に、にやけた顔を向ける。こっちを見るな。俺は待ってなんかないからな! 毎回誘われてはいるけど。
やっぱり嫌な話になってきたじゃないか。

「もう、この話は終わり。ほら、休み時間が終わるぞ!」
だから嫌だったんだよ。俺は考え込んでいるルロイを引っ張って練習場へと向かう。

「待っている……」
引っ張られているルロイが、小さく呟いていた。

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