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24 ルロイ
しおりを挟む俺は第5部隊に配属された。
城下町の治安を担う部署らしいけど、ようするに悪そうな奴を殴って掴まえればいいだけの仕事だった。
一番多いのはスリやかっぱらい、次に街中での喧嘩。
泥棒は殴る。喧嘩している奴らは、どっちが悪いかなんて分からないから、両方とも殴っておく。
なんてことのない仕事なのに、同じ団員達は『なんで、あんなに離れている犯人に追いつけるんだよ、足が速すぎる』とか『離れた場所の喧嘩に、なんで気がつくんだよ』とか言って、なかなか犯人を捕まえようとしない。
俺が犯人を捕まえても、随分と後にしかやって来ない。遅いんだよ。仕事をサボるんじゃない。
そんなある日、ヤクザ同士の抗争があった。倉庫が立ち並ぶ入り組んだ奥で起こったのだが、大通りを警邏中だった俺は気づいた。微かにだが騒いでいる声が聞こえてきたから。
駆け付けてみると20人ぐらいが騒いでいた。俺を見つけると、喧嘩していたくせに、示し合わせたように襲い掛かってきた。とりあえず全員殴って縛り上げておいた。他の団員達は、いつものように来るのが遅い。そのくせに『一人で突っ走るな』とか『こんな大勢を相手に危険だ』とか煩い。
俺が不満に思っているのが分かったのか、すぐに第3部隊という、魔獣の討伐や敵襲に対応する部署に異動になった。
移動後すぐに、ドラゴンの繁殖時期がくるとかで、ガイドロ辺境伯領に、俺の所属する第1小隊全員が連れて行かれた。
滅茶苦茶遠い場所だった。行軍で片道1ヶ月近くかかった。
初めてドラゴンを見たけど、魔の森の奥の方にも似たようなヤツがいたから、そこまで手こずるような相手じゃない。
それなのに、騎士団員や辺境伯の私兵達が大騒ぎをしている。ただのトカゲじゃん。少しデカいけど。
向かってきた3匹をまとめて仕留めた。
団員になると、給料が出るかわりに倒した魔獣は団のものになるらしい。どうせ、こんな離れた場所にいるから、トニーに肉を送るわけにもいかないし、俺に解体はできないから別にいいけど。
そう思うと、手加減なしで倒すことができたから楽だった。
ドラゴンは、その後、俺達が辺境伯領にいる間、出てくることはなかった。たったの3匹、それだけだった。
わざわざ1ヶ月近くも馬車に揺られて、こんな僻地に連れて来られたというのに。団体で行く必要なんかなかったじゃんか。
それなのにドラゴンの繁殖期が終わるまでは、辺境伯領にいてくれと、足止めをくらった。
ドラゴンの繁殖期っていつまでだ?
いつ王都に帰れるんだろうか。王都にじゃなくて、トニーの元に帰りたい。
辺境伯領にいてもやることが無い。
第1小隊の皆と私兵達とで、合同訓練をしているけど、俺はあまり参加しない。俺が子どもだからと、皆が手加減をして、誰も俺に勝とうとしないから。
これじゃあ、訓練になんかならない。
やっと繁殖期が終わったらしく、明日は王都に帰るという連絡が来た。その日の夜、辺境伯による慰労の宴が開かれた。
第1小隊の団員は勿論、私兵達や辺境伯領の貴族、関係者達が集まって、けっこう盛大なパーティーだった。
俺は初めてパーティーに参加したけど、俺がやることといったらテーブルに置いてある料理を食べることだけだ。
俺は小さい頃に両親からの虐待で食事を抜かれたりしていたから、味覚がおかしい。
美味しい、美味しくないが人とは違う。
俺が美味しいと思うのは、トニーの作ってくれた料理だけだ。それ以外は味が付いているなぁとしか感じない。腹が膨れればいい。
妙にゴテゴテとした料理を食べていると、会場の真ん中で数人が踊りだした。
パーティーって踊るものなのか? 俺は踊り方なんて知らない。というか、人前で踊ろうなんて思わない。
何人かの女の人や女の子が、一緒に踊ろうと誘いに来たけど、フルシカトしておく。
腹がある程度膨れたら帰ろう。騒がしいからパーティーは好きじゃない。
ある程度食べて、さて帰ろうかと食事テーブルから離れようとしたら。
「騎士団第3部隊第1小隊ルロイ殿、前へ!」
誰かに呼ばれた。
―――― ―――― ―――― ――――
第1部隊 近衛 王族を護る
第2部隊 王宮を護る
第3部隊 魔獣討伐や辺境、国境を護る
第4部隊 国境に駐屯している
第5部隊 王都の治安を護る
部隊ごとの規模は違います。
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