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19 ルロイ

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まずはトニーへ借金を返す。
そのためには、今まで木箱に押し込んでいた魔獣のあれこれを、ギルドに売って金を作る。

トニーが出荷用に使っている荷車を、こっそり借りる。トニーはすでに畑に行っているから、今日は使わないみたいだから、バレないだろう。
ギュウギュウ詰めの木箱は全部で5箱。家の裏から運び出す。

ギルドは隣町の中央にあり、本館と別館の2つの建物がある。本館はけっこう大きな建物で、別館は本館の裏にある。今まで何度もギルドの前を通ったことはあったけど、中に入るのは初めてだ。
まずは本館で、冒険者登録をする。
わざわざ冒険者登録なんかしなくてもいいのだが、登録者しか買い取りをしてもらえない。登録は13歳からしかできないから、13歳まで待っていた。

初めて入ったギルドは、広々としていた。手前には休憩用なのか、椅子やテーブルが何セットも置いてあり、奥にはカウンターがあって職員の人が何人も並んでいる。
いつも人で混雑しているイメージがあったけど、閑散としていた。昼に近い時間だからかな? せいぜい4、5人が壁に貼られた紙を見ているだけだ。

「あの……。冒険者登録をしたいんだけど」
「まあ、いらっしゃい。13歳になったの」
「うん」
一番手前のカウンターにいたお姉さんに登録をお願いする。

「じゃあ、登録者用紙に記入してちょうだい。文字は書ける? こちらで書いた方がいいなら、私が書いてもいいわよ」
「大丈夫」
お姉さんが渡してくれた用紙に、名前や生年月日なんかを書き込んでいく。

「はい、ちゃんと書けているわ。じゃあ、これが冒険者カードよ、無くさないようにね。無くしちゃうと再発行にお金がかかるのよ。今日はどうする? もう依頼を受ける? 依頼は壁に貼ってあるから、自分で選んでいいのよ」
お姉さんから、小さな木の板を渡される。

ギルドカードだ。名前とランクが書かれている。ランクは未成年だと “G” スタート。ランクが上がれば、カードも木の板から色々な金属に変わっていくと、お姉さんが説明してくれた。
冒険者に興味は無いから、どうでもいいけど。

「ううん。買い取ってほしい物があって来たんだ」
「買い取りなのね。じゃあ、裏に回って別館に行ってもらえる。解体や買い取りは、そこでやっているの」
俺は頷くと、別館へと向かう。

別館は本館の影になって見えなかったけど、本館よりも大きいかもしれない。入り口から中を覗くと、何人もの男性が、作業をしていた。

「どうした坊主。何か用か?」
覗き込んでいた俺に気づいたのか、手前にいたおじさんが声をかけてくれる。

「売りたい物があるんだけど」
「おお、買い取りか。もう登録はしているのか?」
「うん」
俺は貰ったばかりのギルドカードを渡す。

「それじゃカードは預かるな。品物は……。もしかして、その荷車に乗っている木箱全部か?」
「うん」
「量が多いな。おーいっ、手の空いている奴はこっちに来てくれ」
おじさんの呼びかけに数人の男の人達が集まって来る。

「じゃあ、坊主はちょっと待っていてくれ」
「うん」
俺は空になった荷車を引いて、別館の外で待つことにした。


数十分後、とぼとぼと家へと帰る。
ギルドに向かった時は、これでトニーに借金が返せると思ったのに。
もしかしたら、300万エタ以上のお金を手にすることができて、トニーにプレゼントが買えるかもしれないって、浮かれていたのに。

買い取ってもらった金額は、500エタ。木箱5箱分の金額。
ぼったくられた訳でも、子どもだと蔑ろにされたわけでもない。
俺が何も知らなかったから。

保存状態が余りにも悪すぎた。
捕ってきた品物を、ただ箱に突っ込んでいただけ。一応蓋はしていたけど、家の外に置いていたから、中に雨水が入り込んでいた。
解体の仕方なんて知らなかったから、血がついたままだし、汚れたままだった。ボロボロな上に、カビまで生えていた。
全部が商品にならなかった。

本当は0エタだったんだろうけど、せっかく子どもが持ってきたのだからと、解体係のおじさんが、ポケットマネーを出してくれたのだと思う。

俺はまだ無職のヒモのままだった。
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