籍を入れて親子になったはずだった。え、結婚って、どういうこと？

１６ ルロイ

誤算だったのは剣がそんなに長持ちしないことだ。
魔獣の血には魔素が含まれているからなのか、血がついた剣は、どんなに手入れをしても、すぐに切れなくなってしまう。
買い替える必要があるということだ。

家に持って帰る分以外の肉を売ると、結構な金を手に入れることが出来るようになってきた。その金を貯めて剣を買うことにする。
本当は先にトニーの借金を返すべきなのは分かっているけど、少し待ってもらうしかない。

武器屋の親父から、少しでもランクが上の剣を買うと長持ちするから、長い目で見たら、そっちがいいと言われた。
貯めた金全てを使って、少し上のランクの剣を買ったら、切れ味の違いにビックリした。
一角ウサギなら数匹まとめて狩ることができるようになった。

それからは、剣が駄目になる度に、より高いランクの剣を買うようにした。
一角ウサギが群れだろうと狩ることができる。徐々に森の奥へと行くことができるようになっていった。

森も少し奥に行くと、一角ウサギだけじゃなくて、色々な種類の魔獣が出てくる。コボルト（犬みたいなヤツ）やスライム。マンドラゴラ（野菜みたいなヤツ）。
でも、ここで肉になるのは一角ウサギとコボルトだけ。
スライムやマンドラゴラは食べられないから、わざわざ狩ったりしない。襲ってきたら始末するけど。

森の奥に行けば行くほど、魔獣は強くなっていく。それでも俺は森の奥へと進むようになっていった。
武器は高い。
今の俺が手にしているのは、武器屋にある剣の中では下から数えた方が早い低ランクの剣だ。
最初は肉を捕るためだけの目的だったけど、今では肉を多く売って、より高いランクの剣が欲しいと思うようになってきた。
強度、切れ味、折れにくさ、全てが違う。強い魔獣も屠ほふることができる。

今までは魔獣を仕留めて血抜きをして捌さばき、肉だけを持って帰り、肉屋に売っていた。でも、それだけだと勿体ないと肉屋の親父に言われた。
一角ウサギの角やコボルトの毛皮、マンドラゴラやスライムは本体ごと売り物になるのだと。
冒険者が牙や爪を売っているのは知っていたけど、それはギルドから依頼されて、集めているのだと思っていた。
売ることができるなんて、思いもよらなかった。

俺は狩りに行くと、それらも持てるだけ持って帰るようにした。売り物にするために。
だけど、売ることができなかった。
売りに行く先がギルドだから。
ギルドの規定では、１３歳未満とは取り引きしないとなっている。子どもが危険なことをしないようにとの配慮だ。
この地方では、成人は１５歳だが、１３歳から働きに出るのが普通だから、１３歳からギルドに登録できるようになっている。

俺は来年までギルドで物を売ることができない。
ギルド以外で売ればいいのかもしれないけど、闇取引扱いになるから、止めておいた方がいいと、肉屋の親父から止められた。

売ることはできないけど、今までは捌いた後は、その場に捨てていた物を、勿体なく感じるようになってしまい、手が空いている時は持って帰るようになった。
剣と一緒に、家の裏の木箱に隠すようになったけど、木箱がすぐにギュウギュウになってしまう。
新しく木箱を追加していたら、いつの間にか何箱という木箱が積み上げられていた。
トニーにバレないようにしないといけない。
ちょっと焦ってしまうのだった。