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10 ルロイ
しおりを挟む「ルロイ、ちょっといいか?」
「なに?」
夕飯後の茶碗洗いをしていたら、トニー兄ちゃんが俺を呼ぶ。
俺は茶碗をそのままに、手を拭きながらトニー兄ちゃんへと近づいて行く。
「今日、村長さんが来たんだが……」
「来てたね。どうしたの?」
ジルの家で一緒に遊んでいたから、トニー兄ちゃんを訪ねて村長が来ていたのは知っている。
俺を呼んだくせに、トニー兄ちゃんは俺の顔を見ない。何を言いたいのか、口ごもってしまっている。
何だろう。村長から何か言われた? 不安な気持ちが湧き上がってくる。
「役場に頼んでいた件が了承されたって、ことだったんだが……」
了承されたって何が?
トニー兄ちゃんは、まだ俺の顔を見ない。そんなに言いにくいこと?
「……もしかして。俺が邪魔になった? もう、俺はいらない?」
「違うっ。何を言っているんだ、そんなことはないっ! 絶対にないっ。ごめんな、俺の態度が悪かった」
即座にトニー兄ちゃんは否定してくれた。
そして俺の肩を抱いてくれて、一緒にソファーに座る。
「その……。えっとぉ、俺はルロイと籍を入れた。親子になったんだ」
「えっ、せ、籍を入れた……」
籍を入れたって言葉にビックリしてしまって、その後にもトニー兄ちゃんは何かを言っていたけど、耳に入ってこなかった。
だって入籍したってことは結婚したってことだろう。
俺はトニー兄ちゃんと結婚したんだ!
俺は役所には行っていない。
でも何度かトニー兄ちゃんが村長と一緒に、どこかに行っていたのは知っていた。
きっと俺はまだ子どもだから、代わりに村長が役場に入籍を頼んでくれたんだ。村長ありがとう!
じわじわと嬉しさがこみ上げてくる。
「その、何も言わずに籍を入れてしまってゴメンな……。嫌だったか?」
「いっ、嫌じゃないっ。ぜんっぜん嫌じゃない」
きっとトニー兄ちゃんは、俺が役場に行きたがっていたことを知っていたんだ。一緒にいけなかったからって、謝らなくてもいいのに。
入籍できたんだから気にしてないっ。俺はブンブンと頭を振る。
そうだ! 結婚したんだから、エッチをするんだ。
一気に顔が赤くなるのが分かる。
ジルの従兄妹のあんちゃんも、毎日頑張っているって言っていたから、結婚したらすぐにするはずだ。今晩からかな? もしかしたら今すぐ?
「お、俺っ、身体を洗ってくる!!」
いても立ってもいられなくなって、ソファーから立ち上がると、そのまま家を飛び出す。
準備をしなくちゃ。
どんな準備をすればいいのかわからないけど、裸になるのだから、身体は洗っておかないと。
外に置いてある風呂桶に水を入れようとして気づく。
風呂を沸かしていると時間がかかりすぎる。トニー兄ちゃんを待たせちゃ駄目だ。すぐにしたいって、待っているかもしれないから。
俺もエッチしたい。結婚したんだから。
俺はそのまま川に入ると、ためらいなく身体を洗い始める。
冷たいけど、顔は熱いし心臓はバクバクいっているから、全然気にならない。
大急ぎで身体中洗うけど、チンチンだけは念入りに洗う。
川から上がると、慌てて身体を拭く。
「よしっ」
扉の前でいったん立ち止まる。
今日からトニー兄ちゃんと俺は夫婦だ!
気合をいれると、家へと入って行くのだった。
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