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1 トニー
しおりを挟む※ お久しぶりです。
完結できるように頑張りますので、よろしくお願いします。
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「やった。やっと金が貯まった!」
俺は金貨の入った革袋を手に、ニヤニヤが止まらない。
金貨とは言っても、銀貨や銅貨の方が割合は多いけど、それでも300万エタ(※)貯めることができた。
俺の名前はトニー。田舎の百姓だから苗字なんか無い。
百姓とは言っても領主様から土地を借りて野菜を作っているだけの貧乏人だ。
その上、16歳の時に両親が流行病で死んでしまったから、天涯孤独の身の上ともいえる。
そんな俺だが、節約を重ねて、なんとか目標金額を貯めることができた。
これでやっと俺にも家族ができる。
俺は嬉しくて革袋を強く胸に抱きしめる。
この国は結婚するためには、両人の同意は勿論だが、嫁をもらう側が嫁の家に支度金を払う決まりがある。
金額は嫁の家のレベルや嫁本人によって決まる。
身分が高いとか、初婚なのかとか、歳が若いとか。あとは婿側のステータスも関わってくる。
夫側は嫁の家から提示された支度金に承諾し、払うことができれば嫁を迎えることができるというわけだ。
自分で彼女を作る甲斐性の無い俺は、3カ月前に村長の紹介で見合いをした。
相手は隣村の農家の三女エミーで、ややぽっちゃりとした愛嬌のある女の子だった。
歳は俺より5歳年下の17歳。ちょっと俺とは歳が離れているが、女の子の婚期の早いこの国では、結婚適齢期ど真ん中だ。
村長と一緒に隣村まで会いに行った俺のことを、エミーは気に入ってくれた。
相手の家から提示された支度金は300万エタ。妥当だと言える金額だ。
俺とは歳が離れている上に貧乏だし、俺は容姿にも恵まれていないから、まさか了承してくれるとは思っていなかった。エミーの親父さんから支度金の話が出た時は、ビックリしてしまった。
俺は大急ぎで金をかき集めた。
もともと、いつか結婚したいと思っていたから、質素倹約で貯蓄に励んでいた。それでも300万エタを集めるのに3カ月かかった。
エミーも、よく待ってくれたと思う。
支度金を払えば、俺はスッカラカンになってしまうのだが、両親と住んでいた家はあるし、結婚式は支度金を受け取った嫁側が行う。
本来は百姓だが、日雇いの仕事も探せばある。生活費に困ることはないはずだ。
すぐに結婚することができる。
今まで誰にも言ったことはなかったが、俺は寂しかったんだ。両親が死んでから、ずっと寂しかった。
だが、それももう終わりだ。やっと俺にも家族ができる。
逸る心のまま革袋を胸に抱き、俺はエミーの住む隣村へと向かうのだった。
※ エタ…… この世界の通貨。1エタ≒1円と思ってください。
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※ 本日3話投稿します。(10分ごとに投稿します)
※ お知らせ①
~8月21日(水)迄、拙作『BLゲームの世界に転生した悪役令息は、グレてしまいました』が、書店様にて、割引き(30%オフ)になります! 1300円→910円です。ぜひこの機会に、お手に取っていただけたらと思います。よろしくお願いします。
※ お知らせ②
ホームページをリューアルしました。
過去小説なんかも載せていますので、遊びに来ていただけたら嬉しいです。
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