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Ⅲ これからの魔王
七.発芽
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※ お久しぶりです。現ナマです。
本日より、また投稿を開始させていただきます。
いやぁ、今まで何をしていたんだと突っ込まれますと、記憶にないんです
よねぇ。
たぶん、ウダウダしていたと思います。
健康でしたけど……
今度こそ、最終回まで、止まることなく投稿していこうと思っております。
どうぞ、お付き合いください。
――――――― ――――――― ――――――― ―――――――
「リーリアッ」
バダンッ! という大きな音と共に、扉を大きく開け、魔王城の中へとギルフォードが駆け込んでくる。
魔王リーリアは窓辺に腰をかけ、ぼんやりと窓の外を見ていた。
実際には、リーリアの瞳には何も映ってはいないようで、心ここにあらずといった感じだ。
「リーリア……」
リーリアに知らせたいことがあり、急いで来たギルフォードだったが、勢いが無くなってしまった。
この頃のリーリアは、よくこんな風に、考え事をしているのだ。
ギルフォードが声をかけると、取り繕うように振舞うが、何をリーリアは考え込んでいるのだろう。
ギルフォードは、不安な心が徐々に大きくなっていくのだった。
「あら、ギル、気づかなかったわ、ごめんなさい。何か用?」
扉の音でなのか、ギルフォードの声でなのか、ハッとしたようにリーリアはもの思いから我に返ったように、ギルフォードへと顔を向ける。
「……うん、ドラ子の……」
ギルフォードの声は小さい。扉を開けた時は、すごくワクワクしていたのに。
「あら、ドラ子ちゃんがどうかしたの?」
「芽が出たんだ……」
「まあっ、もしかしてオフィーリア様から祝福を受けた蕾の?」
「うん」
ギルフォードの返事に、リーリアは急いで椅子から立ち上がり、小走りに外へと向かう。
前回の月次祭でポイントが満タンになったドラ子は、女神オフィーリアから祝福を受けることができた。
その時に、ドラ子の頭の葉っぱに蕾が1つできたのだ。
マンドラゴラ夫婦はその蕾から出来た種を自分たちの自宅に植えて、大切に大切に見守ってきたのだ。
なかなか芽が出ず、マンドラゴラ夫婦はヤキモキしながら、それでも待つことしか出来なかったのだが、とうとう今日、芽が出ているのが確認されたのだ。
リーリアは急いでマンドラゴラ夫婦の自宅へと向かう。
今、マンドラゴラ夫婦の自宅は、柵で囲われている。背の低いマンドラゴラ夫婦ですら、またいで入れるぐらいの低いものだ。
柵に高さは必要ない。なぜなら、この柵は、霊亀の亀助除けなのだから。
亀助は、マンドラゴラ夫婦の種から生える “もどき” が好物で、勝手に畑に入り、食べてしまう。マンドラゴラ夫婦にすれば、もどきは雑草なので、亀助に食べられる分は、どうでもいいのだが、亀助が畑に入ると、畑を荒らしてしまうのだ。
今は大切な祝福の種を植えている所なので、亀助に畑を荒らされるのは、非常に困る。それに、祝福の種から出た芽を食べられたら大変だ。そのために柵を設置したのだ。
生後30年の赤ちゃんの亀助にすれば、畑に入れないことが気に喰わないらしく、隙あらば畑に入ろうとして、トライし続けている。
今も、短い手足を使って、柵によじ登ろうとして、ラフレシアのシアに触手で、はたき落とされている。
瑞獣である亀助に対して、罰当たりな行為だが、シアには道理は通用しないので大丈夫だ。
神罰が下ろうとも、神罰と気づかなければ、イッツオールライトなのだから。
畑の外側では、マンドラゴラ夫婦が、伸びたり縮んだりと、謎の踊りを踊っていた。余りの嬉しさに、喜びの舞を踊ってしまっているらしい。
舞には見えないが。
踊るマンドラゴラ夫婦の側には、なんと女神オフィーリアまで来ており、半透明のままフワフワと飛んでいる。
オフィーリアも自分が授けた祝福の種から芽が出たことが嬉しいのだろう。
神様が気軽に顕現しているのに対して、ギルフォードがドン引きしていることに、オフィーリアは気づいているが、スル―している。
「ドラ子ちゃん、芽が出たの?」
「うきゅっ」
リーリアの問いに、マンドラゴラのドラ子は頭の葉っぱを揺らしながら大きく頷くと、畑の一角を指さした。
そこには、小さいが、それでいて今までの “もどき” とは、ぜんぜん違う双葉が風に揺れていた。
「まあまあまあ、なんて可愛らしい双葉なのかしら」
リーリアは、双葉に近づくと、そっと葉に手を伸ばす。
“パシィッ”
リーリアの指が双葉に触れようとした瞬間、リーリアの指は目に見えないものに弾かれてしまった。
「え……」
リーリアは、何故指が弾かれたのか分からず、弾かれた手を、もう片方の手で握りしめる。
周りの者達も、何が起こったのか分からず、戸惑ったようにリーリアを見ている。
「え、どうして……」
ギルフォードは小さなつぶやきをもらす。リーリアを魔王城へ呼びに行く前、ギルフォードは、マンドラゴラ夫婦の許可を貰って、双葉を撫でていたのだ。
その時は、ギルフォードの指に、くすぐったそうに双葉は揺れるだけで、決して、ギルフォードの指が弾かれることはなかったのに。
ソロリと、シアが双葉に触手を伸ばし、そっと双葉をつついてみる。
双葉はウザイと言わんばかりに、身を捩るように葉を揺らしているが、シアがつついたせいなのか、風に揺れているのかは分からない。
双葉にちょっかいをかけるシアに、マンドラゴラ夫婦がスコップで殴りかかり、シアは触手を引っ込める。
リーリアには分かった。双葉の意志によって弾かれたことが。
リーリアの手を弾いたのは魔力。
弾かれた手は未だに痺れている。それ程の強い魔力で、リーリアは弾かれたのだ。
双葉は何もなかったかのように、ピンと伸びて空を仰いでいる。
――――――― ――――――― ――――――― ―――――――
※ 2日に1度の投稿です。
次回は5/29 20:00予定です。
本日より、また投稿を開始させていただきます。
いやぁ、今まで何をしていたんだと突っ込まれますと、記憶にないんです
よねぇ。
たぶん、ウダウダしていたと思います。
健康でしたけど……
今度こそ、最終回まで、止まることなく投稿していこうと思っております。
どうぞ、お付き合いください。
――――――― ――――――― ――――――― ―――――――
「リーリアッ」
バダンッ! という大きな音と共に、扉を大きく開け、魔王城の中へとギルフォードが駆け込んでくる。
魔王リーリアは窓辺に腰をかけ、ぼんやりと窓の外を見ていた。
実際には、リーリアの瞳には何も映ってはいないようで、心ここにあらずといった感じだ。
「リーリア……」
リーリアに知らせたいことがあり、急いで来たギルフォードだったが、勢いが無くなってしまった。
この頃のリーリアは、よくこんな風に、考え事をしているのだ。
ギルフォードが声をかけると、取り繕うように振舞うが、何をリーリアは考え込んでいるのだろう。
ギルフォードは、不安な心が徐々に大きくなっていくのだった。
「あら、ギル、気づかなかったわ、ごめんなさい。何か用?」
扉の音でなのか、ギルフォードの声でなのか、ハッとしたようにリーリアはもの思いから我に返ったように、ギルフォードへと顔を向ける。
「……うん、ドラ子の……」
ギルフォードの声は小さい。扉を開けた時は、すごくワクワクしていたのに。
「あら、ドラ子ちゃんがどうかしたの?」
「芽が出たんだ……」
「まあっ、もしかしてオフィーリア様から祝福を受けた蕾の?」
「うん」
ギルフォードの返事に、リーリアは急いで椅子から立ち上がり、小走りに外へと向かう。
前回の月次祭でポイントが満タンになったドラ子は、女神オフィーリアから祝福を受けることができた。
その時に、ドラ子の頭の葉っぱに蕾が1つできたのだ。
マンドラゴラ夫婦はその蕾から出来た種を自分たちの自宅に植えて、大切に大切に見守ってきたのだ。
なかなか芽が出ず、マンドラゴラ夫婦はヤキモキしながら、それでも待つことしか出来なかったのだが、とうとう今日、芽が出ているのが確認されたのだ。
リーリアは急いでマンドラゴラ夫婦の自宅へと向かう。
今、マンドラゴラ夫婦の自宅は、柵で囲われている。背の低いマンドラゴラ夫婦ですら、またいで入れるぐらいの低いものだ。
柵に高さは必要ない。なぜなら、この柵は、霊亀の亀助除けなのだから。
亀助は、マンドラゴラ夫婦の種から生える “もどき” が好物で、勝手に畑に入り、食べてしまう。マンドラゴラ夫婦にすれば、もどきは雑草なので、亀助に食べられる分は、どうでもいいのだが、亀助が畑に入ると、畑を荒らしてしまうのだ。
今は大切な祝福の種を植えている所なので、亀助に畑を荒らされるのは、非常に困る。それに、祝福の種から出た芽を食べられたら大変だ。そのために柵を設置したのだ。
生後30年の赤ちゃんの亀助にすれば、畑に入れないことが気に喰わないらしく、隙あらば畑に入ろうとして、トライし続けている。
今も、短い手足を使って、柵によじ登ろうとして、ラフレシアのシアに触手で、はたき落とされている。
瑞獣である亀助に対して、罰当たりな行為だが、シアには道理は通用しないので大丈夫だ。
神罰が下ろうとも、神罰と気づかなければ、イッツオールライトなのだから。
畑の外側では、マンドラゴラ夫婦が、伸びたり縮んだりと、謎の踊りを踊っていた。余りの嬉しさに、喜びの舞を踊ってしまっているらしい。
舞には見えないが。
踊るマンドラゴラ夫婦の側には、なんと女神オフィーリアまで来ており、半透明のままフワフワと飛んでいる。
オフィーリアも自分が授けた祝福の種から芽が出たことが嬉しいのだろう。
神様が気軽に顕現しているのに対して、ギルフォードがドン引きしていることに、オフィーリアは気づいているが、スル―している。
「ドラ子ちゃん、芽が出たの?」
「うきゅっ」
リーリアの問いに、マンドラゴラのドラ子は頭の葉っぱを揺らしながら大きく頷くと、畑の一角を指さした。
そこには、小さいが、それでいて今までの “もどき” とは、ぜんぜん違う双葉が風に揺れていた。
「まあまあまあ、なんて可愛らしい双葉なのかしら」
リーリアは、双葉に近づくと、そっと葉に手を伸ばす。
“パシィッ”
リーリアの指が双葉に触れようとした瞬間、リーリアの指は目に見えないものに弾かれてしまった。
「え……」
リーリアは、何故指が弾かれたのか分からず、弾かれた手を、もう片方の手で握りしめる。
周りの者達も、何が起こったのか分からず、戸惑ったようにリーリアを見ている。
「え、どうして……」
ギルフォードは小さなつぶやきをもらす。リーリアを魔王城へ呼びに行く前、ギルフォードは、マンドラゴラ夫婦の許可を貰って、双葉を撫でていたのだ。
その時は、ギルフォードの指に、くすぐったそうに双葉は揺れるだけで、決して、ギルフォードの指が弾かれることはなかったのに。
ソロリと、シアが双葉に触手を伸ばし、そっと双葉をつついてみる。
双葉はウザイと言わんばかりに、身を捩るように葉を揺らしているが、シアがつついたせいなのか、風に揺れているのかは分からない。
双葉にちょっかいをかけるシアに、マンドラゴラ夫婦がスコップで殴りかかり、シアは触手を引っ込める。
リーリアには分かった。双葉の意志によって弾かれたことが。
リーリアの手を弾いたのは魔力。
弾かれた手は未だに痺れている。それ程の強い魔力で、リーリアは弾かれたのだ。
双葉は何もなかったかのように、ピンと伸びて空を仰いでいる。
――――――― ――――――― ――――――― ―――――――
※ 2日に1度の投稿です。
次回は5/29 20:00予定です。
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