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三章【がらんどうの勇者】

【7】「ひぃ〜ん!!」

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「ひぃ~ん!ちきしょ~!!!」

泣きっ面を晒して、トボトボと森を歩く。
その姿は、さしずめ成人の迷子…いや、性人の迷子か?

あ~!くそ!!何でこうなるんだよ!!
そりゃ……少し強引……いや、かなり強引だったと思うけど。

しょうがないだろうよ!!!

だって、あんなに受け入れてくれたじゃないか!!
誰だって、あんなにアプローチして、受け入れて貰えれば
有頂天になって大胆なマネするさ!!!

勘違いさせてんじゃねーよッ!!
くそったれ~ッ!!!

………いや…クールに考えてみよう、アキヒロ。

もしかして…全部勘違いだった?

一人で浮かれて気付かなかっただけで、
もしかして全部、空回りだったのかも。

そうだ……よく考えたら…ヒーリアは怪我してて…
一人じゃうまく何もできなくて、頼れる場所もあそこしかない。

しのいで耐えていたのか?…俺のセクハラに?

うわ~……死にてぇ~


「うぉ~!!!誰か俺を殺してくれぇ!!!」


「お前…よりにもよって
 それを私の前で言うか?」

突然。木の幹から現れた人間と、がっつり目が合う。
それは暗殺者のミミナミだった。

「うわわーっ!!!ちがっ!違う!!
 そういう意味で言ったんじゃないんだ!!」

「そんなに色々な意味があるか!!
 さぁ!!ようやく見つけたんだ!!
 大人しくしてもらおう!!!」

「ち……ちっきしょぉ~ッ!!!
 わかったよぉ!!殺せよぉおッ!!!」

「え?」

「もう殺せばいいだろ!!
 やっちゃいなよ!!!
 もういい!!死んでやる!!死ねば良いんだろぉ~!!!」

「ちょちょ!どうした!?
 何か嫌な事でもあったのか?
 そんな…自暴自棄になるな!!……話聞くぞ?」

「うるせーっ!!
 お前に慰められる筋合いは!!ねぇんだよ!!」

「こらっ!!自分の命を粗末にするもんじゃない!!
 命は大事なんだからな!!
 たったひとつしかないんだからな!!」

「おめぇーが言うなッ!!!
 あとベタすぎて心に響かねぇんだよ!!」

「……そんな…強く言うな……少しツラい」

「何だおまえ!!
 障子メンタルかよッ!!!」

「ひぃ~ん」

「嘘だろこいつ…な…泣くなよ」

「スキありッ!!」

「うぉおお!!いてー!!
 何すんだ!!スネを蹴るな!!スネを!!!」

意味がわからな過ぎて……
なんかもうセンチメンタルな雰囲気じゃなくなったわ。

それに、色々めんどくせーから、こいつに剣渡して帰らせよう。

この感じなら殺されたりは、しないだろう。
もう。神様とか、勇者だとか、どうでもよくなってるし。

それよりも!!

ヒーリアと仲直りして!もう一回チャレンジだ!!
そうだそうだ!!あの調子なら、あと数回言い寄れば
「仕方がないなー乳房を触らしてやろう」とか言ってきて
いちゃいちゃ出来るかも!!

……今更だけど、おっぱいの事『乳房』って言うの…なんかやだなぁ。

「なぁ、ミミナミだっけ?
 あの勇者の剣やるからさ、帰ってくんねーかな?
 命助けて貰う代わりにさ」

「うーむ。
 剣さえ貰えれば、命令は達成できるからな。それでもいいか…
 主には「人はあまり傷つけるな」と固く言われているしな」

「……なら殺そうとするなよ」

ほんとバカだなこいつ。

—————————————————————————————————————

「ただいまー」

ほんの30分程度で、トンボ帰りしたので若干気まずいけど、
そう言うネガティブな感情は、だいたい性欲がなんとかしてくれる。

ヒーリアとまた乳繰りあえるのなら、
プライドなんか簡単に捨てられる。
不思議なもんだよなぁ。

そんな俺を見たヒーリアは……

「ひぃ~ん!!…もう…帰ってこないと思ったんだぞ~!!」

泣き喚いていた。

「ごめんごめん!!
 りょっと取り乱したんだよ!!
 それよりも…なんか……色々あってさ。
 暗殺者と仲直りしたから連れてきたわ」

「いやいや……何がどうなったらそうなる?」

確かに。

はたから見ればそう思う事だろう。

はたから見なくても意味わかんないか?
あ~!ミミナミがバカって事で丸く収まらないかな~!!

さっきからバカと性欲に、希望を託し過ぎか?

「ふんッ!!このブ男の欲情する下女とやらは貴様か?
 さぞかし、ふしだらな女なのだろうな!!………あっ」

「……………………」

「……………………」

ん?…なんだこの、変な間。

「ミミナミ。今、私の事を『ふしだら』と言ったのか?」

「ぃいい!!いえ!!決してそんな事はありません!!!」

「いいや、確かに聞いたぞ」

「す…すみませんでした!!
 どうかお許しください!!
 ヒーリア様!!!」


……えっ…なに?…こいつら知り合いなの?
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