恋愛ならよそでやれ

転生したのは良いものの

　前世の記憶持ち越しで異世界に転生は、マンガや小説だけかと思っていた。


「おーい、オイゲン。臓物はあっちな」


「ｳｨｯｽ」


そんな奇跡みたいな出来事がいざ自分の身に起きた時、人はどうするか。俺は虚無の顔をする。例えばそう、冒険者の父が目の前で坦々と手慣れた様子で魔物を解体している今この時でさえ。


　おはこんばんちわ、前世なぜか妹の親友に殺された男、現在名オイゲンだ。


死んだかと思ったらまさかの異世界転生、前世では想像上の産物とされていた魔法を日常生活レベルで使い、一歩村の外にでれば当たり前のように出現する魔物を四人一組で囲み、互いに指示を出しつつ剣や斧で巧みに倒す村人達を目にして、俺は弱い八歳にして悟った。


これは鍛えなければ死んでしまうと。


なぜファンタジーにあまり興味のない俺が転生してしまったのか、考えるだけ無駄だと。それよりも自分自身を鍛えなければ、この世界で生きていくことすらできないという結論だけが頭を占めた。


幸い言動はチャラいが村一番の戦闘力を誇る冒険者の父、治療魔法が得意なのほほん母から良いとこばかりを遺伝したらしい今世の俺は、運動神経抜群だったので早速父に駆け寄り、指南を受けた。受けたんだが……現在、ご覧の通りである。


レクチャーを受け苦戦しつつ倒した魔物を解体する父の後ろでゲボを吐きまくった口を服で拭い、肩を落とす俺に容赦なく浴びせられる父の笑い声。


「これぐらいでへばってちゃ、強くなるのは夢のまた夢だな」と此方にやってきては、乱暴に頭を撫でる父の手を即座にはたき落とす。


俺からしたら公開解体というグロシーンを初めて体験、体感したのだ。皆さんは素面で見れるだろうか、牛やウサギの解体シーンを。つまりはそういうことだ、察しろ。


「生意気なヤツめ！」とくすぐってくる父と攻防しながら、俺は密かに覚悟を決めた。


せっかく異世界転生したんだ、誰にも負けない武力とやらを手に入れてみよう。男のロマンだ。己を極限まで鍛え上げる。


くすぐりまくられて呼吸困難に陥った俺を抱え、慌てて母のところまで連れて行く父をかろうじて睨みつける。


































まずはこのふざけた父から一本とることから始めよう。