恋愛ならよそでやれ

始まりは……

「ふっふっふー……」



　年子である妹（14）の誕生日当日、喜んでくれればと仕事帰りに購入したゲームカセット入りの袋を見下ろして、俺は溢れる笑みを隠しきれずにニタニタしながら帰宅を急いでいた。


側から見ればかなり怪しさ満載だが、テンションがハイになっている俺からしてみれば些細なことで。思考は相変わらず今、家にいるであろう妹のことばかり。


生意気盛りながらも歳の離れた俺を邪険にせずツンケンしつつ慕ってくれる妹に今現在、兄である俺はかなり夢中である。


共働きの両親を見兼ね、妹が赤ん坊の頃から進んで面倒見ていたこともあり世間一般的な兄妹よりは仲が良いと自負している分、余計その可愛がりは増している。


さすがに今年３０にもなって、恋人もつくらず仕事と妹のことばかりで、自分自身を全く顧みない俺を両親は心配していたが（最近早く孫を見せろコールが半端ない）こっちからしてみれば、趣味＝妹可愛がりなので余計なお世話だ。シスコンは良いぞ！



妹の喜ぶ顔がみたいが故に始めた毎年恒例のサプライズも、今年は不況の影響でが減ったり増えたりする従業員の教育に対応を追われ（因みに俺はとあるスーパーの店長だったりする。これ余談ね）今年は泣く泣く断念することになり、せめてもの…とプレミアム盤の特典付きゲームカセットを購入したのが、今現在の状況である。


……妹の喜ぶ顔が目に浮かぶ、と信号待ちでソワソワ浮かれていたのが今にして思えば悪かったのか。



「、っえ…？」



背中に伝わる衝撃に一瞬、反応が遅れた。


後ろから押された、と気がついた瞬間……視界の先に飛び込んだのは、こちらへ迫る軽トラックと絶句する運転手。


そして、俺を突き飛ばしたであろう女の……薄暗く歪んだ笑顔。


あまりにも見覚えのあるその顔は、確か妹の友達の……。


止まった思考回路が動く、前に与えられた痛みと、再びの衝撃。


一回転して叩きつけられた眼に映るのは、どこまでも暗い夜空で。


凡そ体験したことない痛みと、徐々に冷たくなっていく自身の身体を他人事のように感じながら、あぁ…これは、と目を閉じた。



…もう痛みは感じない。死期が近いのだろう。



…せめて死ぬ前に、妹のウエディング姿を見たかったなー…なんてさ。




「……ち、ろ……ごっ…め、よ……」




















暗転。




















「貴方が悪いのよ。私を見てくれないから」