レベル上げはチュートリアルのうちに! ─おっさんダンジョン物語─

ともや先生

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一話 「やり直す」

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997…………998…………999…………1000!



とても枯れた声はダンジョンに響き渡る。



「毎日何をやっているんだか…」



ここを通りかかった冒険者はいつもその言葉を残して行ってしまう。



ここは始まりのダンジョンの一層にある、チュートリアル部屋。



誰もが新しいゲームを始めたら操作確認のために、チュートリアルをプレイするだろう…



「おっ!あのおっさんまた、チュートリアルやってるぜ!」



ここ、チュートリアル部屋を独占してから約3年。



チュートリアル部屋は完全に僕の家になっている。





ベットに棚に机。



狭い狭いチュートリアル部屋に僕は住んでいる。



ただ、何もせずチュートリアル部屋に住んでいる訳ではない。



ベットの近くにある、ボタンを押すと、攻撃をしてこない数体のスライムが出現する。



チュートリアルの時は攻撃の仕方や、魔法の撃ち方をここのチュートリアル場所で学ぶ。



三年間僕はここで、スライムを倒しまくり、レベル上げを行っている。



入手経験値は少ないが、とても効率が良い。



攻撃もしてこないので、いつでも倒すことが出来る。



そんな利点を踏まえた訳でスライムを毎日1000体倒すのを行っている。



スライムを倒すと、50経験値と、50コインが貰える。



ボタンを押すと10体のスライムが出てくるので、一度に500経験値と500コインが貰えるって仕組みだ。



だが、ここのチュートリアルから先には一度も行ったことがないので、基本的な操作(レベルの見方やステータスの表示のしかた)等が分からない。



毎日寝る前には今ランクどのくらい何だろう?と思うのが日課だ。



「はぁー!今日もランク上がらなかったー!」



ベットに寝転がると、大きなため息をつく。



数週間前から、ランクアップしたときのエフェクトが見えない。



そんな事を思っていたら、画面の斜め下に、赤いエフェクトが点滅している。



「あれ?こんなエフェクト前からあったっけ?」



最近はモンスターを倒すことに気を向けていたから、気にもしていなかった。





躊躇なく点滅している、赤いエフェクトを押す。



「えーと、何々?もう一度一からやり直すチャンス!ステータス、ランク、スキルはそのまま!所持金、実績、アイテムは消滅します!」



ベットに、横になりながら、やるにあたっての注意事項の欄を見る。



「へぇー…一からやり直す機能なんかあるんだ!」



流石に1000体スライムを倒したばかりだから、体が重い。



いつのまにか、注意事項を見てるうちに、体への温もりに耐えれなくなり、眠ってしまう。



─────────────────────────────────────



眩しい…。



何だこれは?僕はチュートリアル部屋に居たんじゃなかったのか?



「あ、起きましたか!私はチュートリアル係のユウって言います!

チュートリアルはお受けになりますか?」



眩しさで、目が開けられないが、この状況は何となく分かる。



「寝てる間に間違えて押しちゃった!!!」



「急にそんな大声上げてどうしたんですか!?」



あぁ……。てことはチュートリアルがこれから始まるところか…。





「あぁ…悪い!」



少女に頭を下げる。



「どこに頭下げてるんですか!私はこっちですよ!」



目が開けられないんだ!しょうがないだろ!



「ちょっと良いですか?僕の顔を少し本気で殴ってくれませんか?」



眩しくて見れないなら、無理矢理にでも、痛さで目を開けるしかない!



「はい?熱は…無いですよね!」



僕のおでこに少女の手が触れる。



「お願いです!いや、一生のお願いです!僕を殴ってください!」



三年間も、暗闇の中に居たら明るいとこに行ったら目がヤバイことになることぐらい予想はついてただろうに…



「分かりました!あなた様の思い受け取りました!いきますよー!

へいや!」



「ぐはぁぁぁあ!」



直後、後ろに吹き飛ばされる。



何かの壁に激突したのか背中から血が出ている。



だけどこれでやっと目が開けた。



周りを見渡すと、やはりチュートリアル部屋(操作確認)の所だ。



懐かしい…



「三年ぶりか…」



「その三年ぶりか…は女の子に殴られるのが三年ぶりって事ですかー?もしかして、そういうプレイがお好きだったり?」



声がした方向を向くと、そこには興味津々の可愛い少女が僕に指を指して立っていた。



「好きじゃないわ!」



「まぁ、いいでしょう!チュートリアルは受けますか?」



「いや、大丈夫!だけど一つだけ教えてくれ」



「レベルってどうやって見る事が出来るの?」



僕が三年かけても分からなかった超難問だ。



「あなたの頭の上に書いてあります!ほらランク100って」



その直後少女は叫ぶ。



「キャーーーーーーーーーーーーー!何でランク100何ですか!何をしたんですか!あなた今、この始まりのダンジョンに来たばかりですよね!どうゆうことですか!説明してください!今すぐに!」



ただ、三年間スライムを倒していただけなんですけど…



ランク100ってのはどのくらい強いんだ?



「いや、ただそこら辺のモンスターを倒していただけなんですけど?」



「私、ランクMAXの人なんて初めてみました!一回魔法使ってみてくださいよ!」



ランクMAX?



僕の事だよな?



だから数週間前からレベルアップのモーションが無かったのか。



「すいません!魔法の使い方分からないんで教えて頂いても?」



「あなた!?魔法も使えないのに、ランクMAXなんですか!?」



このあと少女は僕に魔法の使い方、スキルの使い方など全て教えてくれた。



そしてチュートリアルも終わり、町に出る。



「あ、ちょっと待ってください!これ着けてた方が良いですよ!」



少女から渡されたのは一つの指輪だった。



何だろう?この指輪。



「これは人からランクが見えなくなる魔道具です!あなた、これはめないで町に出たら大騒ぎですよ!」



大騒ぎも、悪くないが、変に目立っても良いことは無いだろう。



「色々とありがとな!また何処かで!」



後ろを振り向き少女に手を振る。



「はい!」



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