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四章 疑念が生む最大の賭け

20話 「サキュパス」

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前回のあらすじ



第10のダンジョン「大回廊」からドラゴンで飛び立ってから数時間後、何者かに、ドラゴンが襲撃された。

ドラゴンは魔法は何とか第10領域魔法「ヒール」で一命はとりとめたが、頭には二本の弓矢が刺さっている。

僕は呆気なく、襲撃者を倒し、ドラゴンを安全な森の中へ連れていくのだった。

__________________________________________________



この森はとても神秘的な造りになっている。



木は高く、とても綺麗な鳥の囀りや、木が揺れる音。



全てが合わさっている。



「ドラゴン……」



森の中にある、少し開けた平地にドラゴンが横倒れる。



長旅に疲れているなか、冒険者の攻撃から僕たちを守ってくれた。



絶対死なせやしない!



だが、僕はSPが尽き、アウラも疲れてとても回復魔法が使えない状況だ。



このままドラゴンを放置していたら、1時間もたたないうちに、死んでしまうだろう。



「誰か居ないのか!優れた回復魔法を使えるモンスターは!」



森の奥の方から声が聞こえる。



「誰か呼んだかにゃ?」



木々を華麗に飛びわたり、こちらに向かってくる。



「お前は誰だ?」



「私のにゃまえはエクル!山の精霊にゃ!」



精霊?そんなモンスターいたっけ?



僕が知る限り、そんなモンスターは存在しない…



「お前、回復魔法が使えるのか?」



「まぁ、少しだけ、だけどにゃ?メインはこっちにゃ!」



鋭い爪をこちらに見せつける。



「じゃあ、そこのドラゴンに、回復魔法をかけてくれないか?」



「何で私がきしゃまの言うことを聞かなにゃいけないのにゃ?」



ドラゴンを助けるためだ。



「お前、ここが精霊の山ってことを冒険者ギルドに伝えるぞ?」



「にゃにゃ!?おみゃえ趣味が悪いにゃ!」



趣味が悪いでもクズでも何でも言ってくれ。



今は自分がどれだけ苔になっても、ドラゴンを助けるのが優先だ。



「わかったにゃ…しょうがにゃいにゃ!回復させてやる!回復させてやるにゃ!」



良かったー。これでドラゴンを助けられる。



「ねぇ、コースケ?あの女、嘘をついてるとは思わないけど信じていいの?」



「あぁ、多分な…」



精霊は魔法の準備を始める。



精霊の周りに、大きな二重の魔方陣が展開される。



すごい。二重の魔方陣は最低でも第70領域魔法にしか、存在しない。



「神の理。力を貸して!」



「天使の口づけ!」



二重魔方陣を纏ったまま、ドラゴンに近づく。



すると、ドラゴンの口元にゆっくりと口づけをする。



数十秒がたち、口づけがおわる。



「この魔法は…?」



「っぱぁ…ずるる」



精霊はヨダレをすする。



「あぁ、この魔法にゃ?実はこれ、魔法じゃにゃいにゃ!」



魔法じゃない?



「私にゃ、さっきは精霊とか言ったが、実はサキュパスにゃ!

サキュバスが持って生まれるスキル、悪魔の口づけにゃ!」



悪魔の口づけ、ユニークスキル。



どんな怪我をおったモンスター、または冒険者でも数十秒間口づけをすれば、完全に直ってしまう、チート系スキルだ。



だが、サキュバスの特性として、口づけをした際に相手の精液を少し奪ってしまうと言う、面倒な特性があるが、それを踏まえてもチートに近いスキルだ。



「ドラゴン!目が覚めたか!」



フュギューーンと元気な叫びで、飛び上がる。



「精霊!ありがとな!恩に着るよ!」



「まて!まってにゃ!おみゃえがまだ、冒険者ギルドに私の事を言わないか、不安だにゃ!だから私も着いていくにゃ!」



は?



「いやいやいや、おかしいだろ!」



これ以上ドラゴンには乗れないぞ?



「私は別に良いよ!ねぇーコースケ!」



こいつ、絶対女性が増えるからって仲間にいれようとしている。



まぁ、いいか!何とかなればドラゴンにも乗れるだろう!



「分かった…わかったよ!エクルだっけ?俺たちの仲間になってください!」



「しょうぎゃにゃいにゃー!仲間ににゃってやるにゃ!」



こいつ、マジで仲間にしたくないな。



僕達は元気になったドラゴンの上に乗り込む。



「で、何で僕の上にお前が乗ってるんだよーーーー!」



「何でって乗るとこがここしかにゃいからにゃ?」



確かに後ろを見るとアウラの上にはラグナロク。



僕の上しか空いていない。



だが、



「お前に触れられると、精液がどんどん抜かれていくんだよ!」



「にゃにゃ!おみゃえの精液なんかへんにゃ!こうなんて言うかドロドロしてるにゃ!」



「うるさい!やっぱり連れてくるんじゃなかった!」



こうしてエクルを仲間にし、始まりの村へと向かうのだった。
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