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11. 知らないこと *
しおりを挟む胸を弄ばれるだけで、こんな感覚が得られるなんて知らなかった。
マティアスは女性を抱いたことはないけれど、女性ならば胸で快感を得ることを知識としては知っている。けれど、男の体でもそこで性的に興奮を得られるとは知らなかった。
それとも、マティアスがおかしいのだろうか。あるいは、アルテュールの性技が巧みだからか。
「こちらも触れてあげますね」
「えっ、あ、んんっ」
乳首を舌先で転がされながら触れられたのは、マティアスの下肢の中心で淡く勃ち上がり始めていた陰茎だ。
ふわっと優しい手つきで陰茎を撫でられる。自分の手とは違う、けれどたしかに男の手が竿にかかり、先端をくるりと弄られると甘い痺れが一気に走る。
「や、ぁっ……は、ぁんっ」
マティアスは、自慰もそんなにしない。
騎士団というのは、欲を持て余す男が多い。だから周りの者たちは恋人や伴侶を作ったり、相手がいなければ娼館へ行ったりしているというのは耳にしていた。
そういうことにマティアスは興味がない。けれど、マティアスも健康的な成人男子であるからして、ほんの時折、生理現象に見舞われたりはする。体に溜まった欲を吐き出したほうがいいと聞いてからは、義務のように吐き出してはいる。でも、その程度だ。
だから、他人に性器を触られることなど、はじめてで。
兆し始めていた陰茎は瞬くうちに昂らせられて、完全に勃ち上がって、先端からは蜜が溢れていた。
「ん、んぅ……あ、はぁ……っ」
「気持ちいいですか?」
「うっ、ん、あ……きもち、い……です、っ」
自分でもそんなふうに触ったことがない手つきで、アルテュールはマティアスの陰茎を愛撫する。先走りの蜜を塗り込めるように、くちくちと音を立てられると、耳まで犯される気持ちになって、腹の奥がさらに熱を帯びた。
「だ、だめ……だめです、アルテュールさまっ……出る、出そうっ」
もう陰茎は天を向いていて、その後ろにぶら下がる陰嚢も張り詰めている。しかし、精を吐き出してしまいそうだと訴えても、アルテュールの手淫は止まることはなかった。それどころか、耳元に唇を寄せて嬉しそうに囁いた。
「構いませんよ。気持ちよく達して、たくさん出してください」
「だめっ、だめ、っ……はっ、ん、ああぁっ」
上下に扱いていた手の速度が上がり、その摩擦と熱でマティアスは止める間もなく精を吐き出してしまった。
「はぁ……はぁ……」
筋骨隆々とはいかないが美しく割れたマティアスの腹筋の上に、白濁の蜜がとろりと散る。その淫靡な姿にアルテュールは舌舐めずりをした。
射精の余韻で半ば意識を飛ばしているマティアスには、男の獰猛な瞳など見る余裕などなかったけれど。
「ふふっ……可愛いですね、マティアスくんは」
アルテュールは満足げに笑い、ちゅっ、ちゅっと啄むように耳元や首筋、胸元に唇を落とす。時折、肌を強く吸われると、淡く赤い印が刻まれていく。それを今度は愛おしげに舌で舐められる。
そんな戯れをしながら、アルテュールはマティアスの両脚をぐっと折り曲げて、左右に広げた。
「きっと、こちらも初めてですよね。……マティアスくん、力を抜いていてくださいね」
冷静なときのマティアスならば、急にとらされたあられもない格好に抵抗し、それこそ両脚の間に陣取るアルテュールを蹴り飛ばしていただろう。だけど、今のマティアスは自分自身でもよくわからない熱に浮かされて、まったくもって今の状態に疑問を抱かなかった。
アルテュールにされるがままに、その手が触れる素肌からじわじわと広がる熱だけを感じていた。
そんなマティアスを愛おしむように、太腿の内側や膝に口づけながら、アルテュールは陰嚢のさらに奥で、そっと閉じている蕾に触れた。
そして、くるくると数度撫でたかと思うと、何かをつぷりと内部へと埋め込んだ。
「あっ……ぅ、なに……?」
体内に何か冷たい錠剤のようなものを入れられて、マティアスは体を跳ねさせた。得体の知らないものを勝手に体内に入れられて狼狽する。戸惑いの声に、それを入れた当の本人は、ふふっと微笑む。
「安心してください、ただの薬です。知り合いの薬学者に作っていただいた浄化薬兼潤滑剤です。即効性があるとは聞いているのですが、しばらく経つと……ああ、ほら。じんわりと濡れてきましたよ」
「え……あ、ふ、ぁっ?」
胎の奥がとろりと溶け出したような感覚に、マティアスは思わず身を捩った。
粗相をしてしまったのではないかと、自身の股の間へ目を向けると、美貌の男が目を細めてマティアスの後孔を探っている。目眩がする光景に口を開くが、そこから漏れ出たのは甘ったるい吐息と声だった。
「ぁ、あっ……アルテュール、さま……そこ、やめっ」
そんな不浄の場所を、と伸ばした手はあっけなくアルテュールに阻まれる。
「薬の効果で中も綺麗になりましたから、安心してください。それより、私のことを考えて、感じてみて……」
浄化薬というのは、耳にしたことがある。たしか腸内にある不浄なものを、そうでないものへと作り変えてしまう薬だ。
騎士の中には男性同士で体を交える者がいて、そういう者たちが使っているというのは何となく知っていた。そして同様にして、交わりに使う箇所が勝手に濡れぬ男が、そこを濡らすものを使用することも。
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