【完結】欲張りSubは欠陥Domに跪く

秋良

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番外編

熱帯夜は熱く、長く 05 *

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 それから綾春は、快楽に体を震わせながらも這うようにして、なんとか寝室まで辿り着いた。
 階段を一段上がるたびにローターの振動から与えられる快感に喘ぐと、蓮哉は口角を上げてリモコンのスイッチを操作して恋人の反応を散々に楽しんだので、綾春が寝室に着いた頃には、下肢はがくがくと力が入らず、性器からは堪えきれずに蜜がとぷりと漏れ出てしまっていた。

 そして、今。
 綾春はベッドの上で手足を拘束されて、増やされた性具に身を捩っている。

「すっごい眺めだな」

 ベッドの上で痴態を晒す恋人を上機嫌で蓮哉は見つめていた。

「はぁっ、あっ、あ……蓮哉、さ……これ、もう、あぁッ」

 一階から二階に上がってからすぐ、綾春のなかを苛んでいたローターは一つからさらに個数を増やされ、大小合わせて三つ。一番最初に入れられたものが一番大きく、残りの二つは小指の先ほどの小さなものだけれど、三つも入っている状態は快感と苦痛のちょうど中間くらいで、Subとしての本能を大いに刺激されていた。

 さらに、その刺激を押し上げるように、綾春の両手両足には手枷足枷がつけられている。右手首と右足首、左手首と左足首の枷がそれぞれ繋がるようになっていて、手は上げられず、足は下ろせない。しかし、そんな屈辱的な格好も、二人にとっては興奮を後押しする材料にしかならなかった。

 後孔にローターを咥えさせられ、手足を不自由に拘束されたまま、おそらく一時間近く経っている。
 うんと激しいやつが欲しいと強請った綾春に、蓮哉が与えてくれたのは、性的な玩具を駆使して全身を責められるハードなプレイ。

「尻尾生やしてるみたいで可愛いな、あや」
「ひぅッ! あっ……待っ、それ、引っ張らな、あァッ」

 ローターから伸びるコードを徐ろに引っ張られ、ローター同士の位置を変わり、新たな刺激が生まれる。

「嫌なの? そんなことないだろ。そんな顔で言っても信じられないな。気持ち良さそうに顔蕩けてるけど? 腰も揺れてるし?」
「ぁ、んん、ふ……あっ、なか、苦し……っ」
「本当に苦しいだけ?」

 そんなことなさそうだけど、と蓮哉は悪どく笑う。

「気持ち、い……けど、あっ、あっ……も、これじゃ、足りな、あっ」

 三つのローターが思い思いに蠢くのは、苦しいけれど気持ちがいい。
 でも、中途半端な気持ち良さが続いているだけで、決定的な強い快楽を与えてはもらえない。小さな絶頂は続いていても、頭がトビそうなほどの快楽はやってこず、僅かに理性がずっと残り続けている。

 できれば、体だけじゃなく頭もぐずぐずに溶けるほどに堕としてほしい——。

「足りないんだ? じゃあ、どうしてほしい? Say言ってみて

 綾春の要求なんてわかっているくせに、蓮哉はわざとコマンドで投げかける。

「蓮哉さんの……挿れて、ほしい。俺のなか、蓮哉さんので、掻き回して……っ」
「いいね。必死におねだりできて、Good boyいいこ

 満足げに笑み、綾春の額にキスを落とした蓮哉は、後孔から伸びる三本のコードのうち、一本を手繰り寄せて引っ張った。

「ひゃ、あッ!」
「ははっ、抜けるときも気持ちいいんだ? ほんと、あやはえっちだなぁ」
「あ、あ……だって……ふ、あぁっ! は、ぁっ……ん、ぅっ」

 一つ、二つとローターが引っ張り出されるたびにビクビクと体を跳ねさせる綾春の頬や耳朶に、蓮哉は唇を寄せる。すでに敏感になりきった体は、その小さな刺激にも容易く反応して、綾春は甘い声を漏らした。

「ナカどっろどろ。ローターそんなに良かったんだ? ヒクついてて、真っ赤になってる。妬けるなぁ」
「あ、だっ……て、蓮哉さんが……ん、はぁ」

 卑猥な玩具を突っ込んだのは自分じゃないかと思いながらも、快楽に溺れるのを止められない。

 綾春の後孔を犯していたローターは、残り一つ。一番サイズの小さなローターがまだ埋め込まれた状態で、蓮哉はハクハクと蠢く襞を引き延ばすように、その入り口を指先で撫でていく。
 そのいやらしくも物足りなすぎる刺激に、綾春は堪らず声を上げた。

「あっ、お願い……早く、ぅ……。蓮哉さんの、挿れてぇっ」
「わかったよ」

 すでに準備は万端な、蓮哉の屹立が剥き出しになる。
 望んでいたものをようやく与えてもらえる安堵感に浅く息をついた綾春だったが、ふとまだ自身の中に埋め込まれている性具を思い出して、慌てて身を捩った。
 しかし——。

「え、あ……待って、まだ一つ、入って……あああぁッ!」

 ぐずぐずに解けきったそこにローションを足されたと思った次の瞬間には、熱い猛りを押し付けられていた。後孔に、小さなローターが一つ入ったままに。

「ああっ、あっ、だ、あっ、めぇッ」

 ローターのスイッチは蓮哉が雄を突き入れる前に止めてくれていたけれど、先ほどよりも奥に侵入したそれと、蓮哉自身の熱い猛りとが、綾春の内側いっぱいに支配する。
 逃れようのない快楽に綾春は、思わず体に力が入ってしまった。それがいっそう、自分の内壁を刺激すると頭の片隅ではわかっているのに、力を抜けない。

「きっつ……あや、力抜いて……っ」
「そ、んな……む、りぃッ……あ、あっ」
「大丈夫だから、ほら……」

 いまだ拘束具に手足を縛られている体自体、自らの意思で自由に動くことは叶わないのだ。はしたなく両脚を膝を折りながら広げて、その間にいる蓮哉が緩く腰を動かすのに合わせて、身をくねらせるのが精いっぱいで、あとは喘ぐことしかできない。
 力を抜けと言われたところで、どう力を抜いたらいいのか。そもそも、今は力が入っているのかどうかも、わからなくなる。

 綾春が、強い快感の波に思考のすべてを奪われかけていると、トントンと内壁をあやすように優しく掻き回される。すると、次第に強張っていた体が緩み始めた。
 そこを見逃す蓮哉ではなく、すかさず綾春のより奥深くまで己の雄々しい性器を突き立てた。

「ひぁっ! お、奥、あぁッ。や、あたっ、あたって……んァッ」

 奥深くまで穿つように捩じ込んだ蓮哉の性器は、その奥に入っていた小さなローターを綾春の最奥へとうずめていく。ただでさえ猛りきった蓮哉の雄は長さも太さも立派だと言うのに、その先にいくら小指の先ほどのサイズとはいえローターが入っていれば、いつもは届かぬところへも届いてしまうのは想像に難くない。

「れん、やさ……ッ、これ、だめ……頭、ヘン、なる、ぁあっ!」

 さすがに穿ちすぎると体を壊してしまうだろうからと、性器を根元までは埋め込まないつもりだったけれど……なかなか理性を問われる恋人の姿に、蓮哉は綾春の肩口に歯を立てることでなんとか起き上がりかけた凶暴な欲求を宥めた。
 けれど、あられもない声を上げる綾春をもっと見たくて、ぐずぐずのでろでろに溶かしきってしまいたくて、組み敷く恋人の反応を見極めながら、自身の熱い屹立でぐりぐりと内壁を抉った。

「ああッ! お、く、きてる、あっ! ん、はぁっ」
「いいよ、おかしくなって。もっとおねだりしてよ、あや。奥も浅いとこも、可愛がって、あげるから……っ」
「あっあっ! や、気持ち、よすぎ、て……っ、あっ、イく、イくからぁ……!」

 そう言っているうちに、綾春はなかだけで達していた。
 前の男の象徴は激しい抽挿に揺れて、本懐を遂げたいとばかりに張り詰めているが、白濁を噴き上げることなく、変わらず少量の蜜を溢しているだけだ。

 目眩がするほどの淫蕩な姿に、蓮哉の興奮も最高潮に上がっていく。

「あや、綾春っ……もっと、気持ちよくなって……」

 不意に蓮哉の視界に映った、ローターのリモコン。
 ああ、そういえばスイッチを切ったままだったな、とDomらしい加虐心に火がつく。蓮哉は綾春の細腰を揺さぶりながら、躊躇なくそのスイッチをオンにした。

「ひぃ、あああっ! だ、めぇ、ああッ! ひぅう!」
「く、ぅ……っ」

 小さな振動を始めたローターは、綾春だけでなく蓮哉自身にも人工的な快感を与え始める。鬼頭の先で僅かに震える感覚に、思わず息を詰めたほど。
 しかし、ローターの刺激よりも何よりも、奥深くをその振動で揺さぶられ、ごりごりと前立腺を押し潰すように貫かれて感じ入っている綾春の後孔がきゅうきゅうと性器に熱く絡みついてくるほうが、蓮哉にはよっぽど刺激的だった。

 気持ち良すぎて、せっかくギリギリ保っていた理性が吹っ飛びかけていた。

「や、あぁっ、イってる……のに、あぁっ! 奥、ぅあッ!」
「あやっ、綾春、いいよ……いっぱいCumイって
「あっ、あぁ————……っ」

 コマンドで命じられた気持ち良さと、なかを好き勝手に蹂躙される気持ち良さとで頭は真っ白になり、綾春は拘束された手足をがくがく震わせながら、中でも外でも達した。
 張り詰めていた性器からは、ぷしゅっと白濁が飛び散り、蓮哉と綾春自身の腹を汚す。と同時に、中ではじわりと熱いものが迸った感覚がした。伸ばせぬ手を無意識のうちに伸ばそうとして、カチャカチャと枷についた鎖が擦れる音が響いた。

「ふぅ……は、っ…………綾春……」
「ん、れんや……さ……ん、ぁ」

 どちらかともなく伸ばした舌を絡めて、そのまま口を覆うほどの深いキスをしながら、互いの口内を舐め回した。散々体を弄ばれ、愛撫し尽くされ、溶かされた体は水分を求めているからか、綾春は積極的に舌を動かし、唾液すらも欲しいと吸いつく。
 蓮哉もまた、奥の奥まで味わい尽くしたというのに、それでも足りないとばかりに綾春の舌に食らいつき、歯列をなぞり、上顎を熱く舐った。

 飽きもせずに、じゅぱじゅぱと卑猥な音を響かせながら何分もの間、性行為の延長にある深いキスを続ける。びくびくと体が小さく跳ねているのは、いまだ綾春のなかに入る蓮哉の性器と、さらにその奥を苛め続けているローターのせいだろう。
 やがて、あまり息継ぎが得意でない綾春が音を上げたところで、二人の唇はようやく名残惜しみつつも離れていった。

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