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第七十一話 嵐の後

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「で、あれはなんだったんだ?一馬くん?」

嵐のように現れた女子小学生が去った後、僕は少し時間を空けて、気持ちを落ち着かせてから話しかけた。

「僕もよくわからないんです……」

え、一馬くんもよくわからないの?

「いつからか後をつけられるようになってて、僕はどうしたらいいのかわからず、いつも逃げてました」

「そ、そうなんだ……」

一馬くんも迷惑なのかもしれないな。

「それに、もしかしたら僕の秘密を探っている子なのかもしれないと思うと怖くて……」

秘密?ああ、性別が女の子であるということか。
でも、さっきの子はそういうのを探ってるというよりかは……

「好きなだけだと思うけどな」

「す、好き? 僕をですか?」

「そうそう、まぁちょっと変わってるけどな」

「変わってるってほどじゃないですよ!」

お、もしかして小学生をかばおうとしてるのか。

「あれは、ただの変態です」

「あぁ……」

「だって、僕がつけられてるとわかってから、何回通学する道を変えたことか。知ってますか」

「いや、知らないけど」

「30回ですよ、30回」

30回とはまた多いな。僕はこれを聞くだけで、わかることがあった。

「30回ということは、もう一ヶ月以上もつけられているのか?」

「はい、実は……」

そんなに付けられているのは予想外だった。てっきり、1週間2週間の話だと思っていた。

「でも、誰か他の人の相談しなかったのか?」

そんなに困っているのなら、誰かに相談すればいいのにと思った。
しかし、一馬くんの表情が暗くなる。

「そんなのできませんよ」

「どうして?」

「だって、小学生にストーカーされて困ってるなんて言えるわけないじゃないですか」

それもそうか。中学生が小学生の女の子につけられて困っているなんか、恥ずかしくて他人に相談できないに決まっている。

「だったら、その小学生に直接言うしかないな」

僕はこう提案した。しかし、先ほどよりも表情は暗くなった。

「もう頼みました」

「え、それでもついてくるのか」

「いえ、頼んでからはつけられることはなくなったんですが……」

喋りながらどんどん表情が暗くなる。一体何があったんだ。

「それで?」

「そしたら、先回りされるようになって、どこに行っても知らない道を通っても先回りされるようになりまして……」

「もういい。もう言わなくてもわかったから」

僕はどんどん表情が暗くなる一馬くんを見て、抱きしめる。

「よく頑張ったな」

と言葉をかけながら、一馬くんの頭を撫でた。

「お兄さん……」

と僕の胸の中でそう呟いた。

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