66 / 154
第六十六話 涙の理由
しおりを挟む
「どうして泣いてるの」
さっきから見ているだけだった妹が口を開いた。それは泣いている一馬くんのことが心配だからだ。
そんな一馬くんは妹のその問いかけに涙を流しながら答えた。
「僕は、ただ千穂ちゃんとなら友達になりたいと思っただけなんだ。なのに千穂ちゃんに迷惑をかけていたなんて知らなかったんだ」
これは一馬くんの本心だった。
それを聞いた妹が口を開いて喋ろうとした時、それよりも先に一馬くんが妹に謝った。
「ごめんなさい」
一馬くんは床に額を擦り付けて、全力で土下座した。
なんて、男らしいんだ。
僕は一馬くんを見てそう思った。
そして、一馬くんに謝られた妹が口を開く。
「どうして…」
一馬くんは顔を上げて妹の方を見る。
「どうして、私となんかと友達になりたいと思ったの?」
それは、妹が一馬くんに抱いた疑問だった。僕は、最初に妹から話を聞いた時、一馬くんは下心があって妹に近づいているんだと思っていた。しかし、今は一馬くんが女の子であったという事実を知ったことでその考えが間違いであったというのがわかった。
「それは…僕に対して下心がなかったから」
一馬くんは小さな声でそう言った。
「下心がなかったってどういうことだ?」
部外者である僕が妹の代わりに聞いた。
「千穂ちゃん以外の女の子は、僕に対してはみんな下心が丸出しなんです。でも千穂ちゃんは、僕に対しても普通に接してくれたんです。だから、千穂ちゃんなら本当のお友達になってくれるんじゃないかって思って僕から近づいたんです」
と一馬くんは話してくれた。僕は思った、ただ単に妹の好みでなかったから、下心がなかったのでは、と。
そんなことは口が裂けても言えないので、僕は口のチャックを閉める。
しかし、一馬くんの本心を聞いた妹は、口を開いてこう言った。
「一馬くんは考えすぎだと思う。みんながみんな一馬くんに下心を持っているわけではないから、私を特別視するのは間違いだと思う」
妹は一馬くんに対して今までで1番冷たい言い方をする。一馬くんはそれを聞いて、少し悲しそうな顔をした。
そんな姿を見ていた僕は妹が言うことは分からなくもないけれど、さすがにバッサリ言い過ぎではないかと思った。それじゃあ、一馬くんが可哀想だ。
「それでも、私と友達になりたいと思うのなら、考えなくてもないけど…」
と妹は一馬くんに言った。
その言葉を聞いた一馬くんは、ぱあっと明るくなり、そして…
「もちろん、僕千穂ちゃんと友達になりたい!」
「じゃあ、仕方ないな」
「うん!」
一馬くんは涙を拭いながら、笑顔なる。そして、立ち上がり、妹に抱きついた。
それほど嬉しかったんだろう。
妹はと言うと、一馬くんに抱きつかれて焦っていた。これは予想外だったらしい。頬を赤く染めて「やめろ~、抱きつくな~」といいながらこれ以上寄ってくるな、と一馬くんの肩に手を置いていた。それでも、その手には力があまり入っていない様子だった。
そこまで嫌じゃないのかもしれない。今度、僕もやってみようかなと考えながら、2人を微笑ましく見ていた。
さっきから見ているだけだった妹が口を開いた。それは泣いている一馬くんのことが心配だからだ。
そんな一馬くんは妹のその問いかけに涙を流しながら答えた。
「僕は、ただ千穂ちゃんとなら友達になりたいと思っただけなんだ。なのに千穂ちゃんに迷惑をかけていたなんて知らなかったんだ」
これは一馬くんの本心だった。
それを聞いた妹が口を開いて喋ろうとした時、それよりも先に一馬くんが妹に謝った。
「ごめんなさい」
一馬くんは床に額を擦り付けて、全力で土下座した。
なんて、男らしいんだ。
僕は一馬くんを見てそう思った。
そして、一馬くんに謝られた妹が口を開く。
「どうして…」
一馬くんは顔を上げて妹の方を見る。
「どうして、私となんかと友達になりたいと思ったの?」
それは、妹が一馬くんに抱いた疑問だった。僕は、最初に妹から話を聞いた時、一馬くんは下心があって妹に近づいているんだと思っていた。しかし、今は一馬くんが女の子であったという事実を知ったことでその考えが間違いであったというのがわかった。
「それは…僕に対して下心がなかったから」
一馬くんは小さな声でそう言った。
「下心がなかったってどういうことだ?」
部外者である僕が妹の代わりに聞いた。
「千穂ちゃん以外の女の子は、僕に対してはみんな下心が丸出しなんです。でも千穂ちゃんは、僕に対しても普通に接してくれたんです。だから、千穂ちゃんなら本当のお友達になってくれるんじゃないかって思って僕から近づいたんです」
と一馬くんは話してくれた。僕は思った、ただ単に妹の好みでなかったから、下心がなかったのでは、と。
そんなことは口が裂けても言えないので、僕は口のチャックを閉める。
しかし、一馬くんの本心を聞いた妹は、口を開いてこう言った。
「一馬くんは考えすぎだと思う。みんながみんな一馬くんに下心を持っているわけではないから、私を特別視するのは間違いだと思う」
妹は一馬くんに対して今までで1番冷たい言い方をする。一馬くんはそれを聞いて、少し悲しそうな顔をした。
そんな姿を見ていた僕は妹が言うことは分からなくもないけれど、さすがにバッサリ言い過ぎではないかと思った。それじゃあ、一馬くんが可哀想だ。
「それでも、私と友達になりたいと思うのなら、考えなくてもないけど…」
と妹は一馬くんに言った。
その言葉を聞いた一馬くんは、ぱあっと明るくなり、そして…
「もちろん、僕千穂ちゃんと友達になりたい!」
「じゃあ、仕方ないな」
「うん!」
一馬くんは涙を拭いながら、笑顔なる。そして、立ち上がり、妹に抱きついた。
それほど嬉しかったんだろう。
妹はと言うと、一馬くんに抱きつかれて焦っていた。これは予想外だったらしい。頬を赤く染めて「やめろ~、抱きつくな~」といいながらこれ以上寄ってくるな、と一馬くんの肩に手を置いていた。それでも、その手には力があまり入っていない様子だった。
そこまで嫌じゃないのかもしれない。今度、僕もやってみようかなと考えながら、2人を微笑ましく見ていた。
0
お気に入りに追加
63
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ずっと女の子になりたかった 男の娘の私
ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。
ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。
そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる