「7人目の勇者」

晴樹

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第38話 VS勇者殺し1

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女騎士と離れた勇者は、そのまま洞窟の奥に進んでいった。
進んで行っても罠らしきものは何一つなくすんなり進めた。
それでも油断せずに先を進む。
5分ほど進んだのちに、洞窟の狭い通路がいきなり開けた大きな広間に出た。

「来たか」

そこには黒マントを頭までかぶり、顔が見えない姿の人が立っていた。
低い声から察するに男であるのは間違いないだろう。

「いう通りに来てやったぞ」

と決め台詞……いや、決まり文句といったほうが正しいか。
するとマントの男は、フンと笑うと、後ろを指さし

「奥の部屋にいる」

勇者殺しの後ろには木製のドアが取り付けられていた。
どうやら、洞窟の中に部屋があるようだ。
その部屋に姫様を監禁しているのだろう。

「だが、私を倒してからでないと通さない、7人目の勇者よ」

と相手さんも決まり文句を発しながら俺の前に立ちふさがった。

「分かった」

俺は腰に差していた剣を抜いて目の前に立つ、黒マントの男に剣先を向けた。
剣先が鋭く光る。

「そう焦るな。なぜ私がお前を狙ったのか知りたくないのか?」

と黒マントの男は言った。
どうやら、目の前の男は俺を狙っているらしい。知っていたが。

「知るも何もお前が勇者殺しだからだろう?」
「まぁそうだ。なら、勇者殺しはどうして勇者を狙うかも分かるか?」
「いや、それは……」
「分からないだろう。分かるはずがない。お前は強いからな」
「何のことだ?」

勇者は惚ける。
実際は何も知らないわけだが。

「今までの勇者は弱かった。いつも隣国の勇者に負けて、姫様より力を得ているのにだ。国を代表する勇者なのに。だから、私は勇者を殺してきた」
「なら、俺は勝ったんだから、命を狙われる必要などないのではないか?」
「そうだ、本来ならお前を殺す必要はない。だが、お前は危険だ。この国に悪影響を及ぼす」
と勇者殺しは言った。

悪影響を及ぼす。そんなの身勝手な理由で俺は命を狙われなければいけないのか。

「だから殺す。悪く思うな」

勇者殺しはそういうと、腰に差していた剣を抜いた。
そして勇者である俺に剣先を向けた。
互いの剣先が相手に向けられた状態で静止する。
先に動いたほうが負けか、それとも勝ちか。
すると、一瞬の間にあたりは暗闇に支配された。
たいまつの火を消されてしまったようだ。

スッ!

いきなりだった。耳にかすかに音がした。まるで、空気を切り裂く鋭い音。
気が付けば頬に痛みと鮮血している。

「な、なんだ」

勇者は驚きを隠せなかった。暗闇に中鋭利な刃物のようなものが飛んできたかのようだった。

「ふ、当たったか」

勇者殺しは暗闇の中話しかけてきた。

「なにが起きたかおしえてやろうか。ナイフを投げたんだよ。この暗闇の中で、お前にめがけて」

勇者はすぐに動いた。相手の位置がわからない以上とどまるのは危険だと悟った。

「ふ、動いたようだな。しかし」

スッ!

再び、風を切りさく音。
そして、

「く、、、」

次は右肩をかすめた。
深くはないが、鮮血している。先ほどと全く一緒だ。

「どうやら、右肩をちゃんとかすめた様だな」

「んっ!」

どうしてわかったんだ。
まさか見えているというのだろうか!

一切の視界を奪われた状況で、これはひじょにまずいことを意味している。
もしかしたら、負けるかもしれない。
勇者は、戦いのさなかそんなことを考えてしまっていた。



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