異世界で勇者をすることとなったが、僕だけ何も与えられなかった

63話 自室にて

自分の部屋に入ると、僕は八雲から受け取った本を早速読み始めた。

勇者の本。
僕らの前にいた勇者が書いたと思われる本。
一体どんな生活を送り、何をしていたのだろう。
そこに僕たちが元の世界に戻るためのヒントがある。
そんな気がする。

僕は本の1ページ目めくった。
ペラリ。
だめだ、読めない。

八雲の言うように本の中の字は汚くて、まるで子供が書いたものみたいだと思った。
そういえば、妹も字が汚なかった事を思い出す。その字に似て汚い。

僕はペラペラとページをめくって読める部分を適当に読んでみた。

王様の命令で何かを倒したりしていたと書かれている。
もしかすると、洞窟の少女の事も書いているかもしれない。
そう思って本を読むも出てこなかった。いや、読めないから分からないと言う方が正解に近いだろう。

そして、僕は読むのをやめた。

もういいや。
僕は投げやりになった。

閉じた本を机の上に置いて、僕はベットに横になる。
どうしてだろう。活字を読むと眠たくなるのは。
ほとんど読んでいない上に、下手な字だったので理解もほぼできなかった。
逆に字が汚いから、考えて一生懸命読解していたため普通に読むよりも疲れたのかもしれない。
夜ご飯前だと言うのに僕はベットの上で目を瞑ると深い眠りに落ちていく感覚に襲われる。

あぁ、ぐっすり眠れそうだ。

汚い字を見て、妹を思い出したからだろう。その日は元の世界の夢をみたのだった。