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60話 勇者の本
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「だったら、この本は何なんだ、八雲?」
と僕は素朴な質問を八雲にした。
八雲の手に握られている作られた本は、一体誰が作った本だと言うのだろうか?
「読んだ限りでは結城、君はこの国に他の勇者がいた事を聞いた事があっただろう。多分その勇者が書いたんじゃないかと思われる」
確か姫様が前に最初の勇者について話してくれたっけ。
勇者の剣を持って消えた勇者の話。
この目の前の本がその勇者が書いたのなら、もしかしたら消えた理由や方法が書かれているかもしれない。
だから八雲は僕にこの本を見せてくれたのか。
「八雲はその本を読んだのか?」
「あぁ、読んだ」
「なら、話してくれないか?その本の内容について」
「読む気は無いのか…」
八雲は呆れた様子だったが、本について話してくれた。
「簡潔にいえば、この本は勇者の日記的な物だった。その中にはボク達が欲してやまない元の世界に帰る方法も書かれていた」
「ほんとかよ! だったらこの事をみんなに言って、その方法を実行しよう」
早くこの世界から脱出しよう。
無能力者の僕はいつ死んでもおかしく無いのだから。
「それはできない」
八雲は否定した。
「どうしてできないんだ? 書いてあったんだろう?」
しかし八雲は頷かない、曇った表情のままだ。
「不可能なんだ。今のボクらには足りない物がある」
足りないもの?
「それは一体何なんだ?八雲教えてくれ」
僕は真剣に問いかけた。
僕の生死も関わる重要な問題だ。
僕の真剣な問いかけに、八雲は静かに口を開く。
「勇者の剣だ。前勇者と共に消えた伝説の剣だ」
なるほど、八雲の返答を聞いて納得してしまった。
それはどうする事もできないな。
前の勇者と共に消えた行方不明な物。
多分八雲も勇者の剣の所在について僕と同じ考えをしているに違いない。
僕は八雲が喜ばなかった理由と他の人に話さなかった理由も何となくわかった。
今みんなに教えてもぬか喜びさせてしまう結果になるだろうからだ。
「八雲は勇者の剣が何処にあると思う?」
考えが同じか問いかけて確認する。
同じ考えなら答えは……
「多分、前の勇者が持って行ったのだろう。本当に帰れたのなら、勇者の剣はボクらの世界にあると思われる」
僕と同じ考えだった。
「他の方法を探さないとダメってことか……」
と僕は頭の後ろに手を置いて椅子の背もたれに深く座りながら、八雲に言った。
しかし八雲は首を横に振った。
「そうでも無い。この本の方法には確かに勇者の剣を用いていた。しかし、勇者の剣を用いたのは大量の魔力を必要としたからだ」
「ん?魔力の為だけ?」
「あぁ、ゲートが有ったらしいんだ。そのゲートを開くのに大量の魔力が必要だったと本には書いていた」
えっ、それって……
「ゲートを見つければ僕らも帰れるかもしれないってこと!」
八雲は頷く。
「何故それを早く言わない! 善は急げじゃないか!!」
僕は椅子から勢いよく立ち上がった。
そして、八雲の手を引いて走り出した。
「お、おい待て」
八雲は僕の勢いに負けて、戸惑っている。
そんなこと知ったことか!
元の世界に戻れるんだからな。
急がずにいられるか。
と僕は素朴な質問を八雲にした。
八雲の手に握られている作られた本は、一体誰が作った本だと言うのだろうか?
「読んだ限りでは結城、君はこの国に他の勇者がいた事を聞いた事があっただろう。多分その勇者が書いたんじゃないかと思われる」
確か姫様が前に最初の勇者について話してくれたっけ。
勇者の剣を持って消えた勇者の話。
この目の前の本がその勇者が書いたのなら、もしかしたら消えた理由や方法が書かれているかもしれない。
だから八雲は僕にこの本を見せてくれたのか。
「八雲はその本を読んだのか?」
「あぁ、読んだ」
「なら、話してくれないか?その本の内容について」
「読む気は無いのか…」
八雲は呆れた様子だったが、本について話してくれた。
「簡潔にいえば、この本は勇者の日記的な物だった。その中にはボク達が欲してやまない元の世界に帰る方法も書かれていた」
「ほんとかよ! だったらこの事をみんなに言って、その方法を実行しよう」
早くこの世界から脱出しよう。
無能力者の僕はいつ死んでもおかしく無いのだから。
「それはできない」
八雲は否定した。
「どうしてできないんだ? 書いてあったんだろう?」
しかし八雲は頷かない、曇った表情のままだ。
「不可能なんだ。今のボクらには足りない物がある」
足りないもの?
「それは一体何なんだ?八雲教えてくれ」
僕は真剣に問いかけた。
僕の生死も関わる重要な問題だ。
僕の真剣な問いかけに、八雲は静かに口を開く。
「勇者の剣だ。前勇者と共に消えた伝説の剣だ」
なるほど、八雲の返答を聞いて納得してしまった。
それはどうする事もできないな。
前の勇者と共に消えた行方不明な物。
多分八雲も勇者の剣の所在について僕と同じ考えをしているに違いない。
僕は八雲が喜ばなかった理由と他の人に話さなかった理由も何となくわかった。
今みんなに教えてもぬか喜びさせてしまう結果になるだろうからだ。
「八雲は勇者の剣が何処にあると思う?」
考えが同じか問いかけて確認する。
同じ考えなら答えは……
「多分、前の勇者が持って行ったのだろう。本当に帰れたのなら、勇者の剣はボクらの世界にあると思われる」
僕と同じ考えだった。
「他の方法を探さないとダメってことか……」
と僕は頭の後ろに手を置いて椅子の背もたれに深く座りながら、八雲に言った。
しかし八雲は首を横に振った。
「そうでも無い。この本の方法には確かに勇者の剣を用いていた。しかし、勇者の剣を用いたのは大量の魔力を必要としたからだ」
「ん?魔力の為だけ?」
「あぁ、ゲートが有ったらしいんだ。そのゲートを開くのに大量の魔力が必要だったと本には書いていた」
えっ、それって……
「ゲートを見つければ僕らも帰れるかもしれないってこと!」
八雲は頷く。
「何故それを早く言わない! 善は急げじゃないか!!」
僕は椅子から勢いよく立ち上がった。
そして、八雲の手を引いて走り出した。
「お、おい待て」
八雲は僕の勢いに負けて、戸惑っている。
そんなこと知ったことか!
元の世界に戻れるんだからな。
急がずにいられるか。
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