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49話 断ち切る鎖3

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 やっと出られる。一時はどうなることかと思ったが、洞窟の奥に居たのが、話の通じる相手で良かったと安堵している。
 隣に少女を連れて歩く。あまり気にして居なかったが、少女は黒髪でロングだ。洞窟の奥に居たにしては少女の髪は艶がある。手入れされているように見えた。洞窟の中には水も無かったはずだ。
 ちょっと聞いてみよう。

「君の髪、綺麗だね。洞窟の中に居たとは思えないくらい艶があるし、手入れがされているように見える。どうして?」

「それは考えるまでもなく魔力を使って錬成したに決まっておろう」

 そんな事が可能なのか。
 万能すぎねぇ、魔力って。

「そっか…魔力って何でもできるんだなぁ。僕は魔力が無いから、分からないや」

「そうじゃったのか? 通りでわちの近くに居ても問題ない訳なんじゃな。やはり、勇者とは魔力を持たない者なのかもしれんな」

「いやいやいや、僕だけだから魔力を持ってないの。他の仲間の勇者はみんな持ってるよ。僕だけ持ってないんだ」

「ん? そうなのか。わちを倒した勇者は魔力を持っておらなんだから、てっきり勇者は魔力を持ってないもんだと思ってしまった。魔力を持った勇者もおるのか?」

「そうだよ。僕を含めて勇者は26人いるよ」

「26人……そんなにおったのか。わちを倒した勇者は1人だったが、今はそんなにおるのか」

「待って、そういえば君をここに閉じ込めたのは、勇者なの?」

「んー、閉じ込めたのは王たちじゃが、わちを倒したのは勇者じゃ」

 それが本当なら前にいた勇者は、この八雲以上の魔力を持ってるこの少女を倒したって事?
 しかも、その勇者は僕と同じ魔力を持っていない人間だったのか。

「ねぇ、その勇者は剣を持ってた? 勇者の剣を」

「持っておった。あれが厄介じゃった。あの剣自体が魔力を持っておってな、その魔力がわちを超えておった……」

 そういうことか……
 剣自体に魔力が宿っていたんだ。しかもとんでもない魔力が……
 そんだけ魔力を宿していたのなら、魔力を持っている、魔力を感じ取るこの世界の人間では扱う事も近づく事すら出来なかったに違いない。

 だから、僕みたいな魔力を持たない者……異世界から来た勇者しか扱えないチート武器という事か。

「その剣どこにあるかわかる?」

「知るわけないじゃろう。わちは勇者に負けて以来、この洞窟におるんじゃから!」

「ご、ごめん」

 少女はプイッと反対の方に顔を向けてしまった。
 この話題はもう終わりにしよう。得られたのは、前の勇者は僕と同じ魔力を持たない人間だったこと。後は、勇者の剣は魔力を秘めたチート武器という事。
 もしも、この世界にまだ勇者の剣が何処かにあるのなら、僕は最強になれるかもしれない。
 この世界の勇者達を凌ぐ力が……

 まぁ、そんな危険な武器は使いたくないけどな。
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