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24話 少女

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「申し訳ありません、同席してしまって」と少女は謝った。礼儀正しい少女だという印象は正しかったようで、こんな一人で食事をしている僕なんかに頭を下げる必要はない。それよりもどうして少女は空いている席がほかにもたくさんある中で、僕の横に座ったのか、それが気になって仕方がなかった。

「そんなこと気にしなくていいよ。どうせ一人だし…それどころか隣に君みたいなカワイイ子が来てくれただけで、僕は嬉しいよ」

「そ、そんな…カワイイですか? 私?」
 首を傾げる。その動作ができるのは小悪魔か天然かどちらかの美少女だろう。少女はどちらなのだろうか。それによっては距離は詰めないほうがいいことになる。将来的に考えて、前者なら下僕なんかにされそうだ。

「カワイイさ。それよりも僕に何か用?」

「えっ、どうして用があるとわかったんですか?」

 小バカにされているのだろうか。この状況はそれ以外説明できない出来事だ。

「それくらい分かるよ。こう見えて他人が考えていることくらい少しなら読めるから」

 ほんとは読めないのに、僕の口は発してしまった。もう戻ることはできないか。この言葉…

「そうですか。なるほど、勇者様たちは不思議な力を持った人がいると言っていましたが、あなたは人の考えを少し読む力をお持ちなのですね」

 と何を勘違いしたのか、少女はそんなことを口にした。確かに勇者であるクラスメイト達は不思議な力を持っている。でもそれは僕以外なんだよな…
 そんな力があったらどれほどよかったか…ごめんね、ただ僕は何の特殊な力をもっていない、ただの人間なんだ。

「それで用っていうのはなに?」

「それは…あなたたち勇者のことが知りたくて。興味があるの」

 少女の目は輝きを放っている。子供の好奇心というやつなのだろうか。まるで、宝石でも目に埋まっているかのように輝きこちらを見ている。

「教えてあげてもいいけど、どうして僕なの?」

「え、あなたはよく報告書に名前がある人物だと聞いたので、一人になるところを狙ってました」
 
 と少女は言った。常に一人の僕が一人になる時って、ほぼいつでも話しかけられただろうな。
 狙う必要はない気もしなくない。簡単にできそうだ。
 それにしても報告書…僕は呼んだことないけど、僕の名前が書いてあるのか?
 どんな報告がされているのか気になるが、知りたくない気もする。
 どうせ、人を運ぶだけだからな、最近は。そんな報告する必要はないだろう。
 てか、報告書をみたのなら、あのイケメンとかに話しかければいいだろうに。
 どうして僕なんだろう。

「ぼっちで話しかけやすかっただろう?」

「ぼっち…? とはなんですか?」

 そうか通じないか。
 死語だったか…(たぶんちがう)

「ぼっち、というのは一人でいる人間のことだ」
 
 言っててなんか悲しくなってくるな。言うんじゃなかった。

「そうなんですね。そういう意味の言葉でしたか。勉強不足ですみません」
 
 と頭を下げる少女。
 そんな言葉覚えないほうが、いいとは言えないか。二度と使うことはないだろう少女にとっては、いらない言葉を教えてしまったことになる。なんてことをしてしまったのだろう。少女の親に怒られたりしないだろうか。

「君の親に怒られそうだよ…」

 僕は天井を見上げる。少女に頭を下げさせ過ぎているな。天罰が下りそうだ。
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