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197 見えない斬撃が見える理由
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魔法障壁ごと叩き斬る剣、魔力を無効にする鎧。
二つの超級宝具を装備した火の精霊に対し、わたしはまだ付け入るための隙を見いだせていない。
人間の体と融合した火の精霊を倒すための基本方針は、回復の暇を与えずに一発で致命傷を与えること。
致命傷を与える方法は二つ。
一つは首をはねること。
人間としての性質に引っ張られているのであれば、これでたぶん活動を停止するはずだ。
もうひとつは胸を狙って、心臓と一緒に火の精霊の核を撃ち抜くこと。
核ごと体外に放出してしまえば確実である。
おそらく頭部は最も警戒されているはずだと推測して胸部を狙っていく作戦だったが、宝具によって首元から胴体まですっぽりガードしてしまった火の精霊に致命傷を与えるのは非常に難しくなってしまった。
こちらが攻めあぐねている一方で火の精霊は逆に調子づき、容赦ない火の精霊の攻撃が始まっていた。
火の魔術による牽制からの、超高速斬撃。
わたしは火の精霊の間断ない猛攻を受け続けている。
「・・・だいたい、疲れ知らずなうえに鉄壁の防御とかズルくね?」
(確かにこのままではこっちの体力か魔力が先に尽きてしまうのじゃ)
再び火の精霊の放った火の弾が飛来する。
この程度ならばと水の防御でガードする。
直後、周囲に魔力で薄く張った動体検知の網が反応を示す。
火の精霊の突進、すなわち必殺の斬撃が来ることを捉えたのだ。
・・・あれ、突進速度、さっきより速くね?
でもまだ対応できる範囲。
わたしには皆がついているんだから!
動体検知が反応した時、火の精霊が踏み込んできたエリアは今までよりも深かった。
つまり、火の精霊の突進速度がさらに上がったということだ。
・・・これも宝具の効果なのかな?
いやいや、考えても仕方ない。
まずは躱す、できたら反撃する!
少し前まで、火の精霊の見えない斬撃に全く対抗できなかったわたしが、攻撃を躱して反撃までできるようになったことにはもちろん理由がある。
精神と時の・・・もとい、闇の魔術による精神世界で、ミネルヴァとヤミに特訓してもらえたおかげだ。
その特訓によって、わたしは光の魔術と闇の魔術を少し使えるようになった。
時間の都合もあったので、この戦いで即使えるものだけを教わったのだが、その効果は絶大だった。
・・・動体検知をトリガーに、発動待機状態にしておいた光の魔術と闇の魔術を起動。
先読み開始!
魔術の連続発動を条件付きで行うテクニックはアフロのスパルタ指導で叩き込まれていた。
そして起動した魔術のひとつは光の魔術。
一瞬先の未来を視る魔術だ。
一瞬先の未来を視ることは光の精霊の十八番だが、それを魔術として行使することもできると聞き、教えてもらったものだ。
その効果によって、火の精霊が突進してくる軌道がハイスピードカメラによる連続撮影の合成写真のように視えるし、それを脳内でもはっきり認識できるようになった。
とはいえ、それだけでは攻撃に対処できない。
一瞬視えたところで、躱せなければ全く意味がない。
そこでもうひとつの魔術、闇の魔術による思考加速の出番である。
闇の魔術・思考加速によって、世界の動きを遅く視るのだ。
世界から見ればわたしの思考が速くなったように観測されるのだろうが、別にどちらでもかまわない。
思考加速の効果によって、火の精霊の超高速の突撃も、まるでスロー再生のように視えていた。
なお、これらの魔術は人間が使うと体と精神に結構な負担がかかる恐れがあるとのことで、むやみやたらの使用は禁じられた。
まあ、そりゃそうだろうとは思う。
今は仕方がないけれども。
ともかく、この二つの魔術の効果によって、わたしは火の精霊の動きをはっきりと視認し、動きも読み切ることができるようになっていた。
しかし、思考加速はあくまで頭の回転の速さだけである。
現実世界でわたしの動きまで速くなるわけではない。
ならばどうするか。
・・・身体強化!
そして身体加速!
良いネーミングが思いつかなかったのでそのままだが、四肢に風の魔力と土の魔力を満たし、物理抵抗と速度を上げる。
魔力のサポートによって高速で動けるようになったのだが、ただ速く動けるだけではない。
早く動けても制御ができなければ意味がない。
思考加速と先読みのおかげで、速い動きの中でも無駄なく正確に体を制御できるのだ。
もっとも、速いと言っても思考加速の状態では見た目の動きはスローなので、感覚的には拳法の套路を覚えるためのいわゆる型練習みたいな感じだ。
しかし太刀筋を躱したり相手の動きに合わせて急制動をかけるには、それなりの先読み力とパワーが必要になる。
特に急制動は身体への負担も大きいので、全身を水の魔力で覆い、体への負担を軽減することも忘れない。
こうして火の精霊の見えない斬撃にも対応できるようになったわけだが・・・
「やっぱり火の精霊の動きがどんどん早くなってる気がするんだけど、どう思う?」
思考加速や身体強化をしているにも関わらず、躱すのがかなりギリギリのタイミングになりつつある。
自分が疲労して遅くなっているのか、火の精霊の速度がさらに上がっているのかどちらだろうと思っている時、ミネルヴァが異変に気づいた。
(ユリ、見て!火の精霊の足!)
「足・・・うわっ!」
斬撃が空振りに終わり、停止している状態の火の精霊の足があらぬ方向を向いていた。
よく見れば足だけではない。
振り抜いた腕も関節から裂け、血が流れていた。
「人間の体では耐えられないほどの負荷をかけてまで攻撃してるの!?」
驚きに思わず大きな声が漏れた。
その声は火の精霊にも聞こえたようだ。
「永く使う依代だから大事に使うつもりだったのだがね。こうなったのはお前のせいだ。さっさと斬られるがいい」
「お断りよ!」
火の精霊は答えながら、治癒魔術でたちまち負傷箇所を治療していく。
人間の動けるリミッターを無視してまで攻撃してくる火の精霊の執念には感服するが、これ以上の速さでこられては間違いなく斬られてしまうだろう。
・・・やってみるしかないか。
「ねえみんな。一つ試してみたいことがあるの。腕一本と引き換えになるかもしれないけど」
(ユリよ、まさか身体強化だけで鎧を破壊するつもりではあるまいな?仮に体の内面だけを強化しても皮膚や骨がもたないのじゃ!)
「そんなの、やってみないと分からないでしょ?」
わたしは一度深呼吸をして、魔力を紡ぐために集中した。
体内で魔力が活性化していくのを感じる。
「よし・・・行くわよ!」
わたしは気合いの発声と共に火の精霊に向かって走った。
走っている間も慎重に魔力を紡ぎ続ける。
火の精霊もわたしの動きに合わせて素早く構えると、カウンター気味に斬撃を繰り出してきた。
わたしもその行動は読んでいたので、斬撃の射程上からサイドステップでギリギリのタイミングで外れた後、すぐさま紡いだ魔力を足に集中させてインチキ震脚で床を強く蹴り出した。
震脚の振動で軽く地面が揺れる。
わたしはその勢いで火の精霊に急接近し、火の精霊が迎え打ってくる斬撃よりも速く、火の精霊の懐に飛び込むことに成功した。
手を伸ばし、宝具の鎧に手を添える。
・・・ここで魔力を集中して、鎧を打ち抜く!
打ち抜けなければ斬られる!
わたしは腕に魔力を集中させ、再び踏み込みと同時に掌底を打ち出した。
衝撃が鎧に伝わり、魔力が浸透していくのを感じる。
しかし、鎧には傷一つ付けることができなかった。
(ユリ!避けなさい!)
「くっ!!」
攻撃失敗の直後、アフロの警告で反射的に体を捻ったものの、完全に躱すことはできなかった。
「うあああああっ!」
(ユリ!!)
わたしは肩口に剣を突き立てられていた。
そのまま腕や胴を切り捨てられなかったのは救いだが、深手には違いなかった。
「甘かったな、娘。鎧に触れられた時は少々驚いたが、この鎧がその程度の攻撃で破壊できるわけがなかろう」
「はあ・・・はあ・・・」
痛みに耐えつつ治癒魔術を開始するが、火の精霊がこの隙を見逃すはずがない。
傷口が塞がる前に火の精霊が突進し、斬撃を繰り出してきた。
わたしは転げ回りながらもなんとか斬撃を躱して距離を取り、ひとまず応急処置程度には傷口の治療をすることはできた。
「無様だな。今の無駄な攻撃と負傷で、かなり魔力を消費したのではないか?そろそろ決着と行こうか」
わたしの攻撃が効かなかったことを見て満足したのか、火の精霊は余裕の笑みを浮かべでいた。
私が答えずに火の精霊を睨み返していると、アフロが問いかけてきた。
(ユリ。今の攻撃、どういうことよ)
「・・・アフロちゃん。何?」
わたしは痛む肩の治療を続けながら、アフロの問いかけに反応した。
(ワタシはディーネが危惧していたように、生腕を犠牲にするつもりで鎧に物理的な攻撃を食らわせるのかと思っていたわ。でも違った。今の攻撃は腕を魔力で覆ったままの、魔力による攻撃だったわ)
「はあ、はあ・・・ええ・・・そうよ」
(それは無駄な攻撃だと分かっているわよね?)
「攻撃自体は無駄だったかもしれないけど・・・無駄じゃなかったわ・・・」
(だから、どういうことよ?)
「あの懐への飛び込み・・・なかなか良い震脚だったでしょう?・・・手応えも良かったわ・・・痛てて・・・」
わたしはちょうど震脚を繰り出した床付近に目を向けてそう答えた。
(懐に飛び込んだとしても、そこからの決め手が無いのでは無意味だわ。また斬られるのが目に見えているわよ)
「いいえ・・・これでいいの、これで。ディーネちゃんのおかげで気がつけたのよ・・・」
(妾!?妾が何をしたのじゃ?)
「まあ、見ててよ・・・」
わたしはまだ完治していない肩を押さえ、痛みを堪えながら立ち上がった。
「今度こそ、あの鎧をぶっ壊してやるわ」
二つの超級宝具を装備した火の精霊に対し、わたしはまだ付け入るための隙を見いだせていない。
人間の体と融合した火の精霊を倒すための基本方針は、回復の暇を与えずに一発で致命傷を与えること。
致命傷を与える方法は二つ。
一つは首をはねること。
人間としての性質に引っ張られているのであれば、これでたぶん活動を停止するはずだ。
もうひとつは胸を狙って、心臓と一緒に火の精霊の核を撃ち抜くこと。
核ごと体外に放出してしまえば確実である。
おそらく頭部は最も警戒されているはずだと推測して胸部を狙っていく作戦だったが、宝具によって首元から胴体まですっぽりガードしてしまった火の精霊に致命傷を与えるのは非常に難しくなってしまった。
こちらが攻めあぐねている一方で火の精霊は逆に調子づき、容赦ない火の精霊の攻撃が始まっていた。
火の魔術による牽制からの、超高速斬撃。
わたしは火の精霊の間断ない猛攻を受け続けている。
「・・・だいたい、疲れ知らずなうえに鉄壁の防御とかズルくね?」
(確かにこのままではこっちの体力か魔力が先に尽きてしまうのじゃ)
再び火の精霊の放った火の弾が飛来する。
この程度ならばと水の防御でガードする。
直後、周囲に魔力で薄く張った動体検知の網が反応を示す。
火の精霊の突進、すなわち必殺の斬撃が来ることを捉えたのだ。
・・・あれ、突進速度、さっきより速くね?
でもまだ対応できる範囲。
わたしには皆がついているんだから!
動体検知が反応した時、火の精霊が踏み込んできたエリアは今までよりも深かった。
つまり、火の精霊の突進速度がさらに上がったということだ。
・・・これも宝具の効果なのかな?
いやいや、考えても仕方ない。
まずは躱す、できたら反撃する!
少し前まで、火の精霊の見えない斬撃に全く対抗できなかったわたしが、攻撃を躱して反撃までできるようになったことにはもちろん理由がある。
精神と時の・・・もとい、闇の魔術による精神世界で、ミネルヴァとヤミに特訓してもらえたおかげだ。
その特訓によって、わたしは光の魔術と闇の魔術を少し使えるようになった。
時間の都合もあったので、この戦いで即使えるものだけを教わったのだが、その効果は絶大だった。
・・・動体検知をトリガーに、発動待機状態にしておいた光の魔術と闇の魔術を起動。
先読み開始!
魔術の連続発動を条件付きで行うテクニックはアフロのスパルタ指導で叩き込まれていた。
そして起動した魔術のひとつは光の魔術。
一瞬先の未来を視る魔術だ。
一瞬先の未来を視ることは光の精霊の十八番だが、それを魔術として行使することもできると聞き、教えてもらったものだ。
その効果によって、火の精霊が突進してくる軌道がハイスピードカメラによる連続撮影の合成写真のように視えるし、それを脳内でもはっきり認識できるようになった。
とはいえ、それだけでは攻撃に対処できない。
一瞬視えたところで、躱せなければ全く意味がない。
そこでもうひとつの魔術、闇の魔術による思考加速の出番である。
闇の魔術・思考加速によって、世界の動きを遅く視るのだ。
世界から見ればわたしの思考が速くなったように観測されるのだろうが、別にどちらでもかまわない。
思考加速の効果によって、火の精霊の超高速の突撃も、まるでスロー再生のように視えていた。
なお、これらの魔術は人間が使うと体と精神に結構な負担がかかる恐れがあるとのことで、むやみやたらの使用は禁じられた。
まあ、そりゃそうだろうとは思う。
今は仕方がないけれども。
ともかく、この二つの魔術の効果によって、わたしは火の精霊の動きをはっきりと視認し、動きも読み切ることができるようになっていた。
しかし、思考加速はあくまで頭の回転の速さだけである。
現実世界でわたしの動きまで速くなるわけではない。
ならばどうするか。
・・・身体強化!
そして身体加速!
良いネーミングが思いつかなかったのでそのままだが、四肢に風の魔力と土の魔力を満たし、物理抵抗と速度を上げる。
魔力のサポートによって高速で動けるようになったのだが、ただ速く動けるだけではない。
早く動けても制御ができなければ意味がない。
思考加速と先読みのおかげで、速い動きの中でも無駄なく正確に体を制御できるのだ。
もっとも、速いと言っても思考加速の状態では見た目の動きはスローなので、感覚的には拳法の套路を覚えるためのいわゆる型練習みたいな感じだ。
しかし太刀筋を躱したり相手の動きに合わせて急制動をかけるには、それなりの先読み力とパワーが必要になる。
特に急制動は身体への負担も大きいので、全身を水の魔力で覆い、体への負担を軽減することも忘れない。
こうして火の精霊の見えない斬撃にも対応できるようになったわけだが・・・
「やっぱり火の精霊の動きがどんどん早くなってる気がするんだけど、どう思う?」
思考加速や身体強化をしているにも関わらず、躱すのがかなりギリギリのタイミングになりつつある。
自分が疲労して遅くなっているのか、火の精霊の速度がさらに上がっているのかどちらだろうと思っている時、ミネルヴァが異変に気づいた。
(ユリ、見て!火の精霊の足!)
「足・・・うわっ!」
斬撃が空振りに終わり、停止している状態の火の精霊の足があらぬ方向を向いていた。
よく見れば足だけではない。
振り抜いた腕も関節から裂け、血が流れていた。
「人間の体では耐えられないほどの負荷をかけてまで攻撃してるの!?」
驚きに思わず大きな声が漏れた。
その声は火の精霊にも聞こえたようだ。
「永く使う依代だから大事に使うつもりだったのだがね。こうなったのはお前のせいだ。さっさと斬られるがいい」
「お断りよ!」
火の精霊は答えながら、治癒魔術でたちまち負傷箇所を治療していく。
人間の動けるリミッターを無視してまで攻撃してくる火の精霊の執念には感服するが、これ以上の速さでこられては間違いなく斬られてしまうだろう。
・・・やってみるしかないか。
「ねえみんな。一つ試してみたいことがあるの。腕一本と引き換えになるかもしれないけど」
(ユリよ、まさか身体強化だけで鎧を破壊するつもりではあるまいな?仮に体の内面だけを強化しても皮膚や骨がもたないのじゃ!)
「そんなの、やってみないと分からないでしょ?」
わたしは一度深呼吸をして、魔力を紡ぐために集中した。
体内で魔力が活性化していくのを感じる。
「よし・・・行くわよ!」
わたしは気合いの発声と共に火の精霊に向かって走った。
走っている間も慎重に魔力を紡ぎ続ける。
火の精霊もわたしの動きに合わせて素早く構えると、カウンター気味に斬撃を繰り出してきた。
わたしもその行動は読んでいたので、斬撃の射程上からサイドステップでギリギリのタイミングで外れた後、すぐさま紡いだ魔力を足に集中させてインチキ震脚で床を強く蹴り出した。
震脚の振動で軽く地面が揺れる。
わたしはその勢いで火の精霊に急接近し、火の精霊が迎え打ってくる斬撃よりも速く、火の精霊の懐に飛び込むことに成功した。
手を伸ばし、宝具の鎧に手を添える。
・・・ここで魔力を集中して、鎧を打ち抜く!
打ち抜けなければ斬られる!
わたしは腕に魔力を集中させ、再び踏み込みと同時に掌底を打ち出した。
衝撃が鎧に伝わり、魔力が浸透していくのを感じる。
しかし、鎧には傷一つ付けることができなかった。
(ユリ!避けなさい!)
「くっ!!」
攻撃失敗の直後、アフロの警告で反射的に体を捻ったものの、完全に躱すことはできなかった。
「うあああああっ!」
(ユリ!!)
わたしは肩口に剣を突き立てられていた。
そのまま腕や胴を切り捨てられなかったのは救いだが、深手には違いなかった。
「甘かったな、娘。鎧に触れられた時は少々驚いたが、この鎧がその程度の攻撃で破壊できるわけがなかろう」
「はあ・・・はあ・・・」
痛みに耐えつつ治癒魔術を開始するが、火の精霊がこの隙を見逃すはずがない。
傷口が塞がる前に火の精霊が突進し、斬撃を繰り出してきた。
わたしは転げ回りながらもなんとか斬撃を躱して距離を取り、ひとまず応急処置程度には傷口の治療をすることはできた。
「無様だな。今の無駄な攻撃と負傷で、かなり魔力を消費したのではないか?そろそろ決着と行こうか」
わたしの攻撃が効かなかったことを見て満足したのか、火の精霊は余裕の笑みを浮かべでいた。
私が答えずに火の精霊を睨み返していると、アフロが問いかけてきた。
(ユリ。今の攻撃、どういうことよ)
「・・・アフロちゃん。何?」
わたしは痛む肩の治療を続けながら、アフロの問いかけに反応した。
(ワタシはディーネが危惧していたように、生腕を犠牲にするつもりで鎧に物理的な攻撃を食らわせるのかと思っていたわ。でも違った。今の攻撃は腕を魔力で覆ったままの、魔力による攻撃だったわ)
「はあ、はあ・・・ええ・・・そうよ」
(それは無駄な攻撃だと分かっているわよね?)
「攻撃自体は無駄だったかもしれないけど・・・無駄じゃなかったわ・・・」
(だから、どういうことよ?)
「あの懐への飛び込み・・・なかなか良い震脚だったでしょう?・・・手応えも良かったわ・・・痛てて・・・」
わたしはちょうど震脚を繰り出した床付近に目を向けてそう答えた。
(懐に飛び込んだとしても、そこからの決め手が無いのでは無意味だわ。また斬られるのが目に見えているわよ)
「いいえ・・・これでいいの、これで。ディーネちゃんのおかげで気がつけたのよ・・・」
(妾!?妾が何をしたのじゃ?)
「まあ、見ててよ・・・」
わたしはまだ完治していない肩を押さえ、痛みを堪えながら立ち上がった。
「今度こそ、あの鎧をぶっ壊してやるわ」
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