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135 久しぶりのニューロック
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「・・・で、次に精霊一人と人間一人が船で渡って・・・」
「そうすると向こう岸で精霊が人間を殺すわよ」
「ああっ!・・・もー何なのよこれ!」
こんな不穏な会話をしながら、わたし達はニューロックを目指して飛行していた。
帰りはメティスが同行することになったので、一応あまり速度を上げすぎないように注意しながら飛んでいる。
そのため、往路に比べると倍の時間がかかっているが、それでも十分に速い速度だ。
ロイドの町を出発してから今日は四日目。
今日の夕方にはニューロックに到着するはずだ。
「そうだ、最初に人が二人で渡れば・・・」
「残された一人が三人の精霊に殺されるわね」
「ぐぬぬ・・・」
まだ続いているこの不穏な会話の正体は、わたしがミネルヴァに出題したパズルのせいだ。
ミネルヴァが『ただ飛び続けるのに飽きたから、なんか面白い問題を出しなさいよ』と言うので、提供したものである。
色々と亜種は有るものの、これは『宣教師と人食い人種のボート渡り』という問題だ。
宣教師が三人、人食い人種が三人、川岸にいる。
川を渡るための小舟があるが、小舟は一度に二人しか乗ることが出来ない。
一応、全員が小舟を操縦できる。
この小舟を駆使して全員を反対側の川岸へ渡らせるのだが、それぞれの川岸で、人食い人種の人数が宣教師の人数を上回った場合、宣教師は食い殺されてゲームオーバーとなる。
それを踏まえて、上手に小舟を行き来させて全員を無事に渡らせるというものだが・・・
「センキョウシ?なにそれ?」
「人が人を食べるの?人間て野蛮なのね」
というクレームが発生したため、とりあえず分かりやすそうな単語に置き換えることにして、宣教師を人間、人食い人種を精霊とすることにした。
また、食い殺すのではなく、単純に殺すだけ、ということにして出題し直した。
それでも『精霊はそんな簡単に人を殺したりしないわよ!』などと言われたが、いきなりメティスを殺そうとしたミネルヴァのどの口が言うのかという反論にようやく大人しくなり、問題に取り掛かったところだ。
「やっぱり最初に精霊と人間を一人ずつ小舟に乗せて向こう岸へ渡す方針は間違ってないと思うのよ・・・」
ミネルヴァは独り言を言いながら真剣に問題に取り組んでいる。
紙に書いたり、石ころを動かしながらやると考えやすいが、頭の中だけでやろうとするとなかなか難しい。
解けたと思っても、途中の過程でゲームオーバー条件に引っかかっているのを見落としたりする。
「最短手順だと、確か十一回船を動かせば解けるはずよ。頑張ってね」
ニューロックが水平線の向こうに見えてきた頃、ようやくミネルヴァは正解を出すことができた。
◇
ロイドの町では遠慮したものの、ニューロックのコーラルの町では遠慮する必要など無い。
というわけで、わたし達はコーラルの港、そして町の上空をそのまま通過して直接カークの館の中庭に降り立った。
何事かと警備兵がすっ飛んできたものの、警備兵はわたしの姿を視認すると同時にホッと胸をなでおろして、館の中へ知らせに向かった。
驚かせてしまって申し訳ないので、これ以上余計な心配をかけないように迎えが来るまで待っていると、やがてカークと側近達が中庭にやってきた。
「おかえり、ユリ殿。思ったよりも早かったが、成果はあったかね?」
「ただいま戻りました、カークさん。ええ、良い結果が得られましたよ。ミっちゃん・・光の精霊様の協力を取り付けましたよ。詳しいお話は中でお話します」
「うむ・・・そうだな」
カークはわたしが連れてきた見知らぬ顔にチラッと視線を向けた。
それからスポークに指示を出す。
「早速だが情報交換といこう。スポーク、すぐに会議室の準備を頼む」
「承知しました」
カークの右腕であるスポークは、会議室の準備と、会議に参加してもらう人達に声をかけるために、側近を幾人か連れて屋敷の中へと戻っていった。
そしてカークはミネルヴァ達の方へと歩み寄り、恭しく頭を下げた。
「ようこそお越しくださいました、光の精霊様。ご協力、感謝いたします」
「あの・・・えっと・・・」
「カークさん、違います!その子じゃないほうです!」
カークはメティスに向かって頭を下げていた。
おそらく見た目で判断したのだろうが、ミネルヴァよりもメティスのほうが背も高いし大人びて見える。
ずっと目を瞑っているのもちょっと神秘的な感じがしないでもない。
そしてミネルヴァはどちらかと言えば顔立ちも幼い。
間違えても仕方がない。
仕方がないが・・・
「・・・そこの人間。あたしを馬鹿にしているのかしら?それとも侮られているのかしら?」
「い、いえ・・・そんな事は・・・その・・・」
自分の失態に気がついたカークは、しどろもどろの返答をした。
精霊を怒らせたらただでは済まない。
それにせっかくわたしが精霊の協力を取り付けたというのに、機嫌を損ねてしまえば反故にされる可能性すらある。
カークは懇願するような目と共に、真っ青な顔をわたしに向けた。
・・・尻拭いをしてほしいということですね、分かります。
カークさんめ、いきなり精霊の不興を買うような真似をするとは・・・
「ミっちゃん、ほら、人間基準だとミっちゃんはかわいくて若く見えるから、間違えられても仕方ないと思うよ、うん」
「つまり、メティスのほうが大人びてると言ってるのよね?」
「えーとそれは・・・意外性・・・そう。意外性よ!精霊は皆ツンとしててちょっと怖いぐらいじゃない?でもミっちゃんはその溢れんばかりの魅力があるから人間の男性なら勘違いしちゃっても無理はないと思うんだよね、ははは・・・」
「・・・まあ、あたしが魅力的なのは知ってるわ。あんたより胸もあるしね」
「そ、そうね・・・」
わたしは顔が引きつるのを必死に抑え、笑顔を崩さないように頑張った。
「まあ、そういう事ならいいわ」
「は、はあ・・・」
カークは胸をなでおろし、窮地を脱したことに心からホッとしていた。
しかし今度はわたしが窮地に陥る番だった。
「のう、ユリ。妾はそんなに怖かったかのう?」
「ツンツンしてて悪かったわねえ・・・」
「ユリがワタシ達のことをどう思っているのか、一度話し合ったほうがいいようね」
「違う!あ・・・違くないけど、違うというか・・・」
とっさの比喩表現として用いた論法のせいで、今度は他の精霊から不興を買ってしまった。
話が泥沼化しそうなところで、スポークが戻ってきた。
「カーク様、会議室の準備が整いました・・・何かあったのですかな?」
「いや、まあ、ちょっとな。準備に感謝する。本当に感謝する。では皆、会議室へ」
わたし達についてくるように指示したカークは、さっさとこの場を離れようと先頭を切って行こうとしたので、とっさにカークの腕を掴み、その足を止めた。
そしてわたしはカークに満面の笑みを向けて釘を刺した。
「カークさーん。これは貸しですよー。分かってますねー?」
「う・・・うむ」
◇
会議室には一足先にエリザが待っていた。
わたし達は久々の再会を喜んだ。
「ところでアドルはいないの?」
「アドルはエスカと一緒に『星の翼』号の改造を手伝っているから後で造船所へ顔を出してやってよ。元々の『星の翼』号は沈んでしまったが、大型の新造軍船をカーク殿から提供してもらえてね。今その船に大量の武装を積んだり、専用の魔道具を開発しているところなんだ。そしてこの『星の翼』号は、この国の旗艦になる予定だ。凄いだろ?」
「本当ですか!?凄いです!」
『星の翼』号は、エルザが率いていた反王都勢力『アーガス』の旗艦だった。
ライオット領から戻る途中の戦闘で船を沈められてしまった時は本当に悲しかった。
この星に故郷がないわたしにとって『星の翼』号は初めてわたしの居場所ができたところでもある。
船は変わってしまっても、わたしの帰る場所が再びできることがとても嬉しかった。
「では、早速だが情報交換を始めようか」
カーク達も席に座り、情報交換の会議が始まった。
まずわたしが、旅の成果について報告をした。
光の精霊の協力を得られたこと、メティスという仲間が増えたこと等を説明した。
「メティスちゃんはとても凄い能力を持っているので、何かとお役に立てると思います。当面はミっ・・・光の精霊の助手として動いてもらうことになると思いますが、この戦いが落ち着いたら、今度はわたしと一緒にそろばんの普及に一役買ってもらいたいと思っています」
「それは頼もしいな。メティス殿。よろしく頼む」
「はい!こちらこそよろしくお願いします!」
そして今度はカークから最新の情勢について報告があった。
エリザやカークの側近達は日々の軍議で情勢は知っているはずなので、わたし達に向けての説明だろう。
カークの側近達は既に渋い表情をしている。
おそらく大変な状況に対処するため、連日悩んでいるのだろう。
「王都の軍が攻めてくるのは宣戦布告された通りだが、西からはセントロード領、東からはライオット領が攻めてくる算段になっているようだ」
「えーと、ライオット領については太守のシュクリフさんと裏工作が済んでいるから心配いらないんですよね?」
「うむ。それにライオット領は領主の城の再建で大変なことになっているので、軍事行動を行うとしても小規模での参加になることを王都側には回答するつもりだとシュクリフ殿が言っていた」
「う、それは喜ばしいような、申し訳ないような・・・」
ライオット領の領主の城をぶっ壊した張本人としてはコメントしにくい話題である。
「問題はセントロード領だ。セントロードの領主は中立的な立場を取ると踏んでいたのだが、王都からの命令であれば逆らうこともできなかったのだろう」
セントロード領は、地球の地理に照らし合わせるとアフリカの位置になる大領地だ。
領地の特色や気性などは分からないが、カークの話を聞いた感じでは今回の軍事行動にはあまり乗り気では無いように思える。
「セントロード軍の戦力はどれぐらいと思われますか?」
「全軍をあげてくるとすれば、かなりの脅威になると思う。ライオット軍からの攻撃は無視するとしても、王都軍とセントロード軍を同時に相手にするのはかなり厳しいことになると思う」
「そうですか・・・」
「相手が王都の直轄軍だけでも厳しい戦いになることが予想される上に、西からも攻め入られるのだ。時間も物資もニューロックには足りない」
ニューロックの西側にも軍船の配置や陸からの艦砲射撃の配備は行っているが、セントロードの全軍に対抗できるほどの準備は間に合いそうもないそうだ。
「王都軍とセントロード軍に対抗するための大筋の策については近日中に決定しようと思う。せっかくユリ殿が光の精霊様のご協力を取りつけてくれたのだ。ぜひ戦略に組み込ませていただきたい」
「はい。お任せください。わたしも強くなりましたし、必ず撃退してみせますよ」
わたしのリップサービスに、側近達の表情が少し明るくなった。
・・・わたしが暗い顔をしてはいけない。
力がある者が弱気になってはいけない。
それが皆を勝利に導くことに繋がる。
アキム様はわたしにそう言った。
だからわたしもそれを信じて、自信の笑みを見せてやるんだ。
その時、会議室の扉がノックされた。
カークが入るように促すと、扉を開けてやってきたのはアドルだった。
アドルは軽く会釈をしてから会議室の中に入り、カークの所に向かった。
もっともカークの席は、角を挟んでわたしの隣でもあったので、アドルはカークとわたしの間で立ち止まった。
「やあ、ユリ。ちょうど帰ってきていると聞いてね、無事で良かったよ」
「うん、ただいま!後で色々話を聞かせてね」
「ああ、もちろん。オレにも土産話を聞かせて欲しい」
互いに笑顔を見せあった所で、カークから茶々が入る。
「後で時間をやるから、二人の世界に入るのは二人っきりの所でやってくれ。アドル殿は別の用事があるのではないか?」
「二人の世界って・・・ゴホン。カークさん、実は軍船の装備を作るための魔石が足りなくて・・・他の軍備にも魔石が入り用な事は分かっていますので、こちらに回せとは言いません。なので今から採掘に行かせてもらってもいいでしょうか?」
「今から採掘だと?それは構わんが間に合うのか?」
「・・・分かりません。それに採掘したとしても十分な採掘量が得られるとも限らないです」
ニューロックは魔石が多く取れる事で有名な土地だ。
今回の軍用魔道具の開発でもかなりの魔石が用意されており、特に新造の軍船向けには相当な数の魔石が配分されたらしい。
それでも足りないとは、どれだけ凄い魔道具を作っているのだろうか。
ともかく、手が足りないのであれば手伝う事はできる。
・・・アドルと一緒にいられる口実ができるとか、別にそんな事は思ってないですよ?
「ねえアドル、採掘に手が足りないのであれば、わたしが・・・」
「ユリは駄目よ」
手伝うよ、と言おうとした所でアフロに制止された。
「あなたはワタシ達と一緒に残された時間で特訓するのよ。採掘に時間を割いている暇は無いのよ」
「うん、それも分かっているけどアドルが・・・」
「あんた、魔石ってどんな魔石が必要なのよ」
今度はミネルヴァが口を挟み、アドルに質問した。
アドルの顔には『誰だこの子は?』という表情が浮かんでいるが、会議中に割り込んだ手前も有るので余計な質問はせず、回答を返した。
「えーと、個数よりも純度の高い魔石のほうがありがたいかな。ただ元々それほど純度の高いものは無いからその分は個数で補うとして・・・」
だいたいこれぐらいと必要量を説明した所で、ミネルヴァがメティスを連れて会議室の扉に向かった。
「少し待っていなさい」
そう言うとミネルヴァとメティスは会議室の外に出ていき、約十分後に戻ってきた。
メティスは警備兵と一緒に、大きな麻袋を台車に乗せて運んできた。
おそらくその辺にいた警備兵に手伝わせたのだろう。
そして台車ごと麻袋をアドルに渡す。
麻袋の中を見たアドルとカークは驚愕の声を上げた。
「なんだこの魔石は!?」
「凄い!純度の高い魔石がこんなに!?これは助かる!」
「無償じゃないわよ。相応のものをいただくわよ」
おそらくミネルヴァが溜め込んでいた魔石だろう。
ただし、ミネルヴァは物々交換、もしくは相応の金額を要求した。
まあ、無償で気前良く上げる訳も無いだろうから当然とも言える。
アドルは冷や汗をかきながら、カークの方を見る。
「カークさん・・・その・・・」
「うむ・・・まあ、国費で賄う必要は分かっているが・・・」
財政が傾きそうなほどに高価で大量の魔石を見て、カークも鼻白む。
・・・よし、これはちょうどいい。
「カークさーん、さっきの貸し、さっそく返していただけそうで何よりですー」
「う・・・」
「ミっちゃんが何を対価に欲しがるかは後で聞いてみてください。ミっちゃんにとって価値があるものであれば、お金である必要は無いかもしれませんよ」
「そ、そうだな。精霊様が欲するものは人間と同じとは限らないだろうからな」
ひとまず魔石を受領することは決まったので、アドルはホクホク顔で台車ごと麻袋を連れて会議室を後にした。
一方、カークはわたしが戻ってからずっと顔色が悪い気がする。
自業自得なところもあるので仕方がないが。
情報交換も済んだので、会議はここで終了となった。
カークはすこしふらつきながら会議室を出ていった。
ちょっとだけお気の毒である。
ところで、ひとつ気になることがあった。
「ねえ、ミっちゃん」
「何?」
「さっきの魔石だけど、あんなにたくさんの魔石をニューロックに持参してたっけ?かなり重そうだったし、持ってきていたら気がついたように思うんだけど、見覚えがなくて」
「ああ、そんなこと?」
ミネルヴァは何を当たり前のことを、という顔をしている。
やっぱり持参してきただけなのだろうか。
「今、取りに行ってきたのよ」
「・・・はい?」
「あたしの洞窟の部屋、あそこはあたしの結界で包んであるでしょ?あたしは自分の結界を自由に行き来できるのよ」
「え?え?」
ミネルヴァがちょっと何を言っているのか分からない。
「だから!あたしは今いる場所と結界を張った場所を行き来できるのよ。あの部屋をメティスに守ってもらわなくても構わないのは、こうして自分で好きな時に行き来できるからなの。分かった?」
「・・・うん、分かった」
・・・さらっとメティスは言ったが、これって凄く有効に利用できるんじゃね?
「そうすると向こう岸で精霊が人間を殺すわよ」
「ああっ!・・・もー何なのよこれ!」
こんな不穏な会話をしながら、わたし達はニューロックを目指して飛行していた。
帰りはメティスが同行することになったので、一応あまり速度を上げすぎないように注意しながら飛んでいる。
そのため、往路に比べると倍の時間がかかっているが、それでも十分に速い速度だ。
ロイドの町を出発してから今日は四日目。
今日の夕方にはニューロックに到着するはずだ。
「そうだ、最初に人が二人で渡れば・・・」
「残された一人が三人の精霊に殺されるわね」
「ぐぬぬ・・・」
まだ続いているこの不穏な会話の正体は、わたしがミネルヴァに出題したパズルのせいだ。
ミネルヴァが『ただ飛び続けるのに飽きたから、なんか面白い問題を出しなさいよ』と言うので、提供したものである。
色々と亜種は有るものの、これは『宣教師と人食い人種のボート渡り』という問題だ。
宣教師が三人、人食い人種が三人、川岸にいる。
川を渡るための小舟があるが、小舟は一度に二人しか乗ることが出来ない。
一応、全員が小舟を操縦できる。
この小舟を駆使して全員を反対側の川岸へ渡らせるのだが、それぞれの川岸で、人食い人種の人数が宣教師の人数を上回った場合、宣教師は食い殺されてゲームオーバーとなる。
それを踏まえて、上手に小舟を行き来させて全員を無事に渡らせるというものだが・・・
「センキョウシ?なにそれ?」
「人が人を食べるの?人間て野蛮なのね」
というクレームが発生したため、とりあえず分かりやすそうな単語に置き換えることにして、宣教師を人間、人食い人種を精霊とすることにした。
また、食い殺すのではなく、単純に殺すだけ、ということにして出題し直した。
それでも『精霊はそんな簡単に人を殺したりしないわよ!』などと言われたが、いきなりメティスを殺そうとしたミネルヴァのどの口が言うのかという反論にようやく大人しくなり、問題に取り掛かったところだ。
「やっぱり最初に精霊と人間を一人ずつ小舟に乗せて向こう岸へ渡す方針は間違ってないと思うのよ・・・」
ミネルヴァは独り言を言いながら真剣に問題に取り組んでいる。
紙に書いたり、石ころを動かしながらやると考えやすいが、頭の中だけでやろうとするとなかなか難しい。
解けたと思っても、途中の過程でゲームオーバー条件に引っかかっているのを見落としたりする。
「最短手順だと、確か十一回船を動かせば解けるはずよ。頑張ってね」
ニューロックが水平線の向こうに見えてきた頃、ようやくミネルヴァは正解を出すことができた。
◇
ロイドの町では遠慮したものの、ニューロックのコーラルの町では遠慮する必要など無い。
というわけで、わたし達はコーラルの港、そして町の上空をそのまま通過して直接カークの館の中庭に降り立った。
何事かと警備兵がすっ飛んできたものの、警備兵はわたしの姿を視認すると同時にホッと胸をなでおろして、館の中へ知らせに向かった。
驚かせてしまって申し訳ないので、これ以上余計な心配をかけないように迎えが来るまで待っていると、やがてカークと側近達が中庭にやってきた。
「おかえり、ユリ殿。思ったよりも早かったが、成果はあったかね?」
「ただいま戻りました、カークさん。ええ、良い結果が得られましたよ。ミっちゃん・・光の精霊様の協力を取り付けましたよ。詳しいお話は中でお話します」
「うむ・・・そうだな」
カークはわたしが連れてきた見知らぬ顔にチラッと視線を向けた。
それからスポークに指示を出す。
「早速だが情報交換といこう。スポーク、すぐに会議室の準備を頼む」
「承知しました」
カークの右腕であるスポークは、会議室の準備と、会議に参加してもらう人達に声をかけるために、側近を幾人か連れて屋敷の中へと戻っていった。
そしてカークはミネルヴァ達の方へと歩み寄り、恭しく頭を下げた。
「ようこそお越しくださいました、光の精霊様。ご協力、感謝いたします」
「あの・・・えっと・・・」
「カークさん、違います!その子じゃないほうです!」
カークはメティスに向かって頭を下げていた。
おそらく見た目で判断したのだろうが、ミネルヴァよりもメティスのほうが背も高いし大人びて見える。
ずっと目を瞑っているのもちょっと神秘的な感じがしないでもない。
そしてミネルヴァはどちらかと言えば顔立ちも幼い。
間違えても仕方がない。
仕方がないが・・・
「・・・そこの人間。あたしを馬鹿にしているのかしら?それとも侮られているのかしら?」
「い、いえ・・・そんな事は・・・その・・・」
自分の失態に気がついたカークは、しどろもどろの返答をした。
精霊を怒らせたらただでは済まない。
それにせっかくわたしが精霊の協力を取り付けたというのに、機嫌を損ねてしまえば反故にされる可能性すらある。
カークは懇願するような目と共に、真っ青な顔をわたしに向けた。
・・・尻拭いをしてほしいということですね、分かります。
カークさんめ、いきなり精霊の不興を買うような真似をするとは・・・
「ミっちゃん、ほら、人間基準だとミっちゃんはかわいくて若く見えるから、間違えられても仕方ないと思うよ、うん」
「つまり、メティスのほうが大人びてると言ってるのよね?」
「えーとそれは・・・意外性・・・そう。意外性よ!精霊は皆ツンとしててちょっと怖いぐらいじゃない?でもミっちゃんはその溢れんばかりの魅力があるから人間の男性なら勘違いしちゃっても無理はないと思うんだよね、ははは・・・」
「・・・まあ、あたしが魅力的なのは知ってるわ。あんたより胸もあるしね」
「そ、そうね・・・」
わたしは顔が引きつるのを必死に抑え、笑顔を崩さないように頑張った。
「まあ、そういう事ならいいわ」
「は、はあ・・・」
カークは胸をなでおろし、窮地を脱したことに心からホッとしていた。
しかし今度はわたしが窮地に陥る番だった。
「のう、ユリ。妾はそんなに怖かったかのう?」
「ツンツンしてて悪かったわねえ・・・」
「ユリがワタシ達のことをどう思っているのか、一度話し合ったほうがいいようね」
「違う!あ・・・違くないけど、違うというか・・・」
とっさの比喩表現として用いた論法のせいで、今度は他の精霊から不興を買ってしまった。
話が泥沼化しそうなところで、スポークが戻ってきた。
「カーク様、会議室の準備が整いました・・・何かあったのですかな?」
「いや、まあ、ちょっとな。準備に感謝する。本当に感謝する。では皆、会議室へ」
わたし達についてくるように指示したカークは、さっさとこの場を離れようと先頭を切って行こうとしたので、とっさにカークの腕を掴み、その足を止めた。
そしてわたしはカークに満面の笑みを向けて釘を刺した。
「カークさーん。これは貸しですよー。分かってますねー?」
「う・・・うむ」
◇
会議室には一足先にエリザが待っていた。
わたし達は久々の再会を喜んだ。
「ところでアドルはいないの?」
「アドルはエスカと一緒に『星の翼』号の改造を手伝っているから後で造船所へ顔を出してやってよ。元々の『星の翼』号は沈んでしまったが、大型の新造軍船をカーク殿から提供してもらえてね。今その船に大量の武装を積んだり、専用の魔道具を開発しているところなんだ。そしてこの『星の翼』号は、この国の旗艦になる予定だ。凄いだろ?」
「本当ですか!?凄いです!」
『星の翼』号は、エルザが率いていた反王都勢力『アーガス』の旗艦だった。
ライオット領から戻る途中の戦闘で船を沈められてしまった時は本当に悲しかった。
この星に故郷がないわたしにとって『星の翼』号は初めてわたしの居場所ができたところでもある。
船は変わってしまっても、わたしの帰る場所が再びできることがとても嬉しかった。
「では、早速だが情報交換を始めようか」
カーク達も席に座り、情報交換の会議が始まった。
まずわたしが、旅の成果について報告をした。
光の精霊の協力を得られたこと、メティスという仲間が増えたこと等を説明した。
「メティスちゃんはとても凄い能力を持っているので、何かとお役に立てると思います。当面はミっ・・・光の精霊の助手として動いてもらうことになると思いますが、この戦いが落ち着いたら、今度はわたしと一緒にそろばんの普及に一役買ってもらいたいと思っています」
「それは頼もしいな。メティス殿。よろしく頼む」
「はい!こちらこそよろしくお願いします!」
そして今度はカークから最新の情勢について報告があった。
エリザやカークの側近達は日々の軍議で情勢は知っているはずなので、わたし達に向けての説明だろう。
カークの側近達は既に渋い表情をしている。
おそらく大変な状況に対処するため、連日悩んでいるのだろう。
「王都の軍が攻めてくるのは宣戦布告された通りだが、西からはセントロード領、東からはライオット領が攻めてくる算段になっているようだ」
「えーと、ライオット領については太守のシュクリフさんと裏工作が済んでいるから心配いらないんですよね?」
「うむ。それにライオット領は領主の城の再建で大変なことになっているので、軍事行動を行うとしても小規模での参加になることを王都側には回答するつもりだとシュクリフ殿が言っていた」
「う、それは喜ばしいような、申し訳ないような・・・」
ライオット領の領主の城をぶっ壊した張本人としてはコメントしにくい話題である。
「問題はセントロード領だ。セントロードの領主は中立的な立場を取ると踏んでいたのだが、王都からの命令であれば逆らうこともできなかったのだろう」
セントロード領は、地球の地理に照らし合わせるとアフリカの位置になる大領地だ。
領地の特色や気性などは分からないが、カークの話を聞いた感じでは今回の軍事行動にはあまり乗り気では無いように思える。
「セントロード軍の戦力はどれぐらいと思われますか?」
「全軍をあげてくるとすれば、かなりの脅威になると思う。ライオット軍からの攻撃は無視するとしても、王都軍とセントロード軍を同時に相手にするのはかなり厳しいことになると思う」
「そうですか・・・」
「相手が王都の直轄軍だけでも厳しい戦いになることが予想される上に、西からも攻め入られるのだ。時間も物資もニューロックには足りない」
ニューロックの西側にも軍船の配置や陸からの艦砲射撃の配備は行っているが、セントロードの全軍に対抗できるほどの準備は間に合いそうもないそうだ。
「王都軍とセントロード軍に対抗するための大筋の策については近日中に決定しようと思う。せっかくユリ殿が光の精霊様のご協力を取りつけてくれたのだ。ぜひ戦略に組み込ませていただきたい」
「はい。お任せください。わたしも強くなりましたし、必ず撃退してみせますよ」
わたしのリップサービスに、側近達の表情が少し明るくなった。
・・・わたしが暗い顔をしてはいけない。
力がある者が弱気になってはいけない。
それが皆を勝利に導くことに繋がる。
アキム様はわたしにそう言った。
だからわたしもそれを信じて、自信の笑みを見せてやるんだ。
その時、会議室の扉がノックされた。
カークが入るように促すと、扉を開けてやってきたのはアドルだった。
アドルは軽く会釈をしてから会議室の中に入り、カークの所に向かった。
もっともカークの席は、角を挟んでわたしの隣でもあったので、アドルはカークとわたしの間で立ち止まった。
「やあ、ユリ。ちょうど帰ってきていると聞いてね、無事で良かったよ」
「うん、ただいま!後で色々話を聞かせてね」
「ああ、もちろん。オレにも土産話を聞かせて欲しい」
互いに笑顔を見せあった所で、カークから茶々が入る。
「後で時間をやるから、二人の世界に入るのは二人っきりの所でやってくれ。アドル殿は別の用事があるのではないか?」
「二人の世界って・・・ゴホン。カークさん、実は軍船の装備を作るための魔石が足りなくて・・・他の軍備にも魔石が入り用な事は分かっていますので、こちらに回せとは言いません。なので今から採掘に行かせてもらってもいいでしょうか?」
「今から採掘だと?それは構わんが間に合うのか?」
「・・・分かりません。それに採掘したとしても十分な採掘量が得られるとも限らないです」
ニューロックは魔石が多く取れる事で有名な土地だ。
今回の軍用魔道具の開発でもかなりの魔石が用意されており、特に新造の軍船向けには相当な数の魔石が配分されたらしい。
それでも足りないとは、どれだけ凄い魔道具を作っているのだろうか。
ともかく、手が足りないのであれば手伝う事はできる。
・・・アドルと一緒にいられる口実ができるとか、別にそんな事は思ってないですよ?
「ねえアドル、採掘に手が足りないのであれば、わたしが・・・」
「ユリは駄目よ」
手伝うよ、と言おうとした所でアフロに制止された。
「あなたはワタシ達と一緒に残された時間で特訓するのよ。採掘に時間を割いている暇は無いのよ」
「うん、それも分かっているけどアドルが・・・」
「あんた、魔石ってどんな魔石が必要なのよ」
今度はミネルヴァが口を挟み、アドルに質問した。
アドルの顔には『誰だこの子は?』という表情が浮かんでいるが、会議中に割り込んだ手前も有るので余計な質問はせず、回答を返した。
「えーと、個数よりも純度の高い魔石のほうがありがたいかな。ただ元々それほど純度の高いものは無いからその分は個数で補うとして・・・」
だいたいこれぐらいと必要量を説明した所で、ミネルヴァがメティスを連れて会議室の扉に向かった。
「少し待っていなさい」
そう言うとミネルヴァとメティスは会議室の外に出ていき、約十分後に戻ってきた。
メティスは警備兵と一緒に、大きな麻袋を台車に乗せて運んできた。
おそらくその辺にいた警備兵に手伝わせたのだろう。
そして台車ごと麻袋をアドルに渡す。
麻袋の中を見たアドルとカークは驚愕の声を上げた。
「なんだこの魔石は!?」
「凄い!純度の高い魔石がこんなに!?これは助かる!」
「無償じゃないわよ。相応のものをいただくわよ」
おそらくミネルヴァが溜め込んでいた魔石だろう。
ただし、ミネルヴァは物々交換、もしくは相応の金額を要求した。
まあ、無償で気前良く上げる訳も無いだろうから当然とも言える。
アドルは冷や汗をかきながら、カークの方を見る。
「カークさん・・・その・・・」
「うむ・・・まあ、国費で賄う必要は分かっているが・・・」
財政が傾きそうなほどに高価で大量の魔石を見て、カークも鼻白む。
・・・よし、これはちょうどいい。
「カークさーん、さっきの貸し、さっそく返していただけそうで何よりですー」
「う・・・」
「ミっちゃんが何を対価に欲しがるかは後で聞いてみてください。ミっちゃんにとって価値があるものであれば、お金である必要は無いかもしれませんよ」
「そ、そうだな。精霊様が欲するものは人間と同じとは限らないだろうからな」
ひとまず魔石を受領することは決まったので、アドルはホクホク顔で台車ごと麻袋を連れて会議室を後にした。
一方、カークはわたしが戻ってからずっと顔色が悪い気がする。
自業自得なところもあるので仕方がないが。
情報交換も済んだので、会議はここで終了となった。
カークはすこしふらつきながら会議室を出ていった。
ちょっとだけお気の毒である。
ところで、ひとつ気になることがあった。
「ねえ、ミっちゃん」
「何?」
「さっきの魔石だけど、あんなにたくさんの魔石をニューロックに持参してたっけ?かなり重そうだったし、持ってきていたら気がついたように思うんだけど、見覚えがなくて」
「ああ、そんなこと?」
ミネルヴァは何を当たり前のことを、という顔をしている。
やっぱり持参してきただけなのだろうか。
「今、取りに行ってきたのよ」
「・・・はい?」
「あたしの洞窟の部屋、あそこはあたしの結界で包んであるでしょ?あたしは自分の結界を自由に行き来できるのよ」
「え?え?」
ミネルヴァがちょっと何を言っているのか分からない。
「だから!あたしは今いる場所と結界を張った場所を行き来できるのよ。あの部屋をメティスに守ってもらわなくても構わないのは、こうして自分で好きな時に行き来できるからなの。分かった?」
「・・・うん、分かった」
・・・さらっとメティスは言ったが、これって凄く有効に利用できるんじゃね?
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