ポニーテールの勇者様

相葉和

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107 陥落

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町から少し離れた高台で、男は町の様子を見ていた。
生暖かい風に乗って、埃臭さと焦げ臭い匂いが男の周囲まで届いていた。
町からは何度も爆発音が響いていた。

町は地獄絵図と化していた。
あちらこちらから煙が上がり、瓦礫と化している建屋も多くあった。
うずくまり震えている親子や倒れている老人、既に事切れている者も多くいた。
戦いに巻き込まれた一般民だった。
最初は郊外で始まった王都軍との戦いだったが、王都軍の攻勢はとどまらずに市街戦へとなだれ込んだ。
町の随所で王都兵との戦いが起こり、さらに攻城兵器のような飛び道具で町の建造物は破壊され続けていた。
振動と爆発音に混じって、町の人の怒号や悲鳴が上がり続けていた。

男はそんな町の様子を顔色ひとつ変えずに見続けていた。
やがて男に、騎士風の男が近づいてきた。

「フラウス殿、町の様子を見ておいででしたか」
「ダーム殿か。うむ、戦況はどうか」

王都の護衛騎士隊長であるフラウスはダームに戦況を尋ねた。
護衛騎士隊長であるフラウスが王の傍を離れるのは異例のことだったが、フラウスの指揮能力の高さと、前回のニューロック戦で敗北した王都の汚名返上のためにバルゴより勅命を与えられて戦地に赴いていた。

「はっ。間もなく太守の館も落ちると思われます。さすがは王都軍の主力部隊。力が違いますね」
「陛下に賜った魔道具もある。これでまた負けたら陛下に顔向けできぬからな」

そう言うとフラウスは手を上げ、サッと前に振った。
すると後ろの方から轟音が響き、火の玉のようなものが町に向かって飛び、町の中央付近に着弾して爆発音を上げた。
フラウスは後ろにいた魔導兵隊に砲撃の合図を送ったのだった。
魔導兵隊が行使した魔道具は移動式砲台のようなもので、火の魔石を中心とした魔石回路により、炎の魔力で出来た砲弾を放つというものだ。
バルゴの直轄魔道士団が開発して今回の戦闘で初めて使用されたものだが、見ての通りに十分な戦果を上げていた。
町中で戦っている味方も巻き添えを食らいそうな使い方だが、フラウスもダームも気にする様子はなかった。

「・・・太守の館付近に着弾したようですね。それにしても凄い魔道具ですね」
「陛下は以前、これよりもはるかに強力な魔道具をグレースの前太守に預けたのだがな。使い勝手が悪かったのか使い手のせいなのかは分からぬが、結果的に失敗に終わった。小型ではあるが魔力効率も良いこちらの魔道具のほうが使い勝手が良いようだ」
「これで小型とは恐れ入りました。しかしながら、ここまで敵地に近づける兵力と戦略があってこそ活かせる魔道具でありましょう。さすがはフラウス殿です。その・・・前太守であったフェイム様はいささか思慮に欠け、力押しばかりなところがございましたゆえ・・・」

フェイムは領地グレースの元太守だった男で、前回のニューロックとの戦いで命を落としていた。
現在のグレースは太守不在で、王都が飛び地として管理している。
そしてダームはフェイムの元部下であり、グレースの陸戦部隊の指揮官だ。
フェイムが命を落とした戦いの際には、ダームと陸戦部隊は領地防衛のためにグレースに残されていたが、今回の戦いでは王都軍との共同作戦のために出征し、フラウスと共に現場の指揮を任されていた。

「フェイムは死んだとはいえ、ダーム殿の元上官であろう。手厳しい言葉だな。しかしダーム殿の現場指揮はたいしたものだ。さすがはグレースの陸戦隊隊長、いや、次期グレース太守かな」
「恐れ入ります。ほぼ勝敗は決したと思われます。これより後詰めの部隊と共に太守の館を落としてまいります」
「うむ。次の砲撃と同時に突入し、王都からの独立を企てた愚か者共を捕らえよ」
「はっ!」



「ユリお姉ちゃん・・・」
「しっ!声を立ててはダメ。見つからないように、じっとするのよ」

わたしとミライはカークの館の応接室にある棚の中に隠れていた。

・・・アドルは無事だろうか。
せめてわたし達だけでも逃げ切らないと・・・

ここに隠れる前に、エスカとルルは捕えられたという声が既に聞こえていた。
おそらくノーラも既に捕まっているだろう。

その時、応接室の扉が開く音がした。

「ユリお姉ちゃん、怖いよぅ・・・(超小声)」
「大丈夫だからね、息をひそめるの(超小声))

応接室の中に誰かが入って歩く足音が聞こえる。
足音と共に、ガタゴトと物が動かされる音が聞こえてきた。
部屋の中のあら捜しをしているのだろうか。

(・・・そんなことする必要ないよ。ここには誰もいないから!)

心の中で叫んでみたものの願いは叶わず、わたし達が隠れている棚の扉が開かれてしまった。

「こんなところに隠れていたとは・・・捕まえた」
「・・・まだよ!せめてミライちゃんだけは逃がすわ!」

そう言ってわたしは飛びかかったものの意気込みも虚しく、あっけなく・・・わたしとミライはサラに前足でポン、ポン、とタッチされた。

「はい、これで私の勝ち。さっきアドルも捕まえたし、あなた達が最後よ」
「うーん、ミライ悔しいの!」
「でもミライちゃん、わたし達は最後に見つかったんだし、みんなより頑張ったほうだよ。それにしてもカピバラの嗅覚は優秀なんだねー」
「失礼ね!匂いで探してなんかないわよ!自力よ!」

カークの館を使った『かくれんぼ兼鬼ごっこ』。
制限時間内に全員が鬼に見つかってタッチされると鬼の勝ちというルールだ。
そして今回は鬼役のサラに全員が見つけられて捕まり、サラの勝利となった。
ちなみにカピバラは本気で走るとめちゃくちゃ速い。
実は時速五十キロ近く出せるスプリンターだ。
もっともサラが依代の形としてカピバラの姿をしているだけなので、同じ速度で走れるとは限らないが、サラは風の精霊なので元々素早く移動できるし、なんなら飛べる。
なので単純な鬼ごっこではかなわないと考え、隠れ通すつもりだったがダメだった。

「よーし、じゃあ気を取り直して、鬼を変えてもう一回・・・」

その時、アドルが応接室にやってきた。

「おーい、ユリ、サラさん。カークさんが呼んでる。一緒に来てくれ」

次のゲームを始める前にアドルに呼び止められたわたし達は、アドルに連れられてカークの待つ会議室へと向かった。



会議室に着くと、カークの側近を始め、アーガスの幹部全員も揃っていた。
もちろんディーネ、サラ、アフロも同席している。

「皆、急に集まってもらってすまない。実は王都から全領地に向けて緊急の連絡、いや、通達があった」

王都から通達?
また攻めてくる気だろうか。

「オルトラントが王都軍とグレース軍の侵攻を受けて、陥落したそうだ」

会議室内でざわめきが起こった。
オルトラントはグレースの西側、地球の地図に当てはめるとヨーロッパ圏にあたる地域だ。
この領地についてはわたしも知っていた。
オルトラントはニューロックが独立・建国を宣言して、その後、ニューロックが王都からの攻撃を退けた数日後に独立を宣言した領地だった。
ニューロックが王都軍を退けたことで独立の意思を固めたと思われるが、『王都恐るるに足らず、ニューロックに続くべし』という強気なスローガンにはちょっと苦笑した記憶がある。
とはいえ、独立宣言をした領地同士、いや、国同士なので、友好的な国交を結べるのではないかとカークが画策していた矢先の陥落だった。

「知っての通りオルトラントはグレースの西方にある領地で、ニューロックと違い、グレース領と地続きの領地だ。グレース軍と王都軍の地上部隊が共同戦線を張って強行し、オルトラントを陥落せしめたものと思われる」

・・・なるほど、地の利って大事だね。

ニューロックは周囲が海に囲まれているため、ニューロックに接近するためには船を使うか、気合で泳いで来るしか無い。
航空技術を持っているのも現時点ではラプターを開発したニューロックだけだ。

「オルトラントの太守と側近、そして反抗した市民はすべて処刑されたそうだ。そしてオルトラントの領地は、当面はグレースが併合地として扱うそうだ」
「・・・多くの民が犠牲になったのでしょうね」

カークの側近であるスポークが悲痛な面持ちで呟いた。
スポークの言葉で、会議室にいる全員の表情も暗くなった。
独立宣言をした仲間同士とも言える領地が王都軍に落とされた事だけが暗い表情の理由ではない。
独立をしたことによる責任を改めて思い知った。

・・・国を守るために、まずは国民を第一に考え、守る。
この責任をしっかり果たさなければならない。

「皆、そんなに暗い顔をするな。もちろんオルトラントの陥落は残念だ。しかし独立をした以上、王都に目をつけられることは重々承知していたはずで、オルトラント側にもきっと勝算があっての独立だったと信じている。独立前に一度我々に相談してくれていれば、良い提案が出来たのかもしれないが・・・」

カークは話を途中で切り、わたしを見た。

「ユリ殿、もしも他の領地が独立をしたいとニューロックに相談を持ちかけてきたら、どう対処する?」
「ユリ焼きの加盟店になる事を勧めますかね。『フランチャイズ計画』を国外に広げるチャンスです」
「初めて聞く計画だが、商売の話ではなく・・・」
「すみません、軽い冗談です。そうですね・・・王都の戦力に対抗するための戦力を整えるための技術提供をしたり、民を守るための算段をしっかりつけて、いざという時には共闘したり逃げたりするための協力関係を結ぶ・・・たとえばニューロックで難民を一時的に受け入れたり、王都から攻撃を受けたら加勢できるような体制を整えるとかですかね」

カークは頷いた。

「ユリ殿の言う事に付け加えるならば、相手の領地が信頼に値するかどうかを見極める必要もある。逆に相手側にもニューロックを信頼してもらわねばならない」

王都サイドの領地が協力するふりをして罠に嵌める可能性や、独立をそそのかして領地を併合するなど、不利益に利用されないように警戒する必要がある、とカークは言った。

「はい、カークさんの言うとおりだと思います。協力すると見せかけて裏切られるのが一番痛いですからね。裏を取りながらしっかり話をしたほうが良いでしょうね」
「理解してもらえたところで、ユリ殿。ひとつ相談があるのだが・・・」

相談とな?
ここまではフリだったのかな?

「実は、実際に他の領地から独立の相談が来ている。独立の際にはニューロックと協力関係を結び、連携を図りたいそうだ」
「ほほう。やはりここまでの話はフリだったのですね。で、わたしにお役目が?」

わたしの質問に対して『さすが、話が早い』とカークがつぶやき、そしてスポークに合図を送ると、スポークは机の上に世界地図を広げた。

カークが地図の上に指を乗せた。

「ライオット領。ニューロックの東にある大領地だ。この領地の太守から連絡があったのだ」

・・・南アメリカ大陸の領地か。
確かに大領地だね。
距離はあるけど一応お隣さんだし、日本・・・じゃなくて王都管理区からも距離がある。
独立するには良い場所かもしれない。

「この領地が信頼にあたるかどうかを調べるのでしょうか?とりあえず通話の魔道具で話をしてみればいいです?」
「・・・招待されているのだ」
「はい?」

曰く、ニューロックにいる勇者とやらに直接会って話がしたいのだそうだ。
その上で、独立や国交を結ぶかどうかを検討したいとの事だ、
期間はおそらく移動を含めて三十日程度との見解だ。

「国交を樹立した際には、ニューロックが持つ軍事技術の提供と、勇者による庇護を希望している」
「・・・えーと、技術供与はこの際置いといて、庇護ってなんですか?わたしにライオット領も守れと?結構遠いですよね?」

・・・オーストラリアから南アメリカ大陸までは相当な距離があったと思う。
地球の六分の一だとしても、だいぶ遠い。

「まずは大義名分が欲しいのだと思う。『ライオットも勇者の名のもとに独立をした』というような感じであろう」

名前を貸すだけなの?
有名人の名前がついた焼肉屋じゃあるまいし。

「・・・罠だという可能性は無いのですか?ノコノコ出向いた所で殺されるような事があってはたまりませんよ」
「ライオットの太守とは何度も会っているが、なかなか聡明な男だ。俺と同様にバルゴに対しても昔から批判的な態度を取っていて、個人的には親交もある。ちょっといけ好かないところもあるが、罠の可能性は低いし、もしもユリ殿を嵌めるようなことがあったら、殺されても領地を潰されても責任は取らないとあらかじめ言ってある」
「わたしは魔王か何かですか!?」

ひどい言われようにちょっと腹が立ったが、話の流れ的にはライオット領を訪問して欲しいと言われているように思う。
うーん、困ったな・・・

「えーと、ライオット領の独立で、ニューロックにはなにか『メリット』・・・利益はあるのですか?ここまでの話ではあまり利益を感じなかったのですが」
「さすが、鋭いな。一応、ライオットの資源や特産物をニューロックに供与するという話にはある。細部は後で詰めるがな。資源と言えばライオットには有数の森林地帯があって、そろばんの素材に使える木材があるかもしれない。太守はそろばんの技術にも興味を持っていたな」
「なるほど、いい領地ですね。信用しましょう」
「・・・ユリ殿はそろばんが絡むとつられやすくなりすぎる。俺が言うのも何だが少し気をつけたほうが良かろう」

とりあえずニューロックにメリットがあることも分かった。
しかしそれでもわたしは・・・

「でもやっぱり、わたしは行けないです」
「・・・ユリ殿が不在の間の防衛についてはしっかり検討するつもりだ。できれば精霊様を一人貸していただけると助かる。それと王都にいらぬ隙きを突かれないようニューロックからライオットに行くこと自体も隠匿しておくつもりだ」
「いえ、防衛面の不安ではありません。もっと大事な理由があります」

大事な理由という言葉で、カークの顔が引き締まった。
カークが想定していなかったような重大問題があるのか、と戦々恐々しているかのようだ。

「とても大切なことです・・・そろばんのオンライン授業が休みになってしまいます」

カークは崩れ落ち、会議室にいる面々も頭を振ったり、やれやれという顔をしている。
え、何で?

「そんなくだらない理由ならば、ぜひ行っていただきたいのだが・・・」
「くだらないとは何ですか!国を挙げての施策じゃないですか!」
「問題集で自主練習もできるし、一時的に休むだけであろう?」
「毎日の積み重ねが大事なんです!」

その後も問答を繰り返したものの、わたしの味方に付いてくれる者は少なく、泣く泣く授業をお休みしてライオットへ訪問する方針が固まってしまった。



この時、アフロがずっとわたしを見つめて何かを思案していたことに、わたしは全く気が付いていなかった。


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