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068 風の精霊との戦い
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「お前には風の精霊と戦ってもらう。勝てば、儂はニューロックに行き、お前達に協力してやろう」
この爺さん、とんでもない課題を出してきたよ・・・
風の精霊と戦えと?
てか、風の精霊は一体どこから現れたのだろうか。
「ユリよ。この風の精霊は、ずっとこの部屋にいたと思われる。巧妙に隠れていたようじゃな」
「ディーネちゃんでも気が付かなかったの?」
「薄く、魔力が満ちている気配だけは掴んでいたのじゃ。ただ、これだけの魔道具が散乱している部屋なのでな。魔道具の影響によるせいだと錯覚させられていたようじゃな」
ディーネでも気づけなかったのなら仕方ないと思う。
風の精霊が天井付近からわたし達を見下ろしている。
どう戦えばいいのだろう・・・
精霊との戦い方なんて分からない。
それにわたしは魔力の扱いが未熟だ。
半人前のわたしとでは勝負にならない気がする。
「ユリ。外に出るがいい。勝負の方法を教える」
アキムに促され、小屋の外に出る。
そして近くの空き地に連れて行かれた。
アキムが木の枝を使って、地面に円を描いた。
直径五メートルぐらいだろうか。
「円はだいたいの目安だ。ユリはこの円の中心に立て」
わたしは言われるままに、円の中心に立った。
「今から風の精霊がお前を円の外に弾き飛ばそうとする。それを凌いでみろ。一刻ほど凌いだらお前の勝ちだ」
一刻!?
約一時間も!?
長くね?
「一刻を待たず、風の精霊が降参してもお前の勝ちだ。耐えてみせよ」
うう、とりあえず頑張るしかないか・・・
わたしにできるのは水の防御。そして反射。それとちょっとした遠隔攻撃。
物理的な対策はできるけど、風ってどうなんだろう?
「あ、そういえば魔道具って使っていいのですか?」
アキムに質問してみた。
「魔道具か。いいだろう。使うがいい」
「ありがとうございます。ではちょっと作戦会議の時間をください」
「あまり時間はかけるな」
わたしはアドル達の元に急いで行った。
「アドル、なんか使えそうな魔道具持ってきてない?贅沢は言わないから、風の攻撃を完全無効化するようなやつとかでいいわ」
「そんなもの、あるわけがないだろう・・・」
「ユリよ、それは贅沢なのではないかの・・・」
とりあえず魔力剣と魔力盾を出してもらったが、アドルは他にも何か有効な手立てがないか、必死に考えている。
ノーラは・・・『わたしに聞いても無駄です』というように無表情で右斜め上を向いている。
ノーラの思考放棄がだんだんひどくなっているように感じる・・・
「ユリよ。妾と一緒でも良いか聞いてみてはどうじゃ?」
「それはだめよ、水の精霊」
後ろからいきなり聞き慣れない高い声をかけられた。
心臓が飛び出るかと思った。
そこには風の精霊がいた。
部屋で見た時よりも輪郭がしっかりとしていた。
全身は薄い緑の半透明で、まるで蜃気楼のようにユラユラと揺れていた。
初めて水の精霊と出会った時の事を思い出す。
今ではすっかりハシビロコウの姿に慣れてしまったが、まさに『精霊らしい姿』だと思った。
風の精霊は、体に同化しているかのような薄い緑色の羽衣の服を纏い、姿勢良くスッと立っている女性の姿で、とても美しかった。
体の周囲に弱い風をまとわりつかせているようで、羽衣の裾がひらひらと舞い、わたし達にも優しく風が吹いていた。
そして・・・またしても、乳がでかい。
創造主というのはそんなに大きい乳が好きなのだろうか。
若干腹が立つ。
「水の精霊、久しぶりね。しばらく見ないうちに、随分と面白い形になったわね」
「久しいの、風の精霊。其方、自由に世界の空を飛び回るのが信条であろうに、なぜここに留まっておるのじゃ?」
水の精霊がそう問いかけると、風の精霊はディーネの問いには答えず、フワッと空中で体を回転させ、わたしの目の前にゆっくりと降りてきた。
「あ、あの、風の精霊さん。お手柔らかにお願いします・・・」
「わたしはこの子の力が見たいの。水の精霊が力を託したという、この子の力を。だから水の精霊、今回は遠慮してくださる?」
風の精霊はわたしを見つめたまま、水の精霊と対話を続けていた。
「・・・ユリはまだ十分に力を発揮できないのじゃ。それを踏まえて、手合わせしてほしい」
ディーネが戦いに手を出さない事を風の精霊に承諾したため、わたしとディーネとの共闘は不可となってしまった。
一応、釘は刺してくれたみたいだけど。
「悪いようにはしないわ。死んじゃったらごめんなさいね」
それ、悪いようにどころか、最悪だよ!
そう言うと風の精霊は、対決の場の方に向かってゆるゆると飛んでいった。
結局、わたしはアドルから魔法剣と魔法盾を借りたものの、他の良案は出ないまま、わたしは風の精霊と対峙するために円の中の立ち位置についた。
「円から出たらユリの負けだ。凌ぎきったらユリの勝ちだ。よいな。では始めよ」
わたしは水の防御を展開し、さらに魔法盾を起動した。
とりあえず初撃をしのぐ!
風の精霊が動く。
現在、風の精霊は、わたしから二十メートル程度は離れている場所にいる。
「では、まずは小手調べ」
風の精霊はそう言うと、風の精霊の目の前につむじ風のようなものを出現させた。
まずはこのつむじ風を防げは・・・ってあれ?
つむじ風はその場でだんだんと威力を増し、ちょっとした竜巻にまで成長した。
テレビでよく見る、家の屋根をすっ飛ばすぐらいには勢いがありそうな竜巻に見える。
そして、竜巻はゆっくりとわたしに向かって近づいてきた。
・・・あ、これ、無理だ。飛ばされる。
『小手調べ』という言葉について風の精霊と話し合いがしたい。
竜巻が迫る。
何か考えろ・・・
せめて体を固定するんだ・・・
「ユリ!」
「師匠!」
「ユリお姉ちゃん!」
アドルとノーラの叫ぶ声が聞こえる。
ミライの声は少し泣き声混じりだ。
そして、わたしは竜巻に飲み込まれた。
◇
「・・・っしゃあ、凌いだ!」
竜巻が消えた。
地面に不恰好に伏せるわたしは、ほっぺたを地面につけたまま、勝利の声を上げた。
危なかった・・・
わたし、よく頑張った!
竜巻が迫ってきた時、わたしは咄嗟に右足に全魔力を集中して地面を踏み抜いた。
いつぞやのインチキ震脚だ。
あまり硬い地面ではなかったのも幸いして、膝程度までは穴を開けることができた。
片足は穴に膝まで入れ、もう一方の足を百八十度近く開脚する。
わたしは日頃から柔軟を欠かさず、股割りができたのが功を奏した。
なんでもやっておいてよかった。
そして、全身を反射付きの水の防御で固めると、体を前屈させ、地面にぺったりとくっつけた。
シンデレラバストなので密着性は高い。
どうだ見たか創造主よ。
大きければいいってもんじゃないんだよ、ちくせう。
そして、アドルから借りた魔力剣を左手で逆手に持ち、地面方向に密着させて刃を具現化し、刃を地面に深くめり込ませた。
左手の刃と、右足の穴の二点で、体をしっかりと地面に固定する。
魔法盾は表面積が大きいので、かえって飛ばされる可能性が高いと考え、起動を中止した。
最後は頭もしっかりと地面に伏せ、竜巻をやり過ごすことに集中した。
潰されたカエルのようなわたしの体勢は、見た目ははなはだ残念としか言いようがないが、なんとか竜巻を凌ぎ切ってみせた。
「ユリお姉ちゃん、すごい!すごい!」
「師匠、お見事です!」
ミライが歓喜の声を上げた。
ノーラも賞賛してくれている。
わたしも残念な体勢のまま、笑顔を見せたが、その笑顔はすぐに凍りついた。
「ユリ、風の精霊はまだ負けを認めてないようだぞ」
アキムからそう声をかけられたからだ。
・・・そうだ。私はまだ勝っていない。
一時間は凌がないといけないんだ。
今どのくらいたった?
せいぜい五分くらい?
とっとと諦めて降参してくれればいいんだけど。
とりあえず一時間でも二時間でもこのまま粘ってやる。
そう思った時だった。
「ユリよ!避けよ!」
ディーネが大きな声で叫ぶ。
しかし、この体勢では避けるにしても、すぐには無理だ。
ジェット機が風を切るような音が聞こえる。
せめて周囲を見ようと上半身を起こした時だった。
首に何かが触れた。
そして、まるで鋭利な刃物で斬られたかのように、わたしの首の付け根あたりから、鮮血が噴き上がった。
水の防御をものともせず、わたしの首を何かが切り裂いていた。
「あ・・・がっ・・・」
わたしは再び地面に倒れ込んだ。
痛みとショックでまともに声も出せない。
首を手で押さえても血は止まらない。
呼吸も苦しくなってきた。
それでも、目だけは風の精霊を探していた。
しのがないと・・・一時間耐えなきゃ・・・
風の精霊が再び竜巻を起こすのが見えた。
竜巻がわたしに近づいてくる・・・。
ミライの絶叫が聞こえる。
アドルもノーラも何か叫んでいる気がする。
意識が飛びそうだが、せめて迫ってくる竜巻からは眼をそらさないように目を凝らした。
その時、ディーネが視界に入ってきた。
え、ディーネちゃん?
なんで?
竜巻とわたしの間にディーネが割り込み、ディーネがわたしに覆いかぶさる。
そして、竜巻に飲まれたわたしとディーネは、そのまま空中に巻き上げられると、空き地の端の草むらに放り出された。
痛みは感じなかった。
頭がボーッとする。
ディーネが必死にわたしに何か言っている。
でも何を言っているか分からない。
でも分かっていることが一つだけあった。
わたしは風の精霊に敗北した。
この爺さん、とんでもない課題を出してきたよ・・・
風の精霊と戦えと?
てか、風の精霊は一体どこから現れたのだろうか。
「ユリよ。この風の精霊は、ずっとこの部屋にいたと思われる。巧妙に隠れていたようじゃな」
「ディーネちゃんでも気が付かなかったの?」
「薄く、魔力が満ちている気配だけは掴んでいたのじゃ。ただ、これだけの魔道具が散乱している部屋なのでな。魔道具の影響によるせいだと錯覚させられていたようじゃな」
ディーネでも気づけなかったのなら仕方ないと思う。
風の精霊が天井付近からわたし達を見下ろしている。
どう戦えばいいのだろう・・・
精霊との戦い方なんて分からない。
それにわたしは魔力の扱いが未熟だ。
半人前のわたしとでは勝負にならない気がする。
「ユリ。外に出るがいい。勝負の方法を教える」
アキムに促され、小屋の外に出る。
そして近くの空き地に連れて行かれた。
アキムが木の枝を使って、地面に円を描いた。
直径五メートルぐらいだろうか。
「円はだいたいの目安だ。ユリはこの円の中心に立て」
わたしは言われるままに、円の中心に立った。
「今から風の精霊がお前を円の外に弾き飛ばそうとする。それを凌いでみろ。一刻ほど凌いだらお前の勝ちだ」
一刻!?
約一時間も!?
長くね?
「一刻を待たず、風の精霊が降参してもお前の勝ちだ。耐えてみせよ」
うう、とりあえず頑張るしかないか・・・
わたしにできるのは水の防御。そして反射。それとちょっとした遠隔攻撃。
物理的な対策はできるけど、風ってどうなんだろう?
「あ、そういえば魔道具って使っていいのですか?」
アキムに質問してみた。
「魔道具か。いいだろう。使うがいい」
「ありがとうございます。ではちょっと作戦会議の時間をください」
「あまり時間はかけるな」
わたしはアドル達の元に急いで行った。
「アドル、なんか使えそうな魔道具持ってきてない?贅沢は言わないから、風の攻撃を完全無効化するようなやつとかでいいわ」
「そんなもの、あるわけがないだろう・・・」
「ユリよ、それは贅沢なのではないかの・・・」
とりあえず魔力剣と魔力盾を出してもらったが、アドルは他にも何か有効な手立てがないか、必死に考えている。
ノーラは・・・『わたしに聞いても無駄です』というように無表情で右斜め上を向いている。
ノーラの思考放棄がだんだんひどくなっているように感じる・・・
「ユリよ。妾と一緒でも良いか聞いてみてはどうじゃ?」
「それはだめよ、水の精霊」
後ろからいきなり聞き慣れない高い声をかけられた。
心臓が飛び出るかと思った。
そこには風の精霊がいた。
部屋で見た時よりも輪郭がしっかりとしていた。
全身は薄い緑の半透明で、まるで蜃気楼のようにユラユラと揺れていた。
初めて水の精霊と出会った時の事を思い出す。
今ではすっかりハシビロコウの姿に慣れてしまったが、まさに『精霊らしい姿』だと思った。
風の精霊は、体に同化しているかのような薄い緑色の羽衣の服を纏い、姿勢良くスッと立っている女性の姿で、とても美しかった。
体の周囲に弱い風をまとわりつかせているようで、羽衣の裾がひらひらと舞い、わたし達にも優しく風が吹いていた。
そして・・・またしても、乳がでかい。
創造主というのはそんなに大きい乳が好きなのだろうか。
若干腹が立つ。
「水の精霊、久しぶりね。しばらく見ないうちに、随分と面白い形になったわね」
「久しいの、風の精霊。其方、自由に世界の空を飛び回るのが信条であろうに、なぜここに留まっておるのじゃ?」
水の精霊がそう問いかけると、風の精霊はディーネの問いには答えず、フワッと空中で体を回転させ、わたしの目の前にゆっくりと降りてきた。
「あ、あの、風の精霊さん。お手柔らかにお願いします・・・」
「わたしはこの子の力が見たいの。水の精霊が力を託したという、この子の力を。だから水の精霊、今回は遠慮してくださる?」
風の精霊はわたしを見つめたまま、水の精霊と対話を続けていた。
「・・・ユリはまだ十分に力を発揮できないのじゃ。それを踏まえて、手合わせしてほしい」
ディーネが戦いに手を出さない事を風の精霊に承諾したため、わたしとディーネとの共闘は不可となってしまった。
一応、釘は刺してくれたみたいだけど。
「悪いようにはしないわ。死んじゃったらごめんなさいね」
それ、悪いようにどころか、最悪だよ!
そう言うと風の精霊は、対決の場の方に向かってゆるゆると飛んでいった。
結局、わたしはアドルから魔法剣と魔法盾を借りたものの、他の良案は出ないまま、わたしは風の精霊と対峙するために円の中の立ち位置についた。
「円から出たらユリの負けだ。凌ぎきったらユリの勝ちだ。よいな。では始めよ」
わたしは水の防御を展開し、さらに魔法盾を起動した。
とりあえず初撃をしのぐ!
風の精霊が動く。
現在、風の精霊は、わたしから二十メートル程度は離れている場所にいる。
「では、まずは小手調べ」
風の精霊はそう言うと、風の精霊の目の前につむじ風のようなものを出現させた。
まずはこのつむじ風を防げは・・・ってあれ?
つむじ風はその場でだんだんと威力を増し、ちょっとした竜巻にまで成長した。
テレビでよく見る、家の屋根をすっ飛ばすぐらいには勢いがありそうな竜巻に見える。
そして、竜巻はゆっくりとわたしに向かって近づいてきた。
・・・あ、これ、無理だ。飛ばされる。
『小手調べ』という言葉について風の精霊と話し合いがしたい。
竜巻が迫る。
何か考えろ・・・
せめて体を固定するんだ・・・
「ユリ!」
「師匠!」
「ユリお姉ちゃん!」
アドルとノーラの叫ぶ声が聞こえる。
ミライの声は少し泣き声混じりだ。
そして、わたしは竜巻に飲み込まれた。
◇
「・・・っしゃあ、凌いだ!」
竜巻が消えた。
地面に不恰好に伏せるわたしは、ほっぺたを地面につけたまま、勝利の声を上げた。
危なかった・・・
わたし、よく頑張った!
竜巻が迫ってきた時、わたしは咄嗟に右足に全魔力を集中して地面を踏み抜いた。
いつぞやのインチキ震脚だ。
あまり硬い地面ではなかったのも幸いして、膝程度までは穴を開けることができた。
片足は穴に膝まで入れ、もう一方の足を百八十度近く開脚する。
わたしは日頃から柔軟を欠かさず、股割りができたのが功を奏した。
なんでもやっておいてよかった。
そして、全身を反射付きの水の防御で固めると、体を前屈させ、地面にぺったりとくっつけた。
シンデレラバストなので密着性は高い。
どうだ見たか創造主よ。
大きければいいってもんじゃないんだよ、ちくせう。
そして、アドルから借りた魔力剣を左手で逆手に持ち、地面方向に密着させて刃を具現化し、刃を地面に深くめり込ませた。
左手の刃と、右足の穴の二点で、体をしっかりと地面に固定する。
魔法盾は表面積が大きいので、かえって飛ばされる可能性が高いと考え、起動を中止した。
最後は頭もしっかりと地面に伏せ、竜巻をやり過ごすことに集中した。
潰されたカエルのようなわたしの体勢は、見た目ははなはだ残念としか言いようがないが、なんとか竜巻を凌ぎ切ってみせた。
「ユリお姉ちゃん、すごい!すごい!」
「師匠、お見事です!」
ミライが歓喜の声を上げた。
ノーラも賞賛してくれている。
わたしも残念な体勢のまま、笑顔を見せたが、その笑顔はすぐに凍りついた。
「ユリ、風の精霊はまだ負けを認めてないようだぞ」
アキムからそう声をかけられたからだ。
・・・そうだ。私はまだ勝っていない。
一時間は凌がないといけないんだ。
今どのくらいたった?
せいぜい五分くらい?
とっとと諦めて降参してくれればいいんだけど。
とりあえず一時間でも二時間でもこのまま粘ってやる。
そう思った時だった。
「ユリよ!避けよ!」
ディーネが大きな声で叫ぶ。
しかし、この体勢では避けるにしても、すぐには無理だ。
ジェット機が風を切るような音が聞こえる。
せめて周囲を見ようと上半身を起こした時だった。
首に何かが触れた。
そして、まるで鋭利な刃物で斬られたかのように、わたしの首の付け根あたりから、鮮血が噴き上がった。
水の防御をものともせず、わたしの首を何かが切り裂いていた。
「あ・・・がっ・・・」
わたしは再び地面に倒れ込んだ。
痛みとショックでまともに声も出せない。
首を手で押さえても血は止まらない。
呼吸も苦しくなってきた。
それでも、目だけは風の精霊を探していた。
しのがないと・・・一時間耐えなきゃ・・・
風の精霊が再び竜巻を起こすのが見えた。
竜巻がわたしに近づいてくる・・・。
ミライの絶叫が聞こえる。
アドルもノーラも何か叫んでいる気がする。
意識が飛びそうだが、せめて迫ってくる竜巻からは眼をそらさないように目を凝らした。
その時、ディーネが視界に入ってきた。
え、ディーネちゃん?
なんで?
竜巻とわたしの間にディーネが割り込み、ディーネがわたしに覆いかぶさる。
そして、竜巻に飲まれたわたしとディーネは、そのまま空中に巻き上げられると、空き地の端の草むらに放り出された。
痛みは感じなかった。
頭がボーッとする。
ディーネが必死にわたしに何か言っている。
でも何を言っているか分からない。
でも分かっていることが一つだけあった。
わたしは風の精霊に敗北した。
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