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今日から仲良し/いじめっ子、クラスペット
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※いじめっ子がクラスペット/メス堕ち
都内有数の進学校である私立清涼学院高等学校に、一際異彩を放つ生徒がいた。
彼は2-A所属の山本涼太。サイドを刈り上げた金髪を携えて、上品に仕立てられた値の張る制服を大胆に着崩した所謂不良生徒、ヤンキーに他ならない。しかし涼太はその奇抜な容姿だけならず素行もかなり酷いものだった。
クラスメイトであるはずの生徒たちから金を巻き上げたり、機嫌が悪い時には難癖をつけて殴る蹴るの暴行を加えるなど決して許されないことを平然とやってのけるようなクズ男なのだ。
クラスメイトたちは一年間耐えに耐え、そして進級すると共に漸くこの横暴な男から解放される、と夢のような希望に心を躍らせていた。
けれども現実は残酷だった。ずっと涼太にパシリにされこき使われていた向井、金をむしり取られ続けていた斎藤、何度も理不尽に暴行され強制的に入退院を繰り返し続けさせられていた村瀬の三人が、二年でも同じクラスになってしまったのだ。
三人はすぐさま担任に泣きついたが、涼太の父親が有名な代議士で地元で幅を利かせているから機嫌を損ねることはできない、というたったそれだけの理由で首を横に振った。それに学年一位の学力を持て余していた涼太には誰も頭が上がらないのも一つの理由だった。
――大人はいつもそうだ。個性を大事にしろというくせに長い物には巻かれろと圧力をかける。三人はこれからまた始まる地獄の日々を想像し思わず嗚咽を漏らした。
どこから聞きつけたのか、品行方正だったこの進学校にも金持ちの不良息子たちが増え始め、三人のような被害者がぞくぞくと増加している。教師も親も権力や社会的地位には逆らえず助けてくれない。そして追い詰められた三人は、どうせお先真っ暗なら、と涼太に復讐することを決意した。絶対に許さない。絶対に……。
いつものように、登校するにはかなり遅い時間に涼太は姿を現した。
クラスメイトが真剣に授業を受ける静寂の中、無遠慮に大きな音を立てて涼太が席に着いた。机の上に足を乗せて、偉そうにふんぞり返った涼太はすぐさまスラックスのポケットからスマホを取り出してゲームを始める。
普段、教師の凛とした声だけが響くはずの教室に、似つかわしくない電子音がピコピコと劈いた。
しかし、誰も涼太を咎めることはしない。教師も生徒も、誰も彼も。全員が顔を悔しさに歪める中、あの三人だけはいやらしく口角を上げていた。
「おい向井、やきそばぱん、あとコーヒー」
昼休みになるや否や、涼太が視線もむけずにっそう言い放った。いつもならここで蚊の鳴くような声で返事をし走って買いに行くところだが、向井は何も言わず涼太の前に立ちはだかった。
「なんだテメェ……ボコられたくなかったらさっさと買って来い」
涼太が眉を顰めて凄みながらそう言った。思わず睨みつけそうになる目を必死に堪えて、向井は鞄からやきそばパンとコーヒーを差し出した。
「はい、これでいいかな」
「おっ、やっと使えるようになったな、パシリ君」
「……そうだね」
作り物のような笑顔を浮かべる向井に気付くこともなく、涼太は差し出されたやきそばパンに齧り付いた。向井は涼太がコーヒーまで飲み干すのを最後まで見届けると漸く席に戻った。
涼太は鼻歌を歌いながら再びゲームをし始めご満悦のようだった。
そして午後の授業が始まり、涼太以外が真剣に勉学に励む時間が再開する。再び訪れた静寂の中、涼太の身体を異変が襲いはじめた。
「……あちぃ」
春の陽気のせいで暑いな、くらいにしか思っていなかった涼太だったが次第に誤魔化しきれない身体の火照りのせいでゲームどころではなくなっていた。
それどころか、だんだんと身体の奥、下半身を重点的に甘い疼きが燻ぶり初め、漸く自分の身体がおかしいことに涼太は気付く。だが時はすでに遅く、教室中の視線は荒く呼吸を繰り返し耐えていた涼太に向いていた。
その視線に気付くことなく涼太は己に湧き上がってくる熱を堪えることで必死だった。
そんな涼太の前に再度向井が無言で立ちはだかった。
視界に影が掛かったことで流石に涼太も向井に気が付いた。顔を上げ見た憎悪と熱を孕ませた瞳の向井に、思わず涼太は腰を引く。椅子がぎぎぎと聞き苦しい音を立てて後ろへズレると、振動が下半身を直撃して涼太はたまらず甘えるような声を漏らした。
「ンぅっ……」
聞いたこともない涼太の甘い声にクラスメイトはごくりと唾を飲み込んだ。男臭さが滲む端正な顔が瞳を潤まし上気して歪むのがこんなにも艶めかしく美しいのか、と涼太の顔を見て誰もがそう思った。
「む、かい……お前、俺に何しやがったっ!」
「何もしてないよ」
「クソが!嘘言ってんじゃねぇ……!」
都内有数の進学校である私立清涼学院高等学校に、一際異彩を放つ生徒がいた。
彼は2-A所属の山本涼太。サイドを刈り上げた金髪を携えて、上品に仕立てられた値の張る制服を大胆に着崩した所謂不良生徒、ヤンキーに他ならない。しかし涼太はその奇抜な容姿だけならず素行もかなり酷いものだった。
クラスメイトであるはずの生徒たちから金を巻き上げたり、機嫌が悪い時には難癖をつけて殴る蹴るの暴行を加えるなど決して許されないことを平然とやってのけるようなクズ男なのだ。
クラスメイトたちは一年間耐えに耐え、そして進級すると共に漸くこの横暴な男から解放される、と夢のような希望に心を躍らせていた。
けれども現実は残酷だった。ずっと涼太にパシリにされこき使われていた向井、金をむしり取られ続けていた斎藤、何度も理不尽に暴行され強制的に入退院を繰り返し続けさせられていた村瀬の三人が、二年でも同じクラスになってしまったのだ。
三人はすぐさま担任に泣きついたが、涼太の父親が有名な代議士で地元で幅を利かせているから機嫌を損ねることはできない、というたったそれだけの理由で首を横に振った。それに学年一位の学力を持て余していた涼太には誰も頭が上がらないのも一つの理由だった。
――大人はいつもそうだ。個性を大事にしろというくせに長い物には巻かれろと圧力をかける。三人はこれからまた始まる地獄の日々を想像し思わず嗚咽を漏らした。
どこから聞きつけたのか、品行方正だったこの進学校にも金持ちの不良息子たちが増え始め、三人のような被害者がぞくぞくと増加している。教師も親も権力や社会的地位には逆らえず助けてくれない。そして追い詰められた三人は、どうせお先真っ暗なら、と涼太に復讐することを決意した。絶対に許さない。絶対に……。
いつものように、登校するにはかなり遅い時間に涼太は姿を現した。
クラスメイトが真剣に授業を受ける静寂の中、無遠慮に大きな音を立てて涼太が席に着いた。机の上に足を乗せて、偉そうにふんぞり返った涼太はすぐさまスラックスのポケットからスマホを取り出してゲームを始める。
普段、教師の凛とした声だけが響くはずの教室に、似つかわしくない電子音がピコピコと劈いた。
しかし、誰も涼太を咎めることはしない。教師も生徒も、誰も彼も。全員が顔を悔しさに歪める中、あの三人だけはいやらしく口角を上げていた。
「おい向井、やきそばぱん、あとコーヒー」
昼休みになるや否や、涼太が視線もむけずにっそう言い放った。いつもならここで蚊の鳴くような声で返事をし走って買いに行くところだが、向井は何も言わず涼太の前に立ちはだかった。
「なんだテメェ……ボコられたくなかったらさっさと買って来い」
涼太が眉を顰めて凄みながらそう言った。思わず睨みつけそうになる目を必死に堪えて、向井は鞄からやきそばパンとコーヒーを差し出した。
「はい、これでいいかな」
「おっ、やっと使えるようになったな、パシリ君」
「……そうだね」
作り物のような笑顔を浮かべる向井に気付くこともなく、涼太は差し出されたやきそばパンに齧り付いた。向井は涼太がコーヒーまで飲み干すのを最後まで見届けると漸く席に戻った。
涼太は鼻歌を歌いながら再びゲームをし始めご満悦のようだった。
そして午後の授業が始まり、涼太以外が真剣に勉学に励む時間が再開する。再び訪れた静寂の中、涼太の身体を異変が襲いはじめた。
「……あちぃ」
春の陽気のせいで暑いな、くらいにしか思っていなかった涼太だったが次第に誤魔化しきれない身体の火照りのせいでゲームどころではなくなっていた。
それどころか、だんだんと身体の奥、下半身を重点的に甘い疼きが燻ぶり初め、漸く自分の身体がおかしいことに涼太は気付く。だが時はすでに遅く、教室中の視線は荒く呼吸を繰り返し耐えていた涼太に向いていた。
その視線に気付くことなく涼太は己に湧き上がってくる熱を堪えることで必死だった。
そんな涼太の前に再度向井が無言で立ちはだかった。
視界に影が掛かったことで流石に涼太も向井に気が付いた。顔を上げ見た憎悪と熱を孕ませた瞳の向井に、思わず涼太は腰を引く。椅子がぎぎぎと聞き苦しい音を立てて後ろへズレると、振動が下半身を直撃して涼太はたまらず甘えるような声を漏らした。
「ンぅっ……」
聞いたこともない涼太の甘い声にクラスメイトはごくりと唾を飲み込んだ。男臭さが滲む端正な顔が瞳を潤まし上気して歪むのがこんなにも艶めかしく美しいのか、と涼太の顔を見て誰もがそう思った。
「む、かい……お前、俺に何しやがったっ!」
「何もしてないよ」
「クソが!嘘言ってんじゃねぇ……!」
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