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回復魔法のポーション

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 よく分からないまま、わたしはロス様に連れられていく。

 彼の家、というかお店は最後に頼ろうと思っていた場所でもあった。え、もしかして、ロス様のお店だったの。


「あの、ロス様は錬金術師なのですか?」
「そうだよ。僕は趣味でお店をやっているんだ。フラビア、君も錬金術師なのかい?」
「はい、実は……いろいろあって」


 わたしは、まずいポーションしか作れないこと。そのせいで婚約者と別れたこと。お店も燃えてしまったこと。そして、あのコリンナのことを説明した。


「――そうか。そんな大変な目に」
「わたし、このままでは帝国に住むことすら許されなくなってしまうんです」
「分かった。これも運命だろう。この僕が助けてあげよう」

「いいんですか?」

「いいとも。その代わり、最後までやり遂げること。絶対に諦めないと誓ってくれ」
「もちろんです! 助けていただく以上、失望はさせません」


 今のわたしは崖っぷち。
 やっとこれで首の皮一枚で繋がっている状況。ここから逆転しなきゃ、イグナティウスとコリンナが良い思いをするだけ。そんなの許せない。


「良い返事だ。では、お店の中へ案内しよう」


 ロス様に連れられ、中へ入っていく。
 綺麗で落ち着いた木造のお店。
 アンティークな飾り、花の香り。
 憩いの場さえある広々とした空間。

「素敵なお店ですね。え……音楽が聞こえる」
「ああ。グラモフォンという魔導具があるんだ。あれが音楽を奏でる」

 すごい。優雅な音楽が流れて心地よい気分になれた。こんな場所で紅茶とか……いいかも。それにポーション製造だって捗りそう。

 でも、本当にいいのかな。
 わたしなんかが利用しても。


「あの、ロス様。わたし……」
「おっと、フラビアは足を挫いているんだから安静にしてなきゃダメだ。ほら、そこに座って」
「は、はいっ」

 椅子に腰掛けると、ロス様はわたしの足に右手を向けた。

「――うん、軽傷だね。これなら、僕の回復魔法・・・・で治療できる」
「えっ」


 ぽわっと青白い光に包まれると、足が軽くなった。……い、今乗って治癒魔法? すご、初めてみた。

 この帝国で、治癒魔法を使える人間はあまりに数が限られている。そもそも、錬金術師が治癒魔法なんて使えるはずがないのに、不思議。


「これでもう動けるよ」
「あ、ありがとうございます、ロス様。あの、なぜ治癒魔法を?」

「今のは治癒魔法ではないよ。ポーションを応用した回復魔法・・・・さ。実はね、最近僕が開発した『スローポーション』というスキルでね。実際はポーションを投げているっていうのかな」

「す、すご……ロス様って高レベルの錬金術師様なのですね」
「いや、それほどでもないさ」
「いえいえ、凄いです! お師匠さんですっ」

 ロス様にポーションの作り方を教えて貰えれば、きっと帝国に認めて貰えるはず。希望が見えてきた。

「ひとまず、フラビアの足が治って良かった」


 あまりに素敵な笑顔を向けられ、わたしはドキドキしてしまった。不意打ちすぎるっ。

「……あ、ありがとうございます」
「さあ、工房アトリエへ行こうか。こっちだ」


 いよいよ、錬金術師の……ロス様の工房アトリエへ入れるんだ。楽しみ。
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