SSS級宮廷錬金術師のダンジョン配信スローライフ

桜井正宗

文字の大きさ
上 下
22 / 26

第22話 今日もポーションが売れて爆益!

しおりを挟む
※※※※※


 翌朝。
 私宛に手紙が届いた。大きな封筒に厚みのある書類。何かと思えば婚約者からだ。
 上体を起こせるようになった私は机を出してもらって中身を広げる。

「……え?」

 婚約解消のお知らせだ。穢れた私は要らないという内容がしたためられた冊子が届いたらしかった。
 私が頭痛を覚えて額に手をやる。
 アメシストが心配して私の顔を覗き込む。

「どうしたの?」
「来月に控えていた結婚がなくなったのよ」

 これ、うちの両親はなんて言っているんだろう。聞いたところでは実家経由でこちらに届けられたとの話だったが。

「じゃあ、僕たちと一緒にいられる?」
「可能性は高くなったけれど、それよりも面倒なことを処理しないといけなくて……」

 婚約者――いや、もう元婚約者、か。あの人は本当にそんなことで婚約解消を選んだのだろうか。
 この結婚は私の家と彼の家の都合による政略結婚だった。この結婚は必要な仕事であるとお互いに割り切っていたのではなかったのか。それなのに、私が精霊管理協会の世話になってしまったという点で結婚はなかったことに、とは。

「別にあの人と結婚がしたかったわけじゃないけど……」

 そう。結婚がしたかったわけではない。
 だが、このために私は外界から隔離された生活を強いられていたのだ。結婚後も自由はないからと、最後の自由な時間になるだろうからと、苦労して苦労してやっと外出許可がおりたと思ったらこれである。

「どうしよう」

 魔物と遭遇したのは不運だ。そもそも都会で魔物が観測されることは極めて稀であり、ここ数年は報告がなかったはずなのだ。そうじゃなければ、単独でのお出かけの許可がおりるわけがない。
 だったら、泣いて縋って、私が清いことを証明すべきだろうか。
 いや、無駄だ。
 瘴気を取り除くために隔離された上で入院させられているのだ。弁解がしようがない。詰みだ。
 私は長く長く息を吐き出した。

「深刻そうだな」
「縁を切られそうなんで」
「どうして?」

 シトリンとアメシストが私の左右から様子をうかがってくる。
 どう説明したらいいのだろう。
 私の家がだいぶ特殊であることは察しているつもりだが、彼らにどの程度の常識があるのかもわからない。どこが一般的な家庭と違うのか、自分の感覚があてにならないので悩ましいのだった。

「……家庭の事情が複雑なもので。結婚が白紙になると、私は実家に居られないんですよ。というか、そもそも穢れなき身である必要があったんですよね。それがまあ、この度、魔物に襲われて失われてしまったわけで」

 伝わりやすく説明するならこんなところだろうか。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】人生で一番幸せになる日 ~『災い』だと虐げられた少女は、嫁ぎ先で冷血公爵様から溺愛されて強くなる~

八重
恋愛
【全32話+番外編】 「過去を、後ろを見るのはやめます。今を、そして私を大切に思ってくださっている皆さんのことを思いたい!」  伯爵家の長女シャルロッテ・ヴェーデルは、「生まれると災いをもたらす」と一族で信じられている『金色の目』を持つ少女。生まれたその日から、屋敷には入れてもらえず、父、母、妹にも虐げられて、一人ボロボロの「離れ」で暮らす。  ある日、シャルロッテに『冷血公爵』として知られるエルヴィン・アイヒベルク公爵から、なぜか婚約の申し込みがくる。家族は「災い」であるシャルロッテを追い出すのにちょうどいい口実ができたと、彼女を18歳の誕生日に嫁がせた。  しかし、『冷血公爵』とは裏腹なエルヴィンの優しく愛情深い素顔と婚約の理由を知り、シャルロッテは彼に恩返しするため努力していく。  そして、一族の中で信じられている『金色の目』の話には、実は続きがあって……。  マナーも愛も知らないシャルロッテが「夫のために役に立ちたい!」と努力を重ねて、幸せを掴むお話。 ※引き下げにより、書籍版1、2巻の内容を一部改稿して投稿しております

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで商売をして生計を立てていく〜

西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」 主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。 生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。 その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。 だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。 しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。 そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。 これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。 ※かなり冗長です。 説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

処理中です...