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第5話 元老院のノイシュヴァンシュタイン卿
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最短で宮廷錬金術師になれるのなら、わたしは受けようと思った。
それが目標であり、憧れだから。
「本当に良いんですか?」
「もちろんだよ。今、錬金術師は人手不足でね。多い方が国益にもなるんだよ」
そこまで考えているなんて凄い。
試験内容の変更に同意したわたし。ノイシュヴァンシュタイン卿は嬉しそうに微笑み、握手を求めてきた。
「よろしくお願いします」
「こちらこそ、アザレアさんの合格を願ってる。がんばって」
激励の言葉をもらい、わたしは絶対に合格しなきゃという気持ちが強くなった。
それから、ノイシュヴァンシュタイン卿は別れの挨拶をして去っていった。
「なんだか独特のオーラを放っている方でしたね」
「ノイシュヴァンシュタイン卿は、元老院の長ですよ。皇帝陛下の懐刀とも言われていますね」
「げ、元老院ですか……」
うわぁ、本当に凄い人だった。
田舎の出であるわたしでも帝国の元老院のことは耳にしていた。物凄い権力を持っているらしく、裏から帝国を操っているとか何とか。
とんでもない人に目を付けられたのかも。
その後、わたしはイベリスについて行って街を回った。
ぐるぐると歩いて、足が疲れてきた頃にイベリスは「そろそろ帰ろう」と言った。
「今日はいろいろありがとうございました」
「そう言って貰えて良かったですよ。私自身も気分転換になりましたし」
おかげで、わたしは帝国の街並み、どんな人が歩いてどんな生活をしているか理解が深まった。ポインセチア帝国は、とても活気があって何もかもが輝いていて美しい。
自然に囲まれた田舎とは大違いだと分かった。
次第に夕暮れに染まっていく。
茜色の光が帝国を照らして、また違った風景を見せてくれていた。
邸宅に戻り、メイドのドラセナが出迎えてくれた。
「おかえりなさいませ」
「ただいま。今からアザレアさんに試験勉強を教えますので、夕食は簡単なものでお願いしますね」
「分かりました、ご主人様」
静かに去っていくドラセナ。
……って、試験勉強?
帰って来てもうやるんだ……。
でも仕方ないよね、明日には宮廷錬金術師の試験なのだから。
合格する為にも必死にならなきゃ。
「徹夜でもいいのでよろしくお願いします、イベリスさん」
「覚悟は出来ているようですね。ですが、安心してください。きちんと睡眠はとってもらいますから」
「え、でも……」
「大丈夫。試験に合格できるよう、必要な部分だけ教えますので」
宮廷錬金術師の彼が言うのだから、素直に従えばきっと大丈夫。イベリスの言葉を信じて、わたしはうなずいた。
「了解です。では、わたしの部屋へ」
残りの時間を勉強にあて、イベリスからたくさんのことを学んだ。彼は嫌な顔ひとつせず、むしろ楽しんでわたしにコツだとか覚えておいた方がいい知識を教えてくれた。
どんどん吸収していくわたし。
面白いほどに知識が増えていく。
そういえば、昔から覚えることは得意だった。
一度覚えたことは忘れない特技があった。ただし、これは好きなことに限るけれど。
だから錬金術師のことに関しては忘れない自信がある。
途中、ドラセナが運んできてくれた軽食を食べてお腹を満たした。
野菜たっぷりの濃厚クリームパスタ美味しかったなぁ……。あんなに味の濃いパスタは初めて食べた。イベリスが濃い味が好きらしく、そうなっているのだとか。
それとデザートのシュークリームも甘くて癒された。帝国にしかないものらしく、わたしは初めて味わった。幸せしかないっ。
あのシュークリームはもう一度味わってみたい。
……って、いけない。
今は勉強に集中しなきゃ!
時を忘れてひたすら勉強に励む。
途中、実戦の方も教えてもらう。
改造ポーションの調合の仕方、プラントの作り方、モンスターの落とす収集品を合成するマテリアル作成、簡単な料理――そして、爆弾の作り方。
最低限の技術を身に着け、わたしは手応えを感じた。
これならいけるかも。
「おや、もうこんな時間になってしまいましたね。アザレアさん、そろそろ寝ましょう」「もう少しだけがんばりたいのですが……」
「努力することは素晴らしいです。ですが、無理をして体調に影響が出てしまったら本末転倒ですよ。休憩も大切ですから」
「でも……」
「アザレアさんには、私のようにはなって欲しくないんです」
「え……」
珍しくイベリスは声のトーンを低くした。もともと落ち着いているけど、今の彼の口調には後悔が少しあるような。
「私は無茶をしすぎたあまり、周囲を見失ってしまった。その結果、大切な人を失ってしまったのです……。だから、アザレアさんは自分を大切にして欲しい」
まるで祈るように、願うようにイベリスはわたしの肩に手を置いた。
「なにがあったのですか?」
「昔、ある女性と婚約していたのですよ。ですが、仕事ばかりにかまけていた私は、婚約者に呆れられ……婚約破棄されてしまったんです」
「そうだったのですね。ごめんなさい」
「いえ、アザレアさんが謝る必要はありません。私が悪いのです」
「それでもです。なのでイベリスさんの指示に従います。今日はもう寝ますね」
デリケートな話を聞かせてもらって申し訳ないと思ったし、それに素直に応えるべきだと感じたから。
「そうして下さい。大丈夫、きっと合格しますから」
「最高の先生から指導いただきましたから、絶対に受かりますっ」
「そんな風に言っていただけるとは、嬉しいです」
太陽にのように笑うイベリス。あまりに良い笑顔だったから、わたしは胸がドキドキした。……あ、あれ。わたし、なんだかヘン。
どうしてこんな顔が熱いのだろう。
ワケが分からなかった。
でも、イベリスのことがとても気になった。もっと彼のことが知りたい。
それが目標であり、憧れだから。
「本当に良いんですか?」
「もちろんだよ。今、錬金術師は人手不足でね。多い方が国益にもなるんだよ」
そこまで考えているなんて凄い。
試験内容の変更に同意したわたし。ノイシュヴァンシュタイン卿は嬉しそうに微笑み、握手を求めてきた。
「よろしくお願いします」
「こちらこそ、アザレアさんの合格を願ってる。がんばって」
激励の言葉をもらい、わたしは絶対に合格しなきゃという気持ちが強くなった。
それから、ノイシュヴァンシュタイン卿は別れの挨拶をして去っていった。
「なんだか独特のオーラを放っている方でしたね」
「ノイシュヴァンシュタイン卿は、元老院の長ですよ。皇帝陛下の懐刀とも言われていますね」
「げ、元老院ですか……」
うわぁ、本当に凄い人だった。
田舎の出であるわたしでも帝国の元老院のことは耳にしていた。物凄い権力を持っているらしく、裏から帝国を操っているとか何とか。
とんでもない人に目を付けられたのかも。
その後、わたしはイベリスについて行って街を回った。
ぐるぐると歩いて、足が疲れてきた頃にイベリスは「そろそろ帰ろう」と言った。
「今日はいろいろありがとうございました」
「そう言って貰えて良かったですよ。私自身も気分転換になりましたし」
おかげで、わたしは帝国の街並み、どんな人が歩いてどんな生活をしているか理解が深まった。ポインセチア帝国は、とても活気があって何もかもが輝いていて美しい。
自然に囲まれた田舎とは大違いだと分かった。
次第に夕暮れに染まっていく。
茜色の光が帝国を照らして、また違った風景を見せてくれていた。
邸宅に戻り、メイドのドラセナが出迎えてくれた。
「おかえりなさいませ」
「ただいま。今からアザレアさんに試験勉強を教えますので、夕食は簡単なものでお願いしますね」
「分かりました、ご主人様」
静かに去っていくドラセナ。
……って、試験勉強?
帰って来てもうやるんだ……。
でも仕方ないよね、明日には宮廷錬金術師の試験なのだから。
合格する為にも必死にならなきゃ。
「徹夜でもいいのでよろしくお願いします、イベリスさん」
「覚悟は出来ているようですね。ですが、安心してください。きちんと睡眠はとってもらいますから」
「え、でも……」
「大丈夫。試験に合格できるよう、必要な部分だけ教えますので」
宮廷錬金術師の彼が言うのだから、素直に従えばきっと大丈夫。イベリスの言葉を信じて、わたしはうなずいた。
「了解です。では、わたしの部屋へ」
残りの時間を勉強にあて、イベリスからたくさんのことを学んだ。彼は嫌な顔ひとつせず、むしろ楽しんでわたしにコツだとか覚えておいた方がいい知識を教えてくれた。
どんどん吸収していくわたし。
面白いほどに知識が増えていく。
そういえば、昔から覚えることは得意だった。
一度覚えたことは忘れない特技があった。ただし、これは好きなことに限るけれど。
だから錬金術師のことに関しては忘れない自信がある。
途中、ドラセナが運んできてくれた軽食を食べてお腹を満たした。
野菜たっぷりの濃厚クリームパスタ美味しかったなぁ……。あんなに味の濃いパスタは初めて食べた。イベリスが濃い味が好きらしく、そうなっているのだとか。
それとデザートのシュークリームも甘くて癒された。帝国にしかないものらしく、わたしは初めて味わった。幸せしかないっ。
あのシュークリームはもう一度味わってみたい。
……って、いけない。
今は勉強に集中しなきゃ!
時を忘れてひたすら勉強に励む。
途中、実戦の方も教えてもらう。
改造ポーションの調合の仕方、プラントの作り方、モンスターの落とす収集品を合成するマテリアル作成、簡単な料理――そして、爆弾の作り方。
最低限の技術を身に着け、わたしは手応えを感じた。
これならいけるかも。
「おや、もうこんな時間になってしまいましたね。アザレアさん、そろそろ寝ましょう」「もう少しだけがんばりたいのですが……」
「努力することは素晴らしいです。ですが、無理をして体調に影響が出てしまったら本末転倒ですよ。休憩も大切ですから」
「でも……」
「アザレアさんには、私のようにはなって欲しくないんです」
「え……」
珍しくイベリスは声のトーンを低くした。もともと落ち着いているけど、今の彼の口調には後悔が少しあるような。
「私は無茶をしすぎたあまり、周囲を見失ってしまった。その結果、大切な人を失ってしまったのです……。だから、アザレアさんは自分を大切にして欲しい」
まるで祈るように、願うようにイベリスはわたしの肩に手を置いた。
「なにがあったのですか?」
「昔、ある女性と婚約していたのですよ。ですが、仕事ばかりにかまけていた私は、婚約者に呆れられ……婚約破棄されてしまったんです」
「そうだったのですね。ごめんなさい」
「いえ、アザレアさんが謝る必要はありません。私が悪いのです」
「それでもです。なのでイベリスさんの指示に従います。今日はもう寝ますね」
デリケートな話を聞かせてもらって申し訳ないと思ったし、それに素直に応えるべきだと感じたから。
「そうして下さい。大丈夫、きっと合格しますから」
「最高の先生から指導いただきましたから、絶対に受かりますっ」
「そんな風に言っていただけるとは、嬉しいです」
太陽にのように笑うイベリス。あまりに良い笑顔だったから、わたしは胸がドキドキした。……あ、あれ。わたし、なんだかヘン。
どうしてこんな顔が熱いのだろう。
ワケが分からなかった。
でも、イベリスのことがとても気になった。もっと彼のことが知りたい。
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