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元婚約者

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 ふと気づくと周囲から視線を感じた。
 わたし、見られてる? いえ、違うわ……。わたしではなく、彼だ。もしかして有名人なのかな。

「ほ、本当に良いんですね?」
「本当に良いですよ。それに君の噂は少し耳に入っているんですよ」
「え……わたしの?」
「侯爵家のジュライと婚約していたと」
「なぜそれを……」
「彼は元友人だったのです。今は事情があって縁を切っていますけどね」

 そうだったんだ。それは驚きというか意外というか。でも、もう縁を切って関係はないみたいだし、それならいいか。

「その、なにがあったか聞いても?」
「実は……彼に大切な婚約者を取られてしまいました」
「ご、ごめんなさい……」
「いえ、いいのです。それに、キリエさんのこともそれとなく事情を察していますから」

 つまり、わたしとジュライの関係も知っているんだ。そっか、あのジュライは、わたしを捨て……この人の婚約者を奪ったというわけね。最低な男ね。許せない。
 こうなったら、ビジネスで成功してギャフンと言わせてやる。

「オクトーバーさん、一緒にがんばりましょう!」
「ええ! キリエさんの夢を叶え、そしてこの国の皆さんを幸せにしてあげましょう!」

 がっつり握手を交わし、意気投合した。今日から、オクトーバーと無人販売店を作っていく……!
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