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煉獄の炎

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 タワーダンジョンを解放するには、まだ早い。もう少し改良してからだ。

「すまないが、一週間待ってくれ。その時になれば、もっと良いダンジョンになっていると思うから」


「ええ~!」「一週間もかよ!」「長いなぁ」「でも管理人さんが言うなら」「仕方ないかぁ」「くそ~」「んだよぉ」


 中には不満を漏らす者もいたけど、大体は納得して帰ってくれた。だけど、三人残った。どうやら、まだ納得していない連中がいるようだ。

 そんな鋭い目つきで睨まれてもな。


「もうタワーダンジョンの解放はないよ。じゃあね」
「……ようやく静かになったな、カムイ」

「なっ……僕の名前を知っているのか」


 男の目は血走っていた。
 手には斧武器のトマホーク。
 なんだ、コイツ……!


「バニラを知っているよな!!」
「……そりゃな。元婚約者だ。でも、彼女も彼女のギルドも壊滅し、死んだ」


「そうだ!! お前のせいでバニラは死んだ!! カムイ、お前には責任を取って貰う必要がある……」


「お前、バニラとどんな関係だ?」


 聞き返すと男は更にキレた。


「ふざけるなああああああああああ!!」
「!?」
「俺は、バニラの兄だ!! バニラは妹だったんだよ!! なのに、お前は……お前は、バニラを見捨てたんだ!! この殺人鬼が!!」


 そうか、この金髪の男はバニラの兄か。少し雰囲気が似ているとは思ったよ。でも、捨てられたの僕だし、不倫もされていた。酷い言い掛かりだ。


「悪いけど、バニラには忠告もした。あの決して入ってはいけない森に入ってしまった。結果、凶悪なレッドゴブリンに襲われてしまったんだ……」

「じゃあ、お前のせいじゃねぇか!! おい、野郎共!! あのゴミ野郎を殺すぞ!」


「任せてくれ、旦那!」
「ああ、旦那からは高い金を貰っているからな!」


 隣にいる男は金で雇った傭兵か。
 けれど、それほど練度の高い人間ではない。僕なら余裕で倒せる。


「ファイアーボルト!!」


 手を向け、先制攻撃する僕。
 火の塊がバニラ兄の隣にいる傭兵二人に衝突。二人は吹き飛んで転げ回った。そして、白目を剥いて倒れていた。


「……なッ! 一撃で!? 卑怯だぞ、カムイ!!」
「戦いに卑怯もクソもあるか。それに、君は僕に殺意を向けているじゃないか」
「く、くそが!!」


 バニラ兄は、トマホークを投げてくる。……しまった、思ったよりも威力がある。ブーメランのように飛んでくる斧は、コーラルにぶつかろうとしていた。

 けれど、コーラルは聖剣マレットを召喚して、トマホークを弾く。


「てやッ!!」


 見事に跳ね返す。
 なんて動きだ。

「コーラル、やるなあ」
「そ、そんな事ありませんよ~。それに、カムイ様をお守りするのもメイドの仕事ですから」

 戦闘においては、ぽんこつではないな。そこが良い所だ。


 さて、バニラ兄……僕を侮辱し、コーラルを傷つけようとした罪をあがなってもらう。


「あとは僕が相手しよう」
「上等だオラ!! カムイ!!」


 僕は、ファイアーボルトの上位魔法を手に宿す。これでバニラ兄を撃退する。


「煉獄の炎に焼かれるといい……クリムゾンブレイク!!」
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