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管理人による追放

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 四人を連れ、まだ十階しかないタワーダンジョンへ向かった。もちろん、テレポートで楽々移動。

「あ、案内人さんって何者です? こんな人数のテレポートが出来るなんて、普通の魔法使いでも中々難しいですよ。アイナだって二人が限界なのに」
「そうです。自分を含めて五人も転移だなんて……凄すぎです!」

 シャロンとアイナが僕に興味津々だった。今までのギルドと違って、反応が良いな。確かに、複数人のテレポートはこれが初めてだったけど。

「普通だよ。能力だって、たまたまさ」
「そうなんですか……? 怪しいですね」

 シャロンが疑いの眼差しを向ける。それにしても、名前は一緒なのに聖帝と気づかれないだなんて……その方が助かるんだけどね。

 さて、さっそくダンジョン内へ入っていく。僕も始めてだ。

 塔の一階には大きな扉がある。
 僕しか開けられない特別な扉。


 タワーダンジョン【バベル】の能力を使って、扉をオープンへ。すると、ゆっくりと大扉が開いていく。


「これで中に入れる。皆さん、準備はいいかな」

「本当に開いた。さっき試した時はビクともしなかったのに……! カムイさん、さっきから凄すぎない?」

 シャロンがかなり顔を近づけてきた。整った可愛い顔が目の前に。こうして見れば、僕好みの顔だ。けれど、肝心なのは中身。いくら美人でも性格が良くなければ……遠慮したい。

「これでも賢者だからね。多少は融通が利くよ」
「賢者は初めて仲間にするし、興味深い。カムイさんと出会えて良かった」

 いい気分の中、ダンジョン内を進んでいく。けれど、それは突然起きた。


 剣士『ビリー』とプリーストの『ブルース』が突然、僕に襲い掛かってきた。背後から向かってくる剣を避け、鈍器もうまくかわした。


「なにをする……!」

「カムイ、悪いがここまでだ」
「ああ……シャロンもアイナをこの塔に連れ込めれば十分だった」

「はあ?」


 理由を聞くと、二人は笑った。
 どうやらビリーとブルースは長年の友達らしく、シャロンとアイナとは、一ヶ月程度の関係らしい。ビリーがシャロンに頭を下げてギルドに入れて貰ったという経緯らしい。


「ちょっと、ビリーもブルースも何しているの! カムイさんは仲間でしょう」
「黙れ、シャロン! お前なんて美人だから相手してやってるだけだ。クソ、三日前に振りやがって……もう我慢の限界だ。この塔でお前を滅茶苦茶にしてやる!」

「さ、逆恨み? まさか、この塔に連れ込んで……」

 一歩、また一歩と引いていくシャロンとアイナ。


「そうだ。お前とアイナを飽きるまで楽しんで捨ててやろうという計画さ。なあ、ブルース!」
「あひゃひゃ……。そうだぜ、だってよ。こんな美人な女、そうはいない!」


 じりじりと寄ってくる二人。こいつら最悪だな。このパターンは初めてだ。まさか、女の子を襲う目的で塔へ入るとは……そんな使い方は俺が許さん。

 シャロンとアイナを守るように俺は前へ出た。


「なんだ、カムイ! 邪魔をするとマジで殺すぞ」
「ビリーの剣技は帝国の騎士に匹敵する! それに、この俺が回復するしな。そう簡単には倒せないぞ」

 剣士とプリースト、確かにバランスの良いコンビだ。プリーストのヒールがあれば、回復剤もそんなに必要ないし。


「カ、カムイさん……逃げましょう!」
「そうですよ、あんな最低な男達を相手しなくとも中央ギルドに通報するんです!」


 シャロンとアイナはそう言ってくれるけど、相手が逃がしてくれないだろうなあ。向こうは、やる気満々だし。このままだとシャロンもアイナも酷い目に遭う。そんな好き勝手はさせない。


 タワーダンジョン【バベル】の能力に『追放』があった。これは、タワーダンジョン内にいる『種族:人間』を僕が任意で追放できる能力だ。管理人マスターとしての能力だな。そうだ、この塔の主は僕。

 僕が絶対なのだ。


「ビリー、ブルース。お前たちの身勝手は許さない。このタワーダンジョンから追放する」


「はぁ? 何を言って……」
「そうだ! お前なんかに何ができ――」


 二人の姿が一瞬で消える。
 どうやら、追放されたらしい。

 魔法スキル『ビジョン』で見通すと、どうやら二人は“森”の中へ落ちたらしい。なるほど、追放するとそこへ出るのか。レッドゴブリンが大量に現れ、襲われていた。


『ギャアアアアアアアアアア!!』
『た、助けてくれえええええ!!』


 バニラ達もあのバケモノに襲われたのか。なるほど、あんな百、二百を超えるゴブリンに襲われたら、ひとたまりもない。骨の髄までしゃぶられるだろうな。
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