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第33話 大爆発の危機!? 残された十分

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 ダイナマイトだって?
 ふざけやがって、テロリストかよ。
 あせっていると遥パパがこう言った。

「遙くん、こうなったら君が元校長を押さえつけてくれ。その隙に私がダイナマイトを抱えて外へ走っていく。人のいない場所で運命を共にする」

「そ、そんな! それではパパさんが死んでしまいます!」
「構わんさ。遥と君を守れるならね」

 ……そんな、そんなのダメだ。
 父親いなくなったら、遥は悲しむ。
 なら、俺がその役を引き受ける。

「いや、俺が爆弾を奪って逃げますよ。逃げ足の速さだけは自慢なんです」
「だめだ!! 私がやる。だから、後の事は頼んだ」
「だ、だけど……」


 くそっ、これではらちが明かない。
 そんな状況に奥村もキレた。


「なにコントをしてる!! いいか、私の要求はただひとつ。天満くん! 君と小桜さんの自主退学だ!! それから、この私に土下座で詫びろ!! 全力で詫びろ!! それで特別に許してやる!!」


 それで済むのなら……命が助かるなら、俺は――。

 覚悟を決め、俺は『退学』を口にしようとしたのだが。

 その時、背後から大きなものがぶっ飛んできて、高速回転する。何事かと俺はビビって腰を抜かす。遥パパさんも「うわぁ!!」と声を上げて身を引く。

 その物体は、奥村の顔面にドロップキックを入れた。


「――オラアアアアアアアア!!」


 あの赤髪……まさか!

 生徒会長か!

 まさか会長が駆けつけてくれたのか!


「ぶふぁああああああああああああ……!!」


 奥村がゴロゴロ転がって壁に激突。今だ!

 俺は直ぐに奥村の元へ駆け寄り、服を物色。ダイナマイトを慎重に外していこうとする。……うわ、ガチモンのタイマー式だ。


「天満くん、触れるのは危険よ」
「だ、だが……爆発するぞ!」
「タイマーはあと十分か。ここから安全な場所と言えば――」

 その先を遥パパがつぶやいた。

「横山公園」
「そう、横山公園。ここからなら全力で走って十分で行けるはず。しかも今、あの公園は全体が工事中。今日は幸いにも現場に人もいないって情報を耳にしているの」

「マジかよ、会長!!」

 なら、奥村の体から爆弾を取り外して『横山公園』へ向かうしかないな。

「どうやら、ダイナマイトはひもくくっているだけのようね。簡単に外れたわ」
「ナイス、会長! それじゃ、俺がこいつを横山公園へ運び、爆発させてくる」
「でも、大丈夫なの? 天満くん、たったの十分・・しかないのよ」

「大丈夫だ。俺は足だけはS級なんだ」

 怖いけど、俺はダイナマイトを慎重に掴んだ。この病院を、周辺地域を、遥を救うために、俺は全力疾走する。


「遙くん、君は……」
「遥パパさん、俺に万が一があったら遥に伝えてください……愛していると」

「ま、まて!!」


 俺は、前だけを向き――走り出した。


 病院を出て、最初から全力で飛ばしていく。どんどん加速して『横山公園』を目指す。行き交う人、対向車などを軽快にかわしていき、障害物もどんどん回避。

 息は、まだ大丈夫。

 俺はまだまだ走れる。

 良かった、足だけはきたえておいて。


 残り五分。


 まずいな、まだ横山公園までは距離がある。あと感覚的に言って六百メートルってところだろうか。くそっ、急げ、急げ、急げ、急げ……!!

 早くしないとお陀仏だぶつだぞ。


「――はぁ、はぁ、はぁ」


 さすがに息が乱れてきた。
 辛くなってきた。
 でも、一番辛いのは遥だ。

 俺よりも大変な思いをしている。


 残り三分。


 横山公園が見えてきた。
 あと少しだ。
 あと少しで到着だ。

 そんな時だった、急に出てきた車に跳ねられそうになり、俺は緊急回避。しかし転んだ。


「――ぐあぁっ!!」

「バカヤロウ! どこ歩いているんだ!!」


 車の運転手に激怒されるが、気にしている余裕はない!! あと二分。


「す、すみません!! 急いでいるもので!!」


 立ち上がろうとするが――足が!

 やべえ、今のでひねったか。

 くそっ、くそ、こんな時に俺は!!


 ここまでなのか……俺は死ぬのか。


「諦めるな、天満 遙!!」
「……!! その声は会長!!」

「愛している人が待っているのでしょ! ――ああ、やっと分かったよ。君と小桜さんの関係がね。でも、そんな君たちも大好きだ! それでもまだ、君を諦められない! たとえ、目の前で愛の告白をされようともね!!」


 俺を立ち上がらせ、支えてくれる会長。……やっべ、泣きそう。まさか会長が追ってくれていたとは、心強過ぎる。


「いいのか、下手すりゃ一緒に即死ドーンだぞ」
「構わないさ。好きな人と一緒に死ねるなら本望だ」

「会長、あなたって人は……分かった。でも、まだ諦めないよ。まだあと二分ある!!」
「その意気よ。それと、私のことは『ヒカリ』と呼んで」
「ああ、ヒカリ。ありがとう」

 俺は、痛みを忘れド根性で立ち上がる。……痛くねぇ、こんな足の痛みなんて、痛くねェ!! 遥の痛みに比べたら屁でもねぇ!!

 会長の肩を貸してもらいながら、二人三脚していく。


 残り一分。


 横山公園は、会長――ヒカリの言う通り、全面工事中・・・・・だった。今は誰もいないらしく、人の気配はまったくない。広大な土地が更地さらちになっており、建物もなにもない。

 いける、いけるぞ!!

 なるべく周囲への影響がないよう、中央を目指す。遮蔽物しゃへいぶつもなにもない、地面しかない場所へ走り、あと十秒のダイナマイトを投げ込む。


「こんなものおおおおおお!!」


 ブンっと投げ込み、俺はヒカリに抱えられた。


「もう時間がない。気にしないで、私に身を委ねて」
「ちょ、ヒカリ!! マジか!」


 ダイナマイトを投げた直後――



『ドオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォ…………!!!!!』



 天に届く程の大爆発が起きた。
 土埃が空高く舞い上がる。

 あまりの爆風に、俺たちは吹き飛ばされていく。……ぐっ、なんて威力の爆弾だ。こんなものが病院で爆発してたら大変なことになっていたぞ。

 なんとか公園から脱出。
 爆発に巻き込まれずに済んだ。


「――――」


 まだ地震のような物凄い地響きが続いている。こんなの戦争レベルだぞ。


「……はぁ、はぁ」
「天満くん、もう収まったみたいよ」
「え……あれ。本当だ」


 ようやく静かになった。
 当然、周辺住民が何事かと集まってくる。次第にパトカーや消防、救急車が駆けつけてくる。大騒ぎだ。

「天満くん。――いえ、遙くん!」

 ヒカリが抱きついてきて、俺はドキドキした。やっば、遥以外の女の子に始めて抱きつかれた。でも、突き放すのも違うし。今は許してくれ、遥。

 生きている喜びを分かち合う。

「ちょ、ヒカリ。その……胸大きいな」
「遙くんのえっち。でもいいよ、もともと遙くんをペットとか愛人にしようと思っていたし」

「お友達から頼むよ」
「あはは。そうだね、考えておく。それじゃ、人がたくさん集まってくる前に帰りましょう」

「あ、ああ……でも、事情聴取とかは?」
「大丈夫。私の知り合いに刑事さんいるし、その人に病院に来るよう伝えておく」
「マジかよ。ヒカリの人脈凄いな」
「ふふっ。とりあえず、病院までは二人で帰りましょ」

 本当、ヒカリには敵わないな。
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