ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗

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第17話 好き好き好き好き好き

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 俺ではなく、遥をにらむようにして教室に入ってくる女生徒。金髪ギャルの美少女だった。顔に見覚えがないな。遥の知り合いかな。

「えっと……だれ?」
「あたしは、椎名しいな あおいといいます。風紀委員長を務めているので、よろしくお願いします」

 その名前、どこかで聞き覚えが。それにしても、金髪ギャルで風紀委員長? 今日初めてその存在を知った。こんなキャピキャピしたギャルだったとは、風紀的にどうなんだか。

 というか、いきなり入ってきてなんだ。もう少しで遥とキスできると思ったのに。遥も残念そうに肩を落としていた。しかも、目が怖いぞ。

「あー、椎名さん。俺たちはもう帰るよ」
「そうはいきません」
「へ」
「二人の距離は明らかに近すぎです! それ以上は危険なので離れて、それぞれ帰ってください」

「いや、俺と遥は家が近いんだが」
「ご、御近所さんでしたか。でもダメです」


 ギャルのくせに真面目か。
 そもそも、椎名の身嗜みだしなみからしてツッコミどころ満載だけどな。

「ダメって言うなら、君はどうなんだ。髪の毛は金髪。スカート丈は極端に短め。パンツ見えそうだし」

「パ、パン……見ないで下さいよっ!」

 スカートを押さえ、顔を真っ赤にする椎名。今更恥ずかしがっても遅い気が。でも、敬語なところとかギャップがちょっと可愛らしいな。

 なんて感じていると、遥が死んだのような目線を俺に送っていた。――って、うわ! 今にもナタでも掴んで襲ってきそうな邪悪なオーラ。まずい、このままだと俺、殺されるな。

「悪いけど、俺と遥は帰るよ」
「ぐぅっ……。と、というか二人はどんな関係なんですか! まさか付き合っているとかじゃ! 名前で呼んでますし」

 誰もいない教室に二人きりで残っていれば突然怪しまれる。密着もしていたし。けど、事実は事実だ。結婚しているとは言えないけど、付き合っているとは言える。……のだが。さっきから風紀委員長の圧が凄い。

 下手に付き合っていると言ったら、後々トラブルになりそうな雰囲気があった。うん、これは危険な香りがする。

 というわけで、俺は無難な回答を選んだ。


「お、幼馴染なんだ。だから、抱き合うくらい仲が良いんだよ」
「そうなんですね。なら、いいです!」


 なにがいいんだ??
 けど、俺の回答により遥の顔がこの世の終わりのようなヤバイことになっていた。ちょ、なんでそんな絶望しかない表情してんの。

 おかしいな、俺はこの危機を乗り切る為に当たり障りのない言葉を選んだつもりだったんだが……これは後々が怖いぞ。血を見るかもしれん。

 恐ろしい未来に戦慄せんりつする俺。

 風紀委員長の椎名は「今日は見逃しますが、明日からは気を付けてくださいね」と俺と遥に強い目線を送る。

 ここまで釘を刺されるとは。


 * * *


 あれから教室を出て帰路に就く。
 校門を抜けて、俺は背後を振り向いた。物陰に椎名がいるような気がした。これ、つけられてる?

 しかし、それよりも遥だ。
 明らかに邪悪な黒いものを漂わせていた。

「あ、あのさ……遥、怒ってる?」
「怒ってない。遙くんを殺したいとか思ってないし」


 殺意ありまくりじゃん!
 やっぱり、怒っているんだな。ここは早めに機嫌を取り戻してもらわないと、俺の命が危うい。

 なにか……なんでもいい。死を回避する方法はないのか。


「参考程度に聞かせて欲しいんだが、なんで機嫌が悪いんだ?」
「さっき椎名さんに幼馴染って言ったから……」

 なるほど。
 遥としては結婚してると言って欲しかったということか。それが幼馴染だとか誤魔化されたら、いい気分がしないと。
 もちろん、俺だって嘘はつきたくなかった。でも、あの状況は仕方がなかったのだ。相手は、風紀委員長なのだから。


「許してくれ」
「じゃあ、次は“結婚しています”って言ってくれる?」
「え、それは……ちょっと」

「そう……じゃあ」

 その一瞬の迷いがあだとなった。気づけば俺の喉元にカッターナイフが接触しそうになっていた。ギリギリすぎて俺はチビりそうになった。

「うわッ! 遥、頼むから病むなって!」

「遙くんって、本当にわたしのことが好きなの? 愛してる? もしかして一緒に住むの嫌? わたしの純情もてあそんでいたのなら許さないよ。結婚までしたんだから……捨てたら殺すよ」

 わわわ……!
 涙目の遥。カッターナイフを持つ手がガタガタ揺れている。あ、危ないって。俺の喉元切れちゃうって!!

「お、落ち着けって! 好きに決まっているだろう」
「ほんと? どれくらい好き?」
「好き、大好きだ」

「……足りない」
「へ?」

「それだけじゃ、足りない。もっと“好き”って言って」

 やべえ、カッターナイフの刃が食い込みそうだ。死ぬううぅ! 死にたくない俺は、本当の気持ちを打ち明けた。


「好き好き、大好きだ! 遥が大好きだ。好き、いっぱい好き。綺麗な黒髪も、うなじも最高。超タイプ。白い肌も触りたくなるほど好き。少し赤い目も好きだ。宝石のようで綺麗。顔なんてもう最高だ。超絶可愛い。ずっと見ていられるから好き。唇が桜色でツヤツヤだ。いっぱいキスしたい。
 あと胸な。形良すぎ。でも巨乳すぎるだろ。いったい何カップあるんだと毎日妄想が膨らんでばかりだ。大好きだ。
 スレンダーな体もいい、ほどよい肉付きもいい、手足がスラっとしてエロい。最高、好きっていうか、もうメロメロ。ふとももが絶妙な健康美で最高。百点! それに、料理が出来て面倒見もいい。俺の嫁にはもったいないほどだ。だから毎日が楽しいし、そばにいて欲しい」


 息をするのも忘れて、俺は“好き”を連呼しまくった。これが、ここ最近で感じた俺の遥に対する“好き”だった。

 全部ぶちまけると、遥はカッターナイフを地面へ落とした。それから、嬉しそうに口を歪めて両手で顔を覆っていた。


「……遙くん、わ、わたしも好き、です。ぜんぶ」


 お、おふぅ。
 なんとか乗り切れたようだ。

 死ぬかと思ったー!
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