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監視役、現る
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通り掛かった人が通報したのだろうか、ホーリーナイトが現れ『砂漠の鷲』のメンバーを連行していった。
帝国までやって来るとは……。
関わらないつもりが、向こうから関わってくる。こうなってしまうのなら、僕は戦うしかないなって思った。
◆
エルフの子と別れ、僕は屋敷に到着。
歩いて玄関を目指していると、庭で寝転んでいるアイルの姿があった。
「……アイル、そこで何を?」
「おかりなさい、キエルさん。ずっと待っていました」
「ぼ、僕を待っていてくれたのかい!?」
「はい。だって、心配だったから」
体を起こすアイルは、静かに立ち上がって僕の元へ。瞳を潤ませ、上目遣いで僕を見る。なんだか……申し訳ないなって感じた。
「ごめんな、アイル。でも、学校の入学はなくなったよ」
「え……学校は入れなかったんですか?」
「うん。レベルが高すぎるってさ」
「そうなんですか!?」
学校に入るには『Lv.50』以下でないといけないと説明した。すると、アイルは納得し、驚いていた。
「そんな所さ」
「そうだったのですね。確かに、キエルさんはLv.56もありますもんね。でも、校長先生が指導して下さるとは……あのセドナ様、自ら」
「知っているのかい?」
「ええ。セドナ様は、あらゆる魔法を無限に使えると聞き及んでおります」
あらゆる魔法を……無限に?
そりゃ凄いな。ほぼ全ての魔法が使えるって事だよな。最強じゃないか、それ。でも、僕もそんな魔法使いになりたいな。
「やっぱり、校長先生は凄いや」
「大丈夫です。キエルさんもいつか『メフィストフェレス』か『ウォーロック』になれますよ! わたしが保証します」
手を握られ、僕はドキッとした。
アイルの手……小さくて細い。
僕もアイルの手を握り返す。
「……アイル、僕は」
「この手の繋ぎ方、なんだかドキドキしますね」
「……そ、そうだね。アイル、そうだ、たまには帝国の外へ出ようか」
僕は誤魔化すようにそう提案した。
地下ダンジョンも考えたけど、まだ時間もあるし、今日は天気も良いから外がいいかなと思った。
「お外! 良いですね、もっと外の世界を見てみたいです!」
顔を輝かせるアイル。
そうか、あんまり外へ出たことがなかったのかもしれない。なら、尚更だ。僕は、アイルの手を引っ張って――
「ならああああああああん!!!」
行こうと思ったら、そんな声が静止した。
この声は聞き覚えがある。
「オルトロス様……」
アイルが名前をつぶやく。
オルトロスといえば、教会の人だ。
「なりませんぞ、大聖女様! 帝国の外に出るなど言語道断!! また狙われて、今度は命を落とすかもしれませぬぞ!!」
「……でも」
「でもではありません。またお尻を叩かれたいのですか!」
「…………ひぃっ」
涙目で僕に抱きつくアイル。おいおい、お尻をって……まるでお仕置きじゃないか、それ。
「まあいい。今日は監視役を連れてきたのだ」
「監視役?」
そういえば、そんな事を言っていたな。
でも姿もないし、どこにいるんだ?
周囲を見渡していると、オルトロスが指を鳴らす。
すると空から何か落ちて来て――
物凄い勢いで庭に落下。
な……なんだ!?
「紹介しよう。彼女は帝国ジェミニ最強のドラゴン族にしてホーリーナイト。皇帝陛下には『ホーリーナイトドラゴン』の称号さえ与えられ絶対の信頼を寄せられている騎士の中の騎士だ」
土埃の中から現れる騎士。
他のホーリーナイトとは明らかに違うアーマーを身に着けているように見える。
「…………」
やがて桃色の髪が見えてきて、青い瞳が僕を見据えた。
「こ、この子が監視役……」
「あたしは『ルミナス』。これから貴方と大聖女様の護衛に……ひやぁ!?」
ルミナスという騎士は、僕の顔を見て顔を真っ赤にしていた。なぜ?
「ど、どうしたんです?」
「キエルくんは、貴方ですよね」
「え、はい」
「……こ、こんな若い男の子だとは思わなかった……」
予想外だったのだろうか、両手で口を押え、わなわなと震えていた。……え~、どういう事~?
帝国までやって来るとは……。
関わらないつもりが、向こうから関わってくる。こうなってしまうのなら、僕は戦うしかないなって思った。
◆
エルフの子と別れ、僕は屋敷に到着。
歩いて玄関を目指していると、庭で寝転んでいるアイルの姿があった。
「……アイル、そこで何を?」
「おかりなさい、キエルさん。ずっと待っていました」
「ぼ、僕を待っていてくれたのかい!?」
「はい。だって、心配だったから」
体を起こすアイルは、静かに立ち上がって僕の元へ。瞳を潤ませ、上目遣いで僕を見る。なんだか……申し訳ないなって感じた。
「ごめんな、アイル。でも、学校の入学はなくなったよ」
「え……学校は入れなかったんですか?」
「うん。レベルが高すぎるってさ」
「そうなんですか!?」
学校に入るには『Lv.50』以下でないといけないと説明した。すると、アイルは納得し、驚いていた。
「そんな所さ」
「そうだったのですね。確かに、キエルさんはLv.56もありますもんね。でも、校長先生が指導して下さるとは……あのセドナ様、自ら」
「知っているのかい?」
「ええ。セドナ様は、あらゆる魔法を無限に使えると聞き及んでおります」
あらゆる魔法を……無限に?
そりゃ凄いな。ほぼ全ての魔法が使えるって事だよな。最強じゃないか、それ。でも、僕もそんな魔法使いになりたいな。
「やっぱり、校長先生は凄いや」
「大丈夫です。キエルさんもいつか『メフィストフェレス』か『ウォーロック』になれますよ! わたしが保証します」
手を握られ、僕はドキッとした。
アイルの手……小さくて細い。
僕もアイルの手を握り返す。
「……アイル、僕は」
「この手の繋ぎ方、なんだかドキドキしますね」
「……そ、そうだね。アイル、そうだ、たまには帝国の外へ出ようか」
僕は誤魔化すようにそう提案した。
地下ダンジョンも考えたけど、まだ時間もあるし、今日は天気も良いから外がいいかなと思った。
「お外! 良いですね、もっと外の世界を見てみたいです!」
顔を輝かせるアイル。
そうか、あんまり外へ出たことがなかったのかもしれない。なら、尚更だ。僕は、アイルの手を引っ張って――
「ならああああああああん!!!」
行こうと思ったら、そんな声が静止した。
この声は聞き覚えがある。
「オルトロス様……」
アイルが名前をつぶやく。
オルトロスといえば、教会の人だ。
「なりませんぞ、大聖女様! 帝国の外に出るなど言語道断!! また狙われて、今度は命を落とすかもしれませぬぞ!!」
「……でも」
「でもではありません。またお尻を叩かれたいのですか!」
「…………ひぃっ」
涙目で僕に抱きつくアイル。おいおい、お尻をって……まるでお仕置きじゃないか、それ。
「まあいい。今日は監視役を連れてきたのだ」
「監視役?」
そういえば、そんな事を言っていたな。
でも姿もないし、どこにいるんだ?
周囲を見渡していると、オルトロスが指を鳴らす。
すると空から何か落ちて来て――
物凄い勢いで庭に落下。
な……なんだ!?
「紹介しよう。彼女は帝国ジェミニ最強のドラゴン族にしてホーリーナイト。皇帝陛下には『ホーリーナイトドラゴン』の称号さえ与えられ絶対の信頼を寄せられている騎士の中の騎士だ」
土埃の中から現れる騎士。
他のホーリーナイトとは明らかに違うアーマーを身に着けているように見える。
「…………」
やがて桃色の髪が見えてきて、青い瞳が僕を見据えた。
「こ、この子が監視役……」
「あたしは『ルミナス』。これから貴方と大聖女様の護衛に……ひやぁ!?」
ルミナスという騎士は、僕の顔を見て顔を真っ赤にしていた。なぜ?
「ど、どうしたんです?」
「キエルくんは、貴方ですよね」
「え、はい」
「……こ、こんな若い男の子だとは思わなかった……」
予想外だったのだろうか、両手で口を押え、わなわなと震えていた。……え~、どういう事~?
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