ギフト『モンスター撃破ボーナス』で最強スローライフ!

桜井正宗

文字の大きさ
上 下
9 / 21

料理スキルを持つ剣士

しおりを挟む
 空は、闇に染まって桃色の月が出ていた。

 涼しい夜を過ごしていると『囁きの魔石ボイスストーン』が赤く輝き、不思議な音色を奏でた。

「これが呼び出しかな」

 僕は石を手に取って、なんとなく押してみた。
 すると石から声がした。

『やあ、キエルかな』
「う、うん。僕だけど……これが魔石の力か。本当に通話が出来るんだ……凄い」
『驚いているね。そうだとも、これが囁きの魔石ボイスストーンの力さ。噂では、かなり離れた国からでも通話可能らしい』

 それが本当なら、この石があればどんなに離れていても会話が出来るのか。いいね、この石は欲しいなぁ。

「この石って売ってるの?」
『売ってるけど、高いよ。そうだね~、金貨30枚は必要じゃないかな』


 金貨30枚……。
 帝国の貨幣が『レダ』なので『3,000,000レダ』相当。これだけあれば宿屋なんて一ヶ月は余裕で借りれるし、自身をレア装備で固められる額だ。

 そんな高額とは、さすが貴族。

 でも待てよ……僕の『モンスター撃破ボーナス』は『金貨』や『銀貨』も入手できたはず。つまり、スライムとかモンスターを倒しまくれば結構稼げるのかも。


「教えてくれてありがとう、ラル」
『これくらいお安い御用さ。とりあえず、飯にしようぜ。キエル、アイルを連れて食堂に来てくれ。一階だ』


 そこで通信は切れた。
 この魔石は本当に便利だなあ。
 お金に余裕が出来たら買おうかな。


「アイル、ご飯だってさ」
「……むにゃむにゃ」


 疲れたのかベッドで眠っているアイルは、可愛い寝顔を晒していた。……う~ん、これは起こすのが勿体無もったいないな。

 少しの間だけ観察していよう。


 ◆


 僕は、アイルの頬を突いて起こした。


「……はひっ!?」
「おはよう、アイル。後で寝られなくなっちゃうよ」
「へ……ああッ。キエルさん、わたしの寝顔見たんですか!?」
「まあね。でも、可愛かったよ」


「……うぅ」


 顔を真っ赤にして恥ずかしそうにするアイル。いや、本当に良いモノが見れたなぁ。


 ――アイルを連れて食堂へ。


 食堂には、ラルと三姉妹。
 僕とアイルは、長いテーブルの席に着席。豪華な料理を前に、目を白黒させた。いくらなんでも豪勢すぎるよ、これ!


「このお肉とか美味しそうだね」
「キエル、遠慮なく食べてくれ! この俺が作ったからな」
「え!? これ、ラルが作ったの? 貴族なのに? 専属のコックさんとかは?」
「本業は剣士なんだけど、俺の趣味が『料理』なんだ。これでも、料理スキルは『Lv.9』とマックス手前だぜ!」


 す、すご……ラルにそんな特技があったんて。剣士兼料理人って所だろうか。うん、パーティに居てくれるとキャンプとかする時に助かるなあ。


「尊敬するよ」
「いや、それは逆だ」
「?」
「俺はキエルを尊敬している。だって、俺をスライムから助けてくれたじゃないか。俺にとってキエルこそ最高の魔法使いさ」


 そ、そんな風に言われたら照れる。
 僕は初めて褒められて、戸惑った。
 これ、嬉しいって事かな。


「ちょっと、ラル。お料理が冷めてしまいますわよ」
「ああ、ごめん。イオ姉さん。そういうわけで、いただきます!」


 フォークとナイフを手に取って、豪華な料理を楽しんだ。こんな贅沢は始めてだ。


 あまりに美味しくて無心になって、ぱくぱく食べていると、多分、次女のお姉さんが僕の隣の席に来た。

「楽しんでおられますか?」
「え、ええ……確か――」
「エウロパです。ほら、右目の下に“泣きボクロ”があるでしょう。これがチャームポイントですから、これで覚えて下さいね」

 なるほど確かに、エウロパさんには特徴的で可愛らしいホクロがあった。……それと、胸も大きかった。


「は、はい」
「ええ。そういえば、お父様を救って下さってありがとうございました。大聖女様もお救いになられるとは……凄い力を持っているのですね」


 エウロパさんは、僕の首に腕を回してくる。……う、わぁ、綺麗な女性に抱きつかれるの初めてだ……。


「何しているの、エウロパ!」
「そうよ、ずるいわ」

 イオさんとカリストさんも反応を示す。
 ま、まさか……取り合い!?


「良かったな、キエル。姉ちゃん達に、すっかり気に入られているようだぞ」


 ニヤリと笑うラル。
 そうなのかな、僕はよく分からなかった。

 でもなんだか、不穏な空気になりつつある。僕の事で雰囲気を悪くして欲しくない。……ので、ここは公平に。


「お姉さん方、良かったら『じゃんけん』をしてみて下さい。勝者が僕と話しましょう」

「「「じゃんけん??」」」


 どうやら、この国には『じゃんけん』は知られていないらしい。僕は簡単に説明した。


「なるほど、グー、チョキ、パーを出しあうと……簡単ですね」
「公平なゲームです」
「絶対に勝ちます」


 イオさん、エウロパさん、カリストさんがバチバチを火花を散らす。いよいよ、じゃんけんが始まろうとしたのだが……。


「待って下さい!」


 すっくと立ちあがるアイルが、可愛く拳を掲げる。僕らは、何事かとそこへ振り向く。

「どうしたんだ?」
「わたしも『じゃんけん』に参加します! キエルさんと話したいですもん」

 なんと!
 アイルも参戦が決定した。
しおりを挟む
他にも作品を連載しています↓

作品一覧

応援よろしくお願いしますm(_ _)m
感想 0

あなたにおすすめの小説

母のギフトがすごいんです

江田真芽
ファンタジー
 幼き頃に亡くなった母から毎年届くギフト。 『日本で言えば亡くなった親が子どもの誕生日に先撮りしていたビデオレターでお祝いするとか、そんな感じよ』と母はギフト内で語っていた。  友人らが受け取るギフトは毎年一言。でも俺が受け取るギフトは何時間にも及ぶ内容。   今年のギフトで母は言った。 『実はお母さんもあんたも日本という国から来た異世界人なのよ。聖女召喚の儀でこの世界に呼ばれちゃったの。異世界人だから、ステータス画面が見れたりするのよ。便利よね』と。 ※最初しばらく暗いですw

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした

新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。 「ヨシュア……てめえはクビだ」 ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。 「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。 危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。 一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。 彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

聖女なのに婚約破棄した上に辺境へ追放? ショックで前世を思い出し、魔法で電化製品を再現出来るようになって快適なので、もう戻りません。

向原 行人
ファンタジー
土の聖女と呼ばれる土魔法を極めた私、セシリアは婚約者である第二王子から婚約破棄を言い渡された上に、王宮を追放されて辺境の地へ飛ばされてしまった。 とりあえず、辺境の地でも何とか生きていくしかないと思った物の、着いた先は家どころか人すら居ない場所だった。 こんな所でどうすれば良いのと、ショックで頭が真っ白になった瞬間、突然前世の――日本の某家電量販店の販売員として働いていた記憶が蘇る。 土魔法で家や畑を作り、具現化魔法で家電製品を再現し……あれ? 王宮暮らしより遥かに快適なんですけど! 一方、王宮での私がしていた仕事を出来る者が居ないらしく、戻って来いと言われるけど、モフモフな動物さんたちと一緒に快適で幸せに暮らして居るので、お断りします。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

迷い人と当たり人〜伝説の国の魔道具で気ままに快適冒険者ライフを目指します〜

青空ばらみ
ファンタジー
 一歳で両親を亡くし母方の伯父マークがいる辺境伯領に連れて来られたパール。 伯父と一緒に暮らすお許しを辺境伯様に乞うため訪れていた辺境伯邸で、たまたま出くわした侯爵令嬢の無知な善意により 六歳で見習い冒険者になることが決定してしまった! 運良く? 『前世の記憶』を思い出し『スマッホ』のチェリーちゃんにも協力してもらいながら 立派な冒険者になるために 前世使えなかった魔法も喜んで覚え、なんだか百年に一人現れるかどうかの伝説の国に迷いこんだ『迷い人』にもなってしまって、その恩恵を受けようとする『当たり人』と呼ばれる人たちに貢がれたり…… ぜんぜん理想の田舎でまったりスローライフは送れないけど、しょうがないから伝説の国の魔道具を駆使して 気ままに快適冒険者を目指しながら 周りのみんなを無自覚でハッピーライフに巻き込んで? 楽しく生きていこうかな! ゆる〜いスローペースのご都合ファンタジーです。 小説家になろう様でも投稿をしております。

処理中です...