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美人三姉妹、現る

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 僕は、格安の宿屋を取ろうと提案した。
 すると、ラルが手を叩き、更なる案を出した。

「なら、ウチに来いよ。キエルもアイル様も歓迎するよ」
「ラルの家に? ということは、貴族の屋敷へ?」

「そうだ! それならお金も掛からないし、部屋だって腐る程ある。好きに使っていいぞ」
「それは名案だね。アイルもそれでいい?」

「はいっ」


 決まりだ。
 ラルのお屋敷へ向かった。

 お城からかなり歩いて、大通りを外れていくと大きなお屋敷が見えた。あれがラルの家かあ。やっぱり貴族ともなると凄い大きさと広さだ。


「さあ、入ろうか」


 大きな門を抜けていくラル。
 この広い庭を歩いていくんだ。

 ついていくと、巨大な玄関前まで来た。


「なんて屋敷だ……」
「驚くのはまだ早いぞ、キエル。中はもっと凄い」


 そう言われると気になるな。
 ラルが玄関を開けると、彼はいきなりビンタされて吹き飛んだ。


「ぐえええッ!?」


「「なっ……!!」」


 僕もアイルもその状況に驚く。
 玄関の先には怖い顔をした女性がいたからだ。しかも複数人。


「ちょっと、ラル!」
「これはどういう事なの!!」
「お父様が貴方のせいで捕まったと聞いたわ!」


 三人の女性は、ラルに問い詰める。
 ……良く見ると顔がそっくりだな。
 つまり、この人たちは辺境伯の娘さんかな。


「ね、姉さんたち……いきなりは酷いよ!」


 あー、やっぱりお姉さんか。


「ラル、事情を詳しく説明してもら……ん? この甘そうなクリーム色の髪の男の子は誰? って、その横の銀髪でシスター服の女の子は……大聖女アイル様!?」

「「ええ!?」」


 お姉さんたちが驚いていた。


「はい……あの、わたしはアイルです。キエルさんとラルさんは同じパーティといいますか、仲間なんです」


「「「なんですってー!?」」」


 ラルのお姉ちゃん達は、ひっくり返りそうなくらい驚愕していた。やっぱり、アイルってそれほどの存在なんだな。


「……ラ、ラル。よく大聖女様と仲良くなれたわね」
「アイル様とお話できるとか奇跡よ!」
「こんな可愛い子だったのですね~」


 どうやら、彼女たちの怒りはアイルによって納まったらしい。凄いな、大聖女。

「とにかく、姉ちゃん達。こっちのクリーム色の髪の少年は、キエル。あの北のフィルン出身らしい。で、知っての通りだけど、この銀髪の方は大聖女アイル様だよ」


 こっちの紹介が終わると、ラルのお姉ちゃん達の紹介も始まった。


「わたくしは長女の『イオ』ですわ」
「私は次女『エウロパ』です」
「……三女『カリスト』よ」


 そうか、三姉妹なんだ。
 それにしても、綺麗なお姉さん達だなあ。

 自己紹介が終わった所で、部屋に案内された。


 二階に上がっていって――奥の部屋。


「わぁ、広いなぁ」
「こんな素敵な部屋を借りちゃっていいんです?」

 僕もアイルも戸惑うばかりだった。

「いいとも。じゃあ、俺は自室へ戻るから、困ったら部屋にある『囁きの魔石ボイスストーン』を使ってくれ。それで通信が可能だ」

囁きの魔石ボイスストーン?」

「ああ、キエルは知らないのか。それは遠くに離れていても通話が可能な石でね。この帝国の偉大な魔法使いメフィストフェレス様がお作りなった魔石さ」


 メフィストフェレスか、やっぱりいるんだ。一度でいいから会ってみたいな。魔法とか色々教われたら更にいいんだけど。


「分かった。じゃあ、それで聞くよ」
「おう。アイル様もまた」

「はい、色々とありがとうございます、ラルさん」


 手を振って別れた。

 僕は自室に入っていくけど、アイルもついてくる。


「え……アイル?」
「??」

 首を傾げるアイルさん。

「えっと……ここ僕の部屋らしいけど。アイルは隣だよ?」
「……」

 首を横に振って寂しそうな表情をする。
 そんな顔されてもなあ……いやでも待てよ。僕は、アイルの面倒を見るように皇帝陛下から直々に言われているし、万が一の襲撃もあるかもしれない。そういうのに備えておかないと、僕が処刑されてしまう。


「一緒がいいのかい?」
「……はいっ」

 そんな笑顔で返事されると、断れない。

「もう一度確認するけど、本当に良いんだね」
「キエルさんのお傍が一番安全ですから」


 もうこの微笑みには抗えないな。
 うん、今夜はアイルと一緒に過ごそう。
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