8 / 21
美人三姉妹、現る
しおりを挟む
僕は、格安の宿屋を取ろうと提案した。
すると、ラルが手を叩き、更なる案を出した。
「なら、ウチに来いよ。キエルもアイル様も歓迎するよ」
「ラルの家に? ということは、貴族の屋敷へ?」
「そうだ! それならお金も掛からないし、部屋だって腐る程ある。好きに使っていいぞ」
「それは名案だね。アイルもそれでいい?」
「はいっ」
決まりだ。
ラルのお屋敷へ向かった。
お城からかなり歩いて、大通りを外れていくと大きなお屋敷が見えた。あれがラルの家かあ。やっぱり貴族ともなると凄い大きさと広さだ。
「さあ、入ろうか」
大きな門を抜けていくラル。
この広い庭を歩いていくんだ。
ついていくと、巨大な玄関前まで来た。
「なんて屋敷だ……」
「驚くのはまだ早いぞ、キエル。中はもっと凄い」
そう言われると気になるな。
ラルが玄関を開けると、彼はいきなりビンタされて吹き飛んだ。
「ぐえええッ!?」
「「なっ……!!」」
僕もアイルもその状況に驚く。
玄関の先には怖い顔をした女性がいたからだ。しかも複数人。
「ちょっと、ラル!」
「これはどういう事なの!!」
「お父様が貴方のせいで捕まったと聞いたわ!」
三人の女性は、ラルに問い詰める。
……良く見ると顔がそっくりだな。
つまり、この人たちは辺境伯の娘さんかな。
「ね、姉さんたち……いきなりは酷いよ!」
あー、やっぱりお姉さんか。
「ラル、事情を詳しく説明してもら……ん? この甘そうなクリーム色の髪の男の子は誰? って、その横の銀髪でシスター服の女の子は……大聖女アイル様!?」
「「ええ!?」」
お姉さんたちが驚いていた。
「はい……あの、わたしはアイルです。キエルさんとラルさんは同じパーティといいますか、仲間なんです」
「「「なんですってー!?」」」
ラルのお姉ちゃん達は、ひっくり返りそうなくらい驚愕していた。やっぱり、アイルってそれほどの存在なんだな。
「……ラ、ラル。よく大聖女様と仲良くなれたわね」
「アイル様とお話できるとか奇跡よ!」
「こんな可愛い子だったのですね~」
どうやら、彼女たちの怒りはアイルによって納まったらしい。凄いな、大聖女。
「とにかく、姉ちゃん達。こっちのクリーム色の髪の少年は、キエル。あの北のフィルン出身らしい。で、知っての通りだけど、この銀髪の方は大聖女アイル様だよ」
こっちの紹介が終わると、ラルのお姉ちゃん達の紹介も始まった。
「わたくしは長女の『イオ』ですわ」
「私は次女『エウロパ』です」
「……三女『カリスト』よ」
そうか、三姉妹なんだ。
それにしても、綺麗なお姉さん達だなあ。
自己紹介が終わった所で、部屋に案内された。
二階に上がっていって――奥の部屋。
「わぁ、広いなぁ」
「こんな素敵な部屋を借りちゃっていいんです?」
僕もアイルも戸惑うばかりだった。
「いいとも。じゃあ、俺は自室へ戻るから、困ったら部屋にある『囁きの魔石』を使ってくれ。それで通信が可能だ」
「囁きの魔石?」
「ああ、キエルは知らないのか。それは遠くに離れていても通話が可能な石でね。この帝国の偉大な魔法使いメフィストフェレス様がお作りなった魔石さ」
メフィストフェレスか、やっぱりいるんだ。一度でいいから会ってみたいな。魔法とか色々教われたら更にいいんだけど。
「分かった。じゃあ、それで聞くよ」
「おう。アイル様もまた」
「はい、色々とありがとうございます、ラルさん」
手を振って別れた。
僕は自室に入っていくけど、アイルもついてくる。
「え……アイル?」
「??」
首を傾げるアイルさん。
「えっと……ここ僕の部屋らしいけど。アイルは隣だよ?」
「……」
首を横に振って寂しそうな表情をする。
そんな顔されてもなあ……いやでも待てよ。僕は、アイルの面倒を見るように皇帝陛下から直々に言われているし、万が一の襲撃もあるかもしれない。そういうのに備えておかないと、僕が処刑されてしまう。
「一緒がいいのかい?」
「……はいっ」
そんな笑顔で返事されると、断れない。
「もう一度確認するけど、本当に良いんだね」
「キエルさんのお傍が一番安全ですから」
もうこの微笑みには抗えないな。
うん、今夜はアイルと一緒に過ごそう。
すると、ラルが手を叩き、更なる案を出した。
「なら、ウチに来いよ。キエルもアイル様も歓迎するよ」
「ラルの家に? ということは、貴族の屋敷へ?」
「そうだ! それならお金も掛からないし、部屋だって腐る程ある。好きに使っていいぞ」
「それは名案だね。アイルもそれでいい?」
「はいっ」
決まりだ。
ラルのお屋敷へ向かった。
お城からかなり歩いて、大通りを外れていくと大きなお屋敷が見えた。あれがラルの家かあ。やっぱり貴族ともなると凄い大きさと広さだ。
「さあ、入ろうか」
大きな門を抜けていくラル。
この広い庭を歩いていくんだ。
ついていくと、巨大な玄関前まで来た。
「なんて屋敷だ……」
「驚くのはまだ早いぞ、キエル。中はもっと凄い」
そう言われると気になるな。
ラルが玄関を開けると、彼はいきなりビンタされて吹き飛んだ。
「ぐえええッ!?」
「「なっ……!!」」
僕もアイルもその状況に驚く。
玄関の先には怖い顔をした女性がいたからだ。しかも複数人。
「ちょっと、ラル!」
「これはどういう事なの!!」
「お父様が貴方のせいで捕まったと聞いたわ!」
三人の女性は、ラルに問い詰める。
……良く見ると顔がそっくりだな。
つまり、この人たちは辺境伯の娘さんかな。
「ね、姉さんたち……いきなりは酷いよ!」
あー、やっぱりお姉さんか。
「ラル、事情を詳しく説明してもら……ん? この甘そうなクリーム色の髪の男の子は誰? って、その横の銀髪でシスター服の女の子は……大聖女アイル様!?」
「「ええ!?」」
お姉さんたちが驚いていた。
「はい……あの、わたしはアイルです。キエルさんとラルさんは同じパーティといいますか、仲間なんです」
「「「なんですってー!?」」」
ラルのお姉ちゃん達は、ひっくり返りそうなくらい驚愕していた。やっぱり、アイルってそれほどの存在なんだな。
「……ラ、ラル。よく大聖女様と仲良くなれたわね」
「アイル様とお話できるとか奇跡よ!」
「こんな可愛い子だったのですね~」
どうやら、彼女たちの怒りはアイルによって納まったらしい。凄いな、大聖女。
「とにかく、姉ちゃん達。こっちのクリーム色の髪の少年は、キエル。あの北のフィルン出身らしい。で、知っての通りだけど、この銀髪の方は大聖女アイル様だよ」
こっちの紹介が終わると、ラルのお姉ちゃん達の紹介も始まった。
「わたくしは長女の『イオ』ですわ」
「私は次女『エウロパ』です」
「……三女『カリスト』よ」
そうか、三姉妹なんだ。
それにしても、綺麗なお姉さん達だなあ。
自己紹介が終わった所で、部屋に案内された。
二階に上がっていって――奥の部屋。
「わぁ、広いなぁ」
「こんな素敵な部屋を借りちゃっていいんです?」
僕もアイルも戸惑うばかりだった。
「いいとも。じゃあ、俺は自室へ戻るから、困ったら部屋にある『囁きの魔石』を使ってくれ。それで通信が可能だ」
「囁きの魔石?」
「ああ、キエルは知らないのか。それは遠くに離れていても通話が可能な石でね。この帝国の偉大な魔法使いメフィストフェレス様がお作りなった魔石さ」
メフィストフェレスか、やっぱりいるんだ。一度でいいから会ってみたいな。魔法とか色々教われたら更にいいんだけど。
「分かった。じゃあ、それで聞くよ」
「おう。アイル様もまた」
「はい、色々とありがとうございます、ラルさん」
手を振って別れた。
僕は自室に入っていくけど、アイルもついてくる。
「え……アイル?」
「??」
首を傾げるアイルさん。
「えっと……ここ僕の部屋らしいけど。アイルは隣だよ?」
「……」
首を横に振って寂しそうな表情をする。
そんな顔されてもなあ……いやでも待てよ。僕は、アイルの面倒を見るように皇帝陛下から直々に言われているし、万が一の襲撃もあるかもしれない。そういうのに備えておかないと、僕が処刑されてしまう。
「一緒がいいのかい?」
「……はいっ」
そんな笑顔で返事されると、断れない。
「もう一度確認するけど、本当に良いんだね」
「キエルさんのお傍が一番安全ですから」
もうこの微笑みには抗えないな。
うん、今夜はアイルと一緒に過ごそう。
1
お気に入りに追加
83
あなたにおすすめの小説
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
修道女エンドの悪役令嬢が実は聖女だったわけですが今更助けてなんて言わないですよね
星里有乃
恋愛
『お久しぶりですわ、バッカス王太子。ルイーゼの名は捨てて今は洗礼名のセシリアで暮らしております。そちらには聖女ミカエラさんがいるのだから、私がいなくても安心ね。ご機嫌よう……』
悪役令嬢ルイーゼは聖女ミカエラへの嫌がらせという濡れ衣を着せられて、辺境の修道院へ追放されてしまう。2年後、魔族の襲撃により王都はピンチに陥り、真の聖女はミカエラではなくルイーゼだったことが判明する。
地母神との誓いにより祖国の土地だけは踏めないルイーゼに、今更助けを求めることは不可能。さらに、ルイーゼには別の国の王子から求婚話が来ていて……?
* この作品は、アルファポリスさんと小説家になろうさんに投稿しています。
* 2025年2月1日、本編完結しました。予定より少し文字数多めです。番外編や後日談など、また改めて投稿出来たらと思います。ご覧いただきありがとうございました!
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
【完結】島流しされた役立たず王女、第二の人生はサバイバル〜いつの間にか最強皇帝に溺愛されてますけど、海の恵みで儲けさせていただきます!〜
●やきいもほくほく●
恋愛
──目が覚めると海の上だった!?
「メイジー・ド・シールカイズ、あなたを国外に追放するわ!」
長年、虐げられてきた『役立たず王女』メイジーは異母姉妹であるジャシンスに嵌められて島流しにされている最中に前世の記憶を取り戻す。
前世でも家族に裏切られて死んだメイジーは諦めて死のうとするものの、最後まで足掻こうと決意する。
奮起したメイジーはなりふり構わず生き残るために行動をする。
そして……メイジーが辿り着いた島にいたのは島民に神様と祀られるガブリエーレだった。
この出会いがメイジーの運命を大きく変える!?
言葉が通じないため食われそうになり、生け贄にされそうになり、海に流されそうになり、死にかけながらもサバイバル生活を開始する。
ガブリエーレの世話をしつつ、メイジーは〝あるもの〟を見つけて成り上がりを決意。
ガブリエーレに振り回されつつ、彼の〝本来の姿〟を知ったメイジーは──。
これは気弱で争いに負けた王女が逞しく島で生き抜き、神様と運を味方につけて無双する爽快ストーリー!
転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜
みおな
ファンタジー
私の名前は、瀬尾あかり。
37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。
そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。
今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。
それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。
そして、目覚めた時ー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる