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【296】 はじまりの場所
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朝食を食べ終え、店を出た。
去り際にノレッジさんは、レベルの取引を持ち掛けてきた。どうやら店の資金が必要らしく、自身のレベルを売りたいという。俺は普段お世話になっているから、買取に応じた。
「じゃあ、5,000セルですよ」
「なッ、今はそんなにレートが低いのかい!?」
「一時期の暴騰はバイオレットダンジョンとかの影響のせいです。今は少し落ち着いたんですよ。はい、500,000セル。帝国ペイで受け取り下さい」
今回は『Lv.100』分を買い取った。ノレッジさんのレベルは『135』だったらしく、現在は『Lv.35』へ落ちた。
「なんてこったい! だけどまあ、仕方ないか!」
ガハハと豪快に笑い、なんだかんだで取引成立。レートに関しては日々変わるもの。国々やダンジョン、冒険者の需要と供給による。
今度こそ店を出る。
そのまま『オルビスの塔』を目指した。
「さすがに徒歩だと距離があるなあ」
現在地『N地区』から塔のある『L地区』までかなりある。徒歩二時間はあるので、ひたすら歩くしかない。
――にしても。
「ソレイユ様、麗しゅうございます」「おぉ、ソレイユ様!」「お綺麗だ……」「騎士様だぁ、カッコ良いなぁ」「いつ見てもあの桃色の髪は芸術的です」「いいなぁ~」
ソレイユのヤツ、ルナを差し置いて相変わらず注目度抜群だな。さすが帝国の騎士。エクリプス家の有名人。
「こ、このままだと取り囲まれちゃう! カイト、急ぎましょう!」
「お、おう」
◆
どんどん先へ進んで行く。
巨大塔・オルビスは、あまりに巨大なものだから目の前にあるかのように錯覚する。でも、まだまだ距離がある。遠いなぁ。
あれから歩いて一時間半は経過しただろう。足がクタクタだ。少し休憩したい。
現在、オルビスの塔付近『L地区』にいた。この辺りまで来ると、デカくて広い邸宅しか見当たらない。
「L地区。ついに中心部まで辿りきましたね。此処は『七つの貴族』も住んでいるエリア。近くですとトラモントの『ゾンターク家』が近いでしょう。彼はあれでも伯爵ですからね」
と、ルナが説明してくれた。
マジかよ、あのドワーフのおっさん、伯爵だったのかよ。初めて知ったぞ。しかも、元シャロウのメンバーNo.4である。
身長三メートルの大男『トラモント』。大戦斧・エンディミオンは強烈な恐怖を俺たちに与えた。今や大戦斧・エンディミオンは失われた。それにトラモントは心を入れ替えて帝国・レッドムーンの貴族に戻った。
今はその『ゾンターク家』で構えているのだろう。
「まあ、寄っている暇はないな」
「そうですね。少しは挨拶に行きたいのですが、今回は通り過ぎましょう」
「だな。というわけだ、ソレイユ、エクリプス家に寄っている暇もないぞ」
エクリプス家の方角を見つめていたソレイユに突っ込むと、彼女は顔を赤くした。図星だったか。
「――うッ。くぅ~…カイト、よく分かったわね」
向こうを見つめていればな。
あの道は覚えている。
一か月前ほどにまさに歩いて通った道。ルナから愛を告白された場所でもあった。
「……」
ルナも意識しているのか頬を紅潮させ、俯いていた。……そんな風にされると俺も照れるんだが。けれど、思い出深い場所だ。
――そうだ、俺の“はじまりの場所”でもある。
去り際にノレッジさんは、レベルの取引を持ち掛けてきた。どうやら店の資金が必要らしく、自身のレベルを売りたいという。俺は普段お世話になっているから、買取に応じた。
「じゃあ、5,000セルですよ」
「なッ、今はそんなにレートが低いのかい!?」
「一時期の暴騰はバイオレットダンジョンとかの影響のせいです。今は少し落ち着いたんですよ。はい、500,000セル。帝国ペイで受け取り下さい」
今回は『Lv.100』分を買い取った。ノレッジさんのレベルは『135』だったらしく、現在は『Lv.35』へ落ちた。
「なんてこったい! だけどまあ、仕方ないか!」
ガハハと豪快に笑い、なんだかんだで取引成立。レートに関しては日々変わるもの。国々やダンジョン、冒険者の需要と供給による。
今度こそ店を出る。
そのまま『オルビスの塔』を目指した。
「さすがに徒歩だと距離があるなあ」
現在地『N地区』から塔のある『L地区』までかなりある。徒歩二時間はあるので、ひたすら歩くしかない。
――にしても。
「ソレイユ様、麗しゅうございます」「おぉ、ソレイユ様!」「お綺麗だ……」「騎士様だぁ、カッコ良いなぁ」「いつ見てもあの桃色の髪は芸術的です」「いいなぁ~」
ソレイユのヤツ、ルナを差し置いて相変わらず注目度抜群だな。さすが帝国の騎士。エクリプス家の有名人。
「こ、このままだと取り囲まれちゃう! カイト、急ぎましょう!」
「お、おう」
◆
どんどん先へ進んで行く。
巨大塔・オルビスは、あまりに巨大なものだから目の前にあるかのように錯覚する。でも、まだまだ距離がある。遠いなぁ。
あれから歩いて一時間半は経過しただろう。足がクタクタだ。少し休憩したい。
現在、オルビスの塔付近『L地区』にいた。この辺りまで来ると、デカくて広い邸宅しか見当たらない。
「L地区。ついに中心部まで辿りきましたね。此処は『七つの貴族』も住んでいるエリア。近くですとトラモントの『ゾンターク家』が近いでしょう。彼はあれでも伯爵ですからね」
と、ルナが説明してくれた。
マジかよ、あのドワーフのおっさん、伯爵だったのかよ。初めて知ったぞ。しかも、元シャロウのメンバーNo.4である。
身長三メートルの大男『トラモント』。大戦斧・エンディミオンは強烈な恐怖を俺たちに与えた。今や大戦斧・エンディミオンは失われた。それにトラモントは心を入れ替えて帝国・レッドムーンの貴族に戻った。
今はその『ゾンターク家』で構えているのだろう。
「まあ、寄っている暇はないな」
「そうですね。少しは挨拶に行きたいのですが、今回は通り過ぎましょう」
「だな。というわけだ、ソレイユ、エクリプス家に寄っている暇もないぞ」
エクリプス家の方角を見つめていたソレイユに突っ込むと、彼女は顔を赤くした。図星だったか。
「――うッ。くぅ~…カイト、よく分かったわね」
向こうを見つめていればな。
あの道は覚えている。
一か月前ほどにまさに歩いて通った道。ルナから愛を告白された場所でもあった。
「……」
ルナも意識しているのか頬を紅潮させ、俯いていた。……そんな風にされると俺も照れるんだが。けれど、思い出深い場所だ。
――そうだ、俺の“はじまりの場所”でもある。
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