287 / 308
【287】 手紙と月と太陽の聖典
しおりを挟む
ジェネラル氏と別行動を取る。
彼らは別のルートから侵入。タイミングを見計らって助力、ルナ達の救出に回ってもらう。
俺とモニカちゃんは、ヤークト公爵を叩く。
「きっとどこから入っても気づかれるだろうな」
「うん、だから真正面から堂々がいいと思う★」
その正面には背より高い門と外壁があった。ジャンプすれば何とか入れるだろう。無駄な労力の消費は避け、門を飛び越えるしかない。
「モニカちゃん、俺が抱えて跳ぶよ」
「おにーさんのえっち★」
「多少の密着は目を瞑ってくれ」
「いいよ、おにーさんなら」
真面目な言葉で返してくるものだから、不意を突かれた。……なんか照れるが、照れている場合でもない。俺はモニカちゃんの小さな体を持ち上げ、お姫様抱っこ。
……軽ッ。
ミーティアに匹敵する軽さだな。
そのまま駆けて門の前で跳躍。
「――とりゃッ!」
「わぁ、たかぁ~~~い★」
青い月を背に、俺は門を突破する。
庭に着地すると、そこには『青い屋敷』と『青い花』が広まっていた。……なぜこんな青色に染まっている? ブルームーンのせいか?
「……とにかく、中へ」
「ねえねえ、おにーさん★ あっちの広間っぽい大窓開いてない?」
指をさすモニカちゃんの方角を見ると、そこが僅かに開いていた。良かった、あそこからは入れそうだな。
そのまま窓前まで行くと確かにスライドドアが少し開いていた。庭と繋がっているから、普段利用しているんだろうな。閉め忘れか。
「これで中へ入れるな」
「うん、ところでおにーさん」
「ん?」
「このままが良いの~? ずっとわたしを抱えたままだけど★」
「……あ。うん、下ろすね」
そっと立たせた。けれど、モニカちゃんはなぜか俺に抱きついてくる。……えぇ?
「……おにーさん、ありがとね★」
「なんだか本当の妹みたいだな」
「それでも構わないよ★ でも、おにーさんにはダークエルフのミーティアちゃんがいるんだっけ~…ちょっと寂しいなぁ」
「いや、モニカちゃんも大切な仲間であり、妹みたいなものさ」
「嬉しいなぁ。わたし、パラレログラムで家族を全員失っちゃったから……」
「モニカちゃん……」
「ジェネラルさんやプライム、ナイツさんも同じだよ」
――そうか、パラレログラムはガラテイアの手によって壊滅した。だから、巻き込まれた人達も大勢いるだろうな。モニカちゃんの身内も――ジェネラル氏やプライム、ナイツさんそういう理由なんだ。
奇跡的にも生き残り、藁にも縋る思いで最果ての国からやって来た。そんな国が大変な時に俺の為に動いてくれている。感謝しかないじゃないか。
「よし、この件をさっさと終わらせてパラレログラムを救おう」
「おにーさん、ありがと★」
ぎゅっと抱きついてくるモニカちゃん。この子はきっと寂しかったんだろうな。俺が守らないと……!
◆
ヤークト公爵の屋敷内部を静かに歩いていく。この何処かに宝石に閉じ込められているルナ達がいるはずなんだ。
「部屋をひとつひとつチェックしているけど、それらしい場所は見当たらない。公爵もどこにいるんだ……?」
「ゲストルームみたいな部屋ばかりだね。でも、この二階の先はちょっと雰囲気が違うような」
モニカちゃんの言う通り、階段の前で分かったけど二階は少し違った。この上にいるようだな。
ゆっくり階段を上がって、少し歩いた所に扉があった。なぜか開いていて、そこへ入った。
「書斎か。誰もいないな」
「あ、おにーさん。あの机の上に何かあるよ」
「これは手紙……か?」
目を通してみると、そこにはこう書かれていた。
『父上ネーレウスへ。
フォトンの魔導兵器・ミラージュでは役不足でした。元将軍ベルガマスク・セルリアンの娘のよしみで手を尽くし、結果――あの惨敗。
もう私が出るしかないでしょう。そこでまずは手鳴らしに最果ての国・パラレログラムの攻略を三日以内に完了しました。次は帝国・レッドムーンの侵攻に向けます。ですが、その前に【海底監獄イグノラムス】へ向かい、元シャロウのメンバーであり、同郷のコレリックを引き入れます。彼女の持つ大量の“パライバトルマリン”は必要です。
では、お身体にお気をつけて。
追伸:【月と太陽の聖典】を同封します。――ガラテイアより』
これは……ガラテイアの手紙?
まさか公爵とガラテイアは……親子!
彼らは別のルートから侵入。タイミングを見計らって助力、ルナ達の救出に回ってもらう。
俺とモニカちゃんは、ヤークト公爵を叩く。
「きっとどこから入っても気づかれるだろうな」
「うん、だから真正面から堂々がいいと思う★」
その正面には背より高い門と外壁があった。ジャンプすれば何とか入れるだろう。無駄な労力の消費は避け、門を飛び越えるしかない。
「モニカちゃん、俺が抱えて跳ぶよ」
「おにーさんのえっち★」
「多少の密着は目を瞑ってくれ」
「いいよ、おにーさんなら」
真面目な言葉で返してくるものだから、不意を突かれた。……なんか照れるが、照れている場合でもない。俺はモニカちゃんの小さな体を持ち上げ、お姫様抱っこ。
……軽ッ。
ミーティアに匹敵する軽さだな。
そのまま駆けて門の前で跳躍。
「――とりゃッ!」
「わぁ、たかぁ~~~い★」
青い月を背に、俺は門を突破する。
庭に着地すると、そこには『青い屋敷』と『青い花』が広まっていた。……なぜこんな青色に染まっている? ブルームーンのせいか?
「……とにかく、中へ」
「ねえねえ、おにーさん★ あっちの広間っぽい大窓開いてない?」
指をさすモニカちゃんの方角を見ると、そこが僅かに開いていた。良かった、あそこからは入れそうだな。
そのまま窓前まで行くと確かにスライドドアが少し開いていた。庭と繋がっているから、普段利用しているんだろうな。閉め忘れか。
「これで中へ入れるな」
「うん、ところでおにーさん」
「ん?」
「このままが良いの~? ずっとわたしを抱えたままだけど★」
「……あ。うん、下ろすね」
そっと立たせた。けれど、モニカちゃんはなぜか俺に抱きついてくる。……えぇ?
「……おにーさん、ありがとね★」
「なんだか本当の妹みたいだな」
「それでも構わないよ★ でも、おにーさんにはダークエルフのミーティアちゃんがいるんだっけ~…ちょっと寂しいなぁ」
「いや、モニカちゃんも大切な仲間であり、妹みたいなものさ」
「嬉しいなぁ。わたし、パラレログラムで家族を全員失っちゃったから……」
「モニカちゃん……」
「ジェネラルさんやプライム、ナイツさんも同じだよ」
――そうか、パラレログラムはガラテイアの手によって壊滅した。だから、巻き込まれた人達も大勢いるだろうな。モニカちゃんの身内も――ジェネラル氏やプライム、ナイツさんそういう理由なんだ。
奇跡的にも生き残り、藁にも縋る思いで最果ての国からやって来た。そんな国が大変な時に俺の為に動いてくれている。感謝しかないじゃないか。
「よし、この件をさっさと終わらせてパラレログラムを救おう」
「おにーさん、ありがと★」
ぎゅっと抱きついてくるモニカちゃん。この子はきっと寂しかったんだろうな。俺が守らないと……!
◆
ヤークト公爵の屋敷内部を静かに歩いていく。この何処かに宝石に閉じ込められているルナ達がいるはずなんだ。
「部屋をひとつひとつチェックしているけど、それらしい場所は見当たらない。公爵もどこにいるんだ……?」
「ゲストルームみたいな部屋ばかりだね。でも、この二階の先はちょっと雰囲気が違うような」
モニカちゃんの言う通り、階段の前で分かったけど二階は少し違った。この上にいるようだな。
ゆっくり階段を上がって、少し歩いた所に扉があった。なぜか開いていて、そこへ入った。
「書斎か。誰もいないな」
「あ、おにーさん。あの机の上に何かあるよ」
「これは手紙……か?」
目を通してみると、そこにはこう書かれていた。
『父上ネーレウスへ。
フォトンの魔導兵器・ミラージュでは役不足でした。元将軍ベルガマスク・セルリアンの娘のよしみで手を尽くし、結果――あの惨敗。
もう私が出るしかないでしょう。そこでまずは手鳴らしに最果ての国・パラレログラムの攻略を三日以内に完了しました。次は帝国・レッドムーンの侵攻に向けます。ですが、その前に【海底監獄イグノラムス】へ向かい、元シャロウのメンバーであり、同郷のコレリックを引き入れます。彼女の持つ大量の“パライバトルマリン”は必要です。
では、お身体にお気をつけて。
追伸:【月と太陽の聖典】を同封します。――ガラテイアより』
これは……ガラテイアの手紙?
まさか公爵とガラテイアは……親子!
0
お気に入りに追加
667
あなたにおすすめの小説
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
ブラック宮廷から解放されたので、のんびりスローライフを始めます! ~最強ゴーレム使いの気ままな森暮らし~
ヒツキノドカ
ファンタジー
「クレイ・ウェスタ―! 貴様を宮廷から追放する!」
ブラック宮廷に勤めるゴーレム使いのクレイ・ウェスターはある日突然クビを宣告される。
理由は『不当に高い素材を買いあさったこと』とされたが……それはクレイに嫉妬する、宮廷魔術師団長の策略だった。
追放されたクレイは、自由なスローライフを求めて辺境の森へと向かう。
そこで主人公は得意のゴーレム魔術を生かしてあっという間に快適な生活を手に入れる。
一方宮廷では、クレイがいなくなったことで様々なトラブルが発生。
宮廷魔術師団長は知らなかった。
クレイがどれほど宮廷にとって重要な人物だったのか。
そして、自分では穴埋めできないほどにクレイと実力が離れていたことも。
「こんなはずでは……」と嘆きながら宮廷魔術師団長はクレイの元に向かい、戻ってくるように懇願するが、すでに理想の生活を手に入れたクレイにあっさり断られてしまう。
これはブラック宮廷から解放された天才ゴーレム使いの青年が、念願の自由なスローライフを満喫する話。
ーーーーーー
ーーー
※4/29HOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
※推敲はしていますが、誤字脱字があるかもしれません。
見つけた際はご報告いただけますと幸いです……
自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜
ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。
その一員であるケイド。
スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。
戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。
それでも彼はこのパーティでやって来ていた。
彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。
ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。
途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。
だが、彼自身が気付いていない能力があった。
ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。
その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。
自分は戦闘もできる。
もう荷物持ちだけではないのだと。
見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。
むしろもう自分を卑下する必要もない。
我慢しなくていいのだ。
ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。
※小説家になろう様でも連載中
チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?
桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」
その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。
影響するステータスは『運』。
聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。
第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。
すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。
より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!
真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。
【簡単な流れ】
勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ
【原題】
『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』
ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!
桜井正宗
ファンタジー
辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。
そんな努力もついに報われる日が。
ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。
日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。
仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。
※HOTランキング1位ありがとうございます!
※ファンタジー7位ありがとうございます!
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる