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【258】 元オルビス騎士団の騎士

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 いつの間にか現れた魔導兵器・ミラージュ。その中から何か出て来る。

 現れる人型の影。
 まさか、人間なのか。


『落ち着くのです、アルバ。わたしですよ』

「――んなッ!! あんたはギルマス! フォトン!」


 大きな腕に掴まれているアルバが確かにその名を口にした。聞き違いでないのならあの女こそ問題のギルド『セレネイド』のマスター『フォトン』か。


 銀髪に桃色の瞳。
 まず目に入るきゃくせん。恐ろしい程の健脚で、身体に無駄が一切ない。

 身に着けているのはビキニアーマーか。


 そのせいか肌の露出が凄まじい。


「あの女がフォトン。というか、女だったのかよ」
「わたしも驚きました。あの鎧の中身がいた事さえも」


 そうだな、ルナは戦闘になったようだし……あんな鎧モンスターっぽい中に人間がいるとは思えない。魔導兵器ってそういう事だったのか。


「ペイル、これはどういう……」
「言いたい事は分かる。けれど、これは私も想定外」
「想定外!?」


「ああ、あんな風に魔改造・・・されてたとはな」


「魔改造だと?」


 つまりなんだ、本来は魔法か何かで動く兵器だったのか。だけど、フォトンが改造してあのように装備か搭乗出来るってワケか。


 動向を注視していると、フォトンが静かに微笑む。


「アルバ、貴方は別ルートにいるギルドメンバーと合流しボス部屋に向かうといいのですよ。この場はわたくしに任せて下さい」

「いいのかよ、マスター」

「ソレイユが欲しいのでしょう? 仕方ありませんね、恋路を邪魔するほどわたくしは愚かではないのです。これでも恋する乙女ですから気持ちは痛いほど分かるのですよ」

「恩に着る」


 ゆっくり降ろされるアルバは、走って別ルートへ向かった。クソ、逃がすかッ! 宝剣ルナティックを投げつけでも――!


 武器を取り出した瞬間、弾かれてしまった。


「うわ!!」


 かなり遠くへ飛んでしまい回収は難しい。……というか、今一体何が起きた。


「カイトさん、貴方の噂は聞いております」
「フォトン、お前……何が目的だ」

「目的はただひとつ。このバイオレットダンジョンの最深部に鎮座ちんざする最強のボスモンスター『ハルキゲニア』を討伐したいんですよ。その為にもご協力を願いたい」


 ――ハルキゲニア。

 それがボスの名前か。


「……海人様。フォトンは危険です」

 ルナの言う通り。あのフォトンは危険だ……あの魔導兵器・ミラージュを操り……ん? 待てよ。それだったら。


「おい、フォトン。だったらその魔導兵器とやたらでボスモンスターを倒したら良いじゃないか! その力があれば俺達は頼らなくてもいいだろ」

「もしこの魔導兵器・ミラージュで倒せたのなら、とっくに倒しているのですよ。ですが、それは叶わなかった。それ程にハルキゲニアは強大な力を持つのです」


 そんなに強いのか。
 あの兵器をもってしても倒せないと――だから俺達と組みたいワケらしいが、フォトンがあの魔導兵器を使っていると分かった以上、止めねばならない。


 アレでソレイユがやられているんだからな。


「カイト、私はあのフォトンとミラージュを止める。魔改造されていると分かっては尚更だ。ヤツの目的は『エレメント』だから、量産するつもりなのかもしれない。そうなればまずいぞ」


 ペイルの言う通り、エレメントの目的はそれなのかもしれない。となれば、ここでフォトンを倒す。それしか残された選択肢はない――。


「そうですか、このわたしと戦うつもりなのですね、カイト」


「ああ、そうだ。お前を止める! ソレイユにした殺傷行為は許しがたい! 何故だ、何故彼女を傷つけた!!」


「話をしようと思ったのですがね、ソレイユから攻撃を仕掛けて来たのですよ? でもまあ、そんな些細ささいな事はどうでもいいのです。
 わたくしは元オルビス騎士団の騎士でした。騎士団長のノエルもタイプでしたが……特にソレイユが大好きなんです。先ほども申しましたが彼女に恋をしているんです」


 ――お前もかッ!!


 どいつもこいつもソレイユを狙って……もう人気だな、アイツ。世話の焼ける……だけど、アイツの人を引き付ける魅力は分かるよ。素敵な笑顔だもんな。優しいし。


「それで傷つけたってか?」
「ええ、あれは言うなれば愛のむちです。ちゃんと急所は外しましたよ~? だからですね、もっともっとソレイユの歪む表情が見てみたい……あぁ、今頃どこにいるんでしょうね。
 この手で彼女の臓物を受け止めたい……!」


 恍惚こうこつとした表情で両手を広げる。


 ……これがフォトンか。


 よく分かった。


 コイツはイカれてやがるッ!!!
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