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【249】 レベルを求めて
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メイド宿屋・アルマナックに戻った。部屋に入った瞬間、ルナとソレイユが固まる。恐らく……いや、確実に青髪の騎士・ペイルを連れてきた所為だろう。
それにしても、ソレイユはもう立ち上がれるようになったのか。ルナの回復スキルの効き目は凄いな。などと感心していると、ソレイユが口を開く。
「えっと、カイト。あんた、鎧の情報を集めに行ったんじゃなかったのかしら? どうして騎士を……それも元共和国・ブルームーンの竜騎兵を連れて来てるの!?」
「これが説明すると長いんだが、もちろん話す。実は……」
俺はさっきあった出来事を細かく話した。二人とも驚きと焦りを見せ、ソレイユに至っては聖剣マレットをペイルに向けた。
「……カイトから離れなさい!」
「ま、まあ待てよ。ちゃんと話しただろう、落ち着けソレイユ。この人は鎧を止めようとしているんだぞ。確かに鎧を製造する上でのモデル? にはなったのかもしれんが」
「そういう問題ではないでしょう。元とはいえ敵国の兵よ。何をされるか分かったものじゃない」
酷く警戒するソレイユに対し、ペイルは静かにハルバードを床に置く。戦闘の意志はないと、そう示したのだ。
「申し訳ない、これは礼儀がなっていませんでしたね、ソレイユ様。私はもう戦争の事はどうでもいいんです。今はただ、鎧を……ミラージュを止めたい。もしあれが各地で暴れるようなら、私は自分を許せなくなってしまう。いえ、既にその段階に来ているのかもしれませんが……どうか、ご協力を」
深々と頭を下げるペイル。
「なあ、ソレイユ」
「う……分かったわ。オービット戦争は忘れましょう、もう終わった話だものね。そうね、今はそのミラージュを止めないと。それと、セレネイドのギルドマスター『フォトン』と副マスターの『アルバ』か。うーん……怪しくないのが逆に怪しいわね。昨晩は、アルバとも会ったわけだし、タイミング良すぎない?」
確かにな、鎧とは入れ替わるように現れたらしいし……何かあるな。何にしても、バイオレットダンジョンとやらに向かう必要がありそうか。
宿屋の受付へ向かい、チェックアウト。
メイド宿屋のオーナー・アルナさんから感謝を貰い、また機会があれば利用したいとこちらもお礼を言って去った。
宿屋を出ると――
「カイトさん、レベルを売ってくれ!」「レベルを!」「こっちもだ!」「いやいや、俺だよ俺」「私が先よ!?」「おいおい、邪魔すんな」「きゃー! ソレイユ様可愛いー!」
レベルを求める冒険者が殺到していた。
「うわ、困った。今売っている余裕はないんだがなあ。100万レベルの在庫を作るって決めたばかりだから」
「すみません、海人様。差し出がましいこととは存じますが……大丈夫ではありませんか? 今やペイルさんもいますし、近くのダンジョンでサクッと経験値を稼いでレベルアップすればいいかと」
とまあ、ルナは単純明快な提案をした。そうだな、レベルは上げようと思えばモンスターを倒せば上げられる。求めてくる人はレベルの低い冒険者で、きっと噂のバイオレットダンジョンを目指している人間だ。
まあいいか、少しくらいなら。
「分かった、俺はレベル売買の取引をする。すまないが、皆はちょっと休憩していてくれ」
そうは言ったものの、皆は離れなかった。イルミネイトと同じように一緒に手伝うと言ってくれた。なんと心強い。
一時間後――
「ふぅ……取引完了。レベルの在庫が『26万』から『21万』になった。まだまだあるけど、こう減っていくと不安があるな。しかも、Lv.1につき10万セルもするのに売れる売れる……皆、重苦しい経験値テーブルに思い悩んでいるんだな」
腕を組んで頭を捻っていると、ソレイユが説明を付け加えてくれた。
「そうね、高レベルになればなるほどレベルアップし辛いし。例えばLv.5000ともなると強いモンスターを何千、何万倒してやっとLv.1アップだからね。そりゃ大変よー」
だから、そんな手間を省くためにわざわざ大金を叩くわけだ。低レベルの1~999までは経験値テーブルは緩いが、Lv.1000以降は地獄の始まり。かなり強いモンスターを大量に倒さないとそう簡単にはレベルアップしない。だからこそ、強いパーティやギルドに所属するわけだ。
でも、それよりも手っ取り早い方法が『レベル売買』。だからこそ、俺を求めてやって来る。
「なるほど、それが噂の『レベル売買』スキルか。初めて目の前で見せて貰った。お金さえあればレベルアップ出来るとはな……ふむ、実に興味深い」
「ペイルもレベルが欲しいのか?」
「いや、残念ながら手持ちがなくてね。自力で上げるよ」
お金が無いんじゃ仕方ない。こちらも商売だから、さすがにタダって訳にもいかないからな。それに、これからダンジョンへ行くわけだし、そこでレベリングすれば良いさ。
「よし、普段はやらないレベルを稼ぎに行きますか! 頼んだぜ、皆!」
目指すは『バイオレットダンジョン』だ。
それにしても、ソレイユはもう立ち上がれるようになったのか。ルナの回復スキルの効き目は凄いな。などと感心していると、ソレイユが口を開く。
「えっと、カイト。あんた、鎧の情報を集めに行ったんじゃなかったのかしら? どうして騎士を……それも元共和国・ブルームーンの竜騎兵を連れて来てるの!?」
「これが説明すると長いんだが、もちろん話す。実は……」
俺はさっきあった出来事を細かく話した。二人とも驚きと焦りを見せ、ソレイユに至っては聖剣マレットをペイルに向けた。
「……カイトから離れなさい!」
「ま、まあ待てよ。ちゃんと話しただろう、落ち着けソレイユ。この人は鎧を止めようとしているんだぞ。確かに鎧を製造する上でのモデル? にはなったのかもしれんが」
「そういう問題ではないでしょう。元とはいえ敵国の兵よ。何をされるか分かったものじゃない」
酷く警戒するソレイユに対し、ペイルは静かにハルバードを床に置く。戦闘の意志はないと、そう示したのだ。
「申し訳ない、これは礼儀がなっていませんでしたね、ソレイユ様。私はもう戦争の事はどうでもいいんです。今はただ、鎧を……ミラージュを止めたい。もしあれが各地で暴れるようなら、私は自分を許せなくなってしまう。いえ、既にその段階に来ているのかもしれませんが……どうか、ご協力を」
深々と頭を下げるペイル。
「なあ、ソレイユ」
「う……分かったわ。オービット戦争は忘れましょう、もう終わった話だものね。そうね、今はそのミラージュを止めないと。それと、セレネイドのギルドマスター『フォトン』と副マスターの『アルバ』か。うーん……怪しくないのが逆に怪しいわね。昨晩は、アルバとも会ったわけだし、タイミング良すぎない?」
確かにな、鎧とは入れ替わるように現れたらしいし……何かあるな。何にしても、バイオレットダンジョンとやらに向かう必要がありそうか。
宿屋の受付へ向かい、チェックアウト。
メイド宿屋のオーナー・アルナさんから感謝を貰い、また機会があれば利用したいとこちらもお礼を言って去った。
宿屋を出ると――
「カイトさん、レベルを売ってくれ!」「レベルを!」「こっちもだ!」「いやいや、俺だよ俺」「私が先よ!?」「おいおい、邪魔すんな」「きゃー! ソレイユ様可愛いー!」
レベルを求める冒険者が殺到していた。
「うわ、困った。今売っている余裕はないんだがなあ。100万レベルの在庫を作るって決めたばかりだから」
「すみません、海人様。差し出がましいこととは存じますが……大丈夫ではありませんか? 今やペイルさんもいますし、近くのダンジョンでサクッと経験値を稼いでレベルアップすればいいかと」
とまあ、ルナは単純明快な提案をした。そうだな、レベルは上げようと思えばモンスターを倒せば上げられる。求めてくる人はレベルの低い冒険者で、きっと噂のバイオレットダンジョンを目指している人間だ。
まあいいか、少しくらいなら。
「分かった、俺はレベル売買の取引をする。すまないが、皆はちょっと休憩していてくれ」
そうは言ったものの、皆は離れなかった。イルミネイトと同じように一緒に手伝うと言ってくれた。なんと心強い。
一時間後――
「ふぅ……取引完了。レベルの在庫が『26万』から『21万』になった。まだまだあるけど、こう減っていくと不安があるな。しかも、Lv.1につき10万セルもするのに売れる売れる……皆、重苦しい経験値テーブルに思い悩んでいるんだな」
腕を組んで頭を捻っていると、ソレイユが説明を付け加えてくれた。
「そうね、高レベルになればなるほどレベルアップし辛いし。例えばLv.5000ともなると強いモンスターを何千、何万倒してやっとLv.1アップだからね。そりゃ大変よー」
だから、そんな手間を省くためにわざわざ大金を叩くわけだ。低レベルの1~999までは経験値テーブルは緩いが、Lv.1000以降は地獄の始まり。かなり強いモンスターを大量に倒さないとそう簡単にはレベルアップしない。だからこそ、強いパーティやギルドに所属するわけだ。
でも、それよりも手っ取り早い方法が『レベル売買』。だからこそ、俺を求めてやって来る。
「なるほど、それが噂の『レベル売買』スキルか。初めて目の前で見せて貰った。お金さえあればレベルアップ出来るとはな……ふむ、実に興味深い」
「ペイルもレベルが欲しいのか?」
「いや、残念ながら手持ちがなくてね。自力で上げるよ」
お金が無いんじゃ仕方ない。こちらも商売だから、さすがにタダって訳にもいかないからな。それに、これからダンジョンへ行くわけだし、そこでレベリングすれば良いさ。
「よし、普段はやらないレベルを稼ぎに行きますか! 頼んだぜ、皆!」
目指すは『バイオレットダンジョン』だ。
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